現在、インドネシアにいらっしゃる日本人駐在員は、海外へ赴任してきてからはじめて採用に関与するという方が大半だと思います。そのため”面接”というと、自身が現在の会社の面接のイメージが残ったまま、インドネシア人の方の採用活動もされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回はそんな皆様に、日本人とインドネシア人の面接とで違う点、注意深く確認すべきポイントなどをまとめました。
目次
インドネシアと日本の採用面接における2つの大きな違い
1.お互いの母国語・文化が違う
おそらく大半の方は英語での面接をされることとなると思います。しかし、わたしたち日本人とインドネシア人の母国語は、英語ではありません。どちらかの英語スキルが優秀だったとしても、言い回しや単語のチョイスから受け取り方やニュアンスに必ず違いが生まれてしまうため、お互いが100%を理解し合うというのは難しいことでしょう。
そのため、自身の説明や質問に対しての求職者の受け取り方、求職者の解答に対しての自身の受け取り方には、”ある程度の誤差があるもの”いうように考える必要があるかもしれません。
たとえば、「Can you?」という簡単な質問でさえ、「Yes」という回答に含まれる言葉のニュアンスや受け取り方は、人それぞれかと思います。求職者の中には、あまり自信のない方も見栄を張って「できる」と解答する方もいるかもしれません。
しかし、もしも面接官がその「できる」という見栄を張った解答を「この人は、100%できる」と受け止めてしまうとどうでしょう。このように、簡単な質問でさえ、気づかないところで両者の認識にずれが生じてしまう可能性があることをお分かりいただけるかと思います。
また、日本人が当たり前と感じているマナーに関しては、インドネシア人にとっては当たり前ではありません。日本のように面接室に入り、椅子に座るまでの流れが決まっていることなど、知らなくて当然です。
とはいえ面接時の服装(アピアランス)や挨拶、そして表情等に関しては、国によって大きく変わるものではありません。そのため、そういった“社会人・ビジネスマンとして当たり前のライン”を基に判断をするようにしましょう。
2.”長期的なキャリア設計”を考えての転職は少数派
日本人の多くは現職での経験を生かして、将来的にこういう人になりたいという目標があり、転職活動をされる方が多いと思います。そのため、日系企業での面接は過去の自分の行動・決定に理由について深堀りしつつ、今後のことを質問していく面接方法が主流ではないでしょうか。
しかしインドネシア人の方の多くは、10年後、のような長期的な将来ではなく、目先の、もしくは1年後あたりを目標におき転職される方が多いように思います。そのため、「今できること、新しい会社でどんなことがしてみたいのか」などを質問するようにしたほうがいいかもしれません。
面接時のポイントは「期待しすぎない」
「日本人はこうだから、きっとインドネシア人も同じような行動できる」と期待していると、実際に予想と違うことが起きてしまった際に、希望・理想と現実との差に愕然としてしまうこともあると思います。
私自身、インドネシア人の人材紹介に3年間携わった中で、「期待してはいけない。」と感じた3点をご紹介します。
① 遅刻が多い。
”インドネシアは渋滞がひどい”という背景もあり、面接時間に遅刻する求職者が多いです。特に、始業時間にあわせた朝の時間からの面接は、更に遅刻者が増える印象があります。人材紹介会社が、面接設定をお手伝いする際は、前日そして当日に「面接開始時間の10分前に到着できるように、地図を確認し、自分が家をでる時間を確認してください。」と、リマインドをしている企業が大半だとは思いますが、それでも遅刻が防げず、何度も発生しているのが現状です。
当日の天候や、電車やバスなどの交通機関の乱れに影響を受けてしまうこともあるため、一概に理由をまとめることができませんが、あらかじめ、遅刻を予測にいれ、面接想定時間の前後が開いている日に面接を設定することをお勧めします。
② 当日の無断欠席が多い。
「日本人ならこんなことはありえない」なんて感じる方もいらっしゃるかともいますが、インドネシアでは、スタッフレベルの方だけでなく、マネージャーレベルの方でもこういったことが起きます。中には、面接予定時間を過ぎてから「今日の面接には参加できなかった」、「今朝から体調が悪かった」というような事後報告がある求職者もいます。
インドネシア国内に、グループ企業がたくさんある某有名ローカル企業では、こういった候補者が、二度と全グループ企業での選考に入れないよう、全社で管理しているリストに個人情報を登録し管理しているそうです。
③ 会社概要を知らずに面接参加は普通。
日本では、「どうして弊社で働くことに興味を持ちましたか?」というような質問を通し、会社に対しての意欲をみる、という人事の方が多いかと思います。もちろんインドネシアでも、このような質問をされる方は多いと思います。しかし、意外とインドネシアの方は、あまり会社概要を確認しておらず、面接の連絡があったから参加してみた、という方もいらっしゃいます。
質問を通して意欲をみたい、という担当者にとっては、”調べてきていない”ということで、求職者に対して興味がなくなってしまう場合もあるかもしれませんが、”面接に呼んだ”ということは、少なからず履歴書・職務経歴書の中に惹かれる点が少なからずあったはずです。
そのため、「弊社に入ったらなにができる?求人のどんなところに興味をもった?どんなことやってみたい?」というような率直な意見を引き出せるような質問をし、今後の可能性をみるようにしたほうがいいかもしれません。
面接の質問項目と注意点
(1)提出書類の確認は、念入りにしましょう。
「とにかく書類の確認はしっかりしたほうがいい」という話を、人伝いで耳にすることも多いのではないでしょうか。実際にあったケースですが、ある日本語スピーカーの求職者の方が、問題なくコミュニケーションがとれ、本人曰く資格があるということで面接に参加したものの、面接の中で、資格の提出を求めると「実は資格は持っていない、しかし日本語でのコミュニケーションが取れるから問題ないだろう」という言い訳をする、なんてことがありました。
そのため資格所持者の採用を検討している場合は、面接当日に資格の所持の証明書のコピー等を持参してもらうとよいでしょう。
(2)自己紹介から深読みしましょう。
履歴書等の必要書類を受け取り、簡単なアイスブレイクのあとは、自己紹介をしてもらうところから始まる、というのが一般的な面接の流れではないでしょうか。この際、自分自身のこと、自分の経験のことを、自分の言葉でしっかりと伝えることができるかという点は非常に重要だと思います。
しかし、全体的にインドネシア人は自身の経歴をやや盛りって話をしてしまう方が多い印象があります。たとえば、営業出身の方であれば、自分の営業成績を盛って、実際にはできなかったことまで話をしてしまうこともあるかもしれません。
そのため実際のスキルがわかるよう「営業結果を数字ベースで説明してもらう」など、突っ込んだ質問を通し本来に実力を見抜けるようするとよいでしょう。
(3)転職を希望する背景を探りましょう。
どのような背景があり、今回の転職活動へ至っているのかを知るのは、とても重要なことだと思います。というのも、その人がどういった状況で転職を考え始めたのか、ということを知ることは、「Job Hopper(転職回数の多い人)」の採用、自社に入社後の早期退職を防ぐことができます。
中には、本人の意思ではじめたわけではなく、軽い気持ちで面接にきてみた、なんて方もいらっしゃるかもしれません。とはいえ、面接に来ている、ということは、なにかしら“現状から変わりたい・現状を変えたい意思”はあったはずです。どうして転職したいと感じたのか、面接に参加すると至ったまでの背景が、面接で質問を繰り返す中で理解できると、求職者の人柄、仕事に対しての考え方の理解へと繋がるのではないでしょうか。
(4)通勤方法を確認しておきましょう。
どこのエリアに住んでいて、なにに乗り、どこの道を通って、どのくらいかけて通うことになるのか、ここは必ず確認するようにしておきましょう。「ボゴールに住んでいるため、ジャカルタまでは電車で2時間かかります」という方は意外と多く、電車に乗れば着くということもあり、場所が原因での転職というのはあまり多くないのですが、「ブカシのあたりに住んでいるため、自分で車を運転してくる予定です。だいたい1時間半くらいかかります。」というような方は少し注意をしたほうがよいかもしれません。
オフィス周辺の地図にもよりますが、仮に残業があり、オフィスを出る時間が遅くなる日が続き、渋滞に巻き込まれると自宅に着くまで3時間もかかってしまった、なんてことがあると、早期退職のきっかけにもなりかねません。
業務内容や会社の雰囲気によっては、こういった状況でも退職、とならない方もいらっしゃいますが、前職の通勤事情等も確認し、判断するようにしたほうがよいかもしれません。
(5)オープンクエッションを心がけましょう。
インドネシア人に対して、「Yes / No」を求める質問をするとだいたいはYesと応えてしまいます。これは、面接後によく起きるトラブルの原因になっています。たとえば、希望給与を確認する際、「履歴書に書いてある通り10juta希望だよね?」という企業側の質問に対し、求職者側から「Yes」という回答を確認できたら、企業は、10jutaで内定通知を出すかと思います。しかし、候補者側は、面接の中で福利厚生があまり充実していないことを知り、希望給与を12jutaへと変更している、なんてこともあるのです。
しかし、インドネシア人からしてみたら、聞かれた質問に対して、深く考えずにYesと答えた、というのです。こうなると企業が内定を出した後に意見のすれ違いが起きてしまう事も想像できるのではないでしょうか。
「なんで考えずに返事をするんだろう」と思うところではありますが、意外とこういったトラブルはインドネシア人同士でもよくあります。そのため、「希望給与はどのくらい?そしてどうしてその額?」というように、Yes / Noの解答以外で答える質問をし、意見を聞いてあげることを意識してあげるとお互いにとってよい時間となるかと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。日本人との面接とは違い、確認しておくべきことや注意点などが多いかもしれません。そして、お互いが英語を使った面接をする上で、インドネシア人の本心を見抜くことが難しい場合もあると思います。
そういった場合は、自社のローカルの人事スタッフにインドネシア語で会話をしてもらい、「ローカルの目から判断してもらう」というのもとても重要です。今後、面接の予定のある方は、ぜひ上記を参考にしてみてください。