雇用保険被保険者資格取得届には、会社や従業員の情報に加えて、賃金についても記載が必要です。記載する賃金は雇用保険料に影響するため、間違いがあってはいけません。
本記事では、わかりにくい雇用保険被保険者資格取得届の賃金欄を、記入例と計算例を用いて解説します。
日給制や時給制で働く場合の計算方法や注意点もあります。ぜひ参考にしてください。
社会保険料の支払いは従業員の給与から控除するため、従業員が入退社した際の社会保険の手続きはミスなく対応しなければなりませんが、対象者や申請期限、必要書類など大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。
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目次
1. 雇用保険被保険者資格取得届の賃金欄の記入例

雇用保険被保険者資格取得届の賃金欄とは、雇用保険被保険者資格取得届の「10. 賃金(支払の態様ー賃金月額:単位千円)」の項目です。従業員を雇用した際に決めた賃金の支払い情報を記載します。
1-1. 支払の態様の記入例
支払の態様は該当する給与支払方法の番号を記載します。記入欄の右側にある「月給・週給・日給・時間給・その他」の中から、該当するものを選びましょう。
月給制の場合は1、週給制の場合は2、日給制の場合は3、時間給制の場合は4、1~4のいずれにも該当しない場合は5を記入します。
番号を記入する場所は、ハイフン(ー)の左側です。
1-2. 賃金月額の記入例
賃金月額は、週給制・日給制・時給制の場合でも月額の賃金を計算して記入します。
ここに記入する賃金には、通勤手当や住宅手当など、毎月一定の金額で支払われる手当は含んで計算します。月によって変動する残業や休日の割増賃金などは含まれません。計算方法は次項で詳しく解説しています。
金額は記入欄下の単位に合わせて千円単位で記入します。
月額賃金が25万円の場合は、百万の欄は0、十万の欄は2、万の欄は5、千の欄は0と記入するのが正しいです。
2. 雇用保険被保険者資格取得届の賃金欄の計算例

雇用保険被保険者資格取得届の賃金欄は、週給制・日給制・時給制などであっても、月額に換算して記入しなくてはいけません。
計算例を使って詳しく解説します。
2-1. 月給制の場合
月給制の場合は、基本的に給与内容をそのまま記入すれば問題ありません。しただし、通勤手当をまとめて支給している場合は、月額に換算する必要があります。
以下の条件を仮定して、計算してみましょう。
基本給:25万円 通勤手当:6ヵ月定期券で3万円 住宅手当:1万8,000円 |
【計算式】
基本給250,000円 + 通勤手当5,000円(30,000円÷6ヵ月) + 住宅手当18,000円=273,000円
【賃金欄の記入例】
1ー273
通勤手当や住宅手当のほかにも、支給している手当があれば追加します。
月給制の場合は計算がシンプルですが、まとめて支給している手当がある場合は、忘れずに1ヵ月分を算出したうえで加算しましょう。
2-2. 日給制の場合
日給制の場合は、1日の賃金と所定労働日数を用いて計算します。まとめて支給している手当がある場合は、月給制と同様に1ヵ月分に換算して加算します。
以下の条件を仮定して、計算してみましょう。
1ヵ月の所定労働日数:20日 日給:1万2,000円 通勤手当:6ヵ月定期券で3万円 住宅手当:1万8,000円 |
【計算式】
日給12,000円 × 所定労働日数20日 + 通勤手当5,000円(30,000円÷6ヵ月) + 住宅手当18,000円=263,000円
【賃金欄の記入例】
3ー263
日給と所定労働日数から、月額の賃金を求める必要があります。
休日出勤が想定される場合でも、必ず所定労働日数を基準に月額換算しましょう。
2-3. 時間給制の場合
時給制の月額賃金を求めたい場合は、1ヵ月の所定労働日数を用いて労働時間数を求めたうえで計算します。
以下の条件を仮定して、計算してみましょう。
1ヵ月の所定労働日数:20日 1日の労働時間:6時間 時給:1,400円 通勤手当:6ヵ月定期券で3万円 住宅手当:なし |
【計算式】
所定労働日数20日 × 1日の労働時間6時間 = 120時間(1ヵ月の労働時間数)
時給1,400円 × 1ヵ月の労働時間数120時間 + 通勤手当5,000円(30,000円÷6ヵ月)=173,000円
【賃金欄の記入例】
4ー173
残業やシフト変更が想定される場合でも、基準となるのは1ヵ月の所定労働日数です。
3. 雇用保険被保険者資格取得届の賃金欄に記入するときの注意点

雇用保険被保険者資格取得届を作成する際は、以下の点に十分に注意しましょう。
3-1. 月額賃金に含まれる手当と含まれない手当がある
雇用保険被保険者資格取得届の賃金欄に記入する金額は、基本給に各種手当を加算した金額です。
しかし、すべての手当を含むわけではありません。
賃金欄に含む手当は、毎月支払われるもので金額が固定されている手当のみです。通勤手当、住宅手当、役職手当などが該当します。
月によって変動する残業手当や休日出勤手当などは含みません。
また、賞与も変動する手当として扱う必要があるため、ある程度賞与の金額が決まっている場合でも除外しましょう。
3-2. すべての手当は月額に換算する
通勤手当は数ヵ月分の定期券代を計算して支給することが多いです。その場合は、必ず月数で割って月額換算したうえで計算しましょう。
通勤手当以外のものでも、数ヵ月分をまとめて支給する場合はすべて同様に月額換算してください。
3-3. ボールペンで記入する
雇用保険被保険者資格取得届は、数字を記入する欄が多く、書き間違いや書き損じをしやすいです。
そのため、修正しやすい鉛筆や消せるボールペンなどで書く人がいます。
下書きなら問題ありませんが、提出する際は必ず消えないインクのボールペンで清書しましょう。
なお、誤って記入した場合は訂正の手続きが必要です。二重線や訂正印を使って修正すると、機械で読み取れずに手続きが遅れてしまうため、不安な場合は下書きをしてからボールペンを使いましょう。
3-4. 提出期限を守る
雇用保険被保険者資格取得届の提出期限は、雇用した翌月の10日です。
たとえば、4月25日に雇用した従業員の雇用保険被保険者資格取得届は、5月10日までに提出しなくてはいけません。
入社が月末だった場合は、提出期限まであまり日数がありません。雇用保険被保険者資格取得届には、従業員の個人番号や生年月日などの情報も必要なため、用意が遅れると間に合わない恐れがあります。
入社時に必要な届出は雇用保険以外にもあるため、できるだけ早めに情報を集め、提出期限に間に合うようスケジュールを組む必要があります。
適切なスケジュールを組むには、入社時に必要な社会保険の手続きとその内容を把握しておくことが必要となるため、不安な方は当サイトで無料配布している「社会保険手続きの教科書」もご覧ください。資料では入退社時に必要な届出を網羅的に解説しているほか、社会保険の適用拡大についても解説しているため、もれなく手続きに対応したい方はこちらのフォームから資料をダウンロードしてご覧ください。
3-5. 電子申請には事前準備が必要
雇用保険被保険者資格取得届はe-Gov(イーガヴ)というシステムを使って、電子申請できます。
電子申請を利用する場合は、24時間任意のタイミングで申請ができます。ハローワークに出向いたり、郵送したりする手間がありません。
電子申請を利用すれば、提出期日の前日でも手続きが間に合います。しかし、初めて電子申請をする場合は、アプリケーションのインストールやアカウントの取得など、準備が必要です。
準備は時間がかかるものではありませんが、初めて電子申請をする場合は少し余裕をもっておいたほうが安心です。
4. 雇用保険被保険者資格取得届の賃金欄は月額換算して記入しよう

雇用保険被保険者資格取得届の賃金欄は、慣れていないと書き方に迷うポイントです。支払の態様は番号どおりに記入すれば問題ありません。
月額の賃金は月給制ならシンプルですが、日給や時給制だと計算する必要があります。本記事の計算例を参考に算出してみましょう。
また、賃金に含まれる手当と含まれない手当の違いにも注意してください。
わからない場合はハローワークに問い合わせ、正しく申請しましょう。