企業にとって重要な経費計算ですが、勘定科目の複雑さに悩む方は多いでしょう。経費計算の目的がわからなかったりという理由で、経費計算が苦手な方もいるかもしれません。
ここでは企業の経理計算の基本を知りたい人に向けて、経費計算の流れから、おもな勘定科目や注意点までわかりやすく解説します。スムーズな経理業務に役立ててください。
「経理担当者になってまだ日が浅いため、基本知識をしっかりつけたい!」
「法改正に関する情報収集が大変で、しっかりと対応できているか不安・・・」
「仕訳や勘定科目など、基本的なこともついうっかり間違えてしまうことがある」
などなど日々の経理業務に関して不安になることがございませんでしょうか。
特に経費精算は毎月頻繁に発生する経理業務ですが、細かいルールや規定があり、注意が必要です。また直近の電子帳簿保存法やインボイス制度など毎年のように行われる法改正に対して、情報を収集し適切に理解する必要があります。
そこで今回は、仕訳や勘定科目などの基礎知識から、経理担当者なら知っておきたい法律知識などを網羅的にまとめた資料をご用意しました。
経理に関する基本情報をいつでも確認できる教科書のような資料になっております。資料は無料でダウンロードができ、毎回ウェブで調べる時間や、本を買いに行くコストも省けるので、ぜひ有効にご活用ください。
1.「経費」とは
「経費」または「必要経費」とは、事業を行う際に必要な費用を指します。カフェで得意先とミーティングをしたり、事業に必要な消耗品を購入したりすると、経費が発生します。
業務時間中であっても、個人的な飲食代金や、業務に関係のない商品の購入費用などは経費になりません。私的な支出を経費として申請しないように、社員に徹底させましょう。
1-1.経費計算は所得税に関係する
所得税は、課税所得に税率を乗じて算出されます。課税所得とは、収入から経費を差し引いたものです。正しく課税額を算出するためには、適切な経費計算が欠かせません。
計上する経費が少なければ、必要以上に納税してしまい、利益が少なくなってしまいます。一方、経費でない費用を計上してしまうと、不正計上になるため気をつけましょう。
1-2.経費計算は「原価計算」にも必要
経費計算は、「原価計算」にも必要です。原価とは製品やサービスを生み出すまでにかかった費用の総額です。販売価格の決定や、コスト削減できる項目の特定には、原価計算が役立ちます。なお、原価を計算する際は、経費に加え、材料費や労務費も加算しましょう。
2.経費計算はまず「仕訳」から
「仕訳」とは、お金の動きを勘定科目ごとに帳簿に記載することです。帳簿は決算書を作成する際に欠かせません。帳簿がなければ、決算書を構成する損益計算書や貸借対照表をまとめられません。決算書は財務の健全性を判断するもので、確定申告や経営判断を下す際に役立ちます。
2-1.最初に「勘定科目」を設定する
勘定科目とは、収入や支出の内容を示す「タグ」のようなものです。経費を計上するときに勘定科目に従うと、費用のグループわけができ、財務状況を確認しやすくなります。銀行担当者など、外部の人に財務状況を説明する際も、勘定科目があると伝わりやすくなります。
2-1-1.勘定科目設定のポイント
勘定科目は自由に設定できますが、まずは基本的な勘定科目を使って仕訳をしましょう。分類できない経費があれば、新たに独自の勘定科目を設定します。基本的な勘定科目については、以下で詳しく紹介します。
勘定科目を設定する際は、業界用語ではなく、一般的に理解されやすい言葉で表現します。また、同じ種類の費用は同じ勘定科目でそろえましょう。勘定科目ごとの支出割合を算出するためにも、正しく計算することが大切です。
3.経費計算のための基本的な勘定科目
一般的な企業で使われがちな、経費計算のための基本的な勘定科目を紹介します。
3-1.地代家賃
地代家賃とは、事業で使用する土地や建物に対してかかる費用を指します。たとえば、店舗・倉庫・事務所・社宅などの建物を借りる際の賃料と共益費や、駐車場などの土地を借りる際の費用などが地代家賃です。
3-2.水道光熱費
事業にかかわるガス代・水道代・電気代・灯油代などは水道光熱費に該当します。すべてを水道光熱費としてまとめても構いません。しかし、細かく勘定科目をわけておけば、経費がかさんでいる項目がわかりやすくなります。
3-3.租税公課
租税公課は、国や自治体に納める税金や、各公共団体に納める費用を指します。たとえば、事業税・固定資産税・登録免許税・収入印紙代などは租税公課です。なお、ペナルティとして支払う罰金や、法人税・法人住民税は租税公課ではありません。
3-4.人件費
人件費は、雇用契約を結んだ社員に支払う費用です。給与や賞与・退職金・役職手当・通勤手当・社宅手当などが人件費に該当します。なお、外注する際の費用は、人件費ではなく外注費として仕訳をします。
3-5.福利厚生費
福利厚生費は法定福利費と法定外福利費にわかれます。法定外福利費とは、社員の心身の健康をサポートし、慰労するための費用です。福利厚生の内容は企業によりさまざまです。社員旅行の費用・懇親会費・慶弔見舞金・健康診断の費用などが法定外福利費として挙げられます。
3-6.仕入
仕入とは、商品や材料を調達するために支払った費用を指します。仕入の対象は、商品や原材料・機械・器具・建物・備品・消耗品・書籍など多岐にわたります。
3-7.広告宣伝費
広告宣伝費は、商品やサービスを一般消費者にアピールし、売り上げを伸ばすための費用です。インターネットやテレビなどのメディアへの広告料・チラシの製作費・ウェブメディアの制作費などが広告宣伝費に含まれます。
3-8.販売促進費
販売促進費と広告宣伝費には明確な違いはありません。強いていうならば、販売促進費は、ターゲットを絞った販促活動にかかる費用です。たとえば、無料サンプルの作成や配布にかかる費用・販促キャンペーンの費用・店頭のPOP制作費などが販売宣伝費です。
3-9.接待交際費
接待交際費とは、取引先や得意先との交際にかかった費用です。たとえば、接待をした際の交通費や飲食費・お中元やお歳暮などの費用・接待用の茶菓子代などが接待交際費として挙げられます。接待交際費は、私的な費用との線引きが難しい傾向です。
3-10.減価償却費
減価償却費とは、高額な消耗品・パソコン・大型家具・建物・車・設備などを購入した際にかかる費用です。減価償却費は、一括して経費計上できません。耐用年数に応じて、毎年少しずつ経費計上します。
3-11.消耗品費
消耗品費とは、業務上必要な物品の購入費用です。文具・プリンターのインクカートリッジ・コピー用紙・包装紙などが挙げられます。パソコンなどの機器や家具類でも、10万円以下ならば消耗品費に含まれます。
3-12.修繕費
修繕費は、固定資産を修繕したり、メンテナンスしたりする際に発生します。固定資産には、店舗・事務所・車・機器などが挙げられます。なお、修繕の定義は原状回復です。機能や特性を改良する際の費用は、修繕費として認められません。
3-13.旅費交通費
旅費交通費とは、業務上の交通費や宿泊費です。たとえば、タクシー代・航空券の代金・高速料金・駐車場代などは旅行交通費です。出張時の旅費交通費を「出張費」に分類する企業もあるため、自社の仕訳方法を確認してください。
3-14.外注費
社員以外に支払う費用が外注費です。清掃サービスや社員食堂などのアウトソーシング業者に支払う料金・人材派遣会社へ支払う派遣料・請負契約を結んだフリーランスに支払う報酬などが、外注費に含まれます。
3-15.研究開発費
新しいサービスや商品を作り出すための費用や、効率よく製造する方法を検討する費用は、研究開発費に該当します。アイデアを得るために参加するイベントやセミナーへの参加費用も、研究開発費に含まれます。
3-16.新聞図書費
新聞や雑誌、書籍などを購入する費用は、新聞図書費に仕訳されます。事業内容に直接関係がなくても構いませんが、新聞図書費として計上するためには社員の利用が前提です。ほかにも、有料メルマガの登録料や、DVDや図書カードの購入費用なども新聞図書費に含まれます。
3-17.通信費
業務上の通信や連絡にかかる費用が通信費です。インターネット料金・法人スマートフォンの端末代・電話料金・切手代・ハガキ代などは通信費として仕訳できます。
3-18.雑費
消耗品との区別に悩みがちな雑費には、明確な定義はありません。帳簿に登場する頻度が低く、ほかの勘定科目には含めにくい費用は雑費とすると便利です。たとえば、クリーニング代・引っ越し代・各種手数料などが雑費に含まれがちです。
4.経費計算の注意点
私的な支出は経費ではありません。間違えやすい勘定科目にも気をつけましょう。経費計算の注意点を紹介します。
4-1.事業と関係のない支出は経費にしない
経費計上が多いほど、利益が減るため税金が安くなります。経営者のなかには、私的な支出まで経費に計上し、節税したいと考える人もいるかもしれません。
確定申告で不審な点があると、税務調査を受けます。不正計上を指摘されペナルティを受けると、本来支払う税額以上の追徴課税を命じられます。事業と関係のない支出は、経費には含めません。
4-2.特に注意が必要な勘定科目がある
特に注意が必要な勘定科目は、おもに以下の3つです。福利厚生費・接待交際費・消耗品と減価償却について紹介します。
4-2-1.福利厚生費
福利厚生費として認められる費用は、すべての社員を対象とし、用途が明確である費用に限られます。また、現金や商品券など、換金可能なものは福利厚生費には該当しません。
福利厚生費に上限はありませんが、あまりに高額すぎると認められない場合があります。
4-2-2.接待交際費
国税庁によると、接待交際費は、基本的に経費にはできません。ただし、飲食費については条件を満たすと経費計上が可能です。
飲食費の合計を参加人数で割り、1人あたりの金額が5,000円以下ならば、会議費に仕訳できます。また、資本金が1億円以下の中小企業の場合は「飲食費の50%までの金額」または「年間800万円までの交際費」のいずれかを選び、経費計上できます。
※参考:No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算│国税庁
4-2-3.消耗品費と原価償却
消耗品費として仕訳できる費用は「10万円未満の物品を購入した費用」あるいは「使用する期間が1年未満の物品を購入した費用」に限られます。消耗品費に該当しない費用は、減価償却が必要です。
減価償却の対象となった費用は、一括で計上できません。特定のルールに従い、毎年少しずつ計上していきます。ただし「中小企業者等の特例」に該当する企業であれば、30万円未満の費用は少額減価償却資産にできます。少額減価償却資産は一括で計上できるため節税に有利です。なお、1年で計上できる少額減価償却資産額の合計は、300万円です。
※参考:中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例|国税庁
5.まとめ
経費計算は所得税を正しく算出することで、原価が計算できます。正しく経費計算するためには、まず勘定科目を把握しましょう。
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