月またぎの経費精算とは、当月発生した経費を翌月に申請する状態を指します。民法上、経費(債権)は5年間の精算(請求)が可能なため、月またぎでも処理は可能です。
とはいえ、月またぎが発生すれば、経理部門に負担がかかります。それだけでなく、その月に発生した経費を正しく把握できません。
本記事では月またぎの経費精算ができるケースとできないケース、発生する原因と対処法を解説します。
①月・年またぎの経費精算はそもそも可能なのか?
②税法上は可能?
③年度またぎの経費精算は要確認!
④前月文の領収書を翌月に精算する場合の経費処理
⑤月をまたいでの費用が発生する場合の経費処理 月、年度またぎの経費精算に関して気になった時にいつでも確認できる資料です。 大変わかりやすくまとめておりますので、無料でダウンロードしてご覧ください。
目次
1. 月またぎの経費精算は可能?
結論からいうと、月またぎの経費精算は可能です。月またぎとは、当月に発生した経費を翌月に精算する行為を指します。たとえば、5月に発生した経費を6月に精算するときなどが該当します。
月またぎの経費精算は可能とはいえ、経理部門に大きな負担がかかります。年度またぎの経費申請などが生じれば、決算修正などの処理も必要です。
月またぎはできるだけ発生しないよう、社内ルールを徹底しましょう。
1-1. 経費精算のタイミング
経費精算のタイミングは社内規則で定められていることが多いでしょう。基本的には申請ルールに則り、期日までに処理しなければいけません。
なお、「当月の経費は翌月15日までに精算する」など、規則によっては指示どおりに行っても、月またぎが発生してしまうこともあります。
また、出張旅費のように一定期間の経費をまとめて申請するときも、月またぎが発生しやすいため注意が必要です。
1-2. 経費精算の日付はいつにする?
営業担当者などが申請する経費精算書の日付は、月またぎであっても、経費の発生した日付を記入して申請します。なお、申請日は実際に精算書を作成する日です。
一方、事務担当者が処理をする経費精算の中には、いつの日付で申請していいか迷うものもあります。
たとえば、水道料金のように請求書の日付と、銀行振替日が異なるときです。この場合、社内ルールに則っていれば、どちらの日付で申請しても問題ありません。
ただし、請求書の日付により申請する場合、現時点では水道代金の支払いが行われていないため、「未払金」で仕訳し、実際に支払われた後に「水道光熱費」に振り替えます。
2. 月またぎの経費精算ができないケース
月またぎの経費精算は可能であるとはいえ、全てを認めていては経理部門に負担がかかります。それだけでなく、当月ごとに正確な経費を把握できなくなるため、社内規則などで期限を決める必要があります。
なお、経費の請求は民法上の権利もあるため、申請期限を過ぎているからといって無下に断ることはできない点に注意が必要です。
2-1. 民法上経費は5年間まで請求権が認められる
先に、民法166条では「債権者が権利を行使することができることを知ったときから五年間行使しないとき」債権は時効により消滅すると定めています。[注1]
言い換えると、債権者である従業員は、法律上5年間は経費精算をする権利を有しています。そのため、経費精算が法律上できないケースは、権利を行使できると知った日から5年を経過したときとなります。
とはいえ、一般的には次に紹介する「経費精算規定」などにより期日を設け対応します。
2-2. 経費精算規定の締切日を超過したとき
経費精算の方法は、就業規則や経費精算規定などに定め、そのルールに則して運用します。
申請期限と申請期限を超過した際の対応方法を規定し、それらのルールに逸脱しているときは処理が難しいと案内しましょう。
2-3. 決算日から2カ月以上経過したとき
月またぎの経費精算を認めている会社でも、年度またぎは難しいとしていることが多いでしょう。
法律上、税務申告の期限は決算日から2ヵ月以内です。前年度の決算が終わってから経費精算をする場合、決算書類の作り直しが必要です。
そのため、決算日から2ヵ月以上経過した申請は処理が難しいといえるでしょう。
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3. 月またぎの経費精算が発生する原因
経費精算の締切日を理解していない、上長が不在時に経費精算が進まないなど、月またぎが発生する原因はさまざまです。自社の原因を見極め、ひとつずつ対処しましょう。
3-1. 経費精算のルールを理解していない
従業員に経費精算のルールが浸透していないと、月またぎだけでなく、申請書の間違いも多くなります。そもそも経費精算のルールが曖昧なら、経費精算規定などに定めることも大切です。
3-2. 経費精算の方法が複雑で分かりづらい
紙の経費精算書を使用している場合、記入項目は複雑で分かりづらくなります。とくに、交通費のように頻繁に発生する経費ほど、経路や運賃などの細かな記載が必要となり、面倒で後回しになっていることも考えられます。
経費精算システムを導入していても、使い方を理解していない従業員が多いのであれば、経費申請が遅れる原因となります。
3-3. 上長が不在時で承認されない
紙の経費精算書に起こりがちな原因として、上長が不在時にハンコをもらえないため、経費精算の承認が進まないケースもあります。
単純に上長が多忙なため、承認を後回しにしてしまうこともあるでしょう。
3-4. 月またぎの経費精算への問題意識が不十分
月またぎの経費精算は、経理部門に負担がかかるだけでなく、従業員にも影響があります。月をまたげばその分、立替金の入金が遅くなるでしょう。
また、申請が遅くなれば、それだけ領収書の紛失リスクも高まります。領収書をなくしたり、提出期限を過ぎたりすれば、追加の提出書類が必要になるケースもあります。最悪の場合、立て替えた経費を申請できなくなることもあります。
以上のような手間やデメリットを理解していないことも、経費申請が遅れる原因のひとつです。
4. 月またぎ・年度またぎの経費精算には多くの問題がある
経費の月またぎや年度またぎの処理は、経理部門に負担がかかるだけでなく、会社にも大きな影響があるため注意が必要です。
期日内に経費精算が必要な理由に、企業会計の「発生主義の原則」があります。発生主義の原則とは、収益と費用は発生時点で計上するという、会計上の考えです。これにより、正しい財務状況の把握が可能となります。
また、年度またぎの処理があまりにも多く、決算のやり直しが続く場合、会社の信用を損ねる結果にもなりかねません。それだけでなく、監査などで不正な会計操作を疑われる可能性もあります。
5. 月またぎの経費精算を防止する方法
月またぎの経費精算を防止するためにも、まずは従業員にルールを周知・徹底しましょう。そのうえで、使いやすい経費精算システムを導入するのも効果的です。また、経理部門から直接申請を促す声掛けをしてもよいでしょう。
5-1. 経費精算の期日やルールを周知する
経費精算のルールや期日が決まっているなら、従業員に周知徹底しましょう。毎月、それぞれの経費の申請期日一覧を配付するのも効果的です。
5-2. 使いやすい経費精算システムを導入する
紙ベースで処理を進めているなら、使いやすい経費精算システムの導入も効果的です。
なお、システムは導入して終わりではなく、使い方研修をする、簡易版マニュアルを配付するなど、申請する従業員のサポートも大切です。申請方法の疑問をすぐに解決できるQ&Aを作ったり、相談窓口を設けたりしてもよいでしょう。
6. 経費精算はルールを徹底し月またぎを防止しよう
経費精算は民法上5年間請求が可能です。しかし、企業会計上、費用は発生時点で計上する必要があるため、精算経費のルールを徹底し、月またぎが発生しないようにする必要があります。
経費の申請方法が分かりづらいと、申請が遅れる原因になります。使いやすい経費精算システムの導入も、月またぎを防ぐ方法のひとつです。