退職月の給与計算方法は?正しくおこなうポイント・注意点も解説 |HR NOTE

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退職月の給与計算方法は?正しくおこなうポイント・注意点も解説

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退職月の給与計算をするには、退職日や給与の締日など、さまざまな情報が必要です。
会社や従業員ごとに異なる部分もあるため、給与計算方法の基礎からしっかりと知っておきましょう。

本記事では退職月の給与計算方法や、間違いのない管理のために気を付けたい注意点を中心に解説します。

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本資料では労働時間の集計から給与明細の作成まで給与計算の一連の流れを詳細に解説しており、間違えやすい保険料率や計算方法についてもわかりやすく解説しています。

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1. 退職月の給与計算は基本的に変わらない

退職が決まっている人の給与計算方法は、基本的に通常の給与計算と変わりません。
締日を基準に給与計算をおこない、規定の給与支払い日に支払います。
給与支払い日には既に社員ではなくなっていますが、問題ありません。

ただし、締日を待たずに退職する場合は、残っている日数をどのように取り扱うか、企業によって異なります。
有給休暇の消化にあてる場合や、日割りで計算して支払うケースが多いです。

また社会保険料を給与から天引きしている場合は、退職日によって取り扱いに違いが生まれます。

2. 退職月の給与を計算する方法

退職月の給与の計算は、給与制度(日給・月給など)や退職する日によって異なります。基本的な給与計算の方法から一つずつ解説します。

2-1. 基本的な給与計算の方法

締日を退職日とする場合は、今までの給与計算と同じ計算方法で求められます。

計算式は以下のとおりです。

総支給額(基本給+ 各種手当) - 控除額(社会保険料+税金+その他の控除) =支払い額

締日前に退職する場合は、基本給を日割り計算することになります。その際の計算方法は会社によって異なり、どのような方式を採用するかは就業規則によって定められています。

次の項目からは一般的な基本給の日割り計算方法をご紹介します。会社がどの方式を採用しているかを確認し、該当する計算式をご活用ください。

2-2. 暦日で計算する場合

1日を午前0時~午後12時で区切るのが暦日です。

基本給の日割りを暦日で計算する場合は、出勤日数は関係ありません。給与計算期間の日数と、退職日までの日数を基準にします。

計算式は以下のとおりです。

基本給 × (退職日までの暦日 ÷ 当該月の暦日数)= 支給額

以下の条件で実際に計算してみましょう。

基本給:30万円退職日:15日給与の締日:月末

30万円 × (15日÷ 30日)= 15万円

このような計算式になり、支給額は15万円です。

この金額に各種手当を加算した金額が総支給額になり、ここから控除額をマイナスした金額が退職月に給与として支払う額になります。

2-3. 基本給を出勤日数で計算する場合

基本給を出勤日数で計算する場合は、所定労働日数を使って計算します。

計算式は以下のとおりです。

(基本給 ÷ 所定労働日数) × 出勤日数= 支給額

以下の条件で実際に計算してみましょう。

基本給:30万円退職月の所定労働日数:20日退職日までの出勤日数:15日

(30万円 ÷ 20日) × 15日= 22万5,000円

基本給30万円を所定労働日数20日で割ると、出勤日1日あたりの支給額が求められます。この場合は1万5,000円です。

そこに退職日までに出勤した15日分を掛けて支給額を求めます。

所定労働日数によって金額が変動するのが特徴で、所定労働日数が少ない月ほど1日あたりの支給額が高くなります。

2-4. 支給額を月平均の所定労働日数で計算する場合

所定労働日数の月平均を出し、それを元に支給額を決定する場合は、2つの計算式を使います。

1. 年間所定労働日数 ÷ 12ヵ月 =月平均の所定労働日数2. 基本給 ÷ 月平均の所定労働日数 × 出勤日数=支給額

以下の条件で実際に計算してみましょう。

基本給:30万円 年間所定労働日数:250日 退職日までの出勤日数:15日

※年間所定労働日数がわからない場合は、「365日 - 年間休日日数」で求めます。

  1. 250 ÷ 12ヵ月 =20.8日
  2. 30万円 ÷ 20.8日 × 15日=21万6,346円

このように計算でき、支給額は21万6,346円です。

月平均の所定労働日数を使って支給額を決定するこの方式は、退職月による支給額の変動がありません。退職するタイミングによって損得がでない方式です。

2-5. 毎月の手当の対応方法について

毎月生じている手当の支給方法は、「額が変動する手当」「額が一定の手当」によって対応が異なります。まず、「額が変動する手当」に関しては通常通り支給しなければなりません。具体的には、時間外労働手当、深夜労働手当、休日労働手当などの割増賃金が該当します。

続いて「額が一定の手当」に関しては、支給方法が「日割り計算した額を支給する」「全額支給する」の2つが存在し、企業によって対応は異なります。

例えば、住宅手当、役職手当、通勤手当、資格手当、出張手当などが該当するでしょう。毎月一定額の手当支給は、福利厚生の役割を担っているケースも考えられます。そのため月途中で退職した従業員に対しても、全額支払うことが望ましいでしょう。

3. 退職時の給与計算に必要な情報

退職月の給与計算をする際には、「事業所の情報」「従業員の情報」「加入制度の情報」が必要となります。

それぞれの具体的な内容について、確認しておきましょう。

3-1. 事業所の情報

事業所の情報とは、給与制度や休日の取り決め、各種手当や割増賃金の率など、就業規則や雇用契約書であらかじめ定めていた情報です。

退職月の給与計算では、以下の情報が必ず必要となるため今一度把握しておきましょう。

給与形態 月給・週給・日給・時給のうち、どの形態で雇用しているか確認します。
締日・支払い日 給与の締日と支払日を再度確認しておきましょう。
所定労働時間・休憩時間 始業時刻と終業時刻、休憩時間の取り扱いを確認します。
休日 所定の休日日数や所定労働日数を確認します。
各種手当の支給要件 通勤手当や役職手当などの各種手当の内容や支給要件を確認します。
欠勤・遅刻・早退時の計算方法 欠勤・遅刻・早退があった際に控除をおこなう場合はその計算方法を確認します。
割増賃金率 休日出勤や深夜労働などの割増賃金率を確認します。

3-2. 従業員の情報

退職時の給与計算には、以下の項目の情報が必要となります。

個人情報 氏名・生年月日・住所・電話番号
扶養家族 扶養家族の人数や間柄を確認します。
入社日
振込先情報 給与を振り込む場合は、退職後も同じ口座で問題ないか確認します。
給与内容 給与額・各種手当・交通費などが間違いないか再確認します。
標準報酬月額 健康保険・厚生年金に加入している場合は確認します。
住民税額 特別徴収の対象者にのみ確認します。
年次有給休暇の付与日数 消化しきれていない場合は扱いを検討します。

3-3. 加入制度の情報

事業所が加入している保険制度と、その内容も確認しておきましょう。

退職する従業員の給与から控除をおこなうために必要で、退職月の給与からも今までと同様に天引きする必要があるからです。

  • 雇用保険
  • 健康保険
  • 厚生年金保険

この3つの保険は、給与から天引きすることが多いため押さえておきましょう。

労災保険も加入している企業が多いですが、労災保険の保険料は全額が事業主負担です。

あくまで従業員の給与からは天引きしていないため、考慮する必要はありません。

4. 退職月の給与を計算するときの注意点

ここからは、退職月の給与計算をおこなう際に注意すべき点について紹介します。

所得税・住民税の控除の有無、社会保険料の資格喪失日について、退職金の支給に必要な源泉徴収について解説していきます。

4-1. 所得税はいつも通り控除してよい

所得税に関しては、退職月の給与計算時も普段と同じように控除して問題ありません。

月途中で退職する従業員については、給与所得の源泉徴収税額表の「日額表」を活用しましょう。

令和4年度の所得税の税率(月額表・日額表)は、国税庁の以下のサイトよりご確認いただけます。

参考:令和4年分 源泉徴収税額表|国税庁

退職年の1月から支払った源泉徴収額に関しては、退職所得の源泉徴収票を作成して退職者に渡さなければいけません。

また受給者が法人の役員(相談役、顧問などを含む)である場合には、退職後1ヵ月以内に「源泉徴収票」を作成して所轄の税務署および市区町村へと提出する必要があります。こちらも漏れのないよう、しっかりと対応しましょう。

4-2. 住民税の納付方法は、退職時期によって異なる

退職月の給与計算においても、住民税の納付はおこなう必要があります。住民税は、前年1年間の所得に対して課される税金です。よって従業員の退職時期によって手続きに違いが生じるため、正しく理解しておきましょう。

企業に勤める従業員は、自身で納税をおこなう「普通徴収」ではなく、毎月の給与から天引きされる「特別徴収」で納税することが一般的です。その年の給与に適当な金額を、翌年6月~翌々年の5月にかけて納付していきます。

退職時期が1月1日~5月31日の場合

住民税の期間内である5月分までの納めるべき金額を一括で納税します。給与・退職金を上回る場合には、未納税分は退職者自身で「普通徴収」として納める必要があります。

退職時期が6月1日~12月31日の場合

退職者は、翌年5月までの税額を一括納税するか、前月分以降は普通徴収するかを選択できます。一括納税をする場合には、事前に申し出るよう伝え、申し出がない場合には普通徴収に切り替えるよう伝えるとよいでしょう。

所得税・住民税の控除は適切に行わなくては、従業員に迷惑が掛かってしまうため、控除について不安がある方は、当サイトで無料配布している「所得・住民税 給与計算マニュアル」もご確認ください。資料では所得税・住民税の計算・控除の方法から給与計算を効率化する方法まで解説しているため、適切な税金計算を行いたい方は、こちらから資料をダウンロードしてご活用ください。

4-3. 社会保険料の資格喪失日に注意する 

社会保険料は、その月に支払う給与から前月分の保険料を控除する、翌月控除が原則です。加えて、社会保険の資格喪失日は、退職日ではなく「退職日の翌日」です。

そこで注意しなくてはいけないのが、月末近くに退職するケースです。

例えば、月の末を退職日とするとする場合は、翌日の30日が社会保険の資格喪失日になります。この場合は前月分の社会保険料のみが発生します。

しかし、30日を退職日とした場合は、社会保険の資格喪失日が翌月1日になります。この場合は1ヵ月分の社会保険料が発生するため、給与から控除する必要があります。また、社会保険料は日割り計算ができません。

そのため退職日が月を跨いでしまった場合は、2ヵ月分の社会保険料を給与から天引きしなくてはなりません。

4-4. 退職金には源泉徴収が必要

退職金が発生する場合は、源泉徴収をおこなわなくてはいけません。

退職金のほかにも、功労金をはじめとした毎月の給与とは別に発生する報酬がある場合は、源泉徴収が必要です。

退職金などの源泉徴収は、退職日から1カ月以内に本人へ郵送しなくてはいけません。退職月の給与計算と一緒に作成し、できるだけ早く送りましょう。

5. 退職月の給与計算に関してよくある質問

ここからは、退職月の給与計算に関してよく生じる疑問について紹介します。

従業員から給与を返金するよう求めるケース、アルバイトや月中15日付けで退職した従業員の給与計算などについて解説していきます。

5-1. 従業員から給与の返金を求めるケースとは?

退職者の給与計算業務にて、ミスが生じると給与の返金を求めざるを得ない状況になることもあり得るでしょう。例えば、以下のケースで生じる可能性があるため十分に注意しましょう。

  • 前払いをしている場合(当月払いのため、月末までに退職されるケース)
  • 退職予定が連携されていない場合(給与計算担当者への情報共有がなく、日割り計算ができないケース)

5-2. アルバイトの退職月の給与はどうなる?

アルバイトの退職月の給与計算は、基本的には社員と同様におこないます。

ただしアルバイトの方の中には、急に退職するケースも考えられるでしょう。その際、要望を受けた場合には、退職後7日以内に賃金を支払う義務があることを改めて押さえておきましょう。

労働基準法第23条では、以下のように規定されているためご留意ください。

労働者の死亡又は退職の場合に、権利者から請求があったときには、7日以内に、賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称にかかわらず労働者の権利に属する金品を返還しなければなりません。

引用:労働基準法|e-Gov法令検索

5-3. 月中の15日付けで退職した従業員の社会保険料はどうなる?

社会保険料は、月単位で徴収されるため被保険者でなくなった場合には、徴収されません。

例えば、10月15日付けで退職した場合には、翌日の10月16日に資格喪失します。この場合には、前月の9月分まで社会保険料が徴収される仕組みとなります。

6. 退職月の給与計算は就業規則や退職日に注意しよう

退職日を締日に合わせる場合は、退職月の給与計算は通常の給与計算と同じです。

しかし、締日前に退職する場合は、就業規則に則って基本給を計算する必要があります。加えて、社会保険料の扱いや退職金の有無など、会社や個人の事情によって計算方法は異なります。

必要な情報を集めて、間違いのないように計算しましょう。給与計算ソフトを導入すれば、締日や退職日を入力するだけで退職者の情報から退職月の給与を求められます。

人事労務の手間を減らし、計算ミスを減らしたい場合はぜひご検討ください。

【監修者】涌井 好文(社会保険労務士)

涌井社会保険労務士事務所代表。就職氷河期に大学を卒業し、非正規を経験したことで、労働者を取り巻く雇用環境に興味を持ち、社会保険労務士の資格を取得。 その後、平成26年に社会保険労務士として開業登録し、現在は従来の社会保険労務士の業務だけでなく、インターネット上でも活発に活動を行っている。
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