「若年層だけでは人手が不足する」や「ベテランの技術や経験が必要」などの理由で、定年退職した人材を再雇用するケースが見受けられます。
また定年後の再雇用では、同一労働同一賃金は適用されるのか?と気になる担当者は多いでしょう。適切な対応をしなければ、大きなトラブルに発展する可能性もあるため、注意が必要です。
そこで今回の記事では、定年後の再雇用に焦点をあて、同一労働同一賃金が適用されるか?といった問題から、再雇用するメリット・デメリット、各種の注意点を解説します。定年後の再雇用をおこなう企業担当者様は、ぜひ参考にしてください。
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同一労働同一賃金とは、「正社員と非正規社員を平等に扱う概念」のように認識されていても、具体的にどのような対策が必要かわからない方も多いのではないでしょうか?
本資料では、どのような状態が「不平等」とみなされうるのかや、企業が対応すべきことを4つの手順に分けて解説しております。
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目次
1. 定年後の再雇用とは?
定年後の再雇用とは、労働者が勤務していた会社を定年退職したのちに、また同じ会社で雇用契約を結んだうえで勤務することを指します。定年退職した元社員の再雇用は、即戦力となり得るため、慢性化する人材不足の緩和にも役立つでしょう。
また2021年4月に改正された「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(通称:高年齢者雇用安定法)」によると、70歳までの就業機会を確保することが、企業の努力義務だとされています。
そのため、65歳で退職した元社員を再雇用し、70歳頃まで雇うケースは増えているでしょう。
2. 再雇用する企業目線でのメリット・デメリット
ここでは、企業目線で見た「定年後の再雇用」におけるメリット・デメリットを紹介します。
2-1. 再雇用する企業目線でのメリット
再雇用をする企業目線でのメリットとして、人材の確保が挙げられます。定年退職者がいると、空いたポジションを埋めるべく、新たな採用や配置転換が必要です。また少子高齢化による労働人口減で、人材不足に悩む企業も多いでしょう。
再雇用をすれば、定年退職者に同じポジションで働いてもらえるため、人材確保ができます。新たな人材を採用する手間もかかりません。企業のことを知っている人が継続して働くため、教育に費やす手間やコストも省けます。さらにベテランの知見やノウハウを活用することで、次の世代に適切な技術や知識を共有できるでしょう。
また再雇用制度を導入することで、「65歳超雇用推進助成金」といった助成金の申請が可能になります。助成金を活用すれば、ベテラン人材を確保しつつ、人件費の負担を補う手段にもなります。
2-2. 再雇用する企業目線でのデメリット
一方、再就職をする企業目線でのデメリットは、希望者をすべて雇用する必要があることです。優秀なシニア人材の再雇用であれば良いものの、なかには「再雇用したくない」人が出てくるケースもあるでしょう。雇用側に「再雇用すべきか否か」の選択肢がない点はデメリットといえます。
また、再雇用者が多い職場では世代交代が進まず、若手の「モチベーションダウン」や「ステップアップの機会が失われる」恐れもあるでしょう。再雇用後は、多くのケースで雇用形態が変更になり、業務内容や責任の範囲も変わることがあります。さまざまな変更に対するトラブル回避をすべく、就業規則の整備や再雇用者と労使協定を結ぶといった手間がかかる点もデメリットです。
3. 定年後の再雇用でも同一労働同一賃金は適用される?
定年後の再雇用は、正社員ではなく、嘱託社員・契約社員・パート社員などの非正規雇用としての雇用が一般的です。定年後の再雇用でも、同一労働同一賃金は適用されます。
同一労働同一賃金のルールによると、定年後の再雇用では、ほかの非正規雇用労働者と同じ賃金を設定しなければいけません。しかし、「年金を受給している」や「加齢による判断力の低下」といった、賃金を下げる妥当な理由があれば、ほかの非正規雇用労働者と異なる賃金でも認められる場合があります。
そのほかにも何か気を付けるべき点はないか、対策が抜け漏れている点はないか不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか?本サイトでは、同一労働同一賃金の対象者の条件や確認方法、待遇が不合理ではないことを説明する観点をまとめた資料を無料で配布しています。同一労働同一賃金について網羅的に理解を深めたい方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
4. 同一労働同一賃金における定年後の再雇用で注意すべき点
同一労働同一賃金は定年後の再雇用でも適用されるとわかりました。そこで注意すべき点は、以下の通りです。
4-1. モチベーション管理
再雇用をされた場合には、定年前と同じような仕事をするケースが多く見受けられます。しかし、仕事内容がほぼ変わらないのに「待遇面での引き下げ」があれば、モチベーション低下の要因となるでしょう。
また待遇面での引き下げがなくとも、「役職から外れた喪失感」や「周囲からの期待が薄くなったという疎外感」を感じることで、モチベーションダウンの恐れがあります。
モチベーション低下を防止するには、適宜において期待や称賛を伝え、貢献に応じて評価するといった姿勢が大切です。また定期的なキャリア研修や面談なども、日々のやる気アップにつながるでしょう。
4-2. 契約内容
同一労働同一賃金は定年後の再雇用でも適用されるものの、前述の通り「妥当な理由」があれば、賃金の引き下げが認められます。とはいえ、再雇用された側が了承していなければ、トラブルに発展する可能性が大いにあります。
また再雇用する際には、嘱託社員・契約社員・パート社員といった非正規雇用での雇用が一般的です。雇用形態によっては、福利厚生の範囲が異なるといった不利な条件になる可能性もあるため、本人としっかり話し合う必要があります。
賃金の引き下げを実行する場合には、再雇用契約をする前に「労使契約を結ぶ」ことでトラブル回避が可能です。もちろん、退職前と同様に正社員として雇っても問題はありません。
5. 賃金を下げざるを得ない時に、合理的かを判断する要素
定年後の再雇用は、同一労働同一賃金が原則です。しかし「賃金の引き下げ」に関して合理的な理由があり、再雇用された側も同意をすれば引き下げが認められています。
合理的な理由かを判断する主な要素は、以下の通りです。
5-1. 業務内容
実際の業務範囲が、定年退職前とほぼ変わらなければ賃金引き下げは認められません。一方、ノルマの程度・トラブル時の責任の重さ、所定外労働時間の有無などを比較し、定年退職前より明らかに少なくなっている場合には、賃金を下げても合理的と認められる可能性があります。
5-2. 職務内容や配置の変更範囲
再雇用後の職種が同じでも、従事する中核的業務が異なる場合は、職務の範囲が異なると言えます。ただし、与えられている権限の範囲(その労働者が契約締結可能な金額の範囲や決裁権限の範囲など)が実質同じであれば、待遇差が合理的ではないという判断に傾くでしょう。
5-3. その他
その他として、本人の労働意欲・勤続年数・過去の仕事で出した成果なども、判断基準になり得ます。また、明らかに定年退職前より、体力や判断基準が衰えている場合にも、合理的だと認められる可能性があるでしょう。
5-4. どの程度まで賃金を下げて良いのか?
賃金の引き下げが合理的だと認められた場合に、どの程度までなら賃金を下げても良いのでしょうか?実は、明確な基準は定められていません。今までの裁判例を踏まえたうえで、総合的な判断が求められます。過去の裁判例を参照すると、退職前の賃金の6割に満たない場合には、不合理だと判断される傾向にあるようです。
6. 再雇用後の業務内容・労働条件を明確化し、トラブル回避を!
定年後の再雇用は、人材確保ができることや、ベテランの知見やノウハウを活かせるといったメリットがあります。一方で再雇用後は業務内容や労働条件が変わるケースも多く、トラブルが発生しやすいといえます。
また合理的な理由がある場合には、賃金の引き下げを考えるケースもあるでしょう。とはいえ、明確な基準がなく労働条件が不明確なままでは、合理的な判断だとは言えません。さまざまなトラブルを回避するため、再雇用をする場合には、業務内容や労働条件を明確化することが大切です。
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