インドネシアは毎年、最低賃金が上昇しています。そのため、すでに在籍している従業員の昇給や今後の採用計画等、また固定費の削減に悩む企業様も多いのではないでしょうか。今回は、インドネシアの最低賃金の変動には、どういう傾向があるのか、過去のデータを踏まえてお伝えします。
最低賃金 確定のタイミング
インドネシアの最低賃金は、2015年に規定された賃金に関する政令78号に基づき、「一人の労働者が適正な生活を送るために必要な費用」を各州の州知事が決定しています。また、毎年11月には確定し、翌年1月1日から実施されることと定められています。
JJC労働問題委員会が、法令78号を日本語訳したものがありましたので、あわせて確認してみてください。
最低賃金の計算方法
最低賃金の計算は、基本的に、物価上昇率と経済成長率の前年比を考慮して、独身の労働者が、物理的に適正な生活を1カ月間送るために必要な複数の生活必需品目の総額として計算されています。計算式も、法令78号の中で定められており、下記の図のように求められています。また、インドネシアの最低賃金上昇率に関しても、2015年に制定された政令78号の中で、「前年の9月から当該年の9月期の物価上昇率」と「前年第3・4四半期(7~12月)と当該年の第1・2四半期(1~6月)のGDP成長率」の和と定められています。
2020年を例にすると、労働省はこの政令に基づき、物価上昇率と3.39%、それぞれのGDP成長率を5.12%、と算した上で、その合計値の8.51%が最低賃金上昇率となっています。
2020年 インドネシアの最低賃金地域別一覧
昨年(2019年)との比較をあわせたJETROが出している表です。
引用:https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/12/53bff442f245ab30.html
最低賃金の推移
日系企業が多く集まる地域の2012年以降の最低賃金の推移をまとめました。日本同様、インドネシアの最低賃金も下がることなく、右肩上がりに伸びてきており、8年間で3倍近く増えている地域があることもわかるかと思います。
最低賃金の上昇率の推移
上昇率に絞ってみてみると、2015年、法令78号により上昇率の計算方法が定められてからは、2012年~2014年のように、大幅に上がることはなくなっていることがわかります。
出典:JETRO資料、PT.IJ Terminal資料をもとに作成
今後の課題
政令78号の全国的な浸透もあり、近年インドネシアでは全国的に最低賃金は上昇傾向にあります。しかし、実際には州毎のほか、県、市のレベルでの地域的なばらつきがあり、ジャカルタ都市部と比べると地方は、半分くらいまで差があります。このように決定過程は、州別の法定最低賃金額をベースに、上記のように地域別の状況が反映されており、そのための労使関係の不安定さが内在しています。実際の企業の現場で労働者の不満をどのように解消するかという課題があるといわれています。
また、最低賃金があがるということは、社内の従業員の給与が全員上がっていくことにもなりかねません。というのも2019年の最低賃金で入社し1年勤めたAさんが、2020年の最低賃金で入社したBさんより給与が低い、なんてことがあると、おそらく誰もがいい思いをしない結果になってしまいます。とはいえ、全員の給与を上昇率にあわせていると、毎年人件費があがってしまうので、社内の給与制度を、会社独自に作成していくことも必要かと思います。
まとめ
最低賃金は、あくまで目安の数字であり、実際には県や市で定められている最低賃金や業種によってもその相場は大きく変動してきます。そのため、常に最新の情報を確認し、現地の専門家に相談した上で給与や昇給条件を設定する必要があります。
また、アイコニックのように企業から情報を集め、給与昇給率の資料を作成しているところもあるようなので、そういった情報を利用するのもいいかもしれません。
ICONIC Co., Ltd.
ベトナムを中心に、採⽤後の⼈事課題の解決へ向けて、給与昇給率調査レポートの作成や、組織⼈事コンサルティングサービスを提供されています。
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