労務管理|飲食店「店長自身」の労務管理における課題と対策とは | 人事部から企業成長を応援するメディアHR NOTE

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労務管理|飲食店「店長自身」の労務管理における課題と対策とは

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飲食店では店長が従業員の労務管理をしていることが多いです。店長自身の労務管理は適切におこなわれているのでしょうか?忙しさのため長時間勤務になっているケースが見受けられるようです。

今回は、飲食店の店長にありがちな労務管理上の課題と、その対策について、労働基準法に関する問題も交えてご紹介します。

1. 飲食店店長の労務管理の実態とは

店長 労務管理640飲食店の店長は、売上管理や従業員の労務管理など、さまざまな業務を抱えています。店を任されているというイメージではないでしょうか。

飲食店の店長には、どのような労務上の負担があるのかを具体的に確認していきましょう。

1-1. 長時間労働

店長の労務上の負担のひとつとして、長時間労働があります。飲食店にはアルバイトが多いため、店長によるアルバイトのマネジメントは重要な仕事です。

飲食店は人手が必要な時間帯が偏るため、アルバイトを使ってシフトを組むのが一般的なスタイルです。

たとえば、昼の時間帯は、アルバイトAが担当して、夜の時間帯はアルバイトBが担当するというようなシフト分けです。アルバイトA・Bの勤務時間が、それぞれ5時間だとすると、合計10時間になります。

店長は、10時間通しての勤務になることも少なくありません。店の責任者である店長は、アルバイトA・Bの管理をしないと心配でしょう。さらに閉店後の売上管理などの事務作業も必要となれば、必然的に長時間勤務となってしまいます。

1-2. 名ばかり管理職問題

名ばかり管理職」という言葉をご存知でしょうか。実績や評価に基づかずに、管理職に任命されることです。たとえば、正社員であるという理由で、店長になっている従業員もいることでしょう。

そもそも、店長の労務上の位置づけは、主任・係長・課長といった役職のうち、どれになるのでしょうか。位置づけは会社によってそれぞれ異なります。ある会社では主任待遇、ある会社では係長待遇などです。

一般的に、店長は管理職とされているケースが多いようです。しかし、管理といってもアルバイトの労務管理や売上を集計する程度の管理で、会社の経営管理に携わる店長は少ないのではないでしょうか。

1-3. 飲食店の店長はなぜ名ばかり管理職に陥りやすいか

店長を名ばかり管理職にする飲食店が多いのはなぜでしょうか?後述して説明しますが、「管理監督者」であれば会社は残業代を支給する必要がない、ということが大きいようです。

つまり会社からすると、わずかばかりの店長手当を支払っておけば、多額の残業代を支払わず、安い人件費で多くの業務を任せられるという、身勝手な理由が多いようです。

2. 飲食店店長の労務管理問題への適切な対応とは

「管理職であれば残業代を支給する必要がない」とは、はたして本当でしょうか?間違いであれば、労働基準法違反ということになります。

2-1. 管理職は残業代をもらえない?

「管理職」は残業代をもらえないといわれていますが、そもそも管理職とは何を意味するのでしょうか。実は、管理職を明記した法律はありません。一般的に使用されている管理職とは、課長や部長などの役職を総称した言葉です。

明確な定義のない管理職に対して、残業代が必要か不要かを決めることはナンセンスです。つまり、「管理職は残業代をもらえない」というのは、間違いということになります。

2-2. 店長は管理監督者なのか?

「管理監督者」ということばをご存知でしょうか。労働基準法によると管理監督者は、「労働時間」「休憩」「休日」について、労働基準法の適用を受けないといいます。

管理職が管理監督者に該当すれば、残業代を支給しなくてもよいことになります。「管理職は残業代をもらえない」と言われているのは、管理監督者と管理職の区別があいまいであることから生じたのでしょう。

しかし、管理監督者と管理職は異なります。管理監督者と認められるためには、次の要件が必要とされているからです。

2-2-1. 経営者と一体的な立場で仕事をしている

管理監督者であっても、取締役とは異なり労働者であることは変わりません。管理監督者とは、労働者ではあるが経営者と同じ立場で仕事をする従業員をいいます。

つまり、管理監督や指揮命令など一定の権限を与えられている必要があります。

2-2-2. 出社、退社や通勤時間について厳格な制限を受けていない

管理監督者とは、経営上の判断から時間にかかわらない対応を迫られます。したがって、勤務時間などを厳格に定めることができません。

遅刻や早退により給与が減らされるようでは、管理監督者とはいえないでしょう。

2-2-3. その地位にふさわしい待遇がなされている

管理監督者は、経営者と同じ立場で仕事をするという重要なポジションを担います。当然、地位や給料などについて、相応の待遇が必要です。

他の社員とそれほど変わらない待遇では、管理監督者の待遇とはいえません。

上記の要件に該当するものが、ひとつでもあるでしょうか?名ばかり管理職の場合、管理監督者にはあたらないので残業代は支給されなければいけません。

2-3. 「名ばかり管理職」になってしまった際の対応

上記から、「どうやら自分は、名ばかり管理職だな」と気がついた場合、どうすればよいのでしょうか?

2-3-1. 会社と話し合う

一般的に本部には、労働基準法に詳しい社員がいるはずです。しかし、必ずいるとは限りません。本部自体が「管理職であれば残業代を支給する必要がない」と思って管理している場合もあります。

この場合、会社にとって危険な状態といえるでしょう。ある日突然、「労働基準法違反の会社」というレッテルを貼られる可能性があります。ただし、会社が違反行為だと理解することで問題が解決することもあるでしょう。

労働基準法違反と理解しているにもかかわらず、そのまま管理しているのであれば、悪質な会社といえます。単独では動かず、同僚や上司と相談して動くなど、慎重に進めなければならないでしょう。

2-3-2. 労働基準監督署に相談する

ブラック企業といわれている悪質な会社では、直接話を進めるのは難しいかもしれません。

その場合、会社を管轄する労働基準監督署に相談することになります。労働基準監督署に相談する際、勤務実績が証明できる出勤簿やタイムカードを準備しておいてください。

なぜなら、労働基準監督署も管理監督者であるかどうかを判断する必要があるからです。勤務実績により、出社・退社や勤務時間について厳格な制限を受けているかどうかが判断できます。

ただし、労働基準監督署に通報するのであれば、その後の会社における立場が厳しくなるのはいうまでもありません。

2-3-3. 会社を辞める

自分の会社がブラック企業だと分かれば、退職する方向で事を進めるほうが賢明でしょう。ブラックということは、従業員に対してブラックであると考えてください。本来、従業員に支給すべき給与を減らして、会社の利益に上乗せする会社です。

今は我慢しても、いずれ退職を考えるような問題が発生する可能性が高いでしょう。仕事において、必要な我慢と必要でない我慢の違いを認識する必要があるのではないでしょうか

退職を覚悟したのなら、後はスムーズに進みます。労働基準監督署へ相談しやすくなるからです。

3. 店長自身が労務管理問題に陥らないためにできること

店舗の顔というべき店長が労務管理上のトラブルを抱えることは、店長にとっても会社にとっても不幸なことです。そこで、店長が労務トラブルに陥らないためにできる対策をご紹介します。

3-1. 管理監督者の確認

まず、会社自体が管理監督者の要件を認識することが必要です。そして、管理監督者と一般の管理職との違いを明確にして管理していくことがポイントになります。

会社にしても、労働基準監督署の調査が入るようなことは避けたいでしょう。ブラック企業になったとたんに会社のイメージは急降下です。

 

3-2. 就業規則や賃金制度の確認

就業規則や賃金規定に、給与の支払い方や割増賃金の計算方法が記載されているはずです。就業規則に定められた通りの支払い方や計算がされていなければ、労働基準法違反になります。

また就業規則などは、従業員の誰もが確認できるように周知しておかなければなりません。大切な書類だからといって、社長の机の引き出しに入れて鍵をかけるのは好ましくありません。

 

3-3. 残業時間の実態を確認

店長の労働時間を確認することも大切です。割増賃金を支払うためだけではありません。心身にストレスをかけるような時間外労働になっていないか、注意しなければならないからです。

時間外労働は、「時間外労働の限度に関する基準」として、上限時間が定められています。上限時間を超えるような時間外労働であれば、過労死といった深刻な問題にもつながりかねません。

3-4. 対応策を考える

「管理監督者の確認」「就業規則や賃金制度の確認」「残業時間の実態の確認」をおこなった後は、その対策を考えることになります。

最も大切なことは、労働基準法に違反していないかどうかを確認することです。違反していれば早急に是正しなければなりません。

就業規則が昔から更新されておらず、現在の社内体制と合っていないケースもあります。変更が必要であれば、労働者代表の意見書を添付したり、所轄労働基準監督署に届け出たりするなど、一定のルールを遵守する必要があるため、確認が必要です。

長時間労働を避け、適切に割増賃金を支給することで、店長のモチベーションも高くなるでしょう。店長クラスの労働環境を整えることが、飲食店経営の発展に欠かすことのできない対策ではないでしょうか。

4. おわりに

店長が「名ばかり管理職」の場合、残業代は支給される必要があります。労務管理上の違法行為は、従業員にとっても会社にとってもマイナスとなります。

また、割増賃金を支給したとしても、長時間労働は店長の健康を害するなど、労働災害の原因にもなりうるでしょう。

店長の労務上の課題を把握して対策を打つことが、店長の心身の余裕につながりモチベーションを高めることにつながります。それによって店舗の活性化にも役立つでしょう。重要なことは、労務管理の適正化ではないでしょうか。

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