経理処理では、備品と消耗品は一見、同じように扱われるイメージがあります。実際は、備品と消耗品はそれぞれ分けて経理処理する必要があります。しかし、例えば経理部門に配属されてから日が浅い初心者など、業務に不慣れな人には判断しづらく、処理が難しい部分です。
この記事では、備品と消耗品の違いやそれぞれの処理方法をわかりやすく解説します。ぜひ今後、備品を経費計上する際の参考にしてください。
「経理担当者になってまだ日が浅いため、基本知識をしっかりつけたい!」
「法改正に関する情報収集が大変で、しっかりと対応できているか不安・・・」
「仕訳や勘定科目など、基本的なこともついうっかり間違えてしまうことがある」
などなど日々の経理業務に関して不安になることがございませんでしょうか。
特に経費精算は毎月頻繁に発生する経理業務ですが、細かいルールや規定があり、注意が必要です。また直近の電子帳簿保存法やインボイス制度など毎年のように行われる法改正に対して、情報を収集し適切に理解する必要があります。
そこで今回は、仕訳や勘定科目などの基礎知識から、経理担当者なら知っておきたい法律知識などを網羅的にまとめた資料をご用意しました。
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1.備品を経費で処理する際の扱い
備品を経費で処理するには、2つの異なる扱い方があります。1つは、使用可能期間や取得価格を踏まえて、損益計算書の「消耗品費」の勘定科目で経費計上する場合、もう1つは、貸借対照表の「工具・器具・備品」の勘定科目に資産計上する場合です。
なお、どの勘定科目で処理するかは、中小企業と個人事業主、大企業という企業形態の違いによっても異なります。
まずは、備品とは何か、どのような物品が備品に該当するのか、どのように計上するのかを理解する必要があります。
1-1.そもそも備品とは
備品は、前述のとおり、「消耗品費」の勘定科目で経費計上する場合と、貸借対照表の「工具・器具・備品」の勘定科目に資産計上する場合の、2つの異なる取り扱い方法があります。
どの勘定科目で処理するかを決めるための判断基準の1つが、耐用年数です。後述する減価償却との関わりで、国税庁が物品のカテゴリーごとに対応年数を定めています。もう1つの判断基準が、購入時に支払った取得価額です。
備品の経費処理では、耐用年数と取得価格を踏まえて、以下の2つの区分が定められています。
耐用年数が1年未満、もしくは取得価格が10万円未満の物品は「消耗品費」
例:コピー用紙、トイレットペーパー、ガソリン、プリンター、電話機
耐用年数が1年以上かつ取得価格が10万円以上の物品は「工具・器具・備品」
例:パソコン、プロジェクター、応接セット、冷蔵庫、社用車
1-2.経費に計上できる備品
備品を経費として計上する場合、「消耗品費」という勘定科目で計上します。
消耗品費で経費計上する場合は、前述のとおり、基本的に取得価額が10万円未満、もしくは耐用年数が1年未満の什器備品の購入費が該当します。取得価額には、購入時に発生した手数料も含まれます。
一方で、取得価格が10万円以上の物品でも、明らかに耐用年数が短いもの、あるいは利用頻度が高く、消費サイクルが早い物品の購入費も、消耗品費として経費計上できます。
関連記事:経費とは?わかりやすく解説|何が経費になるのかや精算の流れなど基礎的な知識を紹介
関連記事:10万円以上の出費における経費精算|決算前に確認したい取得価額や減価償却の基礎を解説
1-3.資産に計上される備品
固定資産に計上される備品には、使用可能期間が1年以上、かつ購入時の取得価額が10万円以上のものが該当します。
固定資産に計上される備品は、通常、それぞれの耐用年数に応じて、取得価額の「減価償却」を行う必要があります。減価償却の詳細については後述しますが、減価償却の会計処理では、場合によっては、「一定償却資産」および「少額減価償却資産の特例」の会計処理も認められています。それぞれの詳細も以下で解説します。
1-3-1.減価償却する場合
減価償却とは、基本的に資産は時間経過とともに価値が下がるという考え方の下、10万円以上の備品にかかった取得価額を、一括ではなく耐用年数にわたって費用計上していく税制上のルールです。数年にわたり利益を抑えられるため、法人税を節約する効果が期待できます。
例えば、接客用に購入した25万円のソファは減価償却資産として5年間の法定耐用年数が定められているため、5年間にわたり減価償却で費用計上できます。
1-3-2.一括償却資産にする場合
10万円以上20万円未満の減価償却資産には、一括償却資産として経費計上する会計処理が適用されます。耐用年数に関わりなく、3年間にわたり均等な金額で経費計上できるため、減価償却よりも計算を簡素化できるメリットがあります。
1-3-3.少額減価償却資産の特例を受ける場合
取得金額が10万円以上30万円未満の減価償却資産の場合、全額を損金として処理する「少額減価償却資産の特例」を受けることができます。
特例が適用されるのは、青色申告法人である中小企業あるいは農業組合で、従業員数1000人以下の規模に該当する法人です。なおかつ、複数の資産が少額減価償却資産の適用を受ける場合、事業年度ごとに300万円の上限が定められています。確定申告時などの際は、少額減価償却資産の取得に関する明細書の添付が求められます。
2.備品と消耗品との違い
先述のとおり、備品を経費として計上するか、あるいは資産として計上するかは物品によって異なります。経費として計上する場合は「消耗品」費の勘定科目が適用され、固定資産として扱う場合は「工具・器具・備品」として仕訳が行われます。
資産として仕訳するか、経費として計上するかの判断基準が、購入時の取得価額です。取得価額が10万円未満の場合は消耗品として処理し、10万円以上の場合は固定資産の扱いになります。
なお、10万円に消費税が含まれるかどうかは、会社の経理方法によって異なります。税別として処理する方針の場合は10万円には含まれず、税込として処理するなら10万円に含まれます。
2-1.消耗品費と混同されがちなもの
消耗品費と区別がつきにくく、混同して計上されがちな項目に「事務用品」と「雑費」があります。2つがどう異なるのか、具体的な例を交えて解説します。
2-1-1.事務用品費
「事務用品費」は、事務用品の購入時に発生する費用を管理するために設けられた勘定科目です。事務用品は消耗品の中でも使用頻度が高く、購入金額が膨らみがちです。あえて消耗品費から独立させて事務用品日を設けることで、普段から事務用品にどれだけの金額を費やしているかが把握しやすいメリットがあります。
事務用品の具体例としては、ボールペンやシャープペンなどの筆記用具、封筒、コピー用紙、メモ用紙、プリンター用のインク、伝票用紙、バインダー、ファイル、のりなどがあります。
なお、事務用品費を消耗品費の一部に含めるか、それとも独立した勘定科目として扱うかは、会社側の会計処理の方針により異なります。
2-1-2.雑費
もう1つ、消耗品費との区別がつきにくいのが「雑費」です。
雑費には、どの勘定科目にも当てはまらない経費、少額かつ使用頻度が低い物品、一時的に発生した経費などが分類されます。
具体的には、NHKの受信料、社屋の移転費用、クリーニング代、ゴミ処理代、自治会費などが雑費として分類されがちな項目です。
雑費を消耗品の一部に含めるか、別個の勘定科目として独立させるかは、会社の会計上の方針により異なります。
雑費は内訳を記入する必要がないため、処理上便利な反面、あまり増えすぎると使徒不明金として税務署の不審を買い、調査が入る要因になります。企業としても、何にいくら使ったかの見直しがしづらいデメリットがあります。そのため、経費全体の5〜10%に押さえるのが得策です。
3.備品と消耗品の会計処理方法
備品と消耗品、それぞれを会計処理する際の方法は具体的にどう異なるのかを解説します。
3-1.備品の会計処理
備品は、税務と会計で計上方法が異なります。
会計で計上する場合、費用として計上するか、あるいは3年間かけて減価償却資産として計上するかの、2つの選択肢があります。一方、税務で計上する場合は、3年間にわたり減価償却し、資産として計上する方法の一択のみです。
この計上方法の違いをよく理解していない場合、法人税の計算で間違いを犯す恐れがあります。ミスに気づかないまま申告した場合、後で延滞税や過少申告加算税を課せられるリスクがあるため、扱いには最新の注意が必要です。
ミスと追徴課税のリスクを未然に防止する手段として、資産として計上するケースも多く見られます。
関連記事:経費を計上するタイミングとは?|企業会計で知っておきたい発生主義・現金主義を解説
3-1-1.備品の仕訳例
取得価格が18万円の冷蔵庫を社員用に購入した場合の仕訳例を紹介します。なお、減価償却の仕訳には「直接法」と「間接法」の違いもあるので、あわせて解説します。
<購入時に費用として計上する場合の仕訳例>
借方科目 |
金額 |
貸方科目 |
金額 |
工具器具備品 |
180,000 |
現金 |
180,000 |
<決算時に資産として計上する場合の仕訳例 >
●直接法:固定資産から減価償却費を直に差し引きます。
借方科目 |
金額 |
貸方科目 |
金額 |
減価償却費 |
60,000 |
工具器具備品 |
60,000 |
●関節法:減価償却費の累計額を計上して、これまでの合計を示します。
借方科目 |
金額 |
貸方科目 |
金額 |
減価償却費 |
60,000 |
減価償却累計額 |
60,000 |
<一括償却資産として計上する場合の仕訳例 –>
借方科目 |
金額 |
貸方科目 |
金額 |
減価償却費 |
180,000 |
一括償却資産 |
180,000 |
3-2.消耗品の会計処理
短期間で消耗する、あるいは使い切ってしまうことが前提の消耗品は、費用または資産のどちらで計上しても問題ありません。ただし、決算時には使用済み分は費用、未使用分は資産として計上する点は注意が必要です。
購入時に費用として計上する場合、勘定科目は「消耗品費」として仕訳します。決算時までに使いきれず在庫が残った場合、その部分は「消耗品」として資産計上します。
購入時に資産として計上する場合、資産が増えたという考えの下、購入時は「消耗品」として仕訳し、決算時までに使用した分を「消耗品費」として処理します。
3-2-1.消耗品の仕訳例
費用として計上する場合と、資産として計上する場合の2つのケースで、消耗品の仕訳例を解説します。消耗品として、ペーパータオル50個入り1ケース(¥5,000)を10ケース(¥50,000)購入した場合で見てみましょう。
<現金で購入し、費用として計上した場合>
借方科目 |
金額 |
貸方科目 |
金額 |
消耗品費 |
50,000 |
現金 |
50,000 |
<資産として計上し、決算期までに3ケース¥15,000分が残った場合>
借方科目 |
金額 |
貸方科目 |
金額 |
消耗品費 |
15,000 |
消耗品 |
15,000 |
こちらの章ではおもに備品と消耗品の会計処理として仕訳例を解説しましたが、備品以外にも毎月件数が多くなりがちな旅費交通費や会食に際に発生する接待交際費などあらゆる勘定科目があります。また同じような用途に利用しても、条件によって勘定科目が異なる場合もあるので、注意が必要です。
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4.まとめ
備品と消耗品は経理処理する際、耐用年数と取得価格によってそれぞれ扱いが異なります。一般的に、取得価額が10万円未満、あるいは耐用年数が1年未満のものは消耗品に該当し、費用または資産のどちらでも経理処理が可能です。一方、取得価額が10万円以上で耐用年数が1年以上のものは備品としての扱いになるため、決算時は耐用年数に応じて減価償却が行われます。
備品と消耗品の線引きは難しいですが、それぞれの定義と経理処理の違いをきちんと理解できれば、経理初心者でも今後の経理業務が進めやすくなるでしょう。
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