インドネシアは世界最大の島嶼国家であり、多様な文化、言語、人種からなっており「多様性の中の統一」が国是として掲げられています。国是は、建国五原則としてサンスクリット語で「5つの徳の実践」を意味するパンチャシラ(唯一神への信仰、人道主義、インドネシアの統一、民主主義、インドネシア全国民への社会正義)としてよばれており、教育面でもこの5つが重要視されています。
今回は、インドネシアの義務教育のシステムそして現状についてお伝えします。
引用:Makna Dan Penemu Lambang Garuda Pancasila
インドネシアの義務教育
インドネシアでの義務教育は日本の義務教育同様、小学校(Sekolah Dasar)が6年、中学校(Sekolah Menengah Pertama)が3年の計9年です。
日本の義務教育は文部科学省の管轄ですが、インドネシアの場合、教育文化省が所管である一般学校の他に、宗教省の管理下にあるイスラム系学校もあり、家庭・本人の希望により入学先を選ぶことが可能です。また入学先は学校の教育方針だけでなく、家族の勤務先や居住地にあわせても選択可能だそうです。
義務教育期間 | 小学校~中学校の9年間 |
教育システム | 6年(小学校)3年(中学校)3年(高校)4年制(大学) |
学期制 | 2学期制 (7月~12月・1月~6月) |
教育省と宗教省管轄の違いとは?
インドネシアの学校は、日本の文部科学省にあたる教育文化省管轄の一般の学校と宗教省管轄のイスラム教の考えや伝統に沿った教育を行うマドラサ(イスラム学校)やプサントレン(イスラム寄宿塾)と呼ばれる学校があります
以前は、一般の学校系統とマドラサ系統の学校では、カリキュラムにおける宗教科目と一般科目(非宗教科目)の割合は異なっていました。しかし、2004年のカリキュラム改革以降、一般の学校とマドラサの学校教育の標準カリキュラムは同一のものとなり明確な境界が、曖昧なものとなっています。
インドネシアの学校の名前・種類
上記でも少し紹介しましたが、インドネシアの義務教育は管轄や専攻により名称に変更があります。
大学の名称に関しては、日本のように「大卒」以外にもさまざまな種類がありますので、詳細は下記のリンクからご確認ください。
小学校(7歳から12歳) |
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中学校(13歳から15歳) |
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高校(16歳から18歳) |
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大学(19歳から~) |
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義務教育のカリキュラム
2012年にインドネシアは、65カ国・地域の15歳男女を対象に数学・理科・読解力を調査するPISA(国際学力調査)がおこなった際に、65カ国・地域中、数学64位、理科64位、読解力60位という結果になりました。この結果は同じ東南アジアのタイやベトナム、マレーシアを下回る結果となりました。
というのも当時、学習形式が丸暗記が中心であったため、本来学びで育むべき”発想力や創造力”がなかなか養えない状況になっていたようです。そのため2013年にインドネシア政府は丸暗記の教育スタイルを改善すべく、初等教育に下記の新カリキュラムを導入しています。
新たなカリキュラムは、理科、地理、英語の授業を減らし、宗教や国民意識に焦点をおく授業を増やしました。下記の図が2013年に導入されたインドネシアの小学校用の授業カリキュラムです。
引用:Kurikulum 2013 untuk SD untuk Guru dan Mahasiswa Calon Guru
※インドネシアの授業は1クラス30分
また下記の図は、日本の小学校の年間授業カリキュラムを、授業のある週(35週)で割った1週間における授業数です。
(日本の総合学習や課外学習のような特別授業数は含めていません。)
※日本の授業は1クラス45分
日本は2020年より小学校高学年から、英語の授業が必修となっています。他のアジアの非英語圏を見ても、1996年にタイが必修化し、1997年には韓国、2001年には中国が段階的に必修化を開始しています。
現在インドネシアでは、インドネシア語だけではなく、スンダ語やジャワ語のような地域言語の授業もあるため、小学校から英語の授業の必修化にはまだ少し時間がかかってしまうかもしれません。
インドネシアの義務教育(9年)卒業後の進路とは?
日本の高校と同様に、小学校6年間と中学校3年間の計9年間の義務教育の後は、高校進学となり16~18歳が対象とされています。
インドネシアの高校には、一般高校、イスラーム高校そして職業高校と3つの種類があります。
一般高校/イスラーム高校では、様々なコースが開設されており、高校1年生は、共通コースで学びますが、2年生および3年生は日本でいう文系・理系のように「理科系」「社会科系」「言語系」「宗教科系」(イスラーム高校のみ)の4コースに分けられます。
インドネシアの就業者の学歴分布
インドネシアはたくさんの島国から成り立っており、さまざまな地域がありますが、下記の図をみると、その中でも中部Jawa、西Jawa、東Jawaのエリアは特に義務教育修了まで至っていない人が多いことがわかります。
下記の図の上項目左から「義務教育を受けていない人数」「義務教育未修了の人数」という項目になっています。
引用:Keadaan Pekerja di Indonesia Agustus 2019
またインドネシアも日本同様に義務教育が設定されているものの、2019年の就業者の学歴の割合を確認すると、義務教育(小・中)を終了していない人が全体の約45%を占めていることがわかります。
参考:Keadaan Pekerja di Indonesia Agustus 2019
インドネシアと日本の義務教育とで大きく違う点は、小学校・中学校・高校すべての段階で卒業するために、統一国家試験が実施されているところです。基準点が設けられ、それを下回ると学校を卒業することができないことがあります。
そのため珍しいケースではありますが、この試験をクリアできず、留年をしてしまう子供がいるようです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。上記のような図をみるとあらためてインドネシアはまだまだ地域によっても教育格差が大きく、教育の質以前に多くの課題が残っていることがわかると思います。
しかしインドネシアの人口は右肩上がりで、毎年増加の一途をたどっています。そして年齢の若い人口が多いため今後の経済発展にも期待できるでしょう。そのためにはかかせない教育問題にインドネシアが今後どのように対応してくのか、注目ですね。
引用:世界の人口ピラミッド