近年、採用手法、採用支援サービスが多様化しています。
リファラル採用やソーシャルリクルーティング、ダイレクトソーシングなど、新しい採用トレンドも出てきています。
しかし、「これらの手法を活用しようと思っても、なかなか上手くいかない」というようなお声も良く耳にします。
これらの採用において1つのポイントとなるのが、「採用ブランディングに力をいれているか」ではないでしょうか。
今回は、採用ブランディングを成功させるために必要な5つのステップについてご紹介します。
そもそも採用ブランディングとは
そもそも「採用ブランディング」とは、「この企業で働いてみたい」という自社のファンを増やすマーケティング手法です。
企業側から採用したい人材を明確に発信することで、より候補者との適切なマッチングが実現できます。
つまり、採用ブランディングをおこなうためには、「自社の魅力を伝える」という目的を明確に持ち、現在の採用活動を見直さなければなりません。
具体的な行動は採用活動そのものとなりますが、現在の採用活動をそのまま実施するだけでは、企業独自の色を出すことは難しいでしょう。
採用ブランディングの必要性(メリット)
採用ブランディングを実施することで、企業には次のようなメリットがあります。
<1>応募者数の増加
就職活動や転職活動で希望条件に当てはまる企業が複数あった場合、企業イメージで応募の優先順位を付けることも多いのではないでしょうか。
企業の社風や実際のリアルな仕事内容などの情報は、実際に働いてみるまでなかなか収集することができません。
同業他社などからの転職者でない限り、情報量は一般消費者と同じ位しか持っていないでしょう。
特に、BtoBサービスを提供する企業や、ニッチな層向きにサービスを製品・サービスを提供している企業は、一般に広く知られていないため、応募がそもそも集まりにくい傾向にあります。
しかし、採用ブランディングをおこなうことで企業の魅力を伝えることができれば、より多くの応募者を獲得し、大きな母集団を形成することができます。
<2>ミスマッチ解消による内定辞退・離職の減少
また、知名度があり世間的な企業イメージが良くても、採用活動が上手くいっていないケースもあります。
たとえば、テレビやネットでの情報が起因し、世間のイメージと実際とのギャップが起こってしまっているため、応募者が企業とのミスマッチにより、内定辞退や離職につながるといったケースです。
これらも、採用ブランディングをおこなうことで、企業について深く理解してくれている応募者が増えるため、採用ニーズに合った母集団形成をすることができます。
<3>人材の定着と採用コストの削減
採用ブランディングにより「この企業で働きたい」というファンを増やすことは、自社のブランディング活動につながります。
また、そのファンに入社してもらうことで、人材の定着や社員のエンゲージメント向上が期待できます。
現在は単純に既存の求人広告などに予算を投下しても、満足のいく母集団形成ができない現状もありますが、「あの企業の取り組みが話題となっているらしい!」「説明会、選考がおもしろかった!」というような口コミが広がれば、自然に母集団が増えることでしょう。
つまり、広告にお金を掛けなくても人が集まる仕組みを作ることができるのです。
採用ブランディングの方法|成功させる5つのステップ
それでは、採用ブランディングを実際におこなっていく方法を5つのステップに分けて詳しく解説していきます。
企業の存在をさまざまな場所で売り込む必要は全くありません。
採用ブランディングは採用計画をしっかり立てることで、自然とできあがります。
Step 1. 「採用ニーズ」を明確化にする
はじめに、採用活動において重要である、自社の『採用ニーズ』を明確化します。
募集要項に必要な内容については、すぐに書き出せるかと思いますが、下記の2項目についても明確化し、すぐに書き出せるかがポイントです。
- ヒューマンスキル
- 自社の社風に合う人物像
ヒューマンスキルや社風に合う人物像を明確化すると、ポテンシャル採用やスキル要件が同等の人物が複数応募してきた時の絞り込み、さらにミスマッチ防止にも役に立ちます。
特に新卒採用では、ヒューマンスキルや社風を明確化せずに募集をかけると母集団が大きくなりすぎてしまいます。
母集団に明らかにタイプの違う人も含まれてしまうため、入社後のミスマッチもおこりやすくなります。
他社との差別化を明確にし、採用担当者が絞り込みをおこなわなくても、採用ニーズにあった母集団を形成することが大事です。
また、中途入社の従業員など他社を経験している人に聞いてみると、意外な事が独自の社風だと言われ、新たな気付きを得ることにつながるかもしれません。
「飲み会や合宿の仕切り役」
「聞き上手といわれる」
「勤務時間内にサッカーや野球の日本代表を応援できる」
「全国の祭りに参加している部長がいる」
Step 2. 「採用キーワード」を設定する
採用ニーズを明確化したら、特に重要視したい採用のポイントを『採用キーワード』として設定します。
たとえば「企業理念に共感できる人」を重要視する場合、このままキーワードにするのではなく、「企業理念のどの言葉に共感できる人であるか?」まで落とし込む必要があります。
その言葉が「情熱」であれば、「情熱」のまま設定しても良いですし、より明確に「情熱を持っている人」や、「情熱を持って仕事に取り組みたい人」と設定しても構いません。
選考方法を決める際にも、この採用キーワードを念頭に置いて、採用ニーズとかけ離れた選考にならないように心がけましょう。
さらに、募集要項や求人広告、説明会、採用選考会などに採用キーワードを多く散りばめることが大事です。そして、採用キーワードから自社を思い出してもらえるようにします。
特に新卒採用では、学生が100社以上の求人を見てエントリーをするため、少しでも記憶に残るような工夫が必要です。
Step 3. 「採用サイト」を充実させる
採用ブランディングをおこなう際に最も重要になるのが、『採用サイト』です。
採用サイトでは、新卒・中途問わず「仕事のやりがい」や「自社の魅力」を自由に発信することができます。
昨今では、SNSを利用した就職活動も盛んで、上手く活用すれば大きくブランディングに貢献できます。
ただ、SNSを使いこなせていなかったり、途中で情報を更新できなくなったりすると、せっかくファンとなってくれた応募者が離れる可能性もあります。
その点で、採用サイトは「作り込むことができる」ものですので、利用者(応募者)のニーズに沿って内容を充実させていくようにしましょう。
また、採用サイトを企業のブランドカラーに統一することは、コーポレートブランディングにもつながります。
採用サイトの更新により人事担当者に負担が掛かってしまっては、本来したかった業務に時間を掛けることができなくなってしまいます。採用管理システム(ATS)やコンテンツ・マネジメント・システム(CMS)などを活用して、採用担当者の工数軽減をおこなうと良いかもしれません。
Step 4. 「企業説明会」でファンを作る
『企業説明会』は、特に新卒採用において採用ブランディングのカギとなります。
採用サイトやパンフレットに記載していることを順に説明するだけでは、誰も「ここで働きたい」と思うファンにはなりません。
実際に製品を見せながら「他社との違い」や「どのように製造しているのか」を説明したり、現場で働いている社員に「普段どのように働いているのか」や「新しいサービスを実現させるまでにどんな苦労があったのか」などを聞いたりする中で、1回ごとに熱意を持って説明会を開催することが大事です。
また、社長や人事部長に「なぜ採用活動をおこなっているのか」「どんな人に入社してもらいたいのか」を話してもらうことも、ファンを増やすには効果的です。
応募者の心を動かすには、実際に企業に訪問してもらい、従業員から仕事の話を聞き、製品やサービスを知ってもらうほかありません。
形式に拘らず、自社の魅力が伝わるような説明会を企画することで、説明会が魅力的なものとなります。
自社の魅力が最も伝わりやすい方法は、働いている当事者に説明してもらうことですが、説明会に来ることができない場合も多くあることと思います。そのような場合は、VTRで代用したり、それも難しい場合は採用担当者の熱意でカバーしたりして、伝えるようにしましょう。
Step 5. 「研修」などで従業員全員に周知する
最後に、採用ブランディングや企業イメージについて、企業のトップはもちろんのこと、従業員全員に周知する必要があります。
社内放送や一斉メールでは記憶に残りにくくなってしまうため、時間はかかりますが『研修』を実施するのが良いでしょう。
座学やe-ラーニングでも良いですが、1番記憶に残るのはディスカッション形式やグループワークです。
ディスカッション形式やグループワークでは、従業員に「どんな企業に入りたいか」や「どんな人が自社にはふさわしいか」を考えてもらい、採用ブランディングだけでなく採用活動自体を知ってもらう機会にすることも大事です。
座学やe-ラーニングでしか実施できない場合は、確認テストをおこなうなどで記憶に残るように心がけましょう。
必要に応じて、採用担当者だけでなく総務や広報を巻き込んで研修を実施しても良いかもしれません。
最後に
採用ブランディングは、難しいものではありません。
現在の採用活動を少し見直すだけで、現在抱えている採用関係の問題が解決できる可能性が高まります。
従業員に採用ブランディングを共有してもらうことは大変かもしれませんが、従業員が統一した意識を持つことで企業の成長と活性化にもつながります。
まずはできることから取り入れていくなど、実際に行動してみることが大事でしょう。