激戦化するエンジニア採用市場。スキルや経験が豊富な人材の獲得が難しくなっている市場において、ポテンシャルに期待して未経験エンジニアを採用する動きが高まっています。
未経験エンジニア採用が注目される中で、11/13 (水)にDMM WEBCAMPが主催のイベント「未経験エンジニア採用の成功の秘訣」が開催されました。
イベントでは、合同会社DMM.com・チームラボエンジニアリングと、株式会社インフラトップの3社が登壇し、2部構成で「未経験エンジニアの採用ノウハウ」についてお話されました。
「優秀なエンジニアを見極めるポイントを知りたい」
「採用に結びつけるために人事ができることを知りたい」
こういった疑問をお持ちの人事担当者の方におすすめのイベントでした。
今回は、そのイベントの内容をまとめて、ご紹介します。
未経験エンジニアこそ成長の可能性が高い
第1部では、約600名のエンジニアを統括する、合同会社DMM.comCTOの松本さんと、未経験エンジニアに特化したプログラミングスクールを運営する株式会社インフラトップ代表取締役の大島さんが「成長する未経験エンジニアの採用と育成」をテーマにお話されました。
未経験エンジニアの採用に長く携わってきたお二人だからこそ、「未経験エンジニアの必要性」「成長しやすいエンジニア」「未経験エンジニアを成長に導く環境」「高いモチベーションを維持してもらう方法」といった採用に欠かせない知識やノウハウを聞くことが出来ました。
松本勇気 | 合同会社DMM.com CTO
東京大学2013年卒。大学在学中に学生ベンチャーなど複数のスタートアップの立ち上げを経て2013年株式会社Gunosy入社。2018年8月まで株式会社Gunosyにて執行役員 CTOおよび新規事業開発室室長。プロダクト開発と技術領域全般、エンジニア組織のマネジメントを担当。また新規事業開発室担当として、ブロックチェーンやVR/ARといった各種技術の調査・開発をおこなう。2018年10月11日より合同会社DMM.com CTO(最高技術責任者)。2019年5月よりDMM GAMES CTOを兼任。
大島 礼頌 | 株式会社インフラトップ 代表取締役/CEO
法政大学2年からベンチャー企業で営業を経験し、大学3年でドバイに留学した際に現地企業からスポンサー契約を得てCSRを担う一般財団法人SGF財団を立ち上げる。2014年にサイバーエージェントベンチャーズにアソシエイトとしてジョイン。seed期に特化したファンド立ち上げを経験。同年11月より株式会社インフラトップを本格的に始動させる。元リクルートIT戦略室/マーケティングGに所属。2018年11月にDMMにグループイン。
未経験エンジニアの採用市場はできたばかり。ブルーオーシャンと言えるだろう
結論から言うと、未経験エンジニアの採用は必要だと思っています。理由は、未経験エンジニアには意欲の高い人が多く、成長の伸びしろが多くあるためです。
また、エンジニアの採用市場において、未経験エンジニアの領域はブルーオーシャンであることも、私が未経験エンジニアの採用をおすすめする理由になります。
「採用するか否か」という決断は、経営に関わる判断です。採用市場の現状を見たときに、人的リソースを調達しようとすると、基本的にはリソースの調達可能性っていうところを考えなきゃいけないわけですね。
今、どの企業においても人手不足が課題となっている中で、これからの採用は経営目線でおこなっていかなければなりません。つまり、「採用するか否か」という決断は、経営に関わってくるのです。
そういった中で、エンジニアを採用したい際に私たちが考えていかなければないらないことは「どのレイヤーのエンジニアを採用するか」です。
エンジニアといっても、新卒のエンジニア、未経験のエンジニア、中途のエンジニアの3パターンに分けられます。
3パターンの中でも特に中途のエンジニアの採用市場はレッドオーシャンで、数年前につけられていた年収の相場に比べて今は高くなっている状況です。
市場が変化している背景には、スタートアップが資金調達しやすくなっていることがあげられます。
資金調達しやすくなり採用に回せるお金が増えると、人を増やすために各スタートアップは採用に力を入れます。すると、採用市場において競合他社が増えて、各企業どうしで激しい競争が生じていきます。
つまり、現在のエンジニアの採用市場では、中途のエンジニアを採用しにくい状況となっているんです。
では、新卒のエンジニアを採用すればいいのではないかというとそうではありません。実は新卒の採用市場でも、即戦力となって活躍するエンジニアの採用は難しいと言えます。
私自身、今週ずっと新卒採用に関わる仕事をしていて大変だなと感じます。
また、大学に行って講演したり新卒採用のイベントに出たりしていて、スタートアップやベンチャーと言われる企業の間で、新卒を確保するための競争が起きていることがわかります。
実際に、新卒の年収の相場も、数年前より100万、200万ほど上がっている状況となっています。
一方で、未経験エンジニアに関しては、採用市場自体が形成されて間もないため、中途や新卒に比べて市場での競争はまだ起きていないのではないでしょうか。
私もそう感じます。未経験エンジニアの採用も3年前から徐々に増えてきたので、やっと未経験エンジニアの採用市場が立ち上がり始めたのかなと思っています。
松本:採用の競争が起きていない中でも、未経験エンジニアの採用市場には「成長しやすい人材」がたくさんいるなと感じています。
技術や能力の高さは見ない。チームを考えることができる人は成長する
成長しやすいエンジニアを見極めるために、私は採用面接で技術のことはほとんど聞かないようにしています。むしろ、雑談に近い内容のラフな会話をするように意識していますね。
その会話の中で見ているのが、「チームを考えることができる人」かどうかです。
やはり、アプリやソフトウェアといったプロダクトは、組織で開発するものですし、1人で完結する仕事ではありません。未経験エンジニアは特に、わからないことが多くある中で業務を進めていかなければなりませんので、コミュニケーションは非常に大事になってきます。
ですので、採用すべき未経験エンジニアは仕事をする上できちんとコミュニケーションがとれる方がいいと思います。
ラフに話しながら、これまでチームの中でどう振る舞ってきたのか、メンバーを引っ張った経験はあるか、自ら動いた経験はあるかといったことを聞くようにしています。
そうですね、実際に現場に入ると、チームでの開発がメインになります。チーム内でのコミュニケーションを通してプログラミングを進めていくことが当たり前ですので、未経験エンジニアの方には「技術力」よりも「コミュニケーション力」を求めています。
エンジニアは未経験でも、いろいろな仕事をされてきてコミュニケーションスキルを磨いてきた方が実は、現場に入った後に活躍するということが実際にあります。
重要なのは「成長するための環境づくり」学びを業務に活かせる工夫をしよう
未経験エンジニアを育成し、成長につなげるために重要なのは「モチベーションの維持」になります。
エンジニアがより育つためのモチベーションを保ってあげることで、自主的に業務に向き合ってくれて、自然とその環境でパフォーマンスを上げることができるエンジニアになるのかなと思っています。
モチベーションを保ち続けてもらうためには、未経験エンジニアが社内で自主的に学べる環境を作ったり、積極的に外部の勉強会に参加することを促したりといったことを意識されるといいと思います。
前提として、採用すべきは「成長しやすい人材」であり学ぶ力のあるエンジニアとなります。ですので、入社された方に「成長できそうだ」という方向性を見せてあげる必要があります。
「丁寧に支援してあげますよ」「あなたのことをちゃんと見ていて、あなたのキャリアも気にかけますよ」といった気遣いを入社された方に理解してもらうと、その人の成長スピードは上がるでしょう。
未経験エンジニアの方が入社した後、その人が関わるコミュニティがあって、コミュニティの中で情報を吸収することができ、コミュニティの中でどんどん成長していく…これがエンジニアがより成長する黄金パターンなのかなと思っています。
コミュニティを作る上で注意しなければならないのは「学ぶだけで終わってしまう環境」にしないことです。たとえば、座学のみでインプットだけになってしまい、アウトプットをしない環境が実は多くあると思っています。
「学ぶこと」と「学びを仕事に活かすこと」は全く異なると思っていて、実際の業務に活かせるような仕組みづくりも、未経験エンジニアが成長するために必要となってくるでしょう。
「仕事の意義」を伝えて、常に高いモチベーションを維持させる
未経験エンジニアの方により「高い」モチベーションを保ってもらうためには、「コミュニケーション」が大切です。同時に、コミュニケーションを取る中で「仕事の意義を伝える」ことも必要です。
仕事の意義がわからないと「今の仕事の先に、自分にとっていいことあるんだっけ?」といったネガティブな感情が生まれ、だんだんモチベーションが落ちていくんです。
未経験の方は日々新しく知ることが多く、目の前の仕事に手一杯になってしまい、その先のゴールや展望を見失いがちです。
ですので、未経験エンジニアの方には「仕事の意義」をきちんと説明してあげましょう。たとえば、「このプロジェクトは、こういうお客さんがこういうふうに喜んでくれるプロジェクトです」といった仕事をやりきった後の未来を想像させるとか。
シンプルに言えば、プロダクトを納品したり、サービスを提供したりして、収益を上げることが仕事のゴールとも言えます。
しかし、仕事のゴールはそれだけではなく、お客様やサービスを利用するユーザーの幸せがあります。
なので「この事業で自分が作ったこのプロダクトは、こういうふうに使われて、お客様やユーザーにこういうふうに喜ばれるんだ」といった視点を持ってもらうことが、未経験エンジニアが高いモチベーションを保つために重要となるでしょう。
こういった「仕事の先の未来」を想像してもらうためには、1回の説明では足りません。日々の業務の中で、繰り返し説明してあげることで、だんだんと頭の中に染み付いていくものです。
繰り返し説明する機会として、たとえば「1on1面談」の実施がおすすめです。
未経験エンジニアに対してメンターをつけて、月に1度話す時間を設けるなど、「どうやったらこの仕事の意義が伝わるか」を、マネージャーがちゃんと考えたほうがいいと思います。
コミュニケーションを通じて、メンバーに「仕事の意義」を考えるスタンスを身につけてもらって初めて、高いモチベーションを持って仕事に取り組めるのではないでしょうか。
私は、未経験エンジニアの方が高いモチベーションで働くためには、「コーチング」の要素も大事になってくると思っています。
松本さんからあったように、メンバーに「仕事の意義を伝える」つまりこちらから「与える」ことも必要です。ただそれだけではなく「引き出す」「気づかせる」ことも、1on1面談や日々のコミュニケーションで意識されるといいかと思います。
「どうやるか、何をするか」ではなく、「なぜやるのか」が人の心を動かす原動力になるので、「その人が働く意義」を一緒に見つけてあげる「コーチング」も、モチベーションを上げるために必要な要素ではないでしょうか。
また、コーチングをする上で「深堀り」がポイントとなってきます。
たとえば1on1面談で「あなたはどうしたいか?」「どのような課題を感じるか?」といった質問を毎回投げかけてあげると、メンバーが自然と自己開示をするようになるのではないでしょうか。
この自己開示があって初めて、1on1の効果とか、マネジメントの効果が出るのではないかと思います。
「採用したい」と思ったら、相手にも「一緒に働きたい」と思わせる
第2部では、多数の未経験エンジニアを採用しているチームラボエンジニアリング採用担当の居軒さん、そして、200名以上のエンジニアを転職成功に導いたDMM WEBCAMPのキャリアアドバイザー白井さんがお話されました。
「未経験エンジニアの受け入れ環境の整え方」や、「優秀な未経験エンジニアとのコミュニケーションで気をつけたほうがいいこと」など、組織として取り組むとよいことがわかりました。
居軒 沙紀子 | チームラボエンジニアリング 採用担当
新卒でPR代理店に入社しメディアリレーションを担当後、2013年チームラボのメンバーに。チームラボの新卒採用・中途採用・海外採用・インターンシップなど採用全般に携わり、2017年からグループ会社「チームラボエンジニアリング」で、エンジニア採用を専任。
白井 康太 | 株式会社インフラトップ DMM WEBCAMP キャリアグループ マネージャー
大学2年時よりスタートアップで営業を経験。新卒で株式会社ネオキャリアに入社後、保育士の人材紹介を行い、最速でリーダーに昇格。その後インフラトップ入社、人材紹介事業の立ち上げをおこなう。
受け入れ体制は徹底的に整えよ。未経験エンジニアの採用に社内の協力は必須
チームラボエンジニアリングで未経験エンジニアを受け入れることになった際にまずおこなったのは「求めるエンジニア像の定義付け」と「教育方針決め」です。
チームラボエンジニアリングは、チームラボがお客様と直接取引する多種多様な開発案件を担当していて、案件の種類が豊富にあります。
また、チームラボグループ内で企画から開発、デザイン、保守・運用まで全て一気通貫でおこなっているため、エンジニアだけでなくディレクター、デザイナーといった多様な専門性を持ったメンバーが在籍しています。
そしてエンジニアの担当領域は、企画の段階から参加し、サーバーサイドからフロントエンド、インフラまで担当領域は多岐に渡ります。案件ごとにチーム編成するため、プロジェクト毎に役割が変わることもあります。
そのため、「開発の工程すべてに関われるエンジニア」になってほしいと考えました。
特定の技術担当領域に縛られず、要件定義などの上流工程から開発をリードできる…そういったエンジニアをチームラボエンジニアリングでは「フルスタックエンジニア」と呼んでいます。
未経験の方にもこの「フルスタックエンジニアとして活躍してもらう」という方針を立てました。そして、「求めるエンジニア像」「教育方針」を固めたら次に「教育体制」を整えました。
エンジニアを育成するための教育体制として、チームラボ内のリードエンジニア達に協力してもらいました。
具体的には、チームラボには開発経験豊富で技術力が高く、後進の育成に興味を持つエンジニアがいたので、そのメンバー達に十数個のカリキュラムを作ってもらいました。
カリキュラムは、チームラボの開発案件でよく使うような技術や機能を一通り習得できる内容となっています。
教育体制を整える際は、カリキュラムを作るだけでは十分とは言えません。
経験豊富なエンジニアが「メンター」として絶え間なくサポートしていく環境も用意する必要があると思います。
チームラボエンジニアリングでは、必ず1人1人にリードエンジニアを教育専任担当者としてつけて、現場レベルのコードレビューやカリキュラムに沿った勉強会を開くといった取り組みを継続しておこなっています。
リードエンジニア主催の勉強会以外にも、最近ではメンバーによって主体的に勉強会やLT大会などが開かれています。
カリキュラムを作るだけでなく、サポート体制を整えて経験の浅いメンバーの成長を応援しているんですね。あとは、月1などで人事が面談をおこなうといいのではないかと思います。
定期的に実施している面談では、本人から次はどんなことにチャレンジしたいか希望を聞いたり、案件のフィードバックをする機会を作っています。
まとめると、未経験エンジニアの受け入れはかなり手厚く教育環境を整える必要があるということですね。
綿密なすり合わせを繰り返すことで、やっとお互いの理解が深まる
未経験エンジニアに入社してもらうために心がけているのは「この会社でエンジニアのキャリアを積みたい」と思ってもらえることです。
細かい業務の内容や仕事の内容を伝えるより、「この会社でどんな経験ができるのか」、「どのようにキャリア形成できるのか」を、しっかり伝えることが、チームラボエンジニアリングの魅力を伝えることができるのではないか?と思っているんです。
そこで大事になってくるのが、いかに自社の事業や文化に共感してもらうかになります。
面接では、採用担当は参加せず、「一緒に働くことになるかもしれない人」と話をしてもらうようにしていて、教育を担当するエンジニアや、プロジェクトマネージャーが担当しています。
基本的に、現場のメンバーから魅力付けやすり合わせの全てを面接中にお願いしています。
面接ではこちらから質問ばかりするのではなく、候補者の方にもお話いただき、対話を深めることにより、じっくり私たちの事業や開発体制、教育制度について理解してもらいつつ、私たちもその方の人となりを知っていくことを心がけています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
エンジニアには高度な技術が求められ、いかにいいプロダクトを作れるかどうかで採用の合否が分かれやすいものだと思っていました。
しかし、エンジニアにもスキル面とは別に「人間力」が求められており、むしろチームでプロジェクトを回していく上では後者がより評価される点は意外でした。
「チームを考えることができれば、未経験でも活躍するエンジニアになれる」
「本当に成長したいと思っているか見極めることが大事」
こういったメッセージを強く感じるイベントでした。
未経験エンジニアの採用を考えている、また興味がある人事担当者の参考になりますと幸いです。
今回登壇した株式会社インフラトップが運営する「DMM WEBCAMP」は未経験者のエンジニア転職を学習とキャリアアドバイスでサポートしています。
3,000人のエンジニアをサポートしたDMM WEBCAMPの未経験エンジニア採用について詳しく知りたい方はこちらを参考にしてください。