インドネシアには、親日の方が多く、わたしたちの周りにもビジネスレベルまでは届かずとも、簡単な日本語を話すことができるインドネシア人はたくさんいらっしゃいます。とはいえ、いざ”業務で通用するレベルの日本語人材”を採用をするとなると、どのような判断基準を設けるか迷う方もいらっしゃるのではないでしょうか。また、採用活動をスタートしたものの、思っていたより応募が集まらずスムーズにいかない、なんて経験のある方もいらっしゃるかもしれません。今回は、インドネシアでの日本語人材の採用をする際に抑えておくべきポイントをご紹介します。
目次
【豪華ゲスト多数登壇!】変化に負けない「強い組織」を育むためにHRが果たすべき役割を考える大型カンファレンス『HR NOTE CONFERENCE 2024』
「人的資本経営」「ウェルビーイング」「DEI」といったトレンドワードが、HR領域だけでなく社会全体に拡がり始めた昨今。自社組織に漠然と"停滞感"を感じ、「うちは取り残されていないだろうか?」「何かやらないといけないのでは・・・」といった不安や悩みを抱える人事・経営者の皆様も多いのではないでしょうか。
本カンファレンスでは、HR領域の有識者の皆様に、様々な組織課題を解決するためのアプローチ方法について解説いただきます。強い組織を育む企業が実践している事例には、組織強化に必要な考え方や人事が果たすべき役割について学べるポイントが多くあります。ぜひ有識者の皆様と一緒に、組織を強化する「共通原理」について考えてみていただければと思います。
インドネシアにおける日本語話者数について
そもそもインドネシアには、どのくらい日本語が話せる人がいるのでしょうか。国際交流基金が、海外における日本語教育機関の状況を把握するために、1974 年から約 3 年に 1 度「海外日本語教育機関調査」を実施している結果をみると、インドネシアには日本語を勉強するための機関や日本語話者が、他国と比べても多いことがわかります。
引用:https://www.jpf.go.jp/j/about/press/2019/dl/2019-029.pdf
日本語レベルを知るための資格とは
インドネシア国内だけではなく、外国人の日本語レベルを知るための資格として、国際交流基金と財団法人日本国際教育支援協会が運営する日本語能力試験、通称Japanese Language Proficiency Test(JLPT)を利用している会社は、多いのではないでしょうか。この日本語能力試験は、日本国内および海外において、日本語を母語としない人を対象として日本語の能力を測定し、認定することを目的として行う試験です。インドネシアにおいても、日本語人材を採用する際は、この資格をもとにスクリーニングする企業が大半だと思います。
JLPT各レベルの難易度
日本語能力試験にはN1からN5までの5つのレベルがあります。一番やさしいレベルがN5で、難しくなるにつれ、数字が小さくなります。
また、インドネシア国内にいる日本語人材のレベルの内訳に関し、Reeracoen Indonesiaに登録がある日本語人材のデータをお借りしたところ、下記のような結果となりました。
やはり難易度が一番高いN1レベルに関しては、該当者があまり多くないことがわかります。国際交流基金と財団法人日本国際教育支援協会が出している受験者のレベル内訳を見ると、受験者の総人数に対し、N1の受験者数は、台湾が20%、タイが8%に対して、インドネシアは4%と、そもそもの受験者が少ない結果となっていました。
引用:https://www.jlpt.jp/statistics/pdf/2019_2_9.pdf
JLPTの各レベルの基準
各レベルの認定目安は、”読む”・”聞く”という言語行動で表しており、それぞれのレベルには、これらの言語行動を実現するための言語知識が必要です。しかし、それぞれの基準はあくまでも目安であり、証明書があるからといって、必ずしも業務の中で活躍できるというわけではありません。そのため、採用活動をする際は、面接の中で直接お話をし、テスト等を実施し、実力を図るようにしたほうがよいでしょう。
N1:ビジネス上級者レベル / ネイティブと遜色なくコミュニケーション可能
日本語でのやりとりにあまり困ることがなく、幅広い場面で使われる日本語を理解することができるため、日本人にかわりローカルスタッフとの架け橋になること可能なレベルかと思います。実際、N1の試験ででてくる内容は、日本人でも間違えてしまいそうな内容が入っている場合もあるようで、日本での生活経験がある方、日系企業での就労経験の長い方などでないと、取得が難しいレベルとも言われています。しかし、N1の資格があるとはいえ、求職者の過去の就労経験や大学での専攻等によっては、日本語スキルに物足りなさを感じる場合もあるため、資格の有無で判断するのではなく、幅広く募集をかけ、実際に会って採用を決定するほうがよいでしょう。
読む
- 幅広い話題について書かれた新聞の論説、評論など、論理的にやや複雑な文章や抽象度の高い文章などを読んで、文章の構成や内容を理解することができる。
- さまざまな話題の内容に深みのある読み物ものを読んで、話の流れや詳細な表現意図を理解することができる。
聞く
- 幅広い場面において自然なスピードの、まとまりのある会話やニュース、講義を聞いて、話しの流れや内容、登場人物の関係や内容の論理構成などを詳細に理解したり、要旨を把握したりすることができる。
N2:ビジネスレベル / 通訳として活躍可能
日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができ、業務に関するメールのやりとり等も日本語で行うことができ、電話等でも敬語を使いスムーズに会話ができる方が多い印象があります。また、N2レベルでも業務で活躍される方が多く、またN1レベルの方よりも給与レンジを抑えることが可能かと思います。
読む
- 幅広い話題について書かれた新聞や雑誌の記事・解説、平易な評論など、論旨が明快な文章を読んで文章の内容を理解することができる。
- 一般的な話題に関する読み物ものを読んで、話の流れや表現意図を理解することができる。
聞く
- 日常的な場面に加えて幅広い場面で、自然に近いスピードの、まとまりのある会話やニュースを聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係を理解したり、要旨を把握したりすることができる。
N3:日常会話レベル(幅広いレベル) / 日本語で基本的なコミュニケーションが可能
インドネシア国内にいる日本語人材のレベル内訳図でもお分かりいただけるかと思いますが、N3は、47%と約半分を占めるくらい該当者が多いです。N3からN2までの壁がある分、N2には至らないものの流暢な方など幅広いレベルの方がいらっしゃるためだと思います。N3を取得されている方は、日常的な場面で使われる日本語を大方理解することができますが、とは経験等により実力差があります。そのため、採用をする際は、業務にあわせてどのくらいの日本語力が必要になるのかをしっかりと確認しておくことをおすすめします。
読む
- 日常的な話題について書かれた具体的な内容を表わす文章を、読んで理解することができる。
- 新聞の見出しなどから情報の概要をつかむことができる。
- 日常的な場面で目にする難易度がやや高い文章は、言い換え表現が与えられれば、要旨を理解することができる。
聞く
- 日常的な場面で、やや自然に近いスピードのまとまりのある会話を聞いて、話しの具体的な内容を登場人物の関係などとあわせてほぼ理解できる。
- 電話等でも質問に対ししっかりと回答することができる。
N4:日常会話レベル / 簡単な挨拶等で日本語の使用が可能。
簡単な内容で、かつゆっくりとしたスピードであれば、基本的な日本語を理解することができます。簡単で繰り返しの多い業務であればN4レベルの日本語スキルでも問題ないかもしれません。しかし、メール等でのやり取りに関しては、ローマ字を利用した日本語のみ可能な方もいらっしゃいますので、面接の中で筆記スキルの確認もしておくといいかもしれません。
読む
- 基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な文章・短めの文章であれば、読んで理解することができる。
聞く
- 日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる。
N5:日本語勉強初心者レベル
基本的な挨拶程度の簡単な日本語であれば理解することができますが、”日本語スピーカーとしてのご紹介は難しい”と判断される方が多いレベルになるかと思います。しかし、日本語を使う業務に意欲的な方も多いため、ポテンシャル採用をされる会社も多いようです。実際、ポテンシャル採用後に、気づいたらN4の資格を獲得していた、なんていうこともあるようです。
読む
- ひらがなやカタカナ、日常生活で用いられる基本的な漢字で書かれた定型的な語句や文、文章を読よんで理解することができる。
聞く
- 教室や、身の回りなど、日常生活の中でもよく出会う場面で、ゆっくり話れる短い会話であれば、必要な情報を聞き取とることができる。
日本語スピーカーの採用の際に気をつけるポイント
(1)なぜ日本語スキルが必要なのかを整理する。
日本語を使うのはどんな場面で、どんな業務を、どういう時に、なにをやってもらうのか、という点を事前に整理しておく必要があります。通訳だとしても、3名規模の会議での通訳と10名規模の通訳では、また参加者の日本人とインドネシア人の内訳によっても、必要なレベルや経験に差がでます。採用活動をはじめる前にこの点が整理できていないと採用後、日本語スキルのミスマッチ等が起きてしまう可能性があります。そのため、求人票を作成する際は、日本語を使う業務に関しては、入社後の業務がイメージできるくらい具体的に記載するほうがよいでしょう。また、日本語ができる方の中には、英語での業務をやや苦手とする方も多いようですので、日本語で行う業務、英語で行う業務としっかり分けて求人票を作成することをお勧めします。
(2)給与レンジを広めに設定する。
日本語人材のように英語以外での言語が使える方は、他の求職者と比べると、給与レンジが高い方が多いです。特にN1・N2のようなレベルの高い方に関しては、学歴・バックグラウンド・経験によって更に高くなる方もいらっしゃいます。実際、求人票の中での給与レンジによっては、求職者の応募が集まらないケースもあります。そのため、他の従業員の給与とのバランスをみて可能な範囲で幅広く条件を設定し、応募を集め、面接の中で、直接給与交渉等を進めることをお勧めします。
まとめ
インドネシアには、日本語の勉強をしている方が多い一方、金銭面やVISA等の事情で、日本への渡航ができない方もいらっしゃいます。奨学金や技能実習制度等を利用している方も多いですが、全員が必ずいけるというわけではありません。もしも入社後、業績や努力次第で日本にいける可能性があるポジションであれば、採用時にアピールポイントとして利用するのもいいかもしれません。
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「人的資本経営」「ウェルビーイング」「DEI」といったトレンドワードが、HR領域だけでなく社会全体に拡がり始めた昨今。自社組織に漠然と"停滞感"を感じ、「うちは取り残されていないだろうか?」「何かやらないといけないのでは・・・」といった不安や悩みを抱える人事・経営者の皆様も多いのではないでしょうか。
本カンファレンスでは、HR領域の有識者の皆様に、様々な組織課題を解決するためのアプローチ方法について解説いただきます。強い組織を育む企業が実践している事例には、組織強化に必要な考え方や人事が果たすべき役割について学べるポイントが多くあります。ぜひ有識者の皆様と一緒に、組織を強化する「共通原理」について考えてみていただければと思います。