時短勤務は育児や介護などと仕事を両立する従業員の労働時間を短くすることができる制度です。時短勤務導入は事業主に義務付けられており、条件を満たす従業員が時短勤務を希望する場合は対応しなければなりません。本記事では、法律に定められている時短勤務の対象や条件についても解説します。
目次
1. 法律で定められた時短勤務制度とは
2009年の育児・介護休業法の成立により、企業が条件を満たした労働者に対して時短勤務の導入をすることは義務化されています。育児・介護休業法は名前のとおり、育児や介護をおこなう必要のある労働者の、仕事との両立を目指して定められた法律です。
育児・介護休業法は、少子化対策や女性の活躍促進、高齢化社会における介護対策、雇用の安定化を目的として制定されました。この法律は「育児のための支援制度」「介護のための支援制度」「共通する支援制度」の3つが盛り込まれており、時短勤務は「共通する支援制度」として位置付けられています。
2009年に時短勤務の導入が義務化された際は、従業員が101人以上いる事業主を対象に義務付けられました。その後2012年に法改正がおこなわれ、従業員100人以下の事業主にも時短勤務の導入が義務付けられ、実質すべての事業主の義務となっています。
また、残業を免除する制度も導入され、育児や介護が必要な従業員が働きやすい配慮をおこなうことが求められています。
1-1. 時短勤務の概要
時短勤務とは、具体的には1日の労働時間を原則6時間に短縮して働くものです。時短勤務制度の利用条件を満たした従業員が希望すれば企業は時短勤務をさせる義務があり、一部の例外を除いて拒否できないと定められています。
ただし、従業員が6時間以外での時短勤務を要望した場合や利用可能期間外で時短勤務を希望した場合は、時短勤務をさせるかどうかを企業が決めることができます。
1-2. 時短勤務の給与
時短勤務中は労働時間が短くなるため、ノーワークノーペイの原則に基づき、給与も減らす場合が多いです。トラブルを防ぐために、時短勤務の場合の給与に関する規定を就業規則に定めておきましょう。
就業規則に定めたうえで労働時間が短くなった分給与を下げること自体には問題ありません。ただし、時短勤務になったからといって、短くなった労働時間分以上に不当に給与を下げることは禁止されています。
また、固定残業代制の企業で、時短勤務中に残業が発生しない場合は固定残業代を支給しないということも可能です。ただし、こちらも就業規則への記載をする必要があります。
2. 時短勤務制度を利用するための条件
従業員が育児や介護と仕事を両立できる環境整備を目的として制定された時短勤務制度ですが、時短勤務制度を利用するためには、一定の条件があります。
2-1. 育児時短勤務制度の条件
育児時短制度は男性でも女性でも利用できる制度ですが、法律では3歳未満の子どもを養育していることに限定されています。
育児時短勤務制度を利用するための条件は以下のとおりです。
- 1日の所定労働時間が6時間超であること
- 日雇い労働者ではないこと
- 育児休業中ではないこと
これに加えて、労使協定によって以下の3つの条件を満たす場合は時短勤務の適用除外とすることが可能です。
- 当該事業主に引き続き雇用された期間が1年未満であること
- 1週間の所定労働時間が2日以下であること
- 制度の適用が困難な業務に従事していること
ただし、このうちの「制度の適用が困難な業務に従事している」場合は、代替措置にて対応する義務があります。
代替措置は以下のものがあります。
- 育児休業制度に準ずる措置
- フレックスタイム制度
- 時差出勤制度
- 事業所内に保育施設を設置(これに準ずる対応でも可)
2-2. 介護時短勤務制度の条件
介護時短勤務制度は、要介護の家族を持つ従業員が利用できる制度です。性別にかかわらず利用できます。要介護とみなされるのは、2週間以上の常時介護が必要な状態です。
介護時短勤務制度の利用を希望する従業員に対して、原則利用を認めなければなりませんが、労使協定がある場合、以下の条件を満たす従業員を時短勤務の適用除外をすることができます。
- 勤続年数1年未満である
- 週の所定労働日数が2日以下である
ただし、企業が介護をおこなう必要がある従業員を支援する方法は、時短勤務制度以外の措置でも良いことになっています。場合によっては長く続く介護をしながら、仕事を無理なく続けられるよう、以下の中から1つ選択できます。
- 時短勤務
- フレックスタイム制度
- 時差出勤制度
- 介護サービス費用の補助
2-3. 企業独自の時短勤務制度を設けていることも多い
法律で時短勤務制度を利用できる条件は決まっていますが、独自の時短勤務制度を設けている企業も多くあります。
働きやすい労働環境の整備や人材不足を解消する取り組みとして、育児時短勤務を小学校就学前まで認めている企業や、小学校卒業まで認めている企業などもあります。
時短勤務制度は法律で定められている部分を守れば、それ以外の部分は企業の裁量で決めることができます。
時短勤務制度を含め、多様な働き方ができる会社であることは、育児や介護、通院などをしており、柔軟な働き方を希望する人たちに、自社のアピールをすることにもつながります。業務の内容やフルタイムの従業員との兼ね合いも含めてどのように時短勤務を設定するか、しっかり検討してみましょう。
自社での時短勤務制度の詳細が決まったら、就業規則に記載し、全従業員への周知徹底が必要です。
3. 時短勤務制度に関する法律違反をしたときの罰則はある?
時短勤務制度に関して、法律違反をした場合は、ただちに罰則があるわけではありません。育児・介護休業法は労働基準法とは異なり、違反することによる罰則はありません。しかし、是正をするように労働局から助言、指導、勧告を受けたにもかかわらず従わない場合は、企業名が公表されます。そのうえで、報告を怠る、もしくは虚偽の報告をすると20万円の過料が科されることになります。
まずは、法律で定められた時短勤務制度を正しく運用し、もし誤って不適切な扱いをしてしまっていた場合は、助言、指導、勧告に基づいてすみやかに改善をおこないましょう。
4. 時短勤務導入は企業の義務!必要に応じて対応しよう
育児や介護を理由として時短勤務を希望する従業員への対応は、企業がおこなわなければならない義務です。事業所の規模や業務内容によって対応できない場合は、代替措置をとらなければなりません。
少子高齢化が進む今、時短勤務への柔軟な対応は、人材の定着や新しい人材の確保に直結します。企業でどのように対応するのか検討し、スムーズな導入を目指しましょう。
【監修者】小島章彦(社会保険労務士)
大学卒業後、某信用金庫にて営業と融資の窓口業務に関わる。 現在は、某システム開発会社に勤務。 会社員として働きながら、法律系WEBライターとして人事労務関係や社会保険関係のライティングを4年半以上行っている。 また、金融知識を生かした金融関係のライティングも含め、多数の執筆案件を経験している。 その他保有している資格は、行政書士、日商簿記3級など。