「95%がお金の不安を抱えている」介護業界へのアンケート結果から導く「社員の幸せを考えた経営」|ベター・プレイス森本 |HR NOTE

「95%がお金の不安を抱えている」介護業界へのアンケート結果から導く「社員の幸せを考えた経営」|ベター・プレイス森本 |HR NOTE

「95%がお金の不安を抱えている」介護業界へのアンケート結果から導く「社員の幸せを考えた経営」|ベター・プレイス森本

株式会社ベター・プレイスの森本新士と申します。

介護や保育といった福祉業界は常に人手不足と言われ、人材定着が大きな課題となっています。離職の要因としては低賃金が筆頭に挙げられていますが、その向こうにあるのは「このままでは将来が心配」という経済的不安です。

今回の記事では、弊社が行った「介護士へのアンケート」結果を参照しながら、金融の世界に25年以上携わってきた私、森本が、従業員が抱える「お金の不安」をいかに解消するか、それによって優秀な人材をどう会社に定着させるか、さらに発展して「社員の幸せを考えた経営」について解説します。

森本新士(もりもとしんじ) | 株式会社ベター・プレイス

アリコジャパン(現メットライフ生命)、スカンディア生命(現東京海上日動あんしん生命)を経て2007年に独立系の運用会社を起業するも、経営者としての経験不足とリーマンショックが相まってお金が集まらず自ら設立した会社を追われる。痛恨の想いを糧に2011年に創業したベター・プレイスは会社設立来、二桁増収を続ける。その後、2018年に確定給付企業年金基金「福祉はぐくみ企業年金基金」(以下、 「はぐくみ基金」)を設立。同基金は設立4年で加入者数3万人・資産残高130億円を突破。公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員、1DCプランナー。

1. 介護従事者の80%は「やりがい」を感じているが、95%が将来に「お金の不安」を抱えている

弊社では、介護従事者の「仕事とお金の意識」に関する実態調査を2022年9月に行ったところ、次のような結果がでました。

さまざまな課題がある介護業界ですが、仕事に対するやりがいを感じている方が9割近くいらっしゃることに驚きました。他の業種と比較して在籍年数が短い傾向があるため、やりがいを感じていない人が多いのではないかと考えていたからです。

しかし、実際は「仕事に対してやりがい」を持ち、介護や福祉に携わることに意義を感じている方が多いという結果に感銘を受けました。 

ただ、その一方で「将来のお金に不安を感じる」方が非常に多いことは懸念すべき事項です。実に96%の方が、将来に「お金の不安」を抱えていると回答しています。

給与水準で見ると、いわゆるサービス業(飲食店等)の次に介護業界は低いのが現実です。現在の給与が低ければ、お金の心配をするのは当然でしょう。もちろん「毎月の貯蓄をしている」と答えた方は、7割以上になります。

ところが、税制優遇がある年金制度、NISAやiDeCoを含めた投資をしている人はわずか2割。投資と聞いただけで「無理」と思ってしまう人が多いのかもしれません。


 金融庁が出した金融レポート2022によると、実際に資産運用を行っている人は約27%です。そう考えると全般的に給与水準が高くない介護業界で20%というのは納得できます。

しかし、それにしても20%しか投資の恩恵にあずかるアクションを行っていない現実は、非常にもったいないと感じます。

欧米、アメリカでは約70%の人が自分の金融知識に自信をもっているそうですが、日本で十分な金融知識があると思っている人はわずか11%程度です。

そもそも日本人は経済に対する関心が薄く、子どもの頃から金融を学ぶ機会もなく、「投資はギャンブル」というイメージがいまだに強いことも、資産運用に対するハードルを高くしているのではないでしょうか。

2. 給与の大幅アップが難しいなら「企業年金」の整備を!

「給料が少ないのに投資ができるのか」と考える人も多いかもしれません。実は、資産づくりをするうえで最もパワフルなツールが「長期投資」です。長期投資は決してお金持ちのためにあるわけではありません市井に生きる人々にこそぴったりの資産形成方法なのです。

日本はここ30年ほど給料水準が上がらずにいます。しかし、世界経済は1980年以降で平均年率3.5%(※出典:日本総研HP「ポストコロナの世界経済展望」)の成長を続けており、この40年間で給与水準が4倍になるほど成長しています。

「海外の方が稼げるから、海外に行けばいい」という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、現実的に将来のお金に不安を感じる全ての人が、日本を出て働けるわけではありません。

それなら「お金」に海外で働いてもらえばいいのです。たとえば、世界の先進国の会社に投資をする投資信託を毎月2万円買っていたら、この30年間で1,200万円を超えるほどにもなるのです(元本は720万円)。これは「お金」に海外で働いてもらう例にほかなりません。

さらに、その投資を自社で行えるのが、「企業年金」制度です。少額から無理なく投資が行え、効率的な資産形成が可能です。企業年金を通じた将来の資産形成に有利な積立によって、社員の皆さんは「経済的な安心」を手に入れられます。

人材を定着させるために、退職金制度として企業型確定拠出年金(企業型DC)あるいは確定給付企業年金(DB)の導入をしている企業は多いです。退職金制度がしっかり整っていることで「この会社なら安心して長く働ける」と感じる人は多く、実際に退職金制度のある会社とない会社の離職率を比べると、実に20%近い差が出ています。

明日から社員の給与を大幅に上げるのは無理な相談です。しかし、企業年金を導入すれば、社員は少額の積立から始めて、それが退職金ともなり、老後の資金ともなります。

会社にとっても節税効果があり、社員が安心して働く環境ができれば業務効率も上がります。まさに「社員・経営者・会社」の三方良しです。「お金の不安」を解消し「将来への安心」につなげる魅力ある福利厚生こそ、今すぐ企業・法人ができる人材定着の解決策と言えます。

ベター・プレイスでは企業型確定拠出年金(企業型DC)の運営管理機関業務を行っているほか、「はぐくみ基金」という、運用が苦手な人たちに代わって基金が運用を行い、本人は積立額を決めるだけという簡単な企業年金制度を普及推進しています。

企業型DCは社員が自分で「運用商品」を選んで資産形成ができますが、そのために企業側は社員に対して「金融教育」を行わなくてはなりません。大企業ではDC導入が進んでいる一方で、中小企業ではなかなか導入が進まない理由は、この点にもあるでしょう。

また、社員にとっても「自分で金融商品を選び、運用する」ことへのハードルが高く感じられる方も多いようです。

3. 社員を大切にしている企業は人材確保にも成功している

実際に私たちがサポートした名古屋にある会社の話をします。それまでは投資をやったことのなかった経理担当の女性が、会社でのDC導入と同時に加入してくださり、その後の7年の間に資産を1.6倍に増やしました。

そして、その女性は、その他の社員に向けた「金融教育」の場で、自らの運用と実績をすべて公開してくれたのです。

ごくごく一般的な社員さんが企業型DCに加入し、少しずつ投資を学んでコツコツ続けていたら「資産が7年間で1.6倍になった」。その事実ほど、リアルに響くものはありません。そして「はじめの一歩」を踏み出すことが、とても大切な実例です。

企業年金は300名以上の会社における導入率は7割近くありますが、100名未満規模の会社になるとわずか14%と低いのが現状です。

中小企業だからできないわけではありません。上記の女性が所属する企業もいわゆる中小企業ですし、弊社の「はぐくみ基金」や企業型DC加入事業者は10人以下の小規模な会社も少なくありません。

私が日々お付き合いすることの多い保育・介護業界は人材の確保に苦労している法人が多くいらっしゃいます。そんななか、企業型DCや「はぐくみ基金」を導入して、従業員に安心して長く働いてもらおうと考えていらっしゃる経営者はここにきて急速に増えている実感があります。

そして、人材の確保に成功している法人こそ、心の底から従業員を大切にしている経営者が多く、「理念経営」を実践し、退職金や年金制度の整備など福利厚生制度を整えていらっしゃいます。

4. 「企業年金制度」は社員の将来的な資産形成に大きく影響する

人生100年時代を迎える中で、リタイアしてからの人生は、働いている期間と同じくらいあります。会社として「うちで働いている間は給料払う、あとは知らないよ」では無責任ではないでしょうか。

社員の方々の人生を想像して、その方たちが70歳、80歳になっても幸せに暮らせるように、給与を払う側として、未来の資産形成を始めるきっかけをつくり、安心を与える経営はとても重要でしょう。

先立つものがなければ人は不安になりますし、将来の安心は社員の幸せのベースとなるべき大切なものです。DCや「はぐくみ基金」の制度があるかないかで、将来的な資産は1,000万円ほど変わってしまいます。

5. 最後に

給料が上がる様子

人口減少が進む中で、給与水準を大幅に上げていくのは難しいことに気づいているからこそ、岸田内閣は企業年金をはじめとした投資制度を整え、資産所得倍増計画について語っています。経営者や人事担当者は、こうした時代の変化について常に敏感であるべきです。

それには、経営者・人事担当者のマインドセットを変える必要があります。ひとりの社員の視点で考えれば、まずは少額でも積立を始めることで「こうして資産を作っていくんだ」と実感し、より豊かな人生設計をたてられるようになります。

人事担当者は、人を採用するだけでなく「安心して長く働ける整備を整えよう」と行動を起こすことで、優秀な人材を定着させることが可能になる。経営者は、事業を行いながら、それを経営に活かしていくことで会社を成長させられる。成長して得た利益をさらに社員に還元していくことで、好循環がまわり始めます。

働く人が安心して力を発揮できれば会社の成長も期待できます。「人にやさしい会社」ひいては「人にやさしい社会」が、縮み続ける日本経済を立て直す力を持っているのだと私は信じています。

--------------------

\今抑えておきたい法改正情報をまとめてご紹介/

--------------------

\メールマガジン登録無料/
人事/HR業界の最新情報を毎週チェック!

HR NOTEメールマガジンでは、人事/HRに関する事例やサービスリリース情報など、最新Newsから今すぐ使える他社実践ノウハウまでが簡単にわかるインタビュー記事やセミナー情報をコンテンツとして配信しています。

「他社が実施している施策を自社でも活かしたい」「人事/HR業界の最新動向やトレンドを知りたい」とお考えの方は、ぜひHRNOTEメールマガジンをご活用ください。

公式アカウントをフォローして毎日記事をチェック!

関連記事

社会保険料の納付方法は?納付期限や納付時の注意点をわかりやすく解説

社会保険料の納付方法は?納付期限や納付時の注意点をわかりやすく解説

2023.02.02
HR NOTE編集部
通勤手当に所得税が課税されるケース・されないケースを紹介

通勤手当に所得税が課税されるケース・されないケースを紹介

2023.02.01
HR NOTE編集部
賞与に対する所得税率の求め方や計算方法を詳しく解説

賞与に対する所得税率の求め方や計算方法を詳しく解説

2023.02.01
HR NOTE編集部
所得税は毎月変わる?仕組みやチェック項目を詳しく紹介

所得税は毎月変わる?仕組みやチェック項目を詳しく紹介

2023.02.01
HR NOTE編集部
賃金支払いの5原則とは?違反したときの罰則や例外を詳しく紹介

賃金支払いの5原則とは?違反したときの罰則や例外を詳しく紹介

2023.01.31
HR NOTE編集部
労働基準法の第33条による「災害時の時間外労働等」を徹底解説

労働基準法の第33条による「災害時の時間外労働等」を徹底解説

2023.01.30
HR NOTE編集部
労働基準法第41条の内容は?対象項目や対象となる労働者を紹介

労働基準法第41条の内容は?対象項目や対象となる労働者を紹介

2023.01.30
HR NOTE編集部
労働基準法第41条第2号の「管理監督者」の意味や特徴を詳しく解説

労働基準法第41条第2号の「管理監督者」の意味や特徴を詳しく解説

2023.01.29
HR NOTE編集部
労働基準法による年間休日とは?規定や最低ラインを徹底解説

労働基準法による年間休日とは?規定や最低ラインを徹底解説

2023.01.28
HR NOTE編集部