中小企業における福利厚生の重要性は日増しに高まっています。従業員の満足度と企業の競争力を高めるために、適切な福利厚生の選択と導入が求められます。この記事では、中小企業向けのおすすめの福利厚生とその選定方法、導入によるメリット、さらに福利厚生を充実させるための具体策について解説します。
目次
1. 中小企業におすすめの福利厚
近年では少子高齢化により、人材確保の課題に直面している中小企業は少なくないでしょう。自社の魅力を高めるために効果的なのが「福利厚生」です。
中小企業は大企業と比べると、資金面などから、十分な福利厚生制度を用意できていないケースも多いです。厚生労働省の令和3年就労条件総合調査によると、「法定外福利費」は従業員規模が小さくなるほど、少なくなる傾向があります。
企業規模 |
平均法定外福利費(1人・1カ月) |
1,000人以上 |
5,639円 |
300~999人 |
4,567円 |
100人~299人 |
4,546円 |
39~99人 |
4,414円 |
平均 |
4,882円 |
中小企業が福利厚生を導入する場合、費用対効果を重視することが大切です。ここでは、中小企業向けにおすすめの福利厚生を紹介します。
1-1. 在宅勤務とフレックスタイム制度
現代では働き方改革やテクノロジーの発展により、労働者の価値観は多様化しています。「リモートワークで働きたい」「育児・介護と両立して仕事をしたい」と考える労働者も少なくありません。そのため、在宅勤務制度やフレックスタイム制度といった従業員の都合で柔軟に働き方を変えられる福利厚生は人気が高いです。
1-2. 慶弔見舞金制度の整備
慶弔見舞金制度は、従業員が人生の重要なイベントを迎えた際に、企業からの支援を受けられる制度です。結婚や出産、家族の不幸など、従業員一人ひとりの大切な時に寄り添う姿勢は、企業文化を形成するうえで重要です。このような制度は、従業員の企業に対する忠誠心を高める効果があり、ポジティブな職場環境の構築に貢献します。
慶弔見舞金制度は多くの企業が導入しているため、競合他社に差を付けられないためにも用意しておきたい福利厚生の一つです。また、慶弔見舞金制度にあわせて、慶弔休暇制度を導入するのもおすすめです。
1-3. メンタルヘルスのサポート強化
変化が激しい現代は「ストレス社会」ともよばれることがあります。メンタルヘルスのサポート強化は、今の時代に人気が高まっている福利厚生の一つです。
2020年に公表されている「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」によると、「慶弔休暇制度」「慶弔見舞金制度」「病気休職制度」「永年勤続表彰」「人間ドック受診の補助」の順で福利厚生を導入している企業が多いです。しかし、今後導入したい福利厚生については「メンタルヘルス相談」が1位と発表されています。
メンタルヘルスのサポートを強化するための福利厚生の例として「社内カウンセラーの配置」「ストレスチェックプログラムの充実」があります。ここからは、それぞれについて紹介します。
参考:企業における福利厚生施策の実態に関する調査|独立行政法人労働政策研究・研修機構
社内カウンセラーの配置
人間関係や職場環境に悩みを抱えているけれど、上司や同期などに打ち明けられないという従業員もいるかもしれません。このような状況が長引くと、仕事へのモチベーションが下がったり、健康被害が生じたりする恐れがあります。社内カウンセラーを配置し、職場では打ち明けられない悩みを気軽に専門家へ相談できる環境を整備することで、メンタルヘルスの問題を未然に防止することができます。
ストレスチェックプログラムの充実
ストレスチェックプログラムを充実させることで、従業員のストレスレベルを客観的に評価することができるようになります。必要に応じて個別の対策を講じることで、メンタルヘルスに関連する問題の早期発見・早期介入が可能になります。
ストレスチェックプログラムは、無料版も多く提供されているので、中小企業でもコストをかけずに導入することができます。まずは厚生労働省の「ストレスチェック実施プログラム」を試しに導入してみるのもおすすめです。
人間ドックの補助
従業員の健康は企業の継続的な成長に不可欠です。人間ドックの補助により、従業員は定期的に健康状態をチェックし、生活習慣病などのリスクを早期に発見し、対応することができます。このような健康管理のサポートは、従業員の健康意識を高め、長期的に見て企業の医療費用削減にも貢献します。
1-4. 住宅手当や家賃補助
住宅手当や家賃補助は、特に都市部で生活する従業員にとって大きなメリットとなります。住宅コストの一部を補助することで、従業員の経済的負担を軽減し、生活の質を向上させることができます。
社宅や社員寮を用意するのも一つの手ですが、大企業のように資金力に余裕のない中小企業にとっては難しいかもしれません。従業員の生活に少しでもゆとりをもたせるため、住宅手当や家賃補助の導入を検討してみましょう。
1-5. 資格やスキル取得のための研修やセミナー費用の補助
従業員の自己啓発を支援することは、企業の成長に直結します。資格取得やスキルアップ研修への参加を奨励し、その費用を補助することで、従業員は自己実現を図りながらキャリアアップを目指すことができます。
このような取り組みは、従業員のモチベーション向上に寄与し、企業にとっても高度なスキルを持つ人材を確保・育成するうえで大きなメリットがあります。少ない人材で大きな成果を生み出すために中小企業こそ、資格やスキル取得のための研修・セミナー費用の補助を導入したいところです。
2. 従業員が実際に利用する福利厚生の選定方法
他社が導入している福利厚生だからといって、自社の従業員のニーズにあうとは限りません。ここでは、従業員が利用する福利厚生制度の選定方法のポイントについて詳しく紹介します。
2-1. アンケートによるニーズ調査
従業員のニーズは多様であり、一律の福利厚生プログラムでは対応しきれないこともあります。従業員一人ひとりの声を聞くために、アンケート調査を定期的に実施するのがおすすめです。アンケートを通じて得られた意見を活用して福利厚生の選択・改善に役立てることで、効果の高い福利厚生制度を導入・運用することができます。
2-2. 利用実績の公開とフィードバックの活用
時代とともに従業員が必要とする福利厚生制度は変化します。そのため、福利厚生の利用状況を定期的に公開し、従業員からのフィードバックを積極的に収集することも大切です。
どの福利厚生が好評であるか、どのような改善点があるかを把握することで、より効果的な福利厚生プログラムの構築が可能になります。また、従業員の意見を尊重し、それを福利厚生の改善に活かすことで、従業員の満足度を高めることができます。
3. 中小企業が福利厚生を導入するメリット
ここでは、中小企業が福利厚生を充実させるメリットについて詳しく紹介します。
3-1. 採用活動の際のアピールポイントになる
中小企業の人材確保の課題を解決するには、採用力を強化する必要があります。採用活動の際に、独自性が高く求職者のニーズに応えている福利厚生制度はアピールポイントになります。自社に最適な福利厚生制度を導入すれば、応募者が増加し、優秀な人材を確保することができます。従業員のエンゲージメントが高まる
福利厚生を充実させ、従業員が企業から十分なサポートを受けていると感じることで、従業員のエンゲージメントは高まります。結果として、生産性の向上や定着率の上昇が期待できます。
3-2. 離職率の低減につながる
企業規模が小さいことで従業員の声を聞き入れやすいため、従業員のニーズに合わせた福利厚生を整えることの難易度も低くなります。従業員が働きやすい環境を整えることができれば、従業員のエンゲージメントの向上に繫がるかもしれません。
副業の認可やフレックスタイム制の導入などをおこなうと、従業員が業務時間外の時間で取得したスキルや情報を実業務に活かすような動きも出てくる可能性があります。
従業員のキャリアプランに合わせた選択が可能になる環境を提供することで従業員の定着率も高まるでしょう。
4. 中小企業で福利厚生を充実させるには代行サービスの利用もおすすめ
中小企業も競合優位性を獲得するため、福利厚生に力を入れることは大切です。しかし、福利厚生を充実させるには、多大な時間とコストがかかるので、中小企業にとっては大きな負担となることがあります。
そこで、中小企業向けの福利厚生代行サービスを利用するのもおすすめです。代行サービスを利用すれば、コストを削減し、スムーズに福利厚生を導入することができます。