雇用保険は、要件を満たす全ての従業員に加入義務がある強制保険です。企業が該当の従業員を雇用した際は、雇用手続きの一環として管轄のハローワークへ雇用保険被保険者資格届を提出しなければなりません。
ただし、何かしらの理由により雇用保険の加入手続きが大幅に遅れてしまった場合は、雇用保険被保険者資格届と共に遅延理由書の提出が必要です。
この記事では、雇用保険の加入申請で遅延理由書が必要となるケースや、遅延理由書の書き方をわかりやすく解説します。
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目次
社会保険料の支払いは従業員の給与から控除するため、従業員が入退社した際の社会保険の手続きはミスなく対応しなければなりませんが、対象者や申請期限、必要書類など大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。
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1. 雇用保険被保険者資格取得届の遅延理由書が必要なケース
雇用保険被保険者資格取得届の提出が大幅に遅れる場合は、ハローワークに対して遅延理由書を提出しなければなりません。ここでは雇用保険の加入申請時に遅延理由書が必要となるケースを解説します。
1-1. 雇用保険被保険者資格取得届とは?
雇用保険被保険者資格取得届は、日本の雇用保険制度において、従業員を雇用保険の被保険者として登録するための届出書類です。
従業員を雇用し、かつその従業員が雇用保険の加入条件を満たしている場合は、会社が被保険者資格の取得手続きを進める必要があります。
雇用保険被保険者資格取得届を提出することで、従業員は雇用保険に加入でき、さまざまな恩恵が受けられます。
1-2. 雇用保険被保険者資格取得届の提出が6カ月以上遅れる場合は遅延理由書が必要
遅延理由書が必要となる目安は、雇用保険被保険者資格取得届の提出が6カ月以上遅れる場合です。
ただし、遅延理由書の提出に関しては法的なルールはなく、実際にどれほどの遅れで遅延理由書が必要となるかはハローワークによって異なります。予め管轄のハローワークに確認しておくとよいでしょう。
1-3. 遅延理由書により2年前までさかのぼって被保険者資格を取得できる
雇用保険被保険者資格取得届の遅延理由書を提出した場合、最大で2年前までさかのぼって雇用保険の加入資格を取得できます。なお、給与から保険料が天引きされていた場合に限り、2年以上さかのぼって雇用保険の加入手続きが可能です。
ただし、2年以上さかのぼって雇用保険の加入手続きをおこなう場合、賃金台帳など補足資料の提出や遅延理由書とは異なる書類の作成が必要となります。
1-4. 雇用保険の加入申請は資格取得日の翌月10日までに済ませる
本来、雇用保険は、該当従業員が被保険者となった日の翌月10日までに加入申請を済ませなければなりません。たとえば、新規採用の場合は雇入れ日が雇用保険資格取得日となるため、入社翌月の10日までに手続きを済ませましょう。
なお、遅延理由書は義務を果たしていない企業に対する指導の意味も持つ書類です。企業には従業員を適切に雇用保険に加入させる義務があります。雇用保険の適用要件を満たす従業員を雇用する場合は、遅延理由書が必要にならないよう迅速に加入手続きをおこないましょう。
このように、雇用保険の加入申請が遅れると、必ず遅延理由書を提出しなければなりません。提出しなかった場合、従業員が困ってしまう以外にも、必要な社会保険に加入していないとして罰則を科される可能性があります。社会保険の手続きを誤ることのリスクは大きいため、社会保険手続きについてわからないことがある場合は解決しておきましょう。
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2. 雇用保険被保険者資格取得届の遅延理由書の書き方
ハローワークから遅延理由書の提出を求められた場合は、必要な事項を漏れなく記載することが大切です。ここでは、雇用保険の加入手続きが遅れた際に提出する遅延理由書の書き方を解説します。
2-1. 遅延理由書の書式は労働局のホームページで入手可能
遅延理由書の提出を求められた際は、各都道府県労働局のホームページからダウンロードできる専用の書式を使用するとスムーズに作成を進められるでしょう。一例として、東京ハローワークのホームページでは以下のリンクから遅延理由書の書式をダウンロードできます。
東京ハローワーク:雇用保険関係
なお、遅延理由書の書式に指定はなく、自作のフォーマットで作成しても構いません。ただし、その場合は必要事項が漏れなく記載されている必要があります。
2-2. 遅延理由書に記載すべき項目
延理由書に必ず記載しなければならない事項は下記の通りです。
- 宛名(管轄ハローワークの名称を正確に記載する)
- 被保険者名
- 被保険者の生年月日
- 資格取得日
- 被保険者番号
- 遅延理由
- 事業主の企業名
- 事業主の代表者名
- 事業主の所在地
- 宛名(管轄ハローワークの名称)
- 雇用保険被保険者資格届の内容(被保険者名、生年月日、資格取得日、被保険者番号)
- 遅延理由
- 事業所の詳細(企業名、代表名、所在地)
フォーマットを利用する場合には上記項目をすべて埋めれば問題ありません。自作の書式を用いる場合は、必ず上記項目が設けられ、記載されているかどうかを確認しましょう。
2-3. 遅延理由を書くときのポイント
遅延理由を記載する際に押さえるポイントは以下の2つです。
- 遅延理由は要点のみを簡潔に記載する。
- 再発防止策や謝罪の気持ちを表す文言を添える。
遅延理由は要点のみを簡潔に記載しましょう。「弊社事務処理上のミスのため」や「多忙による手続き失念のため」などの短い文言でも申請は通ります。遅延理由書としての体裁が整っていれば、遅延理由を細かく問われることはありません。
むしろ申請遅延の顛末を事細かに記載すると言い訳のように捉えられてしまい、ハローワーク担当者の心証を悪くさせる恐れもあります。
また、遅延理由と合わせて今後の再発防止策や、申請遅延に対する謝罪の気持ちを表す文言も添えておくと良いでしょう。自社の不手際により申請が遅れたことを素直に認め、以降の再発防止に努める姿勢が伝わる文章にまとめることが大切です。
2-4. 遅延理由書の書き方の例
遅延理由書の書き方の一例を紹介します。ハローワークから遅延理由書の提出を求められた場合は、以下の例を参考に書類を作成し、早急に提出しましょう。
3. 雇用保険被保険者資格取得届の遅延理由書に関する注意点
雇用保険被保険者資格取得届の遅延理由書を提出する場合、書類の作成以外もやるべきことがあります。ここで紹介する注意点を押さえ、従業員の雇用保険加入手続きを適切におこないましょう。
3-1. 未払いの保険料を納める
遅延理由書により雇用保険に加入した際は、過去にさかのぼって未払いの保険料を納めなければなりません。未払期間が年度をまたぐ場合は、労働保険料の修正申告も必要です。
3-2. 社内の雇用保険加入状況を確認する
従業員の雇用保険加入漏れが発覚した場合、他の従業員の雇用保険加入状況を改めて確認しましょう。雇用保険の加入では同時期に入社した従業員の申請をまとめて処理することも多く、他にも加入手続きが漏れている従業員がいる可能性が考えられます。
また、直近では2020年の10月に法改正が実施されており、雇用保険の適用範囲が従来よりも拡大されました。法改正のタイミングで雇用保険の加入漏れが発生するケースも見られるため、遅延理由書の提出を機に社内の雇用保険加入状況の見直すことが大切です。
3-3. 虚偽や大袈裟な表現はしない
遅延理由には、再発防止対策や謝罪の言葉を書くことが望ましいです。
しかし、できない対策や大袈裟すぎる謝罪の言葉は、担当者が不信感を持ってしまう恐れがあります。必ず実施できる対策や、遅れたことに対する謝罪の気持ちを記載しましょう。
3-4. 遅延理由書の提出期限はない
雇用保険被保険者資格取得届の遅延理由書には、提出期限はありません。従業員に被保険者資格が発生してから1年以上経過してから問題が発覚した場合でも、必ず遅延理由書を提出しましょう。
どのような状況でも雇用保険料を徴収していたことが証明できれば、被保険者資格を取得できる可能性があります。雇用保険被保険者資格取得届の遅れや提出忘れが発覚した場合は、できる限り早くハローワークに相談しましょう。
3-5. 2年以上遡る必要がある場合は資料を用意する
遅延理由書を提出すれば、従業員が雇用保険料を納めている場合に限り遡って被保険者資格を取得できます。ただし、遅延理由書のみで遡って加入資格を得られるのは2年までです。
2年以上前から雇用保険被保険者資格取得届が申請できておらず、その期間の加入資格を取得したい場合は、該当従業員から雇用保険料を徴収していたことを証明できる書類が必要です。
3-6. 雇用保険未加入には法的な罰則もある
雇用保険法では、雇用保険の届出を怠った企業や偽りの届出をした企業に対し、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則を定めています。
雇用主には従業員を雇用保険に加入させる義務がありますので、加入漏れが発覚した際は迅速に手続きを実施しましょう。
4. 雇用保険被保険者資格取得届の提出が遅れる場合は遅延理由書を作成しよう
遅延理由書は、雇用保険被保険者資格取得届の提出が6カ月程度遅れた場合に提出を求められる書類です。雇用保険は要件を満たす全ての労働者が加入する強制保険であり、雇用主は自社の雇用保険加入状況を適切に管理する義務があります。
雇用保険の届出が大幅に遅れた場合は遅延理由書を作成し、対象の従業員を必ず雇用保険に加入させましょう。