社長の右腕人材にフォーカスをあて、彼らが乗り越えてきた過去の体験やビジネススタンス、ボスマネジメントのアレコレなど、財産とも言えるノウハウをお伺いし、記事にまとめていく企画「社長の右腕」
今回は、C Channel株式会社で執行役員かつC CHANNEL 事業本部長を務める丹羽さんに「社長の右腕エピソード」をお伺いしました。
日本最大級の女性向け動画メディア「C CHANNEL」やママ向け動画メディア「mama+(ママタス)」を運営する同社の代表取締役 森川さんの右腕として、日々コミュニケーションを取っている丹羽さん。
会社を成長させるというミッションのもと、何を意識して社長と対話しているのか、メンバーに対してはどのようにマネジメントしているのか…丹羽さんの考えをご紹介します。
【人物紹介】丹羽 歩 | C Channel株式会社 執行役員 C CHANNEL 事業本部長 兼 インフルエンサー部長
目次
「日本を良くするためにメディアを変えていきたい」森川さんと一致した想い
−はじめに、丹羽さんが担当している領域と役割を教えてください。
丹羽さん:現在は、C CHANNEL事業の責任者として、事業の拡大と組織全体のマネジメントの役割を担っています。
−丹羽さんは約1年半前にC Channel社へ入社されたそうですが、入社のきっかけはなんだったのでしょうか。
丹羽さん:私がC Channelに入社しようと思ったきっかけは、代表の森川との出会いです。森川のメディアに対する考え方に共感し、C Channelへの入社を決めました。
というのも私は、数年前からメディアに対し、危機感を感じていたんです。
−危機感というのは、どのようなものでしょうか?
丹羽さん:メディアには必ず「世の中をこうしたい」「こういった情報を発信したい」といった意思があります。
ただ、最近のメディアはインターネットのプラットフォーマーによってパワーが相対的に低下し、「メディアの意思を継続するのが難しいな」という危機感です。
―そんな中、森川さんに出会ったと。
丹羽さん:そうですね。当時の私は前職でもマネジメントのポジションにいて、自分の知見をさらに高めるために、社外から多くの情報を得る目的で良くネットワーキング活動をしていました。
その中で森川に出会い、メディアについて話をしていたのですが、森川と私のベクトルが一致してたんです。
森川も「日本のメディアを変えていきたい」という考えを持っていて、そこに深く共感し、C Channelへの入社を決めました。
「話すときは”結論ファースト”」森川さんと丹羽さんとの関係性
−森川社長と丹羽さんの関係性についてお伺いしたいのですが、その前にそもそも森川さんはどのような方ですか?
丹羽さん:人柄は穏やかで、喜怒哀楽を表にあまり出さないですね。「怒っているな」と感じることもありますが、声を荒らげるなど決して感情を表には出しません。
あとは、行動に移すのが速い「即行動タイプ」ですね。たとえば、急に自らアポイント取ってお客様のもとへ足を運ぶこともあります。必要だと思ったらすぐに動きます。
ただ、一方で思考量もすごく多いし、深いです。行動しながら情報を集めて、思考していくイメージですね。基本的にタフで、ずっと仕事をしています。
−森川さんとは、普段どのようにコミュニケーションをとっているのでしょうか?
丹羽さん:森川とは「省エネ」なコミュニケーションをとっており、コミュニケーション量自体は少ないと思います。そもそも、森川は忙しいためあまり会社にいませんし、席も離れています。
ただ、会社にいるときは1日に1回は会話しています。定期的にミーティングの時間も設けており週に1回30分の1on1をおこなっています。
時間が限られているものの、森川とコミュニケーションを取る際は、なるべく対面で話すよう心がけています。チャットを頻繁に飛ばすよりは、なるべく会って話したいですね。
−どのようなことを話されるのですか。
丹羽さん:主に話すのは「現状の課題は何か」「その課題に対する打ち手は何か」という2つです。
森川と話すときは「結論ファースト」を意識しています。非常に合理的な人間ですので、事実を切り出してその後に「なぜならば〜」と、背景や理由を説明する議論を好みますね。
「未来は自分で決めろ!」森川さんから怒られた、サシ飲みでの話
−ちなみに森川さんと飲みにいくことはありますか?
丹羽さん:たまに飲みにいきますよ。そういえば、普段あまり怒らない森川に飲んでいるときにすごく怒られた経験があります。
そのときは森川から「未来を考えたとき、何をすべきだと思いますか?」と質問されたんです。それで、「未来って何ですか?」と聞き返したんですよ。そしたらすごく怒られました。
−え、それだけでいきなり怒られたんですか?なぜなのでしょうか…?
丹羽さん:森川の中では、未来は自分で決めろと言いたかったのだと思います。
「どのような未来が待っているか」ではなく、「どのような未来にするか」を自分で決めて、そこから逆算して行動を決めなさいということでした。
「未来を決めることを人に委ねるな」というメッセージをもらい、「たしかにそうだな」と思いました。これは、非常に大事な考えで、今でも大事にしている部分ですね。
丹羽さん:あと仕事とは関係ありませんが、森川はお酒が強く、はしご酒が好きです。一緒に飲むときはだいたい3~5軒ぐらい行きます。
先ほど彼は冷静だと言いましたが、お酒に酔うと喜怒哀楽があらわれやすくなります。
役員たちで集まって飲んだ際に印象的なエピソードがあるのですが、そのときは4軒目まで行ってそこで白ワインをボトルで3本頼んだのですが、1本目の栓を開けた瞬間に一口もつけず「よし、次行こう」と言って、お店を出ていったんです。あれは驚きました(笑) ※頼んだワインは持ち帰って美味しくいただきました。
この人は何考えているんだろう」と不思議に感じつつ、普段の仕事とギャップがあっておもしろいなと思いました。
「経営者を神格化するな」右腕としてあるべき姿
−丹羽さんがメンバーをマネジメントする際に意識していることはありますか?
丹羽さん:多種多様な人材がいる会社なので、メンバーが何を見て仕事をしているのかにはかなり気を遣っています。森川は「サッカー型の組織」と言っています。
「サッカー型組織」とは、社員一人ひとりが経営方針に従い、状況変化に応じて主体的に判断・行動する自立・自律している組織のことです。
サッカーって、試合が始まれば選手は攻守入り乱れ、ポジションやフォーメーションを流動的に替えながら、ダイナミックに動き回るじゃないですか。野球のように先攻後攻、打順といった決まった順番で動くスポーツではありません。
C Channelも、個人の自立と自律、緩やかで柔軟な役割分担によって機能しています。
こういった組織では「会社を通じて実現したいこと」がバラバラだったりするので、メンバーのマネジメントが難しいです。
その上で意識しているのは、メンバーが目指しているキャリア像と会社が目指しているゴールを結びつけてあげることです。
たとえば、メンバーとの面談で「会社のベクトルとずれていないか」を定期的に確認しています。
―会社のベクトルとずれているというのはどういった状態なのでしょうか?
丹羽さん:会社が好きで会社のためを思って働いているつもりが、実はいまの会社のゴールにつながっていなかったり、自分の部署のミッションを追う中で、他のミッションを追っている他部署の人とぶつかってしまったりといったことですね。
ただ、部署によってミッションが異なるのは当たり前で、さらにその先にある会社のミッションにもつながっています。
自分だけのゴールを見て、周りが見えなくなってしまっているメンバーには、「なぜ自分たちはこのミッションを追っているのか」「なぜ他部署はこのミッションなのか」を説明し、軌道修正するようにしています。
−丹羽さんが、森川さんとのやりとりで意識されていることを教えてください。
丹羽さん:「神格化しない」ように意識しています。
社長の近くで働いたことがない人の中には、社長を神格化している方がいます。そういった人は、社長にできないことがあると「なぜできないんだ」と不満を言ったりします。
社長の中でもとくに創業者は、バランスの取れた何でもできるタイプよりも、一つの強みが突出しているケースのほうが多く、特に創業したてのときは、できないことのほうが多いと思っています。
社長も人間なので、できないことがあるのは当たり前。人のせいにしているままではいつまでも解決しませんし、自分が行動することで会社が良くなるなら積極的に動くべきだと思います。
社長のできない部分を社員の私たちが補完して、会社が目指すゴールに近づけることが重要なのではないでしょうか。
ですので、私が森川とのやり取りする際は「どのように自分が立ち振る舞ったら補完できるのか」と常に考えることを意識しています。
たとえば、森川にはいろいろな方面から情報が入ってきます。それをもとに考えて、彼なりに結論を出し、結論だけ伝えることがあります。
その結論がいままでの話と内容のくいちがいがあって、社員に伝わりきっていないことがあります。そういった際は、私が話の背景や理由を汲んで、別途伝えるようにしています。
−そこで森川さんと丹羽さんで役割が分担されているのですね。
丹羽さん:そうですね。森川が半年~1年後を見据えてメンバーに指示を出すのに対して、私はそれを噛み砕いて、毎日の業務に関して指示を出す役割を担っているのではないでしょうか。
森川に限らず、社長というのは常に長期的な目線を持って将来を見るべき存在かと思います。ただ、長期的な目線だけでメンバーに話をしてしまうと、彼らも背景がわからないので混乱してしまいます。
メンバーは今日、明日の仕事に向き合っているため、ずっと先の会社の話をいきなりされてもイメージがつきづらいでしょう。
ですので、私がメンバーに対して「目の前の業務をなぜやるのか」「その仕事を完遂することで何を実現できるのか」といった背景や未来の話を、日頃の業務に結びつけて説明するようにしています。
メンバーと社長との間に存在する視界の差を埋める…これが、社長の直下にいる人の役割だと思っています。
―先ほど森川さんには結論から話すとおっしゃっていましたが、メンバーに対してはその逆ということですか?
丹羽さん:はい。森川とのやり取りは結論から伝えて背景は後出し、メンバーとやり取りするは逆に背景ややる意味を伝えることを意識しています。
森川には結論ファーストでもだいたいは伝わるのですが、メンバーにはバックグラウンドがないまま仕事を依頼すると混乱させてしまうので、気をつけています。
あとは、森川にはなるべく考える時間を与えないようにしています。社長がミッションを実現するために使うエネルギーをできるだけ他のことで消費してほしくないんです。
たとえば、相談する際は事前にいくつか選択肢を用意していって、森川がイエスかノーだけで判断することができるための工夫をしています。
森川には、考えてもらうというより選んでもらう…これを意識するようメンバーにも伝えていますね。
「for me」ではなく「for customer」丹羽さんが大切にするビジネススタンス
−最後に、丹羽さんが大切にしているビジネススタンスを教えてください。
丹羽さん:常に「社会とか顧客に対してどういった価値を提供できるのか」という軸で仕事をしています。
自分のキャリア観を大切にして働くのもいいと思います。ただ、自分のキャリアについて考えるのは「for me」ですよね。
ですが、本来私たちはお客様に価値を提供し、その対価を頂いている立場にいます。
顧客のために何ができるか、つまり「for customer」を考え、提供する価値を増やしていくと、結果的にできることや成長機会も多くなります。つまり、自分のビジネスレベルも上がっていくわけです。
あとは、もし自分がメンバーだったら「どういった役割を任されていて、どのように振る舞うべきか」と自身に問いかけ続けます。
顧客をトップとした役割のツリーがある中で、自分は何を求められているのか考えることは意識したほうがよい観点だと思います。