休日出勤は労働基準法により、36協定を締結することで認められています。休日出勤の割増手当は、発生の有無が「法定休日か所定休日か」「振替休日か代休か」などによって変化します。本記事では、休日出勤の概要や、割増率の計算方法、割増賃金が発生しないケースなどもあわせて解説します。
人事担当者の皆さまは、労働基準法における休日・休暇のルールを詳細に理解していますか?
従業員に休日労働をさせた場合、代休や振休はどのように取得させれば良いのか、割増賃金の計算はどのようにおこなうのかなど、休日労働に関して発生する対応は案外複雑です。
そこで当サイトでは、労働基準法にて定められている内容をもとに、振休や代休など休日を取得させる際のルールを徹底解説した資料を無料で配布しております。
「休日出勤させた際の対応を知りたい」「代休・振休の付与ルールを確認したい」という人事担当者の方は「【労働基準法】休日・休暇ルールBOOK」をぜひご一読ください。
目次
1. 休日出勤は原則違法ではない
休日出勤とは、労働義務がない休日に出勤することです。
休日出勤自体は、次の2つの条件をクリアしていれば、原則違法ではありません。
- 会社と従業員の間で36協定を締結し、労働基準監督署長に届け出ること
- 労働基準法で定められた割増賃金を支払うこと
休日には法定休日と法定外休日(所定休日)の2つがあり、労働基準法第35条で規定された休日が法定休日、会社が任意で付与する休日が法定外休日です。
2. そもそも休日は2種類に分類される
そもそも休日には、「法定休日」と「所定休日」の2種類が存在します。
法定休日か所定休日かによって割増率は変わるため、最初に違いを確認しておきましょう。
それぞれ原則どの企業においても設けられていますが、両者の定義には明確な違いがあります。
2-1. 「法定内休日」と「所定休日(法定外休日)」
法定休日は労働基準法により週1日、または4週間で4日以上の休みを必ず与えなければならないとされています。これに対して所定休日は、企業が自ら任意で設ける休日であり、国が定めたものではありません。
ただし、週40時間の法定労働時間を守るため、所定休日も法定休日と同様に週1日の付与を行う企業が多く見られます。また、企業独自の所定休日の設定には、労働契約や就業規則に明記されることが一般的です。
そのため、企業は従業員に対してこれらに関するルールや条件を明確に示し、コミュニケーションを図ることが肝要です。
2-2. 祝日は法定外休日に入る?
祝日の扱い方は、各企業の判断にゆだねられています。そのため祝日を法定休日として扱う企業もあれば、所定休日にいれる企業も存在します。
労働基準法により祝日を休みとする規定は存在しないことから、通常の労働日として扱うことも問題ありません。
3. 休日出勤に対する「振替休日」「代休」とは
休日出勤をした従業員に対して、代わりの休みを付与する「振替休日」と「代休」という制度があります。振替休日と代休制度の導入は、労働基準法により義務化されていないことから、任意で設けることが可能です。
振替休日と代休も、休日出勤における割増賃金の考え方に影響するため、確認しておきましょう。
3-1. 休日出勤に振替休日を与えるには
振替休日とは、休日と労働日を事前に入れ替える制度です。
そのため休日出勤に振替休日を取得させるには、休日出勤日前日までに従業員から申請をもらう必要があります。
3-2. 休日出勤に代休を与えるには
代休とは、休日出勤後に代わりの休みを付与する制度です。
そのため休日出勤に代休を取得させるには、休日出勤後に代わりの休みを指定してもらい、申請をもらう流れとなります。
4. 休日出勤に割増賃金が発生するケース
どのような場合に割増手当を与える必要があるのか把握することは、給与計算をおこなう上で非常に重要です。
従業員に休日出勤をさせた際には、割増賃金が発生するケースがいくつか存在します。以下の4つのケースが該当するため、一つずつ確認してみましょう。
4-1.法定休日に労働した場合
法定休日に労働をさせた場合には、「休日労働手当」として35%の割増賃金が発生します。法定休日は、労働基準法により使用者が従業員に対して最低限付与すべき休日として設けられており、割増手当の中でも割増率が高いです。
4-2. 所定休日にて時間外労働・深夜労働が発生した場合
所定休日に労働させた場合、時間外労働(1日8時間・週40時間超の労働)または深夜労働(22時~翌5時までの労働)が発生した場合には、それぞれ25%の割増賃金が発生します。
所定休日に労働させたことは「休日労働手当」に該当しませんが、「時間外労働手当」「深夜労働手当」の対象となった場合には、割増賃金の付与が必要となります。
この際、企業は就業規則に基づき労働時間を適切に管理し、従業員が不利益を被ることがないように注意を払う必要があります。また、労働時間を超過した場合は、就業記録の透明性を保つためにも、適切な記録を残すことが重要です。
これにより、企業は労働基準法を遵守するだけでなく、従業員の信頼感を高め、良好な労働環境を維持する役割を果たすことができます。
4-3. 代休を取得させた場合
代休を取得させた場合には、法律により定められている「法定休日」には35%、深夜労働には25%の割増賃金が発生します。休日出勤後に代わりの休日取得の申請をするため、休日に労働した事実は消えないためです。
企業が任意で設けている「所定休日」に関しては、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超過した場合に25%、深夜労働(22時~翌5時までの労働)が発生した場合に25%とそれぞれ割増賃金が発生します。
過剰な労働を防ぐことを目的として、任意で導入される制度となります。
4-4. 振替休日にて時間外労働・深夜労働が発生した場合
振替休日を取得させて、休日出勤日に時間外労働(1日8時間・週40時間超の労働)または深夜労働(22時~翌5時までの労働)が発生した場合には、それぞれ25%の割増賃金が発生します。
振替休日は、休日出勤日より前にあらかじめ労働日と休日を交換しています。そのため、休日労働をしたとは捉えられず、「休日労働手当」は支給する必要がありません。ただし、その際に時間外労働や深夜労働が発生した場合には、しっかりと追加で支給する必要があります。
5. 休日出勤に割増賃金が発生しないケース
ここまで休日出勤をさせた際に割増賃金が発生するケースをご紹介しました。
ここからは休日出勤をさせたのにもかかわらず、割増賃金が発生しないケースについて解説します。給与の過剰支払いを防止するためにもしっかりと確認しましょう。
5-1. 所定休日に出勤し、法定労働時間を超えない場合
所定休日に出勤させた場合は、原則として割増賃金の支給対象とはなりません。
なぜなら所定休日は、労働基準法により設けられたものではなく、各企業が任意で設けた休日であるからです。法定労働時間(1日8時間・週40時間)以内であれば割増手当は発生しませんが、法定労働時間を超えた場合と深夜労働(22時~翌5時までの間)が発生すると、25%の割増賃金が発生しますので注意しましょう。
5-2. 休日出勤した従業員が管理監督者に該当する場合
管理監督者は、休日規定対象に該当しない労働者として扱われます。そのため法定休日・所定休日どちらで休日出勤をしても、時間外労働や休日労働に対する割増賃金は発生しません。
管理監督者とは、経営者と一体の立場として経営判断や業務をおこなう立場の労働者であり、労働基準法第41条2号にて明確に定義づけされています。
5-3. 振替休日の適用対象である場合
振替休日を取得させた場合には、休日労働に対する割増賃金の付与は必要ありません。前述した通り、休日出勤前に労働日と休日を入れ替えているからです。
ただし、休日出勤の当日に振替休日制度を適用させることはできません。休日出勤日の前日までに申請をしてもらう必要があります。
また振替休日制度は、あらかじめ就業規則にて明確に記載することが義務付けられています。就業規則で規定されていない場合は、適用されないため注意しましょう。
5-4. あらかじめ給与に休日出勤手当が含まれている場合
基本給にあらかじめ休日出勤手当が含まれている場合、割増賃金は発生しません。
休日出勤が想定できる事業場で、労働雇用契約書に休日出勤を含めた割増賃金を含むとの記載がある場合は、別途で手当を支払う必要はありません。
ただし、割増賃金として表記された額以上の休日労働や時間外労働が発生した際には、超過した時間分の割増賃金を支給する必要があります。
このような取り決めにより、企業は経済的な負担を軽減しつつ、従業員の働く環境を整えることができます。また、明確な契約内容に基づくことで、労使間でのトラブルを避けることが可能となります。
従業員も自分の給与体系について明確に理解することで、安心して業務に取り組むことができるでしょう。
6. 休日出勤時の給与計算方法
ここでは、休日出勤の割増賃金について、具体的な計算方法を紹介します。たとえば、時間単価1,600円の従業員が、法定休日に7時間労働した場合は、次のような計算になります。
1,600(円)×7(時間)×割増率(1.35)=1万5,120円
なお、月給制の場合の時間単位は、下記の計算式で算出します。
時間単価=月給÷(1日の所定労働時間×(360日-1年の所定休日日数)÷12ヵ月)
法定外休日に出勤した場合で、週40時間を超える労働時間になった場合の割増賃金は、次のような計算方法で算出します。
割増賃金=1時間あたりの基礎賃金×法定時間外労働時間を超えた時間×割増率(1.25)
以上が休日出勤時の給与計算方法です。
7. 休日出勤が違法になるケース
ここまでで解説した休日出勤のルールをふまえ、休日出勤が違法になるケースを解説します。
7-1. 36協定を締結していない
労働基準法第36条では、会社が従業員に法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働、または法定休日に労働させる場合は、従業員と36協定時間外労働協定を締結し、労働基準監督署長に届け出をする必要があると定めています。
[注1]労働基準法第36条「時間外及び休日の労働」|e-Gov法令検索
この労使協定を一般的に「36協定」といい、36協定を締結していない従業員の休日労働や時間外労働出勤は、労働基準法違反として6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられる可能性があります。
7-2. 割増賃金が支払われない
法定休日、または法定労働時間が1日8時間、週40時間を超える労働に対し、会社は割増賃金を支払うことが義務付けられています。
割増賃金を支払わないことは労働基準法違反です。
ただし、労働基準法第41条2号では、管理監督者への労働時間、または休日に関する規定について、適用を除外すると定めています。
[注3]労働基準法第41条「労働時間等に関する規定の適用除外」|e-Gov法令検索
そのため、「管理職には休日出勤の割増賃金を支払わない」という会社もあります。
しかし、ここで注意しなければならないのが、「管理監督者=管理職」とは限らないという点です。
管理監督者として認められるには、経営者と一体的な立場であることのほか、従業員の出退勤に対して裁量権を持っているなど、所定労働時間の枠を超えた労働が想定される立場であることが求められます。
単に「管理職だから」というだけでは、適用除外に該当しない可能性があります。
7-3. 時間外労働の上限を超えている
労働基準法の改正により、大企業では2019年4月、中小企業では2020年4月より「時間外労働の上限規制」が施行されることとなりました。
この規制により、残業や休日出勤などの時間外労働は、原則月45時間、年360時間を上限とし、これを超えた場合は労働基準法違反となる可能性があります。
臨時的で特別な事情があり労使が認める場合は、「特別条項」として上記法定時間外労働時間の上限を超えた労働が可能です。しかし、特別条項が適用された場合であっても、以下の上限を守らなければなりません。
- 時間外労働が年720時間以内であること
- 時間外労働と休日労働が合計月100時間未満であること
- 時間外労働と休日労働を合計した複数月の平均(2〜6ヵ月)が80時間以内であること
- 月45時間の上限を超えられるのは年に6回まで
この上限時間を超える時間外労働は労働基準法違反となり、罰則を科せられる可能性があります。
8. 休日出勤のルールやよくある質問
最後に、休日出勤におけるよくある疑問について紹介します。
8-1. 休日出勤は残業としてカウントされるのか?
休日出勤をした場合、「所定休日」であれば法定労働時間を超えた分が時間外労働として換算されます。
ただし「法定休日」に労働した場合は、休日労働となるため、残業としてはカウントされません。法定休日に出勤した場合は、従業員に35%以上の割増賃金を支払う必要があります。
このように、休日出勤の扱いは、休日の種類によって異なるため、企業は自社の就業規則を確認し、従業員にしっかり説明することが求められます。
8-2. 従業員は休日出勤を断ることはできるのか?
企業側で明確なルールが定められている場合、従業員は原則として予定された業務に従わなければならない義務がありますが、同時に労働者の権利を尊重することが求められます。したがって、企業は従業員との間で十分なコミュニケーションを図り、休日出勤を求める際には、理由や状況についても配慮する必要があります。
また、従業員が精神的または身体的に疲労を感じている場合や、家族の事情がある場合には、これを考慮し、強制的に休日出勤をさせることは避けるべきです。特に、休日出勤が頻繁に発生するような状況になった場合は、労働環境や社員のモチベーションに影響を与える可能性があるため、適切な労務管理が求められます。
8-3. 短時間の休日出勤の取り扱いについて
休日出勤は、本来の勤務時間で労働することが基本です。
しかし、終日勤務するほど業務がないといった理由で、労働時間が2〜3時間の短時間で終わってしまうこともあるでしょう。
短時間の休日出勤は、1日単位で付与する振替休日では対応が難しいため、ほかの方法で出勤した分の労働時間を埋め合わせる必要があります。
この場合、企業は短時間の労働をどのように処理するかを明確に定めておくことが望ましいです。
例えば、短時間の休日出勤に対して特別な制度を設けることで、従業員が自己の裁量で勤務時間を調整できるようにすることが考えられます。
また、短時間の労働であっても、休日出勤扱いとなるため、適切な割増賃金を支給することが重要です。
そのため、企業は労働基準法に基づき、短時間の休日出勤についての運用ルールをしっかりと整備し、従業員に周知させることが大切です。
労働者が短時間勤務に対して納得感を持てるようにすることで、スムーズな業務の進行や職場のモチベーション向上にも寄与することができます。
8-4. 休日出勤に含まれる活動・含まれない活動について
休日に通常の出社業務とは異なる活動が発生した場合、休日出勤に該当するか否か悩まれる労務担当の方もいらっしゃるかと思います。
休日出勤として含まれる活動か否かを判断基準としては、「参加が強制されているか」もしくは「任意参加であっても、不参加の場合に不利益(人事評価への影響など)が発生し、事実上、強制参加となっている」の2点が挙げられます。そのため上記の2点に該当しない任意の活動は、休日出勤としては扱われません。
8-5. パートやアルバイト、派遣社員の扱いについて
パートやアルバイト、派遣社員などの雇用形態である従業員に対しても、休日出勤に関する規定は正社員と同様です。労働基準法とは労働条件の最低基準を定めるものであるため、原則全ての労働者に適用する必要があるためです。
ただし派遣社員に対して休日出勤を指示する場合には、あらかじめ派遣元で36協定を締結する必要があるため注意しましょう。
8-6. フレックスタイム制、裁量労働制の扱いについて
フレックスタイム制、裁量労働制などの異なる就労形態において、休日出勤はどのように扱われるのでしょうか。
フレックスタイム制は、始業・就業のタイミングを自主決定できる制度であり、休日を自由に選択することはできません。そのため通常の労働時間制と同様に、法定休日に労働があった場合は休日労働手当が発生します。ただし、所定休日の労働は労働時間の総枠内であれば、時間外労働とみなさず、時間外手当も必要ありません。
裁量労働制は、平日の労働時間を「みなし労働時間」として考える制度です。業務の遂行から時間配分まで自主決定できるなど裁量が大きいですが、休日出勤や深夜残業を想定していないため、あらかじめ給与に含まれていない場合は別途休日労働手当、深夜労働手当が発生します。
9. 休日出勤は36協定の締結と割増賃金の支払いをすれば違法ではない
労働義務がない休日に労働する休日出勤は、労働基準法に定められた要件を満たしていれば、違法扱いにはなりません。
会社が従業員に休日出勤させる場合は、従業員と36協定を締結することと、割増賃金を支払うことが必要です。
36協定を締結せずに休日出勤させる、休日出勤に対して相応の割増賃金を支払わない、時間外労働の上限を超えた労働をさせるといった行為は、労働基準法違反として罰則が科せられる可能性があるため、十分に注意しましょう。