近年ではOKRや360度評価、ノーレイティング、バリュー評価といった特徴的な人事評価制度を取り入れる企業が増加しています。複数の人事評価制度を運用し、人材育成や生産性向上につなげる例も多いものです。
本記事では、人事評価制度の具体的な導入事例を紹介します。また、人事評価を成功させるコツについても解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. 人事評価制度の導入事例7選
人事評価とは、従業員の働きぶりや貢献度などを評価し、昇給や昇進、人事異動を決定する制度です。人事評価の運用方法を工夫すれば、従業員のモチベーションアップや生産性向上につなげることも可能です。
ここでは、特徴的な人事評価制度を導入している事例を7つ紹介しますので、制度を設計・導入する際の参考にしてください。
1-1. アドビシステムズ株式会社の事例
グラフィックデザインソフトウェア開発をおこなうアドビシステムズ株式会社ではかつて、部下をランク付けする人事評価制度を採用していました。しかし、ランク付けする人事制度に対する不満が溜まりやすかったことから、新たにチェックイン制度を導入しました。
具体的には、従業員のランク付けを廃止し、面談や対話の内容をもとに、パフォーマンスに基づいた評価を実施しています。同社ではチェックインの面談は四半期に一度おこなわれ、目標に向けたビジョンを話し合う貴重な場となっているそうです。丁寧な面談により、従業員の納得感や満足度も大きく改善しました。[注1]
[注1]チェックイン(アドビがどのように優れたパフォーマンスを刺激し続け、キャリアの成長をサポートしているか)|Adobe
1-2. 株式会社ディー・エヌ・エーの事例
モバイルゲーム開発や電子商取引サービスを扱う株式会社ディー・エヌ・エーでは、マネージャーによる360度評価が実施されています。一般的に360度評価は無記名でおこなわれますが、同社ではあえて名前を公表し、フィードバックにつなげているそうです。
そのほか、業務時間のうち、最大30%まで別の部署の業務を経験できる「クロスジョブ制度」や、社員本人が異動を希望した際、受け入れる部署の本部長が同意した際に異動が叶う「シェイクハンズ制度」などの施策をまとめ、「フルスイング」という人事プロジェクトとしています。[注2]
[注2]DeNAが仕掛ける人事プロジェクト「フルスイング」とは|その具体的施策や事例をご紹介!|HR NOTE
1-3. GMOインターネット株式会社の事例
インターネット関連事業を手掛けるGMOインターネット株式会社は、360度評価を基本とした人事評価制度を活用しています。
上司・部下・部署の隔たりなく多面的に評価することで、社員一人ひとり、また組織の課題を浮き彫りにして改善につなげているそうです。
また、2020年より人事制度を一新しました。「やりたい人が自分から手を挙げられる仕組みであること」「報酬が見える化されていること」などを基本方針として、社員がチャレンジしやすい環境を目指しています。[注3]
[注3]ESGの取り組み(社 会)|GMO INTERNET GROUP
1-4. 株式会社メルカリの事例
フリーマーケットアプリの運営を手掛ける株式会社メルカリは、2021年2月に人事評価制度をアップデートしています。評価の大きな考え方自体は従来のままとしながら、同社ではさらに、グループとして社員に期待している「貢献の内容」を明確にし、評価や昇格の判断材料としました。
具体的には、「成果評価」と「バリューに対する行動評価」で評価のポイントを分けています。10段階のグレードを設け、該当するグレードで成果を達成できれば成果を出せたとしてボーナスに反映し、あわせて、グループが定めるバリューを発揮し、実践できたと評価されると昇給に反映つながるそうです。[注4]
[注4]メンバーの活躍を“大胆に”報いる──大幅アップデートされたメルカリ人事評価制度の内容と意図|メルカリ
1-5. カルビー株式会社の事例
人気菓子メーカーであるカルビー株式会社では、2012年からノーレイティングの仕組みを採用して、人事評価制度を一新しました。ノーレイティングとは、ランク付をせず、1on1ミーティングなどを通して目標設定やフィードバックをおこなう評価方法のことです。
従来は、職能資格制度やスキル評価制度を用いて待遇を決定しましたが、会長兼CEOが変わったタイミングで成果主義に変更しました。同社では、1on1ミーティングを頻繁におこない、部下とマネージャーが会話をして目標や評価を決定しています。成果によっては、賞与が大幅に増えたり昇給できたりするケースもあるようです。
1-6. Chatwork株式会社の事例
ビジネス向けコミュニケーションツールを提供しているChatwork株式会社では、OKRとバリュー評価による評価を実施しています。従来はMBOによる評価を取り入れていましたが、人数が増えたことにより、従業員ごとの状況を把握しきれなくなったため新しい評価制度に変更しました。
OKRの達成率だけではなく、どのようにチャレンジしたかを評価することが、同社の大きな特徴です。高い評価を得るために簡単な目標設定をしてしまうことを防ぎ、従業員のチェレンジ精神を育てています。
1-7. 岡山県高梁市の事例
岡山県の中西部に位置する高梁市では、360度評価を活用して従業員を評価しています。直属の上司だけではなく、部下や同僚などの視点からも評価をすることで、従業員の能力や働き方を多角的に評価しています。
同市が360度評価を導入したきっかけは、管理職の成長を促すことでした。部下や同僚から評価されることで刺激を受けたり、自分のマネジメント能力を客観視してもらったりするために、新しい評価制度を導入したのです。360度評価は、評価制度への納得感を高めるうえでも役に立っています。
ここまで多くの事例を紹介しましたが、どの評価方法が自社にあっているのか悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。
そのような方に向けて当サイトでは「人事評価の手引き」という資料を無料配布しており、各評価指標のメリット・デメリットや、各評価指標を採用した際の起こりやすいトラブルも紹介しています。自社の企業理念や経営戦略をふまえた上での、人事評価選定の参考になる内容となっており、人事評価を導入する際のマニュアルとしても活用できます。資料はこちらから無料でダウンロードできますので、ぜひご覧ください。
2. 事例から学ぶ!人事評価制度の導入を成功させるポイント
せっかく人事評価制度を導入しても、自社の雰囲気と合わなかったり運用に負担がかかったりといった問題が起きてしまうと、制度の効果も下がってしまいます。
ここからは、各企業の事例をもとに、人事評価をうまく運用するためのポイントを探っていきます。
2-1. 無理なく運用できる制度を選ぶ
人事評価にはさまざまな手法がありますが、自社に合わない制度を導入すると思ったような効果が見込めないまま終わってしまいます。
とくに気をつけたいのは、運用のフローや工数が多すぎるケースです。効果的とされる人事評価制度を導入したものの、運用工数が多く、思ったように機能しなくなっては意味がありません。
人事評価制度を取り入れるときには社内のリソースをチェックし、無理なく運用できるタイプのものを選びましょう。
2-2. 企業の理念や経営戦略に合った制度を選ぶ
企業の理念や目的と関係ない制度を取り入れても、経営戦略の達成には至りません。人事評価の際には、企業の理念や経営戦略との紐付けを意識しましょう。
経営者と人事部がうまく連携していない場合、適切な人事評価制度が導入されないリスクも高まります。重要なのは、人事評価制度を取り入れる目的や重視するポイントを明確にしておくことです。
2-3. 評価基準を明確に定めておく
評価基準を明確に定めておくことも重要なポイントです。評価の基準が定まっていない状態で制度を運用すると、評価内容の公平感が損なわれます。すると従業員の納得度が下がり、フラストレーションが起きやすくなってしまいます。
人事評価では、数値で明確に判断できる項目を用意しておくのが安心です。数値化できない基準については、客観的な判断基準を提示するなどの方法で柔軟に対処しましょう。
2-4. 従業員に評価制度について周知する
人事評価制度を導入するなら、従業員へ周知しておくことが大切です。評価項目や評価基準などをできる限り具体的に伝え、制度について理解してもらいましょう。
どのような点を評価されるのか、どのような基準で評価されるのか、といった点を従業員へ伝えておけば、取るべき行動が明確になります。努力の方向性が明らかになるため、従業員の足並みが揃うことも期待できるでしょう。
3. 人事評価制度を導入するときの注意点
人事評価制度を導入するときは、以下のような点に注意しましょう。
3-1. 他社の事例を真似しすぎず自社の状況に合わせる
前述の通り、人事評価を実施するときには、現場が負担を抱えないような制度を選ぶことが大切です。運用に時間や手間がかかるような制度は避け、負担なく運用できる環境を整えましょう。
他社でうまく運用できている評価方法だからといって、自社に合うとは限りません。この記事で紹介したような事例を参考にすることは大切ですが、真似しすぎず、自社の状況に合わせることが重要です。
3-2. 評価エラーに注意する
人事評価は人がおこなう以上、評価エラーが起きる可能性もあります。また、イメージによる主観が入り、適切に評価ができないケースも少なくありません。こういったエラーを考慮し、なるべく公正な評価ができるよう制度をブラッシュアップしたいものです。
3-3. システムを活用して効率化する
専用のシステムを活用して、人事評価を効率化するのもよい方法です。とくに従業員数の多い企業においては、評価結果の集計や分析に手間がかかるケースも多いでしょう。
さまざまな機能が搭載された専用ツールを上手に活用すれば、現場に負担をかけず、効率よく人事評価を実施できるようになります。
4. 人事評価制度の先行事例を参考にして適切な制度を取り入れよう
企業の特色に合う人事評価制度を取り入れることで得られる効果は、人事評価の効率化や効果的な人材育成、モチベーションアップなどさまざまです。近年注目されている人事評価制度を上手に活用し、業績アップを目指したいものです。
ただし、自社に合っていない制度を採用しても十分な効果は見込めません。経営戦略に合っているか、無理なく運用できるかといった点を見極め、最適な人事評価制度を選びましょう。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。