インドネシアにおける電子署名利用に関する法律とは

2021年2月現在、インドネシアはいまだ大規模社会制限(PSBB)の延長が続いており、オフィスでの勤務人数の制限も厳しく実施されています。そのため多くの会社が在宅勤務の導入をせざるを得ない状況となり、やむえず従来の働き方を変更した企業も多いでしょう。
この働き方の変更に伴い、出退勤管理だけでなく、打ち合わせもや採用面接、そして入社後の研修すらオンラインで行うことが一般的となりました。しかし未だに問題になるのが契約締結時に必要となる「署名」の問題ではないでしょうか。

インドネシアもいまだ紙の書面でのやり取りが多く、署名が必要になるシーンがビジネスにおいて多くあります。しかし社会制限(PSBB)が実施されている状況では、日々の出社もままならない状態のため、署名をもらうため自身のスケジュールだけでなく上司の出社のスケジュールも調整している方もいるのではないでしょうか。

現在、日本でも「脱はんこ」の動きが強まり始め、電子署名というサービスが注目されているようですが、近年インドネシアでも電子署名に関するサービスの需要が高まってきています。

そのため今回は、インドネシアでの電子署名に関連するサービスについてお伝えします。

本記事の内容に関してですが、すでに公開されている下記の記事をもとに翻訳しまとめた内容となっています。
そのため本記事はあくまでも参考程度でご確認いただき、詳細・不明点は自社で利用しているコンサルタントや弁護士等に相談・確認するようお願い致します。

電子サイン、電子署名そしてデジタル署名のそれぞれの名称について

digital signature

従来、契約を締結する際、紙の契約書に印鑑を押印することで、お互いの合意を証拠として残しているかと思います。

現在、従来のように出社ができず在宅勤務が主流になっている今、押印の代わりに注目されている技術が電子署名です。この「電子署名」とは、当事者間で合意意思を示した文書の真正性を証明するために用いられる仕組みや技術の総称を指します。

電子署名という技術があると、署名したという事実をデジタル上に記録することができるため、「署名した本人が作成した事実」を証明することが可能です。つまり「電子サイン」そして「デジタル署名」は電子署名の1つの手段です。

(1)電子サイン

電子サインとは、タブレットや携帯等の端末で開いている電子上の書類に指やタッチペン等を用いて署名をすることを意味します。買い物が食事のあとにクレジットカードを利用した場合にするサインを思い浮かべていただけるとイメージしやすいかと思います。

(2)デジタル署名

デジタル署名は電子署名の1つで、「ハッシュ関数」、「公開鍵暗号方式」、「公開鍵暗号方式(PKI)」など高度なセキュリティー技術を利用しているため、文書の本人・改ざんやなりすましを防止することが可能です。

つまりデジタル署名は、電子サインよりもさらにセキュリティレベルの高い証明が可能となります。

  • ハッシュ関数:元になるデータからハッシュ関数を用いて算出された値を暗号化する技術
  • 公開鍵暗号方式:電子文書の暗号化・復号に用いられる技術
  • 公開・秘密鍵:データの送受信者間で「公開・秘密鍵」と呼ばれるペアの鍵を用い、暗号化・復号を行う技術
電子契約とは、電子データ化した契約書に電子署名をオンライン上で完結できるしたものをいいます。
この電子契約のプロセスの中で行う電子署名の方式として、電子署名・電子サイン・デジタル署名といった署名タイプがあります。

「情報及び電子商取引法」に関するインドネシアの法律の変化

インドネシアは、2008年にはじめて”電子署名”に関する法律が定められました。この「電子情報及び取引に関する法律2008年第11号」(情報及び電子商取引法)が基礎となり、のちに詳細が定められたものが政府規制2012年第82号(政府規制82号)です。

そして電子システムの個人データ保護に関する実施規則がMOCI規制2016年第20号(MOCI規制)と、施行される上で足りない点を補うように徐々に改正されています。

下記にて、具体的にどのような変更が行われたのかをご紹介します。

2008年法律第11号(ITE法)

情報及び電子商取引法は、インドネシアにおいて初めての電子技術と電子取引に関する法律です。

この法律により、電子署名は拘束力のある法的効力を持つと規定され、電子署名の基礎を築くこととなりました。
しかし実際には、実施の過程で様々な問題が発生し判断基準が不明瞭だとの批判も出ていたようです。

情報・電子商取引法は、フェイスブックなどのSNSがインドネシアで人気を集め始めた08年に制定された。同年にはポルノ規制法も施行されている。インドネシアでは実名でSNSに登録するケースが多く、ネットで拡散される情報の発信者の身元も特定しやすく、新たな社会問題を引き起こした。
09年には、誤診を受けたと主張する病院批判のメールを友人らに送った主婦プリタ・ムルヤサリさんが病院側に名誉毀損で訴えられ、同法を適用し身柄拘束された初の事件として注目を集めた。プリタさんは支援運動などを経て保釈された後、最高裁上告審で12年、民事・刑事裁判ともに逆転無罪が下った。(引用:ジャカルタ新聞

2016年 法律第19号

本法律は、2008年に公布された法律の改正法で、電子商取引・契約、認証、電子 署名、ドメイン名管理から個人情報保護やサイバー犯罪規制までを包含しています。

サイバー空間上の情報の取扱いが議論される中、個人情報保護やサイバー 空間における規制が強化されました。
電子署名に関しては、2008年の法律にて有効としたものの、施行する上で足りなかった内容を補い、”特定の要件が満たされた場合有効”となりました。

2019年 政府規制第71号

本法律では、電子システムおよびトランザクションの実装に関して、認証済みと未認証の2種類の電子署名を区別するという内容の規制が公布されました。
主な違いは、認証された電子署名の方が証拠価値が高いことです。

そのため、当事者が電子署名の信憑性を証明する必要がある訴訟で文書を使用する場合に重要です。

電子署名の認定・認証可能な機関

2019年に改正された法律の中では、電子認証局(PSrE Induk)の役割についても詳しく言及しています。

PSrE Indukは、インドネシア政府の通信・情報技術省情報セキュリティ局が運営する電子証明書認証局です。インドネシアで唯一、電子事業者としての有効さを証明する電子証明書の発行が可能です。

一方、PSrE Berindukは電子認証を受けた企業のことを指しています。そしてこれはPSrE Indukによって技術が認証された場合に初めてこの枠に入ることができるのです。下記のような認定済みの電子署名サービス(PSrB Berinduk)は、電子認証局のウェブサイトにて紹介されています。

会社名 認証番号 PSrEの種類 認証ステータス
PT Privy Identitas Digital Nomor 84 Tahun 2021 非国家行政機関 BERINDUK
PT. Solusi Net Internusa Nomor 69 Tahun 2020 非国家行政機関 TERSERTIFIKASI
Perusahaan Umum Percetakan Uang Republik Indonesia Nomor 790 Tahun 2019 非国家行政機関 TERSERTIFIKASI
PT. Indonesia Digital Identity (VIDA) Nomor 867 Tahun 2019 非国家行政機関 TERSERTIFIKASI
Badan Pengkajian dan Penerapan Teknologi Nomor 969 Tahun 2018 州の行政機関 TERDAFTAR
Balai Sertifikasi Elektronik Badan Siber dan Sandi Negara Nomor 936 Tahun 2019 州の行政機関 TERDAFTAR
PT Djelas Tandatangan Bersama Nomor 1 Tahun 2021 非国家行政機関 BERINDUK

引用:Status Pengakuan Penyelenggara Sertifikasi Elektronik

上記以外の電子署名プロバイダーが提供するDocuSignなどのサービスも存在しています。本来これらの署名は「認証されていない電子署名」と見なされます。しかし現状は上記7社のように現地で認証を受けている企業よりも、国際的に有名なDocusign等のサービスを利用している企業が多いようです。

とはいえインドネシアの法律では、認証されていない電子署名と認証された電子署名の両方を認めているため、これらももちろん有効です。

この「認証されている電子署名」と「認証されていない電子署名」の違いは、証拠価値の強さにあるとされています。

引用:2019年 政府規制第71号

近年、インドネシアの裁判所は、訴訟手続きでの電子署名文書の受け入れを始めています。そのため認証済みの電子署名を利用している場合は、そのまま証拠として提出できるようです。

しかし「認証されていない電子署名のある書面」を利用する場合は、それらの書面の有効さをデジタル・フォレンジックをし、別途その署名の法的証拠としての価値を証明する必要があるようです。

電子署名が利用可能な書面と利用不可な書面

インドネシアの法律では契約締結時、必ずしも書面による署名が必要というわけではないとされています。しかし法廷で有効な契約を証明するために、当事者が証拠として契約書を提示しなければならない場合があります。

電子情報および取引に関する2016年法律第19号(「EIT法」)によって改正された2008年法律第11号は、電子署名が有効で受け入れ可能であることを確認しており、その中で「法律により定められた書面に関しては、自筆のサインが必要」としています。

法律により自筆サインが求められる契約 電子サインが認められている一部契約
  • 定款(およびその修正)、株主決議、株式/資産取引文書などの企業文書
  • 人事文書
  • IP転送ドキュメント
  • 不動産譲渡契約および証書*1
  • 株式/資産取引文書などの特定の企業文書

*1 : リース契約および不動産に関連するその他の契約を除く。これらの契約は通常、任意の形式の電子名を介して有効に署名できます

  • NDA、調達文書、販売契約を含む、企業間の商業契約
  • 新しい小売口座開設文書を含む消費者協定
  • 賃貸借契約を含む不動産文書、および住宅用および商業用不動産に関するその他の関連文書
  • 電子署名やデジタルトランザクション管理には通常適切ではないユースケース

上記のように証人が別途必要となるような書面、法律に関するような書面に関しては、自筆のサインが必要とされています。

人事文書に関しては、内定書のような書面は電子署名を利用しても問題ないようですが、入社時に締結する雇用契約書のような書面に関しては自筆のサインをするようにしたほうがよいでしょう。

まとめ

インドネシアでは、新型コロナウイルスによる在宅勤務等の働き方の変化に伴い、電子署名のサービスの認知・利用が増えてきているようです。実際にPrivyID社は、在宅勤務が必須となった2月から3月までの間でクライアントからの問い合わせが約350%増加したと発表しています。

現在、電子署名の導入を検討されている方がいらっしゃいましたら、この機会に上記の認証済みの企業にサービス内容や導入方法を問い合わせてみてはいかがでしょうか。

本記事の内容に関してですが、すでに公開されている下記の記事をもとに翻訳しまとめた内容となっています。
そのため本記事はあくまでも参考程度でご確認いただき、詳細は自社で利用しているコンサルタントや弁護士等に相談・確認するようお願い致します。

◆参考記事◆

Indonesia: Use of Electronic Signatures During COVID-19

Electronic Signatures in Indonesia: New Focus on Not-So-New Innovation

Keabsahan Penggunaan Digital Signature di Indonesia

BAGAIMANA KEABSAHAN DIGITAL SIGNATURE DI INDONESIA?

UU 19 tahun 2016 tentang Perubahan Atas UU 11 tahun 2008 tentang ITE

PSrE website

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