内定式が終わり、次年度の採用戦略を本格的に考え始めた企業様も多くいる一方で、採用充足に向けて『秋採用』を行っていく企業様もいらっしゃることかと思います。しかし、秋採用を行うにしても多くの学生は内定を獲得しているため、母集団が少なっている中、ただ待っているだけでは、自社の求める学生に出会う可能性は低くなるばかりだと思います。
そこで今回は、秋採用に関する傾向や、採用担当者が意識しておきたいことは何か、調べてみました。
目次
秋採用でしか出会えないような学生もいる
秋採用になると、相対的に自社の求める学生と出会う機会が減ってくるものです。ただ、大手・有名企業ではなく中小・ベンチャー企業に目を向けて活動する学生が増えてきます。数はそこまで多くはありませんが、この時期だからこそ出会えるような学生もいます。以下のような学生を意識してアプローチすることもひとつの方法かと思います。
公務員試験を落ちてしまった学生
国家公務員Ⅱ種であれば、9月に試験の合否がわかります。そこで残念ながら不合格となってしまった学生がこの時期から就職活動に意識を切り替えて動きはじめます。基本的に公務員試験の勉強を中心に行ってきているので、就職活動の経験はありません。またそれ以外にも、司法試験や、公認会計士試験もなどの資格取得を優先していたために、就職活動を行ってこなかった学生もいます。
【傾向】
- 試験に向けて勉強してきたため、真面目にコツコツ頑張る継続力は高い。
- 就職活動に関する知識がなく、とりあえず業界研究から始める。そのため、まだ軸も定まっていない。
- まずは業界を絞らずに幅広くいろいろな会社にエントリーをする。
- 成長、チャレンジ、というよりは安定などを好む傾向がある。
- 来年に公務員試験を再度受けようとする気持ちも残っている可能性がある。
部活をしていた体育会系の学生
ずっと部活を行っており、引退してようやく就職活動を本格的に始める学生もこのくらい時期から徐々にでてきます。体育会の部活は、春や秋に大会があるため、就職活動の時期と重なってしまいます。そのため、部活に専念せざるを得なく、就職活動を集中して行うことが難しい状況にあります。
【傾向】
- 履歴書の書き方や面接のやり方など、まだ就職活動に関する理解が浅い。
- 自分が決めたことであれば、苦しくても逃げ出ずにやり抜く根性がある。
- 部活のOBが大手企業に就職していることもあり、いわゆる有名なわかりやすい企業を志望しがちである。
- ただ、それも単純に知らないだけのため、中小・ベンチャー企業にも興味を持ってくれる可能性は十分にある。
- 体格が良く、礼儀正しい学生が多い。
海外留学生
海外留学生は、国内での就職活動は帰国した期間でしか行うことができず、就職活動を行うことを目的として帰国してきている学生も多くいます。1~2ヶ月するとまた大学に戻らないといけないため、基本的に短期での就職活動を求められます。ただ、近年では、留学生の採用に関しては、通年で行う企業も出てきています。また、まずは語学力を見るためなど、Skypeや電話を活用して遠隔で面接を行うやり方も増えてきています。
【傾向】
- 留学先の語学を活かせるかどうか、海外にいけるのかなど、海外に関われる企業に注目している。
- 短期決戦。就職活動のために一時帰国している学生が多く、しばらくするとまた海外に戻ってしまう。
- 就活活動に関しての理解度はそこまで高くない。
- コミュニケーション能力は高い傾向にある。
- 内定を獲得できるかどうか、危機感が高い。
内定を辞退した学生
内定ブルーという言葉がありますが、内定を獲得してほっと一息ついた後に、「本当にこの企業で良いのだろうか」と悩む学生が出てきます。また、内定式に出席したものの、何かしらのギャップを感じ、辞退となってしまう学生もいる模様です。そしてそこから、再度就職活動を行っていきます。
【傾向】
- 過去に内定を取っているため、ある程度の自信が見受けられる。
- 辞退とした企業と同じ業界を志望する学生は、辞退理由にもよるが、やりたいことが明確なため優秀である傾向が見える。
- 逆に軸がブレてしまっている学生は深掘りをして、頭の中を一緒に整理してあげる必要がある。
- 内定した企業の「どこか」にギャップを感じて辞退しているため、その部分を見極めて面接を行う方が良い。
- 当然だが、就職活動慣れをしている。
アルバイトをずっと行っていた学生
諸々の事情があり、「費用を稼ぐためにアルバイトに力を入れていて今まで就職活動を行っていなかった」「アルバイト先に就職しようと思っていたが、事情により就職活動を開始した」という学生も、ちらほらとこの時期に見受けられます。
【傾向】
- お金を稼ぐことの大切さをわかっている。
- 対人能力が高い傾向がある。
- バイトが忙しく、なかなか時間がつくれない。
- 就職活動に関する理解はまだ浅い。
企業側はどう対応していくべきか
①学生と会う入り口のハードルを下げる
秋採用は母集団形成に苦戦する傾向があります。少しでも多くの学生と会えるように、応募があったら個別に会っていくなど、柔軟な対応を行っても良いかと思います。
②履歴書の内容や面接がイマイチでも、面接慣れしていないだけと考える
履歴書の内容が薄い、面接で上手く話すことができないという学生がいても、やる気がないわけではありません。就職活動に慣れていないだけです。夏以前の採用基準と同様に考えずに、「海外留学をした理由」「部活でどういうことをしてきたか」「バイトで何を学んだのか」など、粘り強く深掘りして聞いていくことが大事です。その学生の経験してきたこと、想いや考え方など、良さを引き出すようなヒアリングをしていきましょう。
③選考のリードタイムを短くする
選考回数を減らすこともひとつの方法ですが、まずは選考回数を減らさずにリードタイムを短くすることを意識してみてはいかがでしょうか。マッチング制度を高めるために選考は複数回行ったほうが良いかと思います。場合によっては、選考後その場で合否を伝え、選考日程を決めてしまう方法もありでしょう。
④他社の選考状況にいつも以上に注意
夏までの採用と比較した際に、選考のリードタイムを短くしている企業様が多くなっています。また学生側も早く就職活動を終えなくてはいけないと、危機感が高いため、他社の選考状況を把握せずに油断をしていると、学生から「他社内定のため辞退させてください」と連絡をもらうことがあるかもしれません。
秋採用で活用したい採用手法は?
秋採用に向けて、上記のような学生をはじめとして、学生と出会う母数を増やしていくためにどのような方法があるのでしょうか。ここでは、以下のようなサービスを挙げさせていただきました。
新卒紹介サービス
『リクナビ就職エージェント』『就職エージェントneo』新卒紹介サービスは学生の認知度も上がっており、「就職活動でまず何をすべきなにかわからない」「キャリアカウンセラーに面接のアドバイスをもらいたい」といった、就職活動をこれから始めるような学生が登録にきています。今までとは違った層の学生に出会うこともあります。
また、『ジールアスリートエージェンシー』や『アスリートプランニング』といった、体育会系の学生に特化した新卒紹介サービスがあり、体育会系の学生を求めている企業様であれば、この時期は多くの登録者がいるため、一度検討してみるのも良いかもしれません。
合同企業イベント
『マイナビ国際派就職』や『ディスコ キャリアフォーラム』に代表されるように、留学生に特化した合同企業イベントがあり、留学生が帰国するタイミングで毎年開催されています。留学生のことを考慮し、その場で面接ができるブースも設置しており、リードタイムを縮めて選考を行うことができます。
就職サイト
多くの学生にアプローチするという観点では、秋採用に関しても、引き続きリクナビ、マイナビといった就職サイトはメインで使って行くべきだと思います。ただし、訴求方法を変更することはひとつ検討されてみてはいかがでしょうか。
例えば、『秋以降、まだまだ採用します』『就職活動を今から開始された方、歓迎』『英語を活かせる環境があります』など、積極的に採用を行っていることをアピールしたり、秋採用に向けてアプローチしたい層をイメージして訴求したりすると良いでしょう。大手・有名企業の求人がクローズしていく中で、自社求人が注目されるチャンスがあるかもしれません。
大学キャリアセンター
就職活動に慣れていない学生は、大学のキャリアセンターにも相談をすることかと思います。そこで各大学にお願いをして求人票を置いてもうようにしましょう。可能であれば、FAXや郵送で送るだけではなく、直接手渡す方がより印象づけることができます。注力したい大学には定期的な訪問を行い、情報交換できるような関係性を築いていくことも重要でしょう。
最後に
いかがでしたでしょうか。
ここでは、ほんの一部を取り上げさせていただきましたが、秋採用に向けて採用担当者ができることはまだまだあるかと思います。秋採用に向けて、「とりあえず母集団を確保してそこから選考を行う」よりも、どのような層の学生がどのように就職活動をしているのかを理解し、その上でアプローチ方法を検討していくことが重要ではないでしょうか。