「クラッシャー上司とは?」
「どのように対処すればいいのか?」
上記のような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
クラッシャー上司とは、職場で高圧的な態度をとり、部下に過剰なプレッシャーを与える上司のことです。クラッシャー上司がいる場合、部下のモチベーション低下だけでなく、組織全体の生産性低下などにつながるため、適切に対応しましょう。
本記事では、クラッシャー上司の特徴や組織への影響、早期発見のポイントを解説します。効果的な対処法についても紹介するので、職場環境を守るための適切な対応を学びましょう。
目次
1. クラッシャー上司とは
クラッシャー上司とは、部下に過度な指導や無理な要求を繰り返し、精神的に追い詰める管理職のことです。
クラッシャー上司のもとでは、部下が強いプレッシャーを感じ、精神的な負担が大きくなります。その結果、メンタルヘルスの悪化につながり、休職や退職を余儀なくされるケースも珍しくありません。
似た言葉に「パワハラ上司」がありますが、両者は異なります。パワハラ上司は憂さ晴らしや八つ当たりを目的に、罵倒や暴力で部下を恐怖に陥れるのが特徴です。
一方、クラッシャー上司は「自分が正しい」との信念に基づいて部下を追い詰めます。一見すると正当な指導にみえる点が厄介です。
2. クラッシャー上司が生まれる理由
クラッシャー上司が生まれる理由には、日本の「新卒一括採用」や「年功序列」といった仕組みが関係しています。
上記の制度では、スキルよりも「組織になじめるか」や「上司の指示に従いやすいか」が重視されるため、上下関係が強くなりやすいのです。そのため上司が無理な指示をしても、それが当たり前とされる風潮がありました。
また、日本企業には「みんな同じ価値観を持つのが良い」との考え方や「社員は家族」といった文化も根強く存在します。企業の同調圧力や家族経営的な考え方は、上司が部下を追い詰める行動を正当化しやすくする要因です。
しかし近年、働き方改革の推進により、従業員が働きやすい環境作りが進められ、クラッシャー上司を減らす取り組みが注目されています。
3. クラッシャー上司の特徴|チェックリスト付き
以下のような特徴を持つ上司は、クラッシャー上司である可能性が高くなります。
チェック |
特徴 |
特徴の説明 |
仕事のスキルが高い |
成果を出す能力が高く、上司として優秀にみえるが、その分部下に過剰な負担をかけがち。 |
|
責任を部下に押しつける |
問題が発生した際、自分の責任を認めず部下に責任を転嫁する傾向がある。 |
|
部下に高圧的な態度をとる |
威圧的な態度や口調で接し、部下が意見を言いにくい環境を作る。 |
|
自分の考えに固執する |
自分の考えが「絶対に正しい」と信じ、他者の意見を受け入れない。 |
|
部下をほめられない |
部下の成果や努力に対して適切な評価やポジティブなフィードバックを与えない。 |
|
部下に高いレベルを求める |
部下の能力や状況を考慮せず、自分と同等、またはそれ以上の成果を求める。 |
|
共感力が低い |
部下の気持ちや状況を理解しようとせず、精神的な負担を軽視する。 |
|
承認欲求が人一倍強い |
周囲に認められることを強く求め、仕事にすべての情熱を注ぐ。 |
上記のリストで該当する特徴が多い場合、職場にクラッシャー上司が存在する可能性が高いです。
チェックリストを活用し、職場にクラッシャー上司がいないか、今一度確認してみてください。
4. クラッシャー上司が組織に及ぼす影響
クラッシャー上司が組織に及ぼす影響は、以下の3つです。
- 離職率が高くなる
- 業務効率が低下する
- 会社イメージが下がる
4-1. 離職率が高くなる
クラッシャー上司がいる職場では、離職率が高くなる傾向があります。理不尽に叱られたり、無理な仕事を押し付けられたりすると、部下は大きなストレスを感じるためです。
また、一方的な指示が続く環境では、部下が自分の成長やキャリアの可能性を見いだせなくなります。職場に留まる意欲を失い、退職を選ぶケースが少なくありません。
優秀な人材が次々と流出し、チームだけでなく、組織全体の活力が失われるおそれがあります。
4-2. 業務効率が低下する
業務効率の低下も、クラッシャー上司がもたらす弊害の一つです。
上司が自分の考えに固執し、部下の意見や提案を受け入れないことで、効率的な改善策が採用されにくくなります。
また、部下が上司の顔色をうかがいながら仕事を進めることで、業務スピードや判断力が低下するケースも少なくありません。
クラッシャー上司がいると、チーム全体の生産性が下がり、最終的には組織全体に悪影響が広がる可能性があります。
4-3. 会社イメージが下がる
クラッシャー上司は、会社のイメージを大きく損なう原因ともなります。現代は口コミの時代で、インターネットを通じて外部にも広まりやすいからです。
口コミが広まると、優秀な人材の応募が減少するほか、取引先や顧客からの信用を損なうおそれがあります。
従業員が休職や退職に追い込まれ裁判などのトラブルに発展すれば、企業の評判はさらに悪化するでしょう。
クラッシャー上司を放置すれば、結果として企業イメージの低下を招きかねません。
5. クラッシャー上司を早期に発見するためのポイント
クラッシャー上司をいち早く発見する方法は、以下の3通りです。
- 社員へアンケートを実施する
- 離職率が高いチームを検証する
- 匿名の相談窓口を設置する
5-1. 社員へアンケートを実施する
クラッシャー上司の存在を早期に発見するためには、従業員アンケートを実施することが有効です。
アンケートを通じて、職場環境や上司に対する意見を収集することで、問題の有無を早期に発見できます。
アンケートを実施する際は、社員が率直に意見を記入できるよう「匿名形式」を採用しましょう。匿名性を確保することで、従業員は安心して実態を伝えられます。
5-2. 離職率が高いチームを検証する
離職率が特に高いチームを検証することが、クラッシャー上司の存在を発見する有効な方法です。
クラッシャー上司のもとで働きたいと思う人は少なく、離職率の高さは上司に問題がある可能性が考えられます。
チームや部署ごとの離職率をデータとして分析し、ほかのチームと比較して異常に高い場合は、原因を掘り下げる必要があるでしょう。
5-3. 匿名の相談窓口を設置する
クラッシャー上司を発見するために、匿名で利用できる相談窓口を設置しましょう。
被害者の中には、同じ部署の同僚や上司に相談できない人も少なくありません。相談窓口を設置し、匿名で安心して相談できる環境を整えることで、隠れたトラブルを早期に把握できます。
社員が気軽に相談できる環境を整えれば、クラッシャー上司の問題を減らせるでしょう。
なお、窓口の担当者には、人事部の社員や外部の専門家を採用することが一般的です。
6. 企業がするべきクラッシャー上司への対処法
クラッシャー上司の問題を解決するために、企業が取るべき対策は以下の3つです。
- 再教育を実施し適切なマネジメント手法を学ばせる
- クラッシャー上司のメンタルをサポートする
- 行動改善が見られない場合は厳正な処分をおこなう
6-1. 再教育を実施し適切なマネジメント手法を学ばせる
クラッシャー上司へは再教育を実施し、適切なマネジメント手法を学ばせることが重要です。
クラッシャー上司の多くは、自身の指導方法が問題であることに気づいていません。教育を通じて意識を改める必要があります。
具体的には、以下の研修の実施などが有効です。
- コンプレックス研修
- リーダーシップ研修
- フィードバック研修
研修を実施することで、上司が自らの行動を客観的に認識でき、マネジメント力の向上につながるでしょう。
6-2. クラッシャー上司のメンタルをサポートする
クラッシャー上司のメンタルを支援することも、問題を解決する方法の一つです。
クラッシャー上司は部下に厳しく接する一方で、自分自身も大きなプレッシャーを抱えています。過去に厳しい指導を受けた経験から、「厳しく指導することが正しい」と思い込んでいる場合も少なくありません。
例えば、上司を認めて褒めることで、自己肯定感を高め、コミュニケーションの質を改善できます。上司が「自分も大切にされている」と感じる環境を整えれば、自然と部下への接し方も変わるでしょう。
上司のメンタルをサポートすることで、職場全体の心理的安全性の向上につながります。
6-3. 行動改善が見られない場合は厳正な処分をおこなう
クラッシャー上司の行動が改善されない場合、企業は厳正な処分を検討する必要があります。
処分の内容は、パワハラの程度や影響を考慮し、以下のような適切な措置を講じましょう。
- 注意・指導
- 降格
- 配置転換
- 懲戒処分
もし企業が適切な対応を取らなければ、部下は「会社はハラスメントを容認している」と感じ、不信感を抱く可能性があります。
適切な処分をおこない、組織全体の信頼を守りましょう。
7. クラッシャー上司に適切に対応して働きやすい職場環境を作ろう
クラッシャー上司とは、行き過ぎた指導によって部下のモチベーションを低下させる上司のことです。クラッシャー上司を放置すると、離職率の上昇や業務効率の低下など、多くの悪影響を及ぼします。
問題を早期に発見し、適切に対処することが重要です。「従業員アンケート」や「相談窓口」を活用し、職場の実態を把握しましょう。
また、クラッシャー上司には教育や必要に応じた処分をおこない、職場環境の改善を進めることが不可欠です。
クラッシャー上司に適切に対応して、だれもが安心して働ける職場を実現しましょう。