人事担当者向け|厚生年金の手続きやその他の年金の違いを解説 |HR NOTE

人事担当者向け|厚生年金の手続きやその他の年金の違いを解説 |HR NOTE

人事担当者向け|厚生年金の手続きやその他の年金の違いを解説

  • 労務
  • 社会保険

従業員を雇用する場合は、公的年金の一つである「厚生年金」に加入してもらう必要があります。

しかし、実際の加入条件や申請方法を詳細に把握していない人もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、人事担当者が知るべき厚生年金に関することやその他の年金について解説します。

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1.最初に把握しておきたい「公的年金制度」

厚生年金を知るうえでまず把握しておかなければいけないのが、「公的年金制度」です。

公的年金制度とは、現役世代が払った保険料を高齢者に給付する、「世代間での支え合い」の仕組みと厚生労働省では定義されています。

要するに、老後も安定した生活を送ってもらうために国が運営する年金制度です。

公的年金制度は国民年金と厚生年金の2種類に分かれます。

  • 国民年金
    原則として20歳~60歳未満の日本に住所があるすべての人が加入する。納付金額は一定。
  • 厚生年金
    会社員や公務員が加入する。給与額に応じて保険料額が異なる。

(※公務員は、以前は共済年金であったが、2015年10月に厚生年金に一本化)

また、公的年金は以下のように、職業別で加入できる制度が異なります。

被保険者の種別によって加入する制度や支払額も異なるので注意が必要です。各制度の支払額については次で説明します。

1-1 国民年金とは

国民年金とは、職業関係なく20~60歳未満の日本在住の方が加入する年金制度です。

納付金額

国民年金の納付金額は一定(2021年度時点では月16,610円)ですが、年々変化します。近年では納付金額が上昇傾向にあります。

また、「付加年金」といって定額保険料に上乗せして納めることにより、将来の受給金額を増やすことができる制度にも加入することができます。

第3号被保険者の納付について
上記の納付金額は、第1号、第2号被保険者に課せられる納付金額となります。第3号被保険者は異なり、自身での担はありません

受給金額

65歳から年金を受給することができます。受給金額は国民年金の加入期間によって異なりますが、平均的には月約55,000円となっております。また、1年間で受給できる上限が決まっており、2021年度では780,900円となっています。

また、国民年金の加入期間が10年以上ではないと受給することができないので注意が必要です。

1-2 厚生年金とは

厚生年金とは、公務員や民間企業に勤務している人が加入する年金制度です。

納付金額

厚生年金の納付金額は本人の所得によって異なります。標準報酬月額や標準賞与額に保険料率(現在は18.3%)をかけた額になります。

  • 月給に対する保険料=標準報酬月額×18.3%
  • 賞与に対する保険料=標準賞与額×18.3%

    ※標準報酬月額・標準賞与額とは?
    社会保険料の計算のために、報酬月額・賞与を区切りのよい幅で区分したもので、等級ごとに設定されている計算用の金額を指す。

また、厚生年金に関しては納付金額を労使で折半して負担することとなっています。

実際の納付額を計算したい場合は、日本年金機構の「ねんきんネット」で算出してみましょう。

受給金額

受給金額も、本人の所得や加入期間などによって異なります。平均の受給金額はおよそ145,000円となっています。厚生年金を受給する人は、この額にプラスして国民年金を受給することができます。

厚生年金も国民年金と同じで、原則として受給資格期間の合計が10年以上でないと受給することができないので注意が必要です。

加給年金とは
加給年金とは、厚生年金の被保険者期間が20年以上ある人が、65歳になったとき、その人に生計を維持されている配偶者や子がいれば老齢厚生年金に上乗せして支給される年金です。
支給金額や年齢制限などは「日本年金機構」のサイトを参考にしてください。

1-3 国民年金と厚生年金の違い

国民年金と厚生年金の違いをまとめると以下のようになります。

また、現役時代から引退後までの流れは以下の通りです。

引用:日本の公的年金は「2階建て」│いっしょに検証!公的年金│厚生労働省

1-4 私的年金について

私的年金とは、公的年金の上乗せの給付を保障する制度です。大きくは、企業が支給する「企業年金」と、個人単位でおこなう「個人年金」に分かれています。

企業年金の代表的なものとして、「企業型確定拠出年金」「確定給付企業年金」「厚生年金基金」があります。

一方の個人年金は「国民年金基金」「iDeCo/イデコ(個人型確定拠出年金)」などがあげられます。

企業型確定拠出年金(企業型DC)

企業が掛金を積み立て(拠出して)、従業員が自ら資金を運用する年金制度です。加入対象は、企業型確定拠出年金を導入している企業の従業員になります。

従業員は掛金をもとに、金融商品の選択や資産配分の決定などの運用をおこなうことができます。

確定給付企業年金(DB)

従業員が受け取る給付額があらかじめ決まっている企業年金制度です。企業側が運用をおこない、結果がマイナスになれば企業がその責任を追い、不足分を穴埋めします。

厚生年金基金

単独の企業または複数の企業によって運用される企業年金制度です。

自社とは別に、厚生労働大臣の認可を受けた法人である「厚生年金基金」を設立し、その法人が厚生年金の給付を代行しています(老齢厚生年金の一部を運用)。

企業の実態に応じて独自の加算分をプラスアルファとして給付する仕組みです。

※2014年厚生年金基金法の改正により、基金は実質的には廃止となっており、確定拠出年金・確定給付企業年金に代替されるようになってきています。

国民年金基金

国民年金基金とは、自営業者など国民年金の第1号被保険者の老後を支援する年金制度です。国民年金に上乗せして受給することができます。

国民年金しか受けられない人と厚生年金も受けられる人では、将来受け取る受給額が大幅に異なってしまうので、その状況を解消するために設けられました。

日本国内に居住している20~60歳未満の自営業者などの第1号被保険者および60~65歳未満の方や、海外に居住されている方で国民年金の任意加入されている方が加入できます。

詳しくはこちら:https://www.npfa.or.jp/system/about.html

第1号被保険者であっても加入できない方
以下の2つに該当する方は、第1号被保険者であっても加入することができません。
  • 国民年金の保険料を免除(一部免除・学生納付特例・納付猶予を含む)されている方
  • 農業者年金の被保険者の方

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCoとは、公的年金に上乗せして給付を受けられる任意加入の私的年金制度です。加入の申込、掛金の拠出などすべて加入者本人でおこなう必要があります。

国民年金基金や企業年金とは違い、加入対象者は公務員や専業主婦など、ほとんどの人が加入できます。

詳しくはこちら:https://www.ideco-koushiki.jp/

参考までに、これまで紹介した年金について表にまとめると、以下のようになります。

引用:日本の公的年金は「2階建て」│いっしょに検証!公的年金│厚生労働省

2.厚生年金について詳しく解説

本章では公的年金の中の厚生年金について詳しく解説します。

2-1 3種類の厚生年金

厚生年金は細かく分類すると、「老齢厚生年金」「障害厚生年金」「遺族厚生年金」の3つに分類されます。

老齢厚生年金

老齢厚生年金は、厚生年金保険の加入者が65歳から受給できる年金です。一般的な厚生年金といえば、老齢厚生年金を指していることがほとんどです。

また、受給資格を満たしている場合は、60歳から65歳までも支給される「特別支給の老齢厚生年金」を受給することができます。

詳しくはこちら:https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/LK03.pdf

「特別支給の老齢厚生年金」の受給資格
以下のすべての条件を満たしていれば受給することができます。
  • 老齢基礎年金を受け取るために必要な資格期間を満たしていること
  • 厚生年金保険の加入期間(共済組合加入も含む)が1年以上あること
  • 受給開始年齢を満たしていること

障害厚生年金

障害厚生年金は、厚生年金に加入している間に、病気やケガなどによって何らかの障害を持ってしまったときに受給できる年金です。障害年金に該当する状態として1級から3級まで分かれています。

詳しくはこちら:https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-02.html

遺族厚生年金

遺族厚生年金は、厚生年金を加入している被保険者が亡くなってしまった場合、遺族が受け取ることのできる年金です。受給要件や受給対象者は細かく指定されているので、よく調べるようにしましょう。

詳しくはこちら:https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html

2-2 厚生年金の加入条件

事業所が厚生年金に加入する場合と、被保険者が加入する場合で分けて解説します。

適用事業所

強制適用事業所

厚生年金の適用事業所となるのは、法人の事業所(株式会社や事業主のみの場合も含む)です。

また、個人の事業所においても、従業員が常時5人以上いる場合には適用事業所となります(サービス業や農林漁業などは除く)。

厚生年金未加入の罰則について
強制適用事業所であるのにも関わらず、正当な理由もなく加入手続きをおこなっていない場合、6か月以下の懲役、または50万円以下の罰金が科せられます。
任意適用事業所

強制適用事業所以外であっても、従業員の半数以上が厚生年金の適用事業所になることに同意し、厚生労働大臣の認可を受けることができれば、適用事業所となることができます。

被保険者

被保険者

厚生年金の適用事業所で常時雇用されている70歳未満までが対象となります。国籍や年齢に関係なく厚生年金の被保険者となります。

パートやアルバイトなど

パートやアルバイトなどであっても、1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が正社員の4分の3以上である場合は被保険者になります。

また、1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が正社員の4分の3未満である場合も、以下の5つを満たしていれば被保険者になります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上あること
  • 雇用期間が1年以上見込まれること
  • 賃金の月額が8.8万円以上であること
  • 学生でないこと
  • 特定適用事業所または任意特定適用事業所に勤めていること(国、地方公共団体に属する全ての適用事業所を含む)

3.人事が知るべき厚生年金に関する手続き

本章では、適用事業所になるための申請手続きと、従業員を雇用した際の被保険者に関する手続きについて解説します。

3-1 適用事業所申請に関する手続き

新規適用申請の手続き

適用条件を満たした日から5日以内に「新規適用届」を事務センター(事業所の所在地を管轄する年金事務所)に提出しなければなりません。提出方法は、電子申請、郵送、窓口持参の3つがあります。

また、添付書類は事業所の種類によって異なります。

  • 法人事業所の場合

法人(商業)登記簿謄本(コピー不可)

  • 事業主が国、地方公共団体または法人である場合

法人番号指定通知書等のコピー

  • 強制適用となる個人事業主

事業主の世帯全員の住民票(コピー不可・個人番号の記載がないもの)

法人(商業)登記簿謄本及び住民票(コピー不可・個人番号の記載がないもの)は、提出日から遡って90日以内に発行されたものをご提出しなければなりません。

詳しくはこちら:https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150311.html

任意適用申請の手続き

従業員の半数以上の同意後、すみやかに「新規適用届」を事務センター(事業所の所在地を管轄する年金事務所)に提出しなければなりません。

提出方法は、新規適用申請と同様に、電子申請、郵送、窓口持参の3つがあります。

また、添付書類は以下の3つがあります。

  • 任意適用同意書
  • 事業主世帯全員分の住民票(コピー不可・個人番号の記載がないもの)
  • 以下の5種類の公租公課の領収証(原則1年分)(コピー可)
     ・所得税(国税) ・事業税(道府県税) ・市町村民税(市町村税) ・国民年金保険料 ・国民健康保険料

詳しくはこちら:https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150310.html

3-2 被保険者に関する手続き

入社時の手続き

従業員の入社から5日以内に、「被保険者資格取得届」を事務センター(事業所の所在地を管轄する年金事務所)に提出しなければなりません。提出方法は、電子申請、郵送、窓口持参の3つがあります。

詳しくはこちら:https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha1/20150422.html

退職時の手続き

従業員が退職した場合には、資格喪失日から5日以内に、「被保険者資格喪失届」を事務センター(事業所の所在地を管轄する年金事務所)に提出します。

*資格喪失日とは退職日の翌日を意味します。

本章では、厚生年金の入退社時の手続きに関して解説してきましたが、入退社時の社会保険手続きはほかにも種類があり、提出期限が異なるものがあるため、担当者は期限を守った業務遂行を求められます。

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詳しくはこちら:https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha1/20150407-02.html

 

各種届出書類はこちらからダウンロードしてください。

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4.まとめ

日本にはさまざまな種類の年金が存在するので、企業も申請など多くの工数がかかります。

そのため、しっかり各種対応の違いを把握し、「従業員が加入をしていなかった」などのトラブルが起こらないようにしましょう。

書類の申請や労務管理を書類でおこなっている企業は、デジタルツールを活用し、作業効率の向上や間違い防止に努めてみるのも一つの手かもしれません。

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