同一労働同一賃金による60歳以上の再雇用の扱いとは?ポイントや注意点を解説 |HR NOTE

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同一労働同一賃金による60歳以上の再雇用の扱いとは?ポイントや注意点を解説

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スマホを持つ60代のビジネスマン

同じ労働をおこなう場合は同じ賃金を払わなければいけないことを、同一労働同一賃金といいます。同一労働同一賃金には不合理な待遇制度を禁じ、公平な労働環境を実現する役割が期待されているのです。

同一労働同一賃金は、60歳以上の方や定年退職した方の再雇用の際にも適用されます。該当する人材を抱え「具体的にどのように取り入れればいいのか?」と不安に思う方もいるでしょう。

本記事では同一労働同一賃金による60歳以上の再雇用の扱いや、注意点について解説します。60歳以上の方を適切に再雇用する方法が知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

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同一労働同一賃金に罰則はありませんが、放置すると損害賠償のリスクが高くなります。

同一労働同一賃金とは、「正社員と非正規社員を平等に扱う概念」のように認識されていても、具体的にどのような対策が必要かわからない方も多いのではないでしょうか?

本資料では、どのような状態が「不平等」とみなされうるのかや、企業が対応すべきことを4つの手順に分けて解説しております。

自社でどのような対応が必要か確認したい方は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。

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1. 同一労働同一賃金における60歳以上の定年後再雇用とは

PCで作業する60代のビジネスマン

60歳を超える年齢での定年後再雇用とは、定年後に雇用関係を一度解消した後、再度雇用することを言います。

定年後に再雇用する場合でも、同一労働同一賃金の対象となるため、正社員や正社員時代との待遇格差に注意が必要です。

しかし、定年後再雇用をおこなった社員と正社員との待遇差が生まれること自体が問題なのではありません。待遇差が不合理と判断された場合のみ不利益に該当すると、厚生労働省の同一労働同一賃金のページに記載があります。

参照:同一労働同一賃金ガイドライン|厚生労働省

定年後再雇用をおこなう社員には同一労働同一賃金が適用されるものの、待遇差が生まれる原因を示して合意を得れば問題ありません。

2. 定年後に60歳以上の人材を再雇用する4つのメリット

再雇用された60代のビジネスマン

定年後に60歳以上の人材を再雇用するメリットは以下のとおりです。

  1. 人手不足を解消できる
  2. 顧客の安心・信頼感を継続できる
  3. 助成金や給付金を申請できる
  4. 各種コストを削減できる

同一労働同一賃金制度がありながら、再雇用するメリットをひとつずつ見ていきましょう。

2-1. 人手不足を解消できる

60歳以上の人材を再雇用することで、人手不足を解消できるメリットがあります。業種によって差はありますが、慢性的な人手不足で困っている職種では助かるケースが多いでしょう。

優れた人材を再雇用できる場合であれば、経験や知識を若手の育成に活かしてくれることも考えられます。体力は若い頃よりも落ちているため配慮する必要はあるものの、雇用を確保するには有効な手だと言えるでしょう。

2-2. 顧客の安心・信頼感を継続できる

定年前に顧客との関係を築いていた人材の場合は、定年後に再雇用することで関係を継続できます。同じ担当者のままだと伝えることで、相手企業やお客様に安心感を与えられるでしょう。

ほかにも引き継ぎ業務や挨拶などのコストを削減できる点も見過ごせません。接客業や営業職など、人材と顧客の関係が大切な業種ほど大きなメリットになるでしょう。

2-3. 助成金や給付金を申請できる

定年後に再雇用すると、以下の2つの制度を申請できます。

  • 高年齢雇用継続給付金
  • 65歳超雇用推進助成金

高年齢雇用継続給付金は、以下の2つを満たすときに最大で賃金の15%が支給されます。

  • 「60歳以上65歳未満の従業員」
  • 「60歳のときと比べて60歳以降で賃金が75%未満に低下」

65歳超雇用推進助成金は、条件を満たすことで最大160万円の助成金を受けられる制度のことです。

条件を満たすことで企業に給付される制度となっており、高齢者を再雇用する大きなメリットだと言えるでしょう。優れた人材を確保しつつ人件費を抑えられます。

参照:ハローワークインターネットサービス – 継続雇用給付|厚生労働省

参照:65歳超雇用推進助成金|厚生労働省

2-4. 各種コストを削減できる

定年後に再雇用する場合、採用コストや育成コストの削減が可能です。経験の浅い人材を採用した場合、育成にかかるコストが大きく、周囲の人材にも負担がかかります。

また育成にコストをかけても退職する可能性もあり、かけたコストが無駄になることもあるでしょう。定年後の再雇用であれば退職するリスクも低く、育成コストも抑えやすいです。

3. 定年後に60歳以上の人材を再雇用する2つのデメリット

深刻な顔をする60代のビジネスマン

定年後に60歳以上の人材を再雇用するデメリットは以下の2つです。

  1. 希望者を全員再雇用する必要がある
  2. 新しい人材を雇用する機会が減る

ひとつずつ見ていきましょう。

3-1. 希望者を全員再雇用する必要がある

定年後の再雇用は、高年齢者雇用安定法の改正により、平成25年度以降、希望した人を全員を雇用しなければならないとしています。そのため、仮に再雇用したくない人材や、能力・性格に問題がある人材であっても雇用する必要があるのです。

優れた人材の再雇用に役立つ制度である一方で、すべての希望者を採用しなければいけない点は注意が必要です。

参照:高年齢者の雇用|厚生労働省

参照:高年齢者雇用安定法の改正~「継続雇用制度」の対象者を労使協定で限定できる仕組みの廃止~|厚生労働省

3-2. 新しい人材を雇用する機会が減る

定年後の再雇用制度を導入する場合、新しい人材を雇用する機会が減ります。時間が経つにつれて若い世代が減っていき、若い世代が働きにくいと感じるかもしれません

若い世代が潰れないように、事業者側で配慮する必要があるでしょう。

4. 定年後再雇用後の賃金格差に関する判例

precedentが拡大されている虫眼鏡

定年後再雇用後の賃金格差に関する判例に、ある運輸会社の事件を紹介します。この事件は定年を迎えたあと再度雇用し直された方が、仕事や責任が正社員と変わらないのにもかかわらず待遇が違うと訴えた問題です。

手当

不合理か否か

判断理由

精勤手当

不合理

皆勤を奨励する手当は嘱託社員にも支給したほうが良い

超勤手当

不合理

超勤手当の基礎賃金に精勤手当が含まれていない

能率給および職務給

不合理ではない

歩合給を補完して支給しているから

役付手当

不合理ではない

正社員の中で指定された役職に就いたもののみ支給される手当

住宅手当・家族手当

不合理ではない

正社員への福利厚生である上に、年金開始まで調整金を支給しているから

賞与

不合理ではない

退職金を支給済みであり、会社側が調整金を支給しているから

参照:平成29年(受)第442号 地位確認等請求事件  平成30年6月1日 第二小法廷判決|裁判所 

上記の判例だと、定年前と定年後で賃金に差があったとしても、理由が認められたりほかの手当が支給されたりしている場合は問題ないことがわかります。

5. 定年後に60歳以上の人材を再雇用する5つの注意点

様々な年代の働く女性

定年後に60歳以上の人材を再雇用する際の注意点は以下のとおりです。

  1. 業種の変更をおこなわない
  2. 労働条件を1年で見直す
  3. 手当は原則支給する必要がある
  4. 有給休暇は勤続年数が反映する
  5. 雇用契約を結ぶ前に合意を得たほうが良い

再雇用後のトラブルを防止するためにも、注意点をひとつずつ見ていきましょう。

5-1. 業種の変更をおこなわない

定年後に再雇用する場合は、業種を変更しないように注意してください。業種を変更すると違法だと判断されるケースがあるからです。

実際に自動車関連の企業で正社員として働いていた方が清掃員として再雇用されることになり、損害賠償の請求にまで発展したケースがあります。

参照:全 情 報|全基連

このようなトラブルに発展しないためにも、定年前と同じ業種で雇用しましょう。

5-2. 労働条件を1年で見直す

定年後の再雇用は、労働条件は1年単位で見直したほうが良いです。60歳以上の人材は健康状態が変わりやすい特徴があり、1年後には体調面で変化が出ていることがあります

1年単位で見直すことで健康状態を把握しやすくなり、新しい人材の確保が必要かの判断もできるでしょう。

5-3. 手当は原則支給する必要がある

定年後の再雇用でも手当は原則支給する必要があります。基本的に正社員と同じ待遇を用意しなければいけない決まりがあるため、誤らないよう注意しましょう。

ただし、特定の手当に関しては適切な根拠があれば、待遇を変更しても良いことがあります。正当な理由に当てはまるかどうかで変わってくるため、過去の判例などを参考に決めると良いでしょう。

5-4. 有給休暇は勤続年数が反映する

有給休暇は定年前の勤続年数が反映される点に注意してください。また、有給休暇については、基本的に正社員と同じ条件にする必要があります。

定年後の再雇用で労働日数が変わる場合は、有給休暇の日数が変わるため見直しをおこないましょう。

5-5. 雇用契約を結ぶ前に合意を得たほうが良い

定年後の再雇用をおこなう場合は、雇用契約を結ぶ前に合意を得たほうが良いです。今後の労働条件や雇用条件を掲示した上で、双方で確認を取りましょう。

お互いに合意を得てから契約したほうが、今後トラブルに発展する可能性は減らせます。

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