データから見る、タイの労働市場|タイ人従業員は会社に「安定」や「成長」を求めている?

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多くの日系企業が安い人件費や豊富な資源がある生産拠点を求めて、東南アジア諸国に進出し、特にタイでは、インフラが充実し、投資優遇制度や国内市場の魅力などから多くの日系企業が事業を展開しています。

一方で現在では、タイ人従業員の人件費が上昇し、過去に比べて状況が変わりつつあります。

今回は、あらゆるデータをもとに現在のタイの労働市場について見ていきたいと思います。

タイ全体の離職率は12%。最も離職率が高い業界は製造業。

Willis Towers Watson社が実施した調査(2017 General Industry Total Compensation Survey)によると、2017年のタイ全体の離職率は約12%で、他のアジア太平洋諸国の平均15%よりも下回っているという調査結果を発表しました。

離職率の高さはアジア全体にいえることではありますが、タイの失業率は1%台と、ほかの国と比べてもダントツに低い点がタイの労働市場の特徴の一つです。

つまり仕事をやめても、すぐに次の会社に転職できる状態です。

またタイで最も離職率が高い業界は製造業(18%)、生命保険(16%)、一方で離職率が低い産業はハイテク産業(11%)、資産運用業(10%)でした。

同調査によると、転職する主な理由に、「給料がいいところに就職したい」「キャリアアップできる環境を求めている」「上司やマネージャーとの関係」などが挙げられています。

各業界の離職率
● 離職率が高い業界
製造業:18%
生命保険:16%
 
● 離職率が低い業界
ハイテク産業:11%
資産運用業:10%
 
転職の主な理由
  • 給料がいい会社に就職したい
  • キャリアアップできる環境に就職したい
  • 上司やマネージャーとの関係がよくない
 

多くの企業では原因は特定しているものの、問題解決に時間がかかると感じている方が多いようです。

そのような課題に対して、能力などによる賃金の差別化、適切な人材配置、また人事に関する知識を持ったラインマネージャーの配置、テクノロジーを駆使した効果的なマネジメントも効果的な施策として挙げられています。

営業、企画職の採用が困難

また同社の調査によると、採用が難しい職種については「営業」と「企画職」という回答が一番多く、それに次いで、IT、マーケティングの分野に特化した人材の採用が困難という結果がでています。

また学士課程を卒業した新卒の給料は15000バーツ~20500バーツが最低ラインで、その給与額でエンジニア、IT、法律、人事、会計関連に特化した人材を採用することができます。

人件費が上昇傾向にあるタイの労働市場

かつて安い人件費を理由に多くの企業が中国に進出していましたが、中国の人件費が上昇し、生産拠点をタイや他の東南アジア諸国に移転する企業が増えました。

しかし、過去20年間でタイの人件費も上昇傾向にあり、地域によっては最低賃金が2倍以上に増加したところもあります。

このように人件費上昇しているいま、生産拠点を別の国へ移転する企業が増えていくことも考えられます。

「非製造業」の進出数が「製造業」を上回る

JETEOが発表している「タイ日系企業進出動向調査 2017 年」によると、2017年時点で活動が確認されている日系企業は5444社で、前回の調査(2014年11月~2017年5月10日まで)から877社増加しています。

タイに新しく進出した企業の内訳をみると、製造業よりも非製造業の企業が多く進出していますが、すでに事業展開している日系企業では製造業が一番多く、全体の47%を占めています。

先ほどのデータにもあったように製造業の離職率は他の業界に比べて高く、従業員の定着に悩まれている方も多くいらっしゃいます。

ではタイ人労働者にとってどのような企業が魅力的なのでしょうか。

タイ人が働きたいと思う企業とは

タイ国内の人気求人サイトJobsDB.comが求職者を対象に「就職してみたい企業」についてアンケートを実施し、ランキング形式で発表しています。

▶タイの人気企業ランキング

  1. PTT Public Company Limited (PTT)
  2. The Siam Cement Public Company Limited (SCG)
  3. Google (Thailand) Company (Google)
  4. Toyota Motor Thailand Co., Ltd. (Toyota Motor)
  5. Total Access Communication Public Company Limited (Dtac)
  6. CP All Public Company Limited (CP All)
  7. Advanced Info Service Public Company Limited (AIS)
  8. Thai Airways International Public Company Limited (Thai Airways)
  9. Unilever Thailand (Unilever)
  10. Honda Automobile (Thailand) Company Limited (Honda)

 

▶回答者の年齢層
50歳以上:7%
24-39歳:49%
26-33歳:27%
18-25歳:16%

参考:https://thestandard.co/jobsdb-top-10-organizations/

これらの企業は「成長」「キャリアアップ」「組織文化」「働く環境」などを理由に多くの方から選ばれています。

また若い層においては「従業員同士の関係」「他者に対するリスペクト」なども重視する傾向がありました。

世代によって多少違いはありますが、「その企業での経験が自分のキャリアに良い影響を与えるか」がタイ人の方にとって重要になります。

またPTTやSCGはこのような人気企業ランキングでは「常連」ですが、最近はGoogleがランキング入りするなど、IT企業への関心も高まっています。

傾向

上記の企業が選ばれた理由:

●成長できる機会がある
●キャリアアップに有利
●組織文化がいい

●働く環境が整っている

▶それらに加えて若い層は「人間関係」「他者に対するリスペクト」なども企業選びで重視する傾向にある

「人材=コスト」から「育てる資源」という考え方が求められる時代に

キャリアを通して成長を求めるタイ人従業員が一定数いる今、一概に「人件費が安い」という理由でタイ人従業員を雇用する時代が変わりつつあると考えられます。

あらかじめオペレーションが決められた仕事が多い企業では、人材を「コスト」として認識していることが多いと思います。

オペレーション通りに仕事を遂行することだけを求める一方、「人材を育てる」という意識が弱くなり、労働者側にとっても成長機会を見い出すことが難しいかもしれません。

先ほどの調査結果にもあったように、「安定」のほかに「成長」を求めるタイ人の従業員も多くいらっしゃいます。

タイ人従業員が成長機会が与えられない環境と感じたとき、転職を考え出す可能性も考えられます。

状況が変わるタイの労働市場で、日系企業は「人材育成」という観点も今後求められるのではないでしょうか。

まとめ

日本とタイの価値観や文化において似ている部分が多いものの、仕事に対する考え方が大きく違うため、マネジメントなどに苦労されている方も多くいらっしゃいます。

また、人件費の上昇、労働者の仕事に対する考え、注目を集める業界の変化などを踏まえると、タイ人従業員の育成・マネジメントが成果を出し続ける上で重要になるのではないでしょうか。

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