近年、働き方改革に伴い勤怠管理の重要性が高まっています。
改正労働安全衛生法では、客観的な労働時間の把握が義務付けられるようになりましたが、「なぜ勤怠管理において、客観的記録が求められているのか?」「どのような方法で客観的な勤怠管理をおこなうのか?」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、客観的記録を用いた勤怠管理が求められている背景や注意点について解説します。
数多くある勤怠管理システムの中から、自社に見合うシステムを探す際、何を基準にして選べばいいのか、悩まれる方も多いのではないでしょうか。
そのような方のために今回、社労士監修のもと、「勤怠管理システムの比較表」をご用意いたしました。資料には以下のことがまとめられています。
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目次
1. 勤怠管理の客観的記録が求められる背景
ここでは、勤怠管理の客観的記録が求められる背景について解説します。
1-1. 従来は労働時間の管理があいまいだった
2019年以前では、労働時間の管理が非常にあいまいでした。
その理由として、まだ36協定に罰則付きの上限規制がかけられていなかったことや、法的に労働時間を取り締まるという風潮が弱かったことなどが挙げられます。
労働時間の管理があいまいだったことが影響して、長時間労働や過労死が社会的に問題となりました。その結果、「働き方改革」の一環として、36協定に罰則付きの上限規制が設けられるなど、労働時間の管理に関しての法整備が現在進められています。
1-2. 労働時間の客観的な把握が義務化!
「働き方改革」が推進されていくなかで、2019年4月に労働安全衛生法が改正され、労働時間の客観的な把握が義務化されました。
このような背景があり、各企業の勤怠管理において客観的記録が求められています。
客観的記録の身近な例としては、ICカードによる打刻や、PCの使用時間による記録などが挙げられます。第三者から見ても、納得できる勤怠管理が客観的な把握になります。
ここからは、より具体的に客観的な勤怠管理が求められる対象者について解説します。
2. 客観的な勤怠管理が求められる対象者とは?
客観的な勤怠管理が求められる対象者は、勤怠管理をおこなうべき全ての従業員です。
以前までは、「管理監督者」と「裁量労働制が適用されている従業員」は適用外でした。しかし現在では、法改正により、これらの従業員にも客観的な勤怠管理が求められるようになっているため注意が必要です。
3. 客観的に勤怠管理をおこなう場合の注意点
ここでは、客観的に勤怠管理をおこなっていくうえでの注意点を3つ解説します。
3-1. 出退勤時刻の確認・記録をおこなう
1つ目の注意点は「出退勤時刻の確認・記録をおこなう」です。
企業には従業員の労働時間を客観的に把握し、労働時間管理上の問題点を把握・解消に努めることが求められています。そのため、ただ1日の労働時間を把握するのではなく、労働日ごとの出退勤の時間を記録し、それを基に労働時間を把握する必要があります。
3-2. 勤怠管理の記録は3年間保存する必要がある
2つ目の注意点は「勤怠管理の記録は3年間保存する必要がある」です。
ここでいう勤怠管理の記録とは、始業・終業時刻まで記録した出勤簿やタイムカード、残業命令書など多岐にわたります。企業はそれぞれの書類に最後に記載された日を起算日として、勤怠記録を3年間保存する必要があります。
3-3. 自ら従業員が労働時間を申告するのは原則NG
3つ目の注意点は「自ら従業員が労働時間を申告するのは原則NG」です。
従業員の自己申告によって労働時間を把握する方法は、あいまいな労働時間管理になってしまう可能性が高いため、原則禁止されています。そのため、企業内の労働時間管理の担当者が、直接従業員の労働時間を確認することが求められています。
しかし、やむを得ず自己申告で労働時間を管理しなければならないケースもなかにはあるでしょう。その場合の対応について次項で解説します。
4. やむを得ず、自己申告で労働時間を把握する場合の対応は?
やむを得ず、従業員の自己申告によって労働時間を管理する場合は、下記3点を意識するようにしましょう、一つひとつ、順番に解説します。
4-1. 事前に従業員に自己申告制について説明する
1つ目は「事前に従業員に自己申告制について説明する」です。
自己申告制による労働時間管理を導入する前に、自社の従業員に対し「適正な労働時間を申告することの重要性」を説明しましょう。従業員によっては、申告後の企業側の対応を恐れて、正しく労働時間を申告することに抵抗を覚える従業員もいます。そのため、適正な申告をおこなったとしても、従業員に不利益は無いということを周知する必要があります。
4-2. 必要に応じて、労働時間の真偽を調査する
2つ目は「必要に応じて、労働時間の真偽を調査する」です。
自己申告によって労働時間管理をおこなっていくなかで、従業員が申告した労働時間と実際の労働時間に相違が見られることがあります。そのような場合は、該当する従業員に確認するなど、実態調査をおこなう必要があります。
また、合致しなかった場合だけでなく、定期的に申告した労働時間と実労働時間に相違がないか確認を取ることが望ましいです。
4-3. 従業員が適正に申告できる環境をつくる
3つ目は「従業員が適正に申告できる環境をつくる」です。
企業によっては、労働時間の削減のために時間外労働に一定の上限を設け、その上限を超えて時間外労働をおこなった従業員の賞与を減額するといった規則を設けていることもあります。このような場合、従業員が適正に労働時間を申告することに抵抗を覚えてしまい、客観的な勤怠管理をおこなうことができません。
従業員の自己申告による勤怠管理をおこなう場合は、従業員が適正に申告できる環境づくりを心掛けましょう。
ここまで、やむを得ず自己申告で労働時間を把握する場合の対応について解説しました。
自己申告による勤怠管理は、労働時間の管理があいまいになってしまう可能性が高いため、できる限り客観的な労働時間管理ができる環境をつくりましょう。
5. 客観的な勤怠管理を効率化するツール
ここでは客観的な勤怠管理をするうえで役立つ、効率化ツールについて解説します。
5-1. タイムカード
1つ目に紹介する効率化ツールは「タイムカード」です。
客観的に勤怠管理をおこなうためには、従業員の出退勤の時間が記録された客観的記録が必要になります。その点、タイムカードは操作がシンプルで使いやすいため、客観的な勤怠管理に取り組もうと考えている企業におすすめです。
ただ、労働時間の集計業務を手入力でおこなう必要があるため、入力ミスが発生するリスクがあります。
5-2. 勤怠管理システム
2つ目に紹介する効率化ツールは「勤怠管理システム」です。
勤怠管理システムであれば、スマートフォンやパソコン、ICカードなど多様な打刻方法があるため、労働環境を把握しづらい業種においても、正しく労働時間管理をおこなうことが可能です。
また、勤怠管理と給与計算が連動しているため、集計作業による入力ミスが発生することも無く、簡単に客観的記録を用いた勤怠管理をおこなうことができます。
6. 客観的な勤怠管理を実現し、法令に遵守した職場づくりを!
本記事では、客観的記録を用いた勤怠管理をおこなう事が求められている背景や注意点について解説しました。客観的記録を用いて勤怠管理をおこなうことは、適正な労働時間を把握し、結果として、従業員の長時間労働を防ぐことにつながります。
今回の記事の内容を踏まえて、客観的な勤怠管理を実現し、法令に遵守した職場づくりを心掛けましょう!