変形労働時間制を採用している現場で、想定外の事態が発生し、現行のシフトでは都合が悪くなる事態は少なくありません。そのようなときの対応方法を知って、トラブルが発生しないように備えましょう。
本記事では変形労働時間制のシフト変更の方法や注意点について詳しく解説します。
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変形労働時間制は通常の労働形態と異なる部分が多く、労働時間・残業の考え方やシフト管理の方法など、複雑で理解が難しいとお悩みではありませんか?
そのような方に向け、当サイトでは変形労働時間制の基本やシフト管理についてわかりやすくまとめた資料を無料で配布しております。
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目次
1. 変形労働時間制におけるシフトとは
変形労働時間制におけるシフトとは、変更期間中の始業時間と終業時間(就業時間帯)のことをいいます。
労働基準法を守ったうえで、シフトの内容は自由に決められますが、一度決めると原則として変更ができないものです。しかし、さまざまな理由により、ある程度の変更が認められるケースがあります。
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2. 変形労働時間制のシフト変更は原則不可能
変形労働時間制のシフト変更は原則不可能です。変形労働時間制とはそもそも繁忙期、閑散期の業務量の変化にあわせて、シフトを組むことです。変形労働時間制を導入する場合、対象期間における労働日及び当該労働日ごとの労働時間を特定することが必須となるため、労働時間を変更するシフト変更はできません。ただし、特例として以下のケースではシフト変更が認められています。本章では、シフト変更ができるケースを2点紹介します。
2-1. 正当な理由があればシフト変更ができる
災害や機械の故障、事故をはじめとした、突発的で不可避なトラブルが発生し、それに対応するためのシフト変更は認められるケースが多いです。
加えて、業務の大幅な変更や会社の統合など、事業内容や個々の業務内容に大きな変化が発生した際も、やむを得ない事態として認められます。
この“正当な理由”は法的に明確な定めがあるわけではありません。そのため、前述したような理由以外にも認められる判例も存在します。
どうしてもシフト変更をしないと業務に支障が出ると判断できる場合は、管轄の労働基準監督署に相談してみるとよいでしょう。
2-2. 労働者の不利益にならない変更は法的に問題ない
前述したやむを得ない理由や不可避なトラブルによるシフト変更以外にも、問題とされないシフト変更もあります。
例えば
- 始業時間と就業時間を1時間ずつ遅くする(労働時間に変更はない)
- 労働時間を短くするが賃金はカットしない
- 変更をおこなう具体的な事由を事前に定めておく
など、労働者の不利益にならない、または労働者が納得して雇用契約をしている変更であれば、理由を問わず法的に問題ありません。
ここでいう労働者の不利益とは、主に賃金カットや割増賃金カットのことです。
使用者側が正当な理由の意味を勘違いしやすい例を知っておきましょう。
- 予想よりも暇なため労働時間を短くして賃金も減らす
- 人員が多すぎるから強制的に休暇を取らせる
- 休日出勤をさせないために休日振替を使う
こうした理由は、会社の利益や労働者目線でみると正当な理由に思えます。
しかし、労働者にとっては賃金カットという大きな不利益が生じているため、法的には正当な理由と認められません。
3. シフト変更するときの注意点
何らかの理由でシフトの変更が必要になった場合は、以下の3点に注意して検討しましょう。安易にシフト変更をしてしまうと、あとで大きなトラブルになる可能性があります。
3-1. 規定から外れると変形労働時間制が適用されなくなる
使用者側の都合を押し付ける形でシフトを変更し、賃金のカットをはじめとした労働者側の不利益を発生させると、変形労働時間制が適用されなくなる可能性があります。
変形労働時間制が適用されなくなると、所定労働時間を超えた分はすべて時間外労働(残業)や休日労働とみなされます。裁判になった場合は、遡って割増賃金が請求され、場合によっては莫大な支払いを命じられるでしょう。
シフト変更が違法と認められた場合は大きなリスクを背負うことになることを覚えておきましょう。
3-2. シフトを変更した履歴を残しておく
変形労働時間制におけるシフト変更のトラブルは、労働者が訴えたことで問題になるケースがほとんどです。シフト変更がされた数ヶ月~数年後に突然訴訟が起こされることもあります。
そのような場合に備え、シフト変更の履歴はすべて残しておくようにしましょう。適正にシフトが運用されており、同時に変更の正当な理由が提示できれば、万が一訴訟問題に発展した場合でも、説明しやすくなります。
3-3. 労使間で必ず協議し周知する
シフトの変更は、正当な理由があれば法的に問題なくおこなうことができます。しかし、急なシフト変更は少なからず労働者の負担になり、ストレスに繋がるものです。
必ず労使間で相談して決定し、できるだけシフト変更を早めに全労働者に伝えて移行期間を設けましょう。
特に勤務時間帯が大きく変わる場合や、休日の取り扱いに変化がある場合は要注意です。労働者が納得し、無理なく変更を受け入れられる環境を整えましょう。
このように、シフト変更する際にはいくつかの注意点が存在します。すでに変形労働時間制を導入している企業のご担当者様もシフト変更する際の注意点を確認しておくことでトラブルを防ぐことができるでしょう。当サイトでは、変形労働時間制での正しい勤怠管理の方法がこれ一冊でわかる資料を、無料で配布しております。こちらからダウンロードして、シフト変更をスムーズに行うのにご活用ください。
4. シフト作成時に気を付けたい5つのポイント
変形労働時間制においてシフト表の作成はとても重要です。労使間のトラブル防止に加え、変形労働時間制のメリットである残業代カット率にも直結しますので、5つのポイントを抑えて作成しましょう。
4-1. 業務内容に合ったシフトを作る
当たり前のことですが、業務内容や必要な労働力を考えたシフトを作ることが重要です。責任者やリーダーが不在にならないように人員を考え、期間中の業務量を適切に把握して、無駄のないようにシフトを考えましょう。
4-2. シフト変更が必要ないように作る
変形労働時間制のシフトは、原則として途中で変更しないものと考えましょう。ここまで説明したように、正当な理由があれば変更できますが、労使間の協議や周知期間が必要になるため、変形労働時間制のシフト変更は安易にできるものではありません。
また、無理なシフト変更は労働者の働く意欲を下げ、法的な問題に発展するリスクもあります。
4-3. シフトの作成は早めにおこなう
シフト表は作成するだけでなく、そのシフトでの勤務が始まる前に、労働者への周知が必要です。対応する期間直前の提示では、シフト内容が労働者に行き渡りません。シフトは早めに作成し、でき次第周知しましょう。
1ヶ月単位の変形労働時間制を導入している場合は、最低でも1週間ほどの周知期間を設けるとよいです。
4-4. 複数パターンのシフトを用意する
シフトは複数パターン用意しておき、業務量に合わせて組み合わせるのがおすすめです。
シフトの作成効率を上げられるうえに、従業員はシフトパターンを把握でき、予定が立てやすくなります。
4-5. 勤怠管理システムと連携させる
変形労働時間制では、勤怠管理が非常に複雑になります。シフト管理も厄介な業務のひとつですが、勤怠管理システムと連携させておけば、シフトの作成や給与計算、残業・休日出勤のカウントなどを一括しておこなうことができます。
5. 変形労働時間制のシフト管理は勤怠管理システムが便利
変形労働時間制のシフトは、原則変更することができませんが、労働者に不利益が出ないなどの一定の条件を満たしていれば、可能になる場合もあります。しかし、基本的には変更ができないと考えて、シフト作成は慎重におこない、変更がおきでないようにしましょう。
時間がかかるシフト作成や人員の管理は、勤怠管理システムにまとめると業務を減らせます。まだ導入していない場合は、ぜひご検討ください。
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