2020年3月より猛威を振るっている新型コロナウイルスにより、業績に大きなダメージを受けた企業は少なくないと思います。そんな中、2021年の最低賃金の変更が発表され、来年度の昇給率の設定をどうすべきか検討されている方も多いのではないでしょうか。
今回は、PT.Reeracoen Indonesiaが実施をしたアンケート結果をもとに、インドネシア進出日系企業の動向をご紹介します。
目次
2021年インドネシアの最低賃金について
インドネシアは毎年10月頃に、翌年度の昇給率の発表があります。2020は新型コロナウイルスの影響を受けたこともあり、政府は各知事に対して「国内の経済状況と経済回復の必要性を考慮し、決定する際は下記の3点を実行するように」という内容を通達しました。
- 2021年の最低賃金が、2020年と同一になるよう調整を行うこと。
- 2021年以降の最低賃金は、法規制の規定に従って決定する。
- 2020年10月31日に2021年の州の最低賃金を決定して発表すること。
資料引用:PENETAPAN UPAH MINIMUM TAHUN 2021 PADA MASA PANDEMI CORONO VIRUS DISEASE 2019 (COVID-19)
日本語訳引用:労働省、2021年の州別最低賃金を引き上げないよう要請
しかしこのような通達があったものの、日系企業が多く集まるジャカルタ特別州や西ジャワ州など限られた地域では最低賃金の引き上げを行うという発表がありました。
具体的な金額に関しては別記事にてご確認ください。
2020年・2021年の昇給率に関して
ここからは、PT.Reeracoen Indonesiaが2020年12月2日(水)~9日の間(水)に行なったアンケート結果の回答を参考にご紹介します。
(1)回答者属性
(2)2020年12月現在の日本人の出社状況
インドネシアは今もなお、内容に変動はあるもののPSBB(大規模な社会制限)が各地で延長され出勤率等にも制限がかかっている状況です。しかし現在、6割以上の企業様は以前のような通常出社へと戻り始めています。
そして残り4割の企業様は、シフト制や在宅勤務を組み合わせ、就労されているようです。中には海外からのマネジメントや社員の半分をいまだ一時帰国させつつ状況をみている企業様もあるようです。
(3)2020年の給与査定・ボーナスの支給
2020年の給与査定・ボーナスの支払いは、約70%の企業様が「例年通りに実施した」と回答しています。
しかし「新型コロナウイスルの状況のため保留もしくは取り止めにした」という回答も約20%と多く、新型コロナウイルスの影響を受けこのような判断をした企業様もいらっしゃることがわかります。
(4)2020年の昇給率
昇給率の決め方として、地域ごとに定められている最低賃金の上昇率にあわせ変動させている企業様が多い傾向にあり、5~6%の間で決定されている企業様が約28%、そして8~9%の間で決定されている企業様が約25%という結果でした。(※2020年の最低賃金の上昇率は8.5%)
また「経験年数やポジションレベル等にあわせ変動させている」という回答もありました。
(5)2021年の給与査定
2020年は例年通り給与査定等を行なった企業様が約75%という結果でしたが、2021年は新型コロナの影響を受け、例年通り給与査定を実施する予定と回答のあった企業様は7割をきる結果となっています。
また「新型コロナウイルスの影響により保留もしくは取り止め」という回答も25%を占めており、多くの企業が2020年の業績に影響を受けたため、2021年にて調整を考えていることがわかります。
他にも、労働組合と交渉し昇給率をできるだけ抑えての実施を予定されている企業様もいらっしゃるようです。
(6)2021年の昇給率
2021年は、最低賃金上昇率が地域により差があるため、エリアごとにご紹介します。
ジャカルタ特別州
ジャカルタ特別州の2021年の最低賃金上昇率は3.27%増と決定しました。そのため、ジャカルタ特別州にオフィスのある企業様の大半は、約3%を目安とし検討されています。また、約35%の企業は5~10%で検討されているようです。その他パフォーマンスにあわせ決定予定というご意見もありました。
しかし、ジャカルタ特別州は、2021年の最低賃金を更新すると同時に、新型コロナで経営が悪化した企業に対して、州労働局に申請することを条件に、2020年の最低賃金(IDR 4,276,350)を据え置くことを認めています。
今回のアンケート結果によると約2割の企業様が「申請予定」と回答されています。西ジャワ州の企業様の中には「ジャカルタ特別州のような規定を期待しています。」という意見もありました。
年 | 上昇率 | 最低賃金 |
2020年 | 8.51%増 | IDR 4,276,350 |
2021年 | 3.27%増 | IDR 4,416,186 |
※ジャカルタ特別州の数値
西ジャワ州(ブカシ・チカラン・カラワン・ボゴール)
西ジャワ州の2021年の最低賃金上昇率は6.51%増と決定したこともあり、西ジャワ州にある約45%の企業様は、約6.5%を目安に検討されています。
西ジャワ州にはジャカルタ特別州のような救済措置がないため、労働組合との話し合いをもとに、できるだけ抑制できる様に進めたいと考えている企業様も多いようでした。
(7)2021年のボーナスの支給
2021年のボーナスは「例年通り支払う」とする回答が約30%、そして「減額した上で支払う」とされる回答も約25%と、ボーナスを支払う予定である企業は5割強のみという回答でした。
2020年は、約7割以上の企業がボーナスを支給しており「当初より支払いの予定がない」という結果は2%のみという結果でしたが、この1年で受けた新型コロナの影響により多くの企業が「減額での対応、もしくは未定」とし、「様子を見る、もしくは支払わない」という選択をしていることがわかります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。2020年は、新型コロナウイルスによりPSBBが実施され業績に打撃を受けることもあり、多くの担当者様が他社様の昇給状況を気にする方も多くいらっしゃったかと思います。
2021年は最低賃金の決定もエリアによって大きく差があり、州の打ち出す施策内容が違う中、やはりエリアによって昇給率の平均数値が大きく違うこともわかります。
インドネシアではいまだ地方都市での感染拡大が続いている一方で、規制緩和も行われつつ経済活動や日常生活は徐々に元に戻りつつあります。とはいえ、まだまだ油断はできない状況ではあるため、今後どのようなかたちで業績に影響がでてきてしまうのかはまだわかりかねる部分は大きいとは思いますが、昇給率を決定する際にこのアンケート結果が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
また、こちらのアンケート資料を希望される方は下記の問い合わせフォームより、PT.Reeracoen Indonesiaにお問い合わせくださいませ。