コンプライアンスとは?遵守のための取り組みや違反事例をご紹介

コンプライアンス(Compliance)とは、直訳すると「要求や命令に承諾、追従すること」という意味です。

企業経営では法令遵守と解釈され、社会秩序に反さずに公正・公平に業務を行うことを意味しています。

しかし、最近では単なる法令遵守ではなく、「社会の規範や倫理観から外れていないか」「人間の道徳に反するものではないか」といった、より広範囲の判断軸を持つものに変化してきています。

情報漏えいやハラスメントが注目されている昨今では、「社会で明文化されている法令を守ること=コンプライアンス」と捉えるのではなく、法律・法令ではっきり定められていないことでも、社会倫理に従って判断し企業経営を行うことが求められています。

注目度の高まる「コンプライアンス」

コンプライアンスへの注目度の高まりの発端は、政府主導の規制緩和により企業の経済活動に大きな責任が生まれたことが背景にあります。

1980年代に国内で経済成長を目指して経済を独占していた3公社の民営化が実施されたことをきっかけに、企業に対するさまざまな規制は排除されました。

より自由に企業経営や経済活動がおこなわれるよう法整備が進む中で、各企業が持つ責任も増えています。

いくら取引が自由になったからと言っても、遺伝子組み換え食品を安易に使用したり、原子力を制御なく使用したりして、日本国民の健康が損なわれては意味がありません。

政府は、企業間取引の規制を取り除き経済活動の自由度を引き上げる代わりに、各企業に対して情報公開を求め、自己責任体制を強化するように指導したのです。

しかし、近年になっても企業の不正や不祥事は相次いでいます。

ハラスメント問題・残業代未払い・従業員の過労死のような社内で起きるものから、業績アップや短絡的な収益目当ての違法行為など社外の信頼を失う事象まで、数多くの事例が起こっています。

次章で、2019年度の不祥事事件の事例を具体的に確認してみましょう。

【2019年】反響の大きかったコンプライアンス違反事例

数万人を抱える知名度の高い大企業であっても、たった1度でも不祥事案件を起こしてしまうと消費者・取引先企業からの信頼を失い、大きな経営損失となっています。

2019年に起きた不祥事事件の中で、反響の大きかった違反事例をご紹介します。

《大手生命保険会社での不適切な取引》

ある大手生命保険会社では、新規加入手数料の収入を目的として、顧客に不利な契約を提案し加入させたとして世間からの信頼を大きく失いました。生命保険は既存契約への支払いを元金として新規契約に移行することが可能ですが、顧客を騙し、既存契約を解約してから新契約に加入するよう案内していたとのことです。保険の販売員に対する信頼を利用して「この契約は古いので一度解約して新しいものへ乗り換えましょう」と顧客を誘導することは非常に悪質な行為であるにも関わらず、22万件を超える不正契約が見つかりました。

この結果、2019年4月~12月の期間、新規契約数は前年比52%減となり、企業経営に大きな打撃を与えました。

《大手人材サービス会社の内定辞退予測販売》

ある大手人材サービス会社が運営する新卒採用サービスにて、学生のサイト閲覧履歴や行動を数値化し、内定辞退率をスコア化。この内定辞退予測のデータを商品として企業に販売していたことに批判が集まり大きな話題となりました。「学生のサイト閲覧履歴やサイト内での動き」をスコア化して販売することは、個人情報保護法、職業安定法、独占禁止法などさまざまな法令に抵触するのではないかと見られています。

この事例では、コンプライアンスが単なる法令遵守ではなく、社会規範に反しているかという視点で判断されていることがわかります。

このことを発端として、この企業の新卒採用サービスの利用を控えたいと考える就活生も多くなったようです。

個人がWebサイトにアクセスする際にCookieという情報が取得されますが、このデータは現在リターゲティング広告などさまざまなWebサービスに利用されています。個人情報保護法ではこのCookie情報は個人情報に当たらないとされていますが、法令違反をしていないと言い切ってこの個人データを活用していいのかどうかは、今後の焦点になりそうです。

コンプライアンス違反の要因となる3つの要素

コンプライアンス違反の対策を実施するために、まず、コンプライアンス違反が起きやすくなる3つの要素を確認してみましょう。

<1>コンプライアンス違反をする「機会」がある

社内のシステムが貧弱でハッカーから狙われやすい、従業員がいつでも機密情報に触れられるようになっており悪用する機会があるなど、仕組みの部分でコンプライアンス違反を防ぎきれていないケースがあります。

内部統制を実施し、最新のコンプライアンス違反事例を勉強するなど、コンプライアンス違反をしてしまう機会を最小限にしていく姿勢が大切です。

<2>コンプライアンス違反を起こす「動機」がある

営業に対する過剰なノルマや、社会的倫理に反したインセン設定をすることは、コンプライアンス違反を起こす動機となり得ます。

インセン欲しさにルールを逸脱してしまう、上司からのプレッシャーを逃れるためにコンプライアンス違反をしてしまう、部下に過剰なマネジメントをしてパワハラになってしまうなどを避けるための対策が必要です。

<3>コンプライアンス違反を「正当化」してしまう

コンプライアンス違反の機会や動機をなくすため、日ごろから芽をつんでいても、コンプライアンス違反の事象を正当化してしまっては意味がありません。

不祥事を正当化しないために、従業員に対してコンプライアンス研修を重ね、啓蒙活動を続けることが重要です。

コンプライアンス違反の具体例

コンプライアンス違反にならないために意識すべき範囲は非常に広くなっています。

本人は良かれと思っている行動もコンプライアンス違反になっている可能性もありますので、具体的な違反事例を確認してみましょう。

①開示すべき情報を消費者に提示せずに販売をする
かんぽ生命のコンプライアンス違反事例でもわかる通り、消費者にとって不利益になる情報を開示せず、メリットばかりを伝えてサービス販売をすることはコンプライアンス違反になります
②残業代欲しさに無駄に残業をする
毎月の残業代を計算して、生計を立てている方は少なくないでしょう。残業するほどの業務は残っていないにも関わらず、残業代目当てで無駄に残業をし続けることはコンプライアンス違反になる可能性があります。
③根拠が無いのに「業界ナンバー1」の表示をしてしまう
商品のPR文で「業界ナンバー1!」という表現をしていませんか?知らず知らずのうちに競合他社の優位性が上がり、ナンバー1であることの根拠がないにも関わらず、1位と謳ってしまうと景品表示法違反というコンプライアンス違反になってしまいます。

コンプライアンス違反しないために企業ができる施策

企業がコンプライアンス違反を犯さないために、日ごろからどのようなことに気を付けたら良いかポイントをまとめました。

<1>従業員の行動基準・基本方針を作成する

企業のクレドを制定するように、まずは従業員に対する行動指針を作成しましょう。

従業員が日々お客様と接する上でどのようなことに気を付けたらいいか、どのような行動がルール違反になり得るのか、企業ごとにルールを明文化することが大切です。

ルールを定めるだけではなく、従業員に対して「なぜコンプライアンスが重要なのか」「コンプライアンス違反をしたときに、どのような罰則があるのか」をセットで伝えることもポイントと言えます。

<2>CCOを置き、相談窓口を設ける

CCO(Chief Compliance Officer)として、コンプライアンスに関連する事象を統括、管理する役職を設けている企業があります。

また、コンプライアンスに関する相談窓口を設けて、小さなことでも従業員が相談できるような環境づくりを行うことも効果的です。

<3>コンプライアンス違反が起きないか監査を実施する

コンプライアンスに関する行動指針を作成しても、ルール違反をしているかどうかチェックする部門がないと意味がありません。

ハラスメントや情報漏えい事故は社内でもみ消してしまう可能性もあるため、日ごろのメールをモニタリングする、定期的に監査を入れて、全従業員がコンプライアンスの基準に沿って行動ができているか確認をしていきましょう。

<4>情報アクセス権限を制御し環境を整える

「情報漏えいは危険です!」と従業員に周知するよりも、社外から社内イントラにアクセスをさせないことや、業務に関係のないWebページにはアクセスをさせない等、アクセス権限を制御してしまうことも効果的でしょう。

<5>コンプライアンスに関する専門家を招きセミナー・研修を実施する

コンプライアンスに関する啓蒙活動は、企業の売上に直接つながることではないため、積極的に実施できない場合もあるでしょう。

社内にCCOの役職を設けたり、自社内で啓蒙活動を実施することが困難な場合は、外部の研修講師に依頼をしてみてはいかがでしょうか。

コンプライアンス研修を専門にしている講師と、人事・コンプライアンス担当間で打合せを行い、テーマ別または従業員の階層別の研修を依頼することが可能です。

まとめ

今回はコンプライアンスの意味を正しく理解し、企業が取り組むべき施策をご紹介しました。

社会的規範、社会の倫理に反する行動とは何か、自社で改めて行動基準を作成し、従業員に落とし込むことから始めましょう。

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