調整手当とは?目的や種類・給与計算方法について解説 |HR NOTE

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調整手当とは?目的や種類・給与計算方法について解説

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調整手当(調整給)とは、従業員間の給与バランスを保つために導入される手当です。調整手当は一時的な措置として支払われるものですが、固定給のように定期的に支給されるケースも少なくありません。

本記事では、初めて給与計算をおこなう人事労務担当者向けに、調整手当の意味や種類、基本的な計算方法をご紹介します。なお、本記事でご紹介する給与計算方法はあくまでも事例であるため、実際に計算する際は企業ごとの報酬制度に基づいて実施してください。

調整手当(調整給)とは?

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調整手当は、従業員の給与に加算される特別な手当のことを指します。調整手当は、中途入社者と既存従業員の間の差を埋めたり、過去の昇給額や賞与額をベースとして報酬決定をする際に発生する差分を埋めたりするときに支給されています。

くわえて、看護師や介護士、公務員といった特定の職種において、処遇改善目的で支払われる調整手当もあります。

調整手当の目的

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調整手当の主な目的は、従業員間の給与バランスを保つことです。同じ職責や経験を持つ従業員間の給与格差を是正し、部署や職種間の給与の公平性を維持するために導入されます。

具体例としては、以下のとおりです。

  • 給与制度を改定する際に大幅な給与変動を調整する
  • 中途入社者の給与を前職給与を基準に決定する
  • 他の従業員との差分を埋めて従業員のモチベーションアップを図りたいとき など

例えば、新しい給与体系への移行時に、一部の従業員の手取りが減ってしまう可能性があります。給与制度改定によって、従業員の既得権益が保護できなければ従業員から反発を受けるリスクがあるでしょう。そこで、新制度と旧制度の差分を埋めるために、調整手当が設けられる場合がよくあります。

他にも、優秀な人材を確保するため、中途入社者の前職給与水準を考慮した調整を行い、既存の従業員との給与バランスを維持する場面もよく見られます。

調整手当の種類

虫眼鏡

調整手当の種類は多数ありますが、ここでは代表的な調整手当についてご紹介します。

生活費調整手当

生活費調整手当は、物価の高い地域で働く従業員の生活を支援するために設けられる手当です。この手当は、各地域の物価水準に基づいて設定され、従業員が勤務地で適切な生活水準を維持できるよう配慮されています。都市部や特定の地域で働く従業員にとって、この手当は重要な収入源となり、生活の安定に寄与しています。

能力給調整手当

能力給調整手当は、従業員の能力や実績を反映した給与調整を目的とした手当で、類似した調整手当に「役職手当」があります。定期的な評価に基づいて変動する可能性があり、従業員のスキルアップや業績向上へのモチベーションを高める効果があります。

能力主義的な給与体系を採用している企業で特に重要視され、公平な評価と連動した給与制度の一部として機能しています。

地域調整手当

地域調整手当は、勤務地による生活環境の違いを埋めるための手当です。都市部や遠隔地など、勤務地に応じて支給額が異なることが特徴です。同じ職務でも勤務地による生活コストの差を考慮した給与設計が可能となり、従業員の地域間移動や特定地域での人材確保にも貢献することが可能です。

看護師の調整手当

看護師の調整手当は、看護師の専門性や労働環境に対する配慮から設けられる手当です。例えば「初任給調整手当」として一定の専門的な知識を有する職員を確保する必要があり、欠員補充が困難な職について、初任給水準を調整し、必要な職員の確保を図ること目的で導入されるものがあります。

他にも、夜勤や特殊な勤務形態をとる看護師に対して追加支給されることが多く、看護師の労働負担や専門性に見合った処遇を実現するための重要な要素となっています。看護師の手当は、医療現場における人材確保や看護師のモチベーション維持に大きく貢献しています。

介護士の調整手当

介護士には、介護事業所で働く介護職員の賃金や労働環境の改善目的で支払われる「介護処遇改善手当」という公的な加算制度があります。介護処遇改善手当は、介護サービス利用料に上乗せして請求をおこない、利益を介護士に分配する仕組みとなっています。

仕事の専門性や厳しい労働環境と人手不足を考慮して創設された手当で、今後の介護職員不足もあいまって、手当額の上昇が期待されています。

保育士の調整手当

保育士も介護士と同様に、人材不足や低賃金という業界課題を解決するために処遇改善手当が支給されています。自治体や施設ごとにに賃金改善計画書と実績報告書の提出が必要で、事務手続きに課題がある制度と指摘されています。

ただし、保育士の調整手当によって処遇が改善されることで、質の高い保育サービスの提供と保育現場での人材確保・定着の貢献が期待されています。

国家公務員の調整手当

国家公務員の調整手当は、勤務地に応じた地域手当や、職務の特殊性に対する俸給の特別調整額など、複数の調整手当が存在します。法令に基づいて細かく規定されており、公務員の給与体系の重要な一部を構成しているのが特徴です。

地方公務員の調整手当

地方公務員も、国家公務員と同様に調整手当の制度が設けられています。地域手当や特殊勤務手当、初任給調整手当など複数の項目があり、地方公務員の給与水準の適正化が図られています。

調整手当の計算パターン

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調整手当の計算方法は、企業ごとの賃金制度に基づいておこなわれますが、ここでは代表的な計算パターンを抜粋してご紹介します。自社の賃金規程を見直す際の参考にしていただければ幸いです。

固定給に組み込む

ひとつ目にご紹介するのは、調整手当を毎月の給与に一定額を上乗せする形で支給をおこなう方法です。基本給に20,000円の調整手当を加算するなど明確に提示することで、従業員従業員にとっても安定した収入として認識されやすいのがメリットです。また、固定的賃金として支払うことで、毎月の給与計算を簡素化できる利点もあります。

ただし、変動要素が少ないため、柔軟性に欠ける面に注意が必要です。

不定期に支給

業績に応じて、あるいは季節性などを考慮して不定期に調整手当を支給する方法もあります。不定期に支給する場合は、企業の業績や従業員のパフォーマンスなどあわせて柔軟に支給できる点が魅力です。一方で、給与の変動が大きくなるため、従業員の生活設計に影響を与える可能性がある点に注意が必要でしょう。

条件付きで支給

従業員があらかじめ定めた目標を達成したり、条件を満たしたりしたときに調整手当を支給する方法です。特定の条件とは、勤務地や職責などが考えられます。特定の状況や役割に対して柔軟に対応できる利点がある一方で、条件設定や管理が複雑になる可能性があるでしょう。

調整手当の導入方法と注意点

注意

調整手当の導入には慎重な計画と準備が必要です。現在の給与体系と従業員の処遇状況を詳細に把握し、調整手当導入の必要性と目的を定めなくてはなりません。

社会保険・労働保険料の調整目的で、基本給を下げて調整手当でバランスをとる方法には、法的リスクも伴います。企業都合で一方的に給与制度を改定するのではなく、労働関連法に照らして、従業員に不利益を与えないよう配慮が必要です。

一時的なしのぎで調整手当を導入せず、中長期的な影響を想定したうえで、専門家の意見を仰ぎながら慎重に報酬制度設計をおこないましょう。

必要に応じて調整手当を検討してみよう

男性

調整手当(調整給)は、従業員の処遇改善や従業員間の給与バランスを保つために活用される制度です。企業ごと、業界ごとに生活費、能力給、地域、職種別など多様な調整手当が導入されていますが、決して他社の真似をせずに、自社独自の目的や必要性に応じて導入をおこないましょう。

適切な報酬制度設計をおこなえば、従業員のモチベーションアップや企業競争力強化にもつながります。まずは、調整手当の基本概念をおさえて、自社の報酬制度の見直しに取り組んでみましょう。

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