賃金台帳は、法律によって作成と保存が義務付けられている重要書類のひとつです。記載事項が細かく決められているだけではなく、保存期間や管理方法についてもルールがあるため、しっかりと理解しておきましょう。
この記事では、賃金台帳の保存期間や違反した場合の罰則、管理上の注意点についてわかりやすく解説します。労働基準監督署から指摘されたり、罰金が科せられたりしないよう、チェックしておきましょう。
関連記事:賃金台帳とは?記載事項や具体的な書き方、保管期間を詳しく解説!
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法定三帳簿とは、「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の3種類の帳簿のことです。
いずれも、雇用形態に限らず、従業員を雇用する際には必要となるうえ、労働基準法で保存期間や記載事項などが決められているため、適切に調製しなければなりません。
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1. 賃金台帳の保存期間は5年!起算日にも要注意
賃金台帳は、5年間保存しなければなりません。[注1]
以前は3年間の保存でしたが、令和2年4月の労働基準法改正によって5年に変更されているため注意しましょう。ただし、経過措置として、当分の間は3年の保存でもよいとされています。
1-1. 保存期間の起算日は最後に賃金台帳に記載した日
賃金台帳の保存については、起算日に注意しなければなりません。保存期間の起算日は、賃金台帳に最後に記入した日です。賃金台帳を作成した日などとは異なるため注意しましょう。
保存期間の起算日は、書類によっても異なります。たとえば労働者名簿の場合、保存期間の起算日は、労働者の死亡や退職・解雇の日です。災害補償に関する書類の場合は、災害補償を終えた日が起算日となります。書類ごとに保存期間の起算日は異なるため、混同しないように注意しなければなりません。
2. 賃金台帳の保存期間に違反した際の罰則
賃金台帳の保存期間が過ぎる前に破棄したり紛失したりすると、罰則を受ける可能性があります。賃金台帳に記載すべき項目が抜けている場合や、更新を怠っている場合も同様です。状況によっては30万円以下の罰金が科せられるケースもあるため注意しましょう。[注2]
2-1. 賃金台帳を保存していないと労働基準監督署から是正勧告を受ける
賃金台帳は、定期的に提出するような書類ではありません。ただし、労働基準監督署による臨検監督などでは提出する必要があるため、しっかりと作成したうえで適正に保存しておくことが大切です。
臨検監督とは、労働環境や賃金の支払い状況に関する抜き打ち検査のことです。賃金台帳などの重要書類が正しく作成されているかもチェックされます。記載事項が抜けている、保存期間の違反がある、といった場合は前述のとおり罰則の対象となるため注意しましょう。
とはいえ、かなり悪質な場合を除き、いきなり罰則が科せられることはありません。是正勧告を受けるケースが一般的で、労働環境の改善や賃金台帳の修正などを求められます。賃金台帳の記載事項や保存方法について指摘を受けた場合は、すみやかに改善して是正完了の報告をしましょう。是正勧告を無視すると、実際に罰則を科せられてしまいます。
このような罰則を受けないためには、事前に法律に則った賃金台帳の保存方法を理解しておく必要があります。当サイトでは、賃金台帳の作成・保存方法を解説したガイドブックを無料で配布しています。賃金台帳に関する知識をこれ一冊で理解できるため、適切に賃金台帳を作成・保管したい方は、こちらからダウンロードしてご活用ください。
3. 賃金台帳の保存方法に関する5つのポイント
賃金台帳を正しく保存するうえでは、更新日を記載しておく、事業所ごとに保存する、といったポイントに注意しましょう。以下、それぞれの注意点について詳しく解説します。
① 賃金台帳に更新日を記載しておく
保存期間を間違えて破棄しないよう、賃金台帳に更新した日付を書いておくとよいでしょう。保存期間の起算日は最後に記入した日であるため、更新日を書いておくことで管理を効率化しつつ、間違いを防止することができます。
② 賃金台帳はデータとして保存することも認められている
賃金台帳は、無理に紙ベースで作成して保存する必要はありません。パソコンで作成して、データとして保存することも認められています。[注3]
ただし、以下のような条件を満たしたうえで保存しなければなりません。
(1) 労働基準法で定められた記載事項を網羅していること
(2) 必要に応じてパソコン上に表示したり印刷したりできること
(3) 誤って消去されないよう保護されていること
(4) 長期間にわたって保存できること
業務効率化やペーパーレス化を図るために、賃金台帳をデータとして保存している企業も多いでしょう。データで保存するときは、誤って消去したり、パソコンの故障によりデータが消えてしまったりするケースもあります。必要に応じてバックアップを取るなど、安全な方法で管理していきましょう。
③ 賃金台帳は事業所ごとに保存する必要がある
賃金台帳は、支社や事業所ごとに保存しなければなりません。各事業所で、従業員の労働環境や賃金の支払い状況を確認する必要があるからです。本社でまとめて作成して保存しているという場合は、支社や事業所にも賃金台帳を置くようにしましょう。
賃金台帳をパソコンで作成し、データとして保存している場合も、支社や事業所へ配布しておく必要があります。クラウド上のサーバーなどに保存しておき、どこからでもアクセスして表示したり印刷したりできる方式も認められています。自社の規模や状況に応じて、最適な方法を選択しましょう。
④ 賃金台帳はいつでも提出できるような状態にしておく
賃金台帳は、紙で保存する場合でもデータとして保存する場合でも、いつでも提出できるような状態にしておくことが大切です。単純に書式があるだけではなく、最新の状態に更新していく必要もあります。基本的には、給与の支払いごとに更新していきましょう。
賃金台帳は、労働基準監督署に提出を求められる場合もあります。焦ることがないよう、随時更新して、すぐに対応できるようにしておくことが重要です。便利な勤怠管理システムなどを導入すると、更新作業を効率化することができるでしょう。
関連記事:賃金台帳の写しが必要なケースとは?写しで対応できないケースや注意点を解説
⑤ 賃金台帳の管理担当者への教育をしっかりおこなう
賃金台帳の管理担当者への教育も大切です。賃金台帳の保存期間を間違えて破棄してしまったり、更新を忘れたりすることがないよう、担当者へしっかりとルールを共有しておきましょう。
賃金台帳の管理に関するマニュアルを作っておくのもよい方法です。管理担当者のミスを防止できるような環境を構築しておきましょう。担当者が変更となるときは情報伝達がおろそかになりがちなため、丁寧に引き継ぎをおこなうことが大切です。
4. 賃金台帳は5年間しっかりと保存しよう!
今回は、賃金台帳の保存期間や違反した場合の罰則、保存上の注意点などを解説しました。賃金台帳は、最後に記入した日を起算日として、5年間保存しなければなりません。誤って破棄してしまうと、30万円以下の罰金が科せられる場合もあるため注意しましょう。
事業所ごとに保存する、いつでも提出できるようにしておくなどのルールにも注意しなければなりません。データとして保存する場合は、必要に応じてパソコン上に表示できる、誤って消去されないよう保護しておく、といった対応が必要です。賃金台帳は、法律によって作成と保存が義務付けられている重要な書類であるため、ルールを理解したうえで適切に管理しましょう。
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法定三帳簿とは、「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の3種類の帳簿のことです。
いずれも、雇用形態に限らず、従業員を雇用する際には必要となるうえ、労働基準法で保存期間や記載事項などが決められているため、適切に調製しなければなりません。
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