こんにちは、HR NOTE編集部の岩田です!
近年、採用において学生の「売り手市場」が続いています。いかにして自社の求める人材を採用していくべきか悩みを抱えている企業様も多いのではないでしょうか。
そんな中、注目を集めているのが、地方の大学に通う学生への採用アプローチです。
そこで今回は、「地方学生が就職活動において抱えている課題」や「企業が地方の優秀な学生との出会いを創出し、採用につなげるためのポイント」についてまとめました!
地方学生の就職活動における現状
学生の就職活動にかかる費用の全国平均は約16万円、地方学生はその1.5倍の費用がかかると言われています。
なかでも、四国地方の学生が就活に使う費用の平均は約43万円と飛び抜けて高く、次いで高いのは中国地方の学生で約23万円とのことです。費用の内訳のほとんどは「交通費」と「滞在費」が占めているようです。
学生の就職活動には、
- 首都圏と地方大学の学生間での情報格差が大きい
- 地方学生は、東京にて選考を受けるために交通費や滞在費の負担が大きい
という実態があるように感じています。また、地方学生は移動や滞在などにかかる時間的コストも大きく、就職活動に割ける時間も少なくなります。地方大学に通う学生は首都圏の学生と比べて、企業との接触機会が少なくなる傾向があります。
企業は、自社に内定承諾をする可能性がある地方の優秀な学生に出会う機会が少なくなる。一方で地方学生は、多くの選択肢を持てず、納得感をもって就職活動を終えることができない。
これでは、お互いにとって不幸なこととなってしまいます。
地方大学生の採用に向けた企業の取り組み
冒頭でも述べたように、大卒の求人倍率は1.78倍にまでのぼると言われている「学生の売り手市場」の現在、求める学生を採用することは、ますます難しくなっています。
そんな中、採用する可能性を広げるために、未だ接触していない地方の学生をターゲットに、積極的に採用活動をおこなっている企業も存在します。
ここでは、3社の企業の事例をご紹介します。
地方大学生の採用を強化|サイバーエージェントの事例
株式会社サイバーエージェントは、地方大学生の採用の強化を目的として、地方学生採用強化プロジェクト「FLAT」をおこなっています。
これは、地方学生との距離を縮め、これまで接触できなかった優秀な地方学生の採用を目指し、「地方大学への出張セミナー」「面談」「現地選考会」などの採用活動を、全国47都道府県でおこなうものです。
具体的に、以下のような内容です。汎用性の高いものが多いため、自社で地方学生をターゲットにした採用活動を考えるうえでも参考になるのではないかと思います。
(1)大学出張セミナー・インターンシップ・キャリア面談
地方に人事担当者や現場社員が出張し、インターン、会社説明会、面談をおこなっています。また、30名以上の学生参加を条件として、大学へ出張するリクエストにも対応しています。
(2)公開OBOG訪問
地方の学生は、OBOG訪問の機会に関しても、首都圏の学生に比べて圧倒的に不利になってしまいます。そこで現場社員がOBOGとして地方に出張し、一度に多くの学生の質問に答える合同OB訪問をおこなっています。
(3)現地選考会
当初は東京・大阪のみでおこなっていた選考会を、全国47都道府県でおこなっています。
(4)オンライン選考
Skypeでの選考は従来、エンジニア・クリエイター採用で実施していましたが、新卒の総合職採用を含めた全職種で採用し、学生の就職活動で課題となる交通費や時間のコストを最小化しています。
(5)地方学生専用のオンラインコミュニティ
セミナーや選考会で接触した地方学生が参加できるオンラインコミュニティを開設し、リアルタイムで質問に答えたり、動画コンテンツを公開したりできる場にしています、地方学生が陥りやすい首都圏学生との情報の格差、また情報を得られる機会そのものの格差の是正をはかっています。
全国から優秀な学生のエントリーが殺到!その手法とは|三幸製菓の事例
新潟県の米菓メーカー三幸製菓は、ユニークな採用手法を用いることで、自社に合う優秀な大学生を、全国から採用しています。現在に至るまでに、採用に関して3つのフェーズを経てきたとのことです。
(1)ブランディングのフェーズ
当時、三幸製菓の新卒採用エントリー数は300人〜400人で、競合の大手食品メーカーと企業の認知度を比較すると、その差は平均して4倍近くありました。そこで、採用の重要性を経営陣に訴えかけて予算を増やし、自社のブランディングを強化することで、3年間で最大13,000人までエントリー数を増加させたと言います。
具体的に、「就職サイトのデザインをすべて変える」「パンフレットを巻物にする」「合同説明会で、自分たちがいかに成長していくかを伝える」などを徹底しておこない、「熱量が高く、成長力がある、地方のお菓子メーカー」というメッセージを一貫して伝え続けました。
2010年度採用には多額の予算をつけ、ちょうどテレビCMが始まったこともあり、学生への認知度も急上昇しました。
(2)ソーシャル採用のフェーズ
エントリーの母集団形成ができあがってきたところで、三幸製菓は2013年度の採用から就活ナビサイトの利用をやめ、Facebookでの情報発信をメインとする採用活動をおこないました。
背景にある意図としては、「13,000人の学生をエントリーさせても、12,900人落とす採用なら意味がない。限られた母集団の中でも、一人ひとりをしっかり見ていきたい」という思いがあったようです。
Facebookページとリアルのイベントとの連動を通して、自社への共感・共振の高い学生の採用につながりました。その反面、多様性文脈での採用という点において、課題が残ったといいます。
(3)多様性文脈での採用|マッチングをはかる選考方法
多様性文脈での採用が必要なフェーズになり、従来の面接よりも正確に個人の能力を評価できる選考方法を取り入れました。「学生自身が強みや適性を発揮できる選考」として、選考方法をいくつかに分け、その能力が発揮される仕組みを整えたのです。
たとえば、複数の選考方法が用意されているカフェテリア採用。その中での「出前全員面接会」では学生自身が5人以上の選考希望者を集めた上で、人事の方に面接にきてもらえるというものです。この採用手法では、調整能力や、周りを巻き込む能力を評価する上での判断材料にしているといいます。
結果として、国内からは全国の各有名大学から、理系、文系、大卒、院卒と多様な人材が集まり、また海外の有名大学を卒業した学生が内定承諾をすることもあるそうです。
全国のどこにいても選考を受けられる選考手法や、豊富な選考方法は、学生に「正当に自分の能力を見てもらえている」という実感を与えるでしょう。
企業の人材を大切にする姿勢を感じ、学生の自身への評価への納得感が、優秀な学生の内定承諾につながっている理由の一つではないでしょうか。
▶「新卒採用エントリーを300名から13,000名に増やした」地方のお菓子メーカーの採用戦略とは
▶「面接では判断できない」日本一短いES・35の質問・カフェテリア採用で行うマッチングとは
『1日完結選考』を地方でも実施|ユナイテッドの事例
ユナイテッド株式会社は、2015年度より独自の施策である『1日完結選考』をおこなっています。
【『1日完結選考』とは】
- 新卒採用において、会社説明会から最終選考、内定通知までを、1日でおこなう採用手法
- 地方学生の就職活動における「時間」「お金」の課題解決につながっている
2017年度の新卒採用では、地方での『1日完結選考』の実施回数と開催場所を増やしました。
地方の就活生にとって大きな負担である「複数回の面接」「交通費」などの時間的・経済的制約を、できるだけ緩和させ、より多くの優秀な地方学生の採用につなげることを狙いとしています。
地方学生の採用に注力するメリット・デメリット
企業にとって地方学生への採用活動を強化することは、大きなコストが必要となります。地方学生の採用を強化することで得られるメリットとデメリットを、今一度整理してみました。
地方学生の採用を強化するメリット
全国の優秀な学生と接点を持つことができる
地方の学生は就職活動において、得られる情報量が少なかったり、経済的な理由から行動の制約を受けたりと、首都圏の学生と比較して接触できる企業数が比較的少なくなる傾向にあります。
もちろん、リアルな場で接触できることが一番だと思いますが、難しい際はSkypeでの面接などを設けることで、地方学生がエントリーするまでの障壁を下げることができるのではないでしょうか。
地方学生は厳選した企業の選考だけを受ける傾向があるため、採用したい学生が自社の選考を受ける以前に未接触のまま他社に取られてしまう、という機会損出を防ぐことができます。
自社のブランディングにつながる
地方大学生に対して自社の知名度を上げるだけでなく、「学生の採用活動に真摯に取り組んでいる」、「学生の就職活動に協力的」といった企業イメージをつくることにつながります。
地方には、チャンスを真剣に捉えられる優秀な学生が多い
就職活動に意欲がある地方の学生は、得られる情報量や企業との接触の機会が少ないため、一つひとつの選択肢を真剣に精査することに長けているという印象があります。
そうした学生に熱心にアプローチをかけることで、学生は真剣に自社のことを検討してくれます。結果として、採用しても採用に至らなくても、お互いに納得感のある関係を築くことができるでしょう。
地方学生の採用を強化するリスク/デメリット
地方には地元志向の学生も多い
わざわざ上京や他の地域に行かなくても、地元の企業に就職したいという学生も多い印象です。そうした志向性を持つ優秀な学生を口説くのも一つの方法ですが、そもそも「地元を出たがらない学生の割合が比較的高い」ということも念頭に置いて、取り組む必要があります。
採用市場の拡大に大きなコストがかかる
前述の三幸製菓の例に見られるように、特に中小企業にとって、地方学生向けに採用活動を強化するということは、会社の経営方針にも関わるほどの大きな決断です。
地方学生に対して採用チャネルの拡大や新しい選考方法を導入することは、予算、人材、時間など、あらゆるコストがより多くかかってしまいます。
企業が地方学生に対する採用活動に使える4つのサービス
地方学生の採用を自社の取り組みだけで強化することは、採用の仕組みづくりなど、大きなコストが必要になります。
そこで、企業と地方学生のマッチングを促進するサービスを利用することも、地方学生の採用を活性化させる手法の一つでしょう。
今回は、地方学生の採用活動に使える、4つのサービスをご紹介します。
ちほりけ|地方大学の理系学生にアプローチ
企業のニーズと学生の希望・適性を踏まえた上で、マッチングや採用支援を行う「就活エージェント」。
その中でも特に、地方に住む理系学生の採用支援を行っているのが「ちほりけ」です。
地方の理系学生は、都市圏の学生に比べ就活に費用・移動時間・労力などがかかります。その負担を「ちほりけ」が解消することで学生の登録者数を増やし、まだまだ日本中の魅力的な企業を知らない学生たちと貴社のマッチングを実現いたします。
団体・サービス名:ちほりけ
提供元:株式会社ネオキャリア
URL:https://hrnote.jp/service/sa003
サポーターズ|学生と企業が支援でつながる
「『カッコイイオトナ』を増やす」を理念として掲げ、企業と学生が、企業からの「支援金」を通じてつながれるサービスを提供しています。
就職活動において、交通費を主として地方学生が必要とする大きな資金を、サポーターズの取引先企業が一部支援することで、学生には企業の説明会やセミナー、選考会などに出席してもらいます。
企業にとっては、「遠方に行ってまで就活をがんばりたい」という就活に意欲のある学生と接点を持つことができます。オフラインでの接触なため、良い人材がいれば直接熱烈なアプローチをかけることができます。
また、登録学生にはかなり詳細にプロフィールを記載してもらうため、同サービス内で可能なダイレクトリクルーティングの質が高いといった特徴もあります。
スマサポ|地方学生と首都圏企業を結ぶ新卒紹介
地方大学生を対象に、首都圏企業の選考を受ける際の交通費を補助するサービスです。
運営元である株式会社アイデムのAidem Smart Agentがエージェントとして学生と提携企業の間に入るため、第三者的な視点から学生の志向性に合った企業が紹介されるのが特徴です。
地方のミカタ|全国の地方学生が東京で集まる、日本最大のコミュニティへ
地方学生の東京での就職活動を支援するために、学生向けには情報ポータル、就活シェアハウス、ダイレクトリクルーティングによる企業との接点など、多岐にわたるサービスを提供しています。
提携企業は「就活カフェ」、「就活シェアハウス」というリアルの場を利用して、近い距離感で地方学生と接触できるというメリットがあります。
登録学生は地方の国公立が中心で、企業側が学生プロフィールを見ながらダイレクトリクルーティングが可能という特徴があります。
おわりに
「学生の売り手市場だから、早期内定を出さなければ優秀な学生を取ることができない」と考える採用担当者の方も多いと思います。しかし、接触機会がないだけで、地方にも、自社にとって優秀な学生は数多く存在しています。
企業側、学生側、双方に納得感のある採用活動をおこなうためにも、企業側から地方就活生が抱える課題に寄り添い、まだ見ぬ地方学生に会いにいってみてはいかがでしょうか。
いかに優秀な地方学生との接点を持つか。それが、近年の新卒採用における大事なポイントの一つといえるでしょう。