【最新】雇用調整助成金とは|新型コロナ特例措置をわかりやすく解説

新型コロナウイルスの感染拡大により発令されていた緊急事態宣言が解除され、活動を再開する企業が全国的に増えてきました。

これから始まるafterコロナ時代に向けて、すでに「雇用調整助成金」の申請をした企業の方も多いかもしれません。

本記事では、新型コロナウイルスによる特例措置により拡充された制度の中身や、支給額の計算方法、そして申請方法の流れをわかりやすく解説します。

申請期間も延長されているため、まだ申請が済んでいない方は本記事を参考に申請をご検討いただければ幸いです。

1. 雇用調整助成金とは

雇用調整助成金は、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、休業・出向・教育訓練を実施した際に、その費用を一部助成する制度です。

企業は、事業活動の縮小により売上の見通しが立たない状況でも、休業時には労働者に休業手当を支払わなければなりません。

しかし、これにより手元の資金が枯渇すれば、企業は倒産し、労働者の雇用を維持することができなくなってしまいます。

今回の雇用調整助成金の支給対象は、新型コロナウイルス感染症の影響で売上が下がり、従業員を計画的に休業させた(休業手当を支払っている)企業です。

新型コロナウイルスにより資金繰りに困る企業を救済するための制度と言えるでしょう。

休業手当とは
休業手当とは、会社都合で従業員を休業させた際に、法律で労働者への支払いが義務付けられている手当です。「賃金の3カ月平均の6割以上」を支払う必要があります。
(労働基準法第26条、同法第12条第1項)

2. 新型コロナウイルスに係る特例措置

参照:厚生労働省資料「雇用調整助成金ガイドブック(簡易版)
第2次補正予算案による制度拡充

2020年6月12日に第2次補正予算案が成立し、雇用調整助成金の制度拡充がおこなわれました。本記事でも、最新の情報に併せて記事を更新しています。

雇用調整助成金は、原則としてかかった費用の2/3(中小企業)~1/2(大企業)が補助される制度ですが、これまでにリーマンショックや東日本大震災の際に特例(助成率引き上げなど)が設けられることがありました。

今回も政府は2020年4月1日~9月30日(制度拡充により6月30日より延長)を緊急対応期間と位置づけ、新型コロナウイルス感染症に係る特例が設けられました。

今回は、多くの企業にとって、影響の大きい箇所に絞って詳しく説明します。

<1>助成率・日額上限額の引き上げ

雇用調整助成金は、会社が従業員に支払った休業手当に相当する額に、助成率を乗じて算出します。

この助成率が、特例措置により「中小企業は2/3から4/5」に、「大企業は1/2から2/3」に引き上げられています。

  変更前 変更後(解雇有) 変更後(解雇無)
中小企業 2/3 4/5

10/10

大企業 1/2 2/3 3/4

また、解雇をおこなわなかった場合、この助成率はさらに引き上げられ、中小企業は一律で10/10(制度拡充により引上げ)大企業は3/4となります。

また、雇用調整助成金の支給上限額は、1人1日当たり8,330円となっていましたが、制度拡充により15,000円まで引き上がりました。

これにより、パート・アルバイトに比べて給与単価が高くカバーしきれなかった正社員の休業手当に関しても、大部分をカバーできるようになります。

<2>申請手続きの簡素化

雇用調整助成金は、提出書類が多く複雑で申請に手間がかかることが問題点として挙げられていました。

中小企業や個人事業主の方の中には、必要となる書類をこれまでに作成していない場合も多く、申請を諦めてしまうケースも多く見られました。

しかし、特例措置に関する申請書類については、記載事項の約5割削減・大幅な簡略化、添付書類の削減がなされています。

提出書類は大幅に削減されているので、諦めていた方がいれば再度検討してみてください。また、以下2点も参考に、申請時には必要な書類をしっかり用意するようにしましょう。

1. 休業等計画届の提出は不要

これまでは、申請前に「何人の従業員が何日間休業するか」といったことを記載する「休業等計画届」を提出する必要がありました。

しかし、特例措置では事前の提出不要、特に5月19日以降の緊急対応期間中に限り、提出そのものが不要になりました。

2. 実際に支払った休業手当で助成額を算出

これまでは、助成額を算定するために、「前年度の賃金総額」「従業員数」「年間所定労働日数」などの数値を細かく記載し、従業員1人当たりの平均賃金額を算出しなければなりませんでした。

しかし、特例措置では、従業員20人以下の会社を対象に「実際に支払った休業手当額」をもとに助成額を算出できるようになりました。

<3>対象労働者の範囲が拡大|雇用保険の適用外であるアルバイトも対象に

従来は雇用保険被保険者の休業に限られていましたが、緊急対応期間中は雇用保険被保険者でない労働者(週所定労働時間20時間未満など)の休業にも、「緊急雇用安定助成金」として支給されることになりました。

そのため、助成金を受給する前に、従業員に先に休業手当を支払う必要がありますが、たとえアルバイトであっても、正社員と同じように休業手当を支払いましょう。

「コロナで仕事が減ったからバイトは全員休みで、休みだから時給は支払わなくても良い。」

これでは、従業員の生活が成り立ちませんし、たとえアルバイトでも休業手当の支給を義務づけた労働基準法に違反する可能性があります。

アルバイトの契約書に「週3日出勤」と書いてあれば、週3日分の休業手当が支給額になります。

また、契約書がなくても口頭で「週3日は出勤してほしい」というような指示や慣行が定着していれば、週所定労働日数3日として認められ、契約書があるのと同じです。

「貴重な人材」を新型コロナで失わないために。
解雇をおこなわない中小企業であれば、仮に休業した日の賃金全額を支給したとしても、その9割が雇用調整助成金として返ってきます。休んでいても賃金の全額が保証されているのであれば従業員も安心して休業することができます。
afterコロナに向けて事業を迅速に再開させたいのであれば、貴重な人材を失わないための手段として、少しでも多くの休業手当を支給し、雇用調整助成金を活用して後で取り返すことが大事になるでしょう。

3. 雇用調整助成金の計算方法|具体例:従業員14人の飲食業の場合

雇用調整助成金の具体的な計算方法についてご紹介します。

雇用調整助成金 計算方法
助成額は、「休業を実施した場合に支払った休業手当に相当する額」×「助成率」で算出します。

ここからは、雇用調整助成金が具体的にいくら支給されるのか、都内に2店舗を展開する飲食店を例に説明します。

<例>都内に2店舗を展開する飲食店:正社員2人(店長)とアルバイト12人(各店舗6人)

  • 正社員:月25日勤務、月給25万円(管理監督者なので残業代込み)
  • アルバイト:時給1,000円、日5時間×月12日勤務する契約(雇用保険適用除外)
  • 正社員もアルバイトも、給与は月末締めで、上記以外の手当はない(通勤手当その他諸手当込)
  • 東京都の休業要請を受けて休業した場合(解雇等はない)

このような会社で、休業期間中の給与を全額保証したとすると、従業員が受け取る休業手当の額は、次のようになります。

【休業手当の額】

  • 正社員:1万円/日(月給25万円÷月25日)
  • アルバイト:5,000円/日(時給1,000円×日5時間)

この会社は、東京都の休業要請を受けて休業している中小企業であり、かつ解雇等がないので、助成率は10/10が適用されます。

また、従業員20人以下のため、休業手当の特例も適用され、実際に休業手当を支払った額で助成金額を計算するので、雇用調整助成金の額は、次のようになります。

【雇用調整助成金の額】

  • 正社員:1万円/日
  • アルバイト:5,000円/日
つまり、中小企業の休業手当は「給与全額支給」がおすすめ!

中小企業は休業手当の9割~10割が雇用調整助成金として会社に戻ってきます。休業手当は、法律では平均賃金の「6割以上」とされていますので、「きっちり6割」支給する企業も少なくないかもしれません。
しかし、結局はその9割~10割が雇用調整助成金として会社に戻ってくるので、手間をかけて時間をロスするより、休業日の給与全額を保証したほうが、afterコロナの事業再開に不可欠な人材をつなぎとめることもできるでしょう。

4. 【提出書類チェックリスト付】雇用調整助成金の申請方法

雇用調整助成金の申請は、事業所の所在地を管轄する労働局かハローワークで受け付けてくれます。申請書類は以下のとおりです。

具体的な申請方法に関しては、厚生労働省の「雇用調整助成金ガイドブック(簡易版)」をご確認ください。

雇用調整事業所の事業活動の状況に関する申出書(様式新特第4号)
支給要件確認申立書・役員等一覧(様式新特第6号)
休業・教育訓練実績一覧表(様式新特第9号)
助成額算定書(様式新特第8号)
(休業等)支給申請書(様式新特第7号)
休業協定書
事業所の規模を確認する書類
労働・休日の実績に関する書類
休業手当・賃金の実績に関する書類

【支給申請に必要な書類】

申請期限は「支給対象期間」(休業する期間)の最終日の翌日から起算して2か月以内です。

しかし、申請対象期間の初日が1/24~5/31までの休業にかかる申請の期限は、特例により令和2年8月31日までとなります。

5.雇用調整助成金が抱える課題と活用時のポイント

雇用調整助成金を活用する上での課題や注意点について、まとめて説明します。

<1>緊急融資や給付金の活用も併用する

雇用調整助成金は、企業が従業員に休業手当を支払った後に助成金が支給されます。

助成金の申請から支給まで1~2カ月程度かかるといわれていますが、その間は立替払いのような状態になり、手元の資金に余裕のない会社には負担が大きくなってしまいます。

諸経費がかさむ一方で売上が減少の一途をたどると、休業手当を払えぬまま廃業・倒産に至ってしまうケースもあります。

手元の資金繰りについては、公的な金融機関(日本政策金融公庫:新型コロナウイルス感染症特別貸付)や民間の金融機関へ相談されるとよいでしょう。

国を挙げての緊急事態ですので、かなり間口を広げて融資がなされています。

また、雇用調整助成金以外にも「持続化給付金」として、中小企業向けに200万円を上限とした給付金も準備されています。

手元の資金に少しでも懸念がある場合は、上記の融資や給付金の活用をおすすめします。

<2>他の助成金を利用した方が良い場合もある

雇用調整助成金の助成率は、大企業だと2/3あるいは3/4となっているので、残りは会社が負担しなければなりません。

大企業といえど、先行きが見通せない状況で、なるべく負担を減らしておきたいところです。

たとえば、「小学校休業等対応助成金」は、新型コロナ感染症対策で小学校が休業した児童の保護者である労働者、あるいは、新型コロナに感染した児童等の保護者である労働者に給与全額支給の休暇(年次有休を除く)を付与した場合、その費用の10分の10が支給されます。

大企業や休業要請のない会社なら、こちらの助成金を申請したほうが、会社負担が少なくて済むかもしれません。

<3> 提出書類が多く大変でも、諦めずに専門家へ相談を

手続が大幅に簡素化されたとはいえ、中小企業の経営者にとっては作成どころか見たこともない書類も多くあります。

企業の中には、タイムカードや賃金台帳、就業規則がないところもあるかもしれません。そのような場合は、社会保険労務士など専門家の手を借りることも大事です。

余計な手間をかけず円滑に助成金申請できるようアドバイスがもらえます。

6.まとめ

雇用調整助成金は、政府が新型コロナ対策の柱として拡充を急ぐ施策です。

afterコロナを見据えつつ、今後の経営を安定させるために、雇用調整助成金を最大限活用することが重要となっています。

とくに中小企業では、事業再開に不可欠な人材をつなぎとめるための手段としても、休業期間中の給与全額を支給することが望ましいでしょう。

労働者の雇用をいかに守れるか、各企業の自力が問われています。

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