部下が辞めるとき -キーメンバーの退職にどう向き合うか-|HR NOTE

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部下が辞めるとき -キーメンバーの退職にどう向き合うか-


連載第5回です。今回は、マネジメントにおいて大きな悩みの一つ、「退職」について考えてみます。

退職にともなう「負の感情」

多くのリーダーは部下の退職、とりわけ重要なメンバーの退職に直面すると大きな心理的ダメージを受けます。そして、様々な種類の感情が自分の中にあらわれます。

まずは、「喪失感」を感じる人が多いでしょう。

自分自身がこれまでエネルギーを割いてきた相手が会社を去るという事実は、これまでの自分の活動を否定されたような気持ちになります。

あるマネージャーは、部下の退職に際し「自分の後任だと思って、お前の育成に割いてきた俺の3年間を返してほしい」と思わずこぼしていました。心血を注いで育成してきた部下ほど、自分自身へのダメージは大きいでしょう。

そして、「怒り」が湧いてくることもあるでしょう。なぜ途中で相談してくれなかったんだ。いつから退職を考えていたんだろう。なんて自分勝手なんだ。自分はこんなに苦労しているのに。リーダーが仕事にコミットすればするほど、そんなネガティブ感情が湧いてくるのも自然なことです。

そして、次は「不安」が襲ってきます。他のメンバーはどう受け止めているだろう。組織への不満が伝播しているのではないか。自分のやり方は間違っているのではないか。自分は果たしてリーダーに向いているのだろうか・・・。

こうした負の感情に襲われ、時にリーダーが深いダメージを負ってしまうことがあるのが「退職」というイベントです。しかしながら、その出来事にどのように対峙するかでリーダーの器が問われているとも言えます。

退職は悪いことなのか?

本連載では、東洋的なものの見方として、「陰と陽」つまり「よいことと悪いことは一体である」とお伝えしています。
「人間万事塞翁が馬」ということわざが示すように、その時は悪い出来事だと思っても、実は後から考えたら良い出来事であることもあります。また、その逆もあり得ます。大切なのは一つの出来事に一喜一憂しないことなのです。

退職という出来事も、一見ショッキングな出来事ですが、見方を変えると必ずしもそうと言えない部分もたくさんあります。

まず、主要メンバーが抜けることで、次世代に機会を与えることができます。また、危機意識をメンバーに共有できれば、空いた穴をリカバリーするために頑張ろう、というメンバーの主体性を引き出すことにもつながります。後任として新しく採用するメンバーが新しい視点やチャンスを持ち込んでくれることもあるでしょう。

また、離職者というのはその後の活躍によって自社のブランドを高めてくれることも沢山あります。そもそも成長企業の中には、人の出入りが激しい企業も沢山あります。例えば世の中には「元P&G」「元Google」といった肩書の人が溢れていますが、こうした人は会社を辞めてもなお会社のブランディングに貢献してくれているといえます。

そして、退職というイベント無しには気づけなかった、自分自身の課題に気づチャンスでもあるのではないでしょうか。今は辛くても、この出来事の捉え方次第では、5年後、10年後から見れば「あの出来事があったから自分は大きく成長できた」と思える出来事になっているかもしれません。

そういう意味では、相手を非難したい気持ちを一旦押さえて、「自分自身にどういう不足があっただろうか」と捉えてみることが大切です。

その出会いは、自分の人生にどのような意味があったのか?

私も、企業の経営者として少なからずの離職を経験してきました。中にはショックを受けるような離職もありました。とりわけ海外では転職は当たり前なので、ショックを受ける頻度も多くなります。

ただ、そうした経験から学んだのは、やはり「離職に対して自分自身のあり方をどう整えるか」がとても大事であるということです。そこで、以下のような問いを持つことを自分自身に課すようにしています。

「その人との最初の出会いはどのようなものだったか?」

「自分にとって、その人がいる人生と、いない人生に、どのような違いがあっただろうか?」

「その人は、自分に何を教えるために自分の人生に現れてくれたのだろうか?」

「その人にはこれから先、どのような幸せな人生を送ってほしいか?」

その人との関係を「仕事」のレベルで捉えるのではなく、「人生」のレベルで捉えるときに、自然と感謝の気持ちが湧いてきます。

すべての出会いに無駄なものはありません。地球上に何十億人という人が住んでいる中で、たまたま同じチームで一緒に働くことができたという奇跡。この事実に感謝することができたときに、目の前の出来事に関する「負の感情」はやわらぎ、おおらかな気持ちで相手を見送り、またその後の人生の成功を祈ることができるのではないでしょうか。

仏教の祖と言われる釈迦は、「縁起」という言葉を残しました。それは、「あらゆるものは、必ず何かの縁によって起こっている」という考え方です。世の中の出来事は、相互に作用しあっています。起こった出来事には何かしらの意味があり、また少なからず自分に原因があったりするものです。

人間というのはちっぽけな生き物です。目の前の出来事に一喜一憂することなく、これも何かの運命なのではないか、と捉えることで自分自身をコントロールし、またものごとに動じない心が手に入るのではないでしょうか。

東洋的リーダーシップ第5回、今回は「退職」についての向き合い方でした。お読みいただき有難うございました。

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