最近コーポレート・ガバナンスという概念が注目されています。
コーポレート・ガバナンスに関する新しい法律が制定されたわけではありませんが、実践する企業が増えていて、ニュースなどでも注目されています。
ここではコーポレート・ガバナンスとは何なのか、どのようなメリットやデメリットがあるのかを解説していきます。
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2023年は一部企業を対象に人的資本開示が義務化されたほか、HR関連での法改正に動きが見られました。
2024年では新たな制度の適用や既存のルールの変更・拡大がおこなわれます。
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■コーポレート・ガバナンスとは?
コーポレート・ガバナンスの意味は「コーポレート(企業)」と「ガバナンス(統治)」を組み合わせた言葉です。
日本語で言うと「企業統治」であり、「企業が今まで以上に効率的に業務をおこない、かつ不正をおこなわないための社内向けの仕組み」です。
企業内で不正を未然に防ぐことで、不正が発覚し、企業イメージを下げる事態になることを根本から起こらないようにします。
株式会社のコーポレート・ガバナンスは、株主のために経営者や役員が企業経営を進めており、その方向性は「経営者や役員が株主のための企業営業を進められているか監視する」というものです。
コーポレート・ガバナンスを義務付けている法律や制度はありません。
しかし会社法、金融商品取引法、有価証券上場規程などにコーポレート・ガバナンスの根拠があります。特に会社法にはコーポレート・ガバナンスの概要を具体的に決めています。
○会社法におけるコーポレート・ガバナンスの概要
会社法におけるコーポレート・ガバナンスの概要は以下の通りです。
【コーポレート・ガバナンスの概要】
- 株式会社の設立要件
- 監査役会の構成・決議事項
- 監査役会の構成・決議事項
- 取締役会の構成・決議事項
これらの企業統治に関する事項に沿って、コーポレート・ガバナンスを進めていきます。
具体的には社外取締役や委員会制度などの導入、取締役会をおこなう際は定期的にCEOを外す、社内で倫理規定を統一する、背任行為を防ぐためのルール作成、内部通報窓口を設置する、などです。
■コーポレート・ガバナンスが注目されている理由
コーポレート・ガバナンスが注目されはじめたのは最近ではありません。
バブル崩壊の時期に、日本の企業にもコーポレート・ガバナンスが必要なのではないかという考えが広まっていきました。理由は、その時期、日本企業によくみられた経営体制です。
バブル崩壊前、日本企業のほとんどはもともと平社員だったところから出世した取締役や、企業と密接に関係している役員という形で経営されていました。本来、企業が重視するべき株主の意見が通りにくい体制でした。
またバブルが崩壊してから銀行の借り入れが中心だった企業の資金調達方法が社積へと変わったこと、バブル崩壊で不祥事が多発したこと、株主構成で「機関投資家」のシェアが急拡大したことなどから、これまでの日本企業の在り方を変えなければいけない状況になりました。
そこで適切な企業統治がしやすいコーポレート・ガバナンスが定着したのです。
■コーポレート・ガバナンスのメリット
コーポレート・ガバナンスのメリットは、企業の安全性を高め、価値を上げる効果が期待できることです。
内側から企業を変えるきっかけになります。コーポレート・ガバナンスを導入する際は、企業にとってどのようなメリットがあるか知っておきましょう。
○企業の不正を防ぐ
企業の内側から適切な方法で経営がおこなわれているか監視が働いていることで、不祥事を防ぐことができます。
例えば企業を私物化していたり、不正をおこなっていたりする従業員を見つけ出すこともできます。
○企業価値が高まる
コーポレート・ガバナンスによって健全な経営がおこなわれるようになると、企業の価値があがります。企業イメージが良くなれば、求人に応募してくる人材も増え、質の良い従業員を確保しやすくなります。
また同じ業界の他社から信頼されることで、経営をしやすくなります。利益主義に傾かず企業理念に沿った経営が実現できます。
○株主利益が増やせる
コーポレート・ガバナンスによって企業の質がよくなれば営業利益もあがるので、利益優先の経営をするよりも企業の成長が実現しやすくなります。
利益を最優先にした経営は即効性がありますが、長期的な成長にはつながりにくいです。コーポレート・ガバナンスによって企業の質を向上させることが大切です。
■コーポレート・ガバナンスのデメリット
コーポレート・ガバナンスによって企業の質を向上させることができても、新しい概念を取り入れるとデメリットも発生します。
○企業の活動スピードが落ちる可能性
経営陣が効率よく仕事をしても、監視側が問題があると判断すれば今進めている仕事をストップさせないといけなくなります。
スピード命の職業の場合は、ビジネスチャンスを失うことも起こる可能性があります。
○人材やコストがかかる
コーポレート・ガバナンスを企業に導入する場合は、社外から取締役や監視役を呼ぶ必要があります。
またコーポレート・ガバナンスを実施するための社内体制を整えるのにコストもかかってしまいます。
導入する初期段階は、従業員によっては抵抗を感じたり、概念をよく理解できなかったりする人も出てきます。こうしたさまざまな混乱を解消していく必要性もあります。
○経営姿勢がステークホルダー次第になる可能性がある
コーポレート・ガバナンスによって企業を改革するためには、ステークホルダーの存在が必要です。
ステークホルダーとは日本語で「利害関係者」という意味で、「企業と金銭的な利害が生じる人、企業、社会」のことです。
企業の従業員、顧客、ビジネスパートナー、株主、地域社会など企業をとりまくあらゆる人や社会のことです。
コーポレート・ガバナンスを導入すると、ステークホルダーに合わせた経営姿勢になるため、ステークホルダーが目先の利益を求めている場合は、利益優先の経営になるといった事態にもなりかねません。
○中小企業には必要性が低い
日本の中小企業はファミリー経営が多く、証券取引所による監視も及ばないので、コーポレート・ガバナンスの必要性は低いです。
ただ近年は企業の不祥事に対する目が厳しくなっているので、コーポレート・ガバナンスを導入しなくても利益に傾きすぎない経営姿勢が求められます。
■上場企業が実践しているコーポレート・ガバナンスコード
上場企業がコーポレート・ガバナンスを導入する際は「コーポレート・ガバナンスコード」が適用されます。
これは東京証券取引所と金融庁が中心となって策定した、ステークホルダーが企業を監視・統治する際のルールです。
5つの基本原則 |
30個の原則 |
38個の補充原則 |
計73原則 |
上記のような構成であるコーポレート・ガバナンスの中で特に重要なのは「5つの基本原則」です。コーポレート・ガバナンスで決められている基本原則は以下の通りです。
【基本原則】
- 株主の権利と平等性を確保すること
- ステークホルダーは株主以外も設定して協働すること
- 情報開示をする際は適切におこない、透明化を図る
- 取締役会などの責務
- 企業と株主の対話をおこなう
このようなコードを守り、コーポレート・ガバナンスの概念を社内に広めることで、企業の能力と安全性を底上げすることができます。
まとめ
概念を理解するためにはある程度の知識が必要ですが、利益主義に走らない、従業員や顧客・地域社会などの要望を聞き、バランスのとれた経営をおこなうといった基本的な姿勢は良い企業に共通する条件です。
コーポレート・ガバナンスを取り入れて、企業価値と信頼を高めましょう。
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