こんにちは!HR NOTE 編集長 根本です。
エンジニア採用において自社に合った人材とどのように出会い、いかにして見極めを行うべきか悩まれている企業様も多いのではないでしょうか。今回は、NewsPicksでおなじみの株式会社ユーザベース 大川氏より、「エンジニア採用においての最適な採用フロー」に関してご紹介します。
先日、株式会社divが開催する『Engineer Recruiting~エンジニア採用の最前線~』というエンジニア採用戦略イベントがあり、
『株式会社モンスター・ラボ 村上 有基 氏』
『株式会社アカツキ 大日方 誠 氏』
『株式会社MOLTS 寺倉 そめひこ 氏』
『株式会社ユーザベース 大川 知 氏』
の注目企業4社による「エンジニア採用を成功させるには」というテーマでのトークセッションより、大川氏のパートを記事にしてまとめました。
目次
エンジニア採用においての最適な採用フローとは?
大川氏:僕はエンジニアなので、エンジニア視点で「エージェントから優秀な人材を紹介してもらうためにどうしているか」と、「良い課題をつくるにはどうすべきか」についてお話させていただきます。
とにかくエージェントとコミュニケーションをとることが大事
大川氏:まず、候補者を集めるところで、人材紹介会社のエージェントから優秀な人を紹介してもらうためにどうしているか。とにかくエージェントとコミュニケーションをとることが大事だと思っています。エージェントの方も人間なので、ひたすら推薦者が不合格となれば気持ちが沈んでくると思うんですね。なのでそこの部分をケアをするということが一番大事だと考えています。
その中でフィードバックが一番重要だと感じています。まずは、マッチしていた点をしっかりと伝えることが大事です。良かった点を言わないと、何を基軸に紹介すればいいのかわからなくなるので、マッチしている点を伝えています。一方で、マッチしていなかった点も正確に伝えています。現場で働いているメンバーの言葉で、どういう点が足りなかったのかを正確に伝えることが重要だと思います。
さらに、例えば「○○会社にいる○○さんみたいな人だったらきっとこういう課題を解決してくれると思うので、そういう感じがマッチすると思います。」といった、わかりやすい判断軸も伝えてあげるといいかなと思います。1人紹介してもらってそのときは不合格でも、結果として精度が上がっていくような、そういうフィードバックループができるといいかと考えています。
ミスマッチをなくす目的で、良質な課題を提供していく
大川氏:次に、「良い課題をつくるにはどうするべきか」についてお話させていただきます。採⽤後の「こんなはずではなかった」を最⼩限にする、⾯接では明らかにしにくい点を評価できるようにすることを目的に、候補者に対して課題をつくっています。
今までに様々な試験を実施してきましたが、役に立ったものもありますし、役に立たなかったものもありました。
実際に役に立った試験としては、『ソフトウェアを設計する力を見る課題』があります。もっというと「将来この辺が辛くなりそうだから、そこをあらかじめケアしておこう」という視点で物を考えられるかどうか。経験豊富な方であれば、長く運用したときに辛くなりそうなポイントまで分かった上で設計するものです。これは意外と面接で聞くのは非常に難しいと思います。
また、『文章にまとめて相手に伝える力の試験』も役に立ちました。例えば「あなたが経験したプロジェクトで最も大変だったものを教えてください」と聞きます。僕らはその人がいったいどういう仕事をしてきたか、どういうコンディションでその仕事を受けたか、全く知らないわけですよね。その僕らに対して、相手が見えている景色を想像しながら書くということができるかどうかを見ています。
性格診断も、最近やり始めたばかりなのですが、僕が受けてみた感触としては良好です。どうしても、面接はバイアスがかかるような気がしています。そういう初回に対面した際のバイアスを取り除いて、しっかりと評価できるのは良いなと思います。
逆に不要だった試験としては、知識を問う課題があります。これは面接で十分だと感じました。
あとは、合否判断軸となり得ない設問の課題ですね。例えば「あなたは自分の会社が好きですか」とか、「オープンソースソフトウェア(OSS)を書いていますか」などですね。OSSを書いているのは勿論良いのですが、書いていないからといって不合格にすることはできません。合否判断の軸にならない課題は、時間の無駄となってしまうのでやらない方が良いと思っています。
今までの常識に囚われず、非常識なこともやってみる
大川氏:エージェントへのフィードバックと、課題のつくり方のところで共通しているのは、具体的にどういう人が自社に必要なのかを明確にすることがポイントだということです。ここが明確になってないと、候補者のあら探しをして、あらが見つからない短所の少ない人を採用しがちです。それは、組織を弱くすることにつながると思っているので、まずはどの部分に強みがあって、どのくらい“とがっている”人が必要なのかということを決定しておくべきだと思います。
経営者から、例えば「次はマーケティングの責任者を採用しよう」と言われた際に、パーフェクトな⼈材を思い描いて要望を伝えてくることがあります。ただ、そんな方は市場になかなかいないし、いても他社に流れてしまいます。そのため、「何で採用したいんですか」「どのように活躍して欲しいんですか」と、しっかりと聞いて、具体的に「あの人だな」ってピンとくるくらいに採用要件を整理するところに時間をかけることが一番大事だと考えています。
先日NewsPicksで公開された、濱口秀司さんという方の記事がすごく面白くて、「イノベーションを起こすときは自分のバイアスを崩せ」と仰っています。私自身は採用の素人なので、最初のうちは非常識と知らずにやってしまったことがいくつかあるのですが、結果として良かったこともありました。非常識だと思うことでも、やってみても良いと思うんですよね。先輩から教えられたことを一回無視して、「今まで慣習的にやってたけど、これおかしくない?」みたいなことを考えていく。そういう力があると人事がちょっと変わってくるのではないかと思っています。
HRビジネスコンサルタント 平田 剛士氏にも、人材紹介経由のエンジニア採用に関して聞いてみた
HRビジネスコンサルタント 平田 剛士 氏
HRビジネス向けクラウドCRM提供企業にてマーケティング&セールスを牽引。国内で最も多くの人材紹介エージェントと接点を持つと言われている。独立後はHRビジネスコンサルタントとして、HRビジネス業界の各社にハンズオン型のコンサルティングサービスを提供している。3,700名以上が参加する人材紹介ビジネス向けとしては国内最大のFacebookグループ『人材紹介コミュニティ』、人材紹介と人事向けの勉強会『これからの人材紹介』を主宰。さらにビジネスパーソン向けに『転職エージェントガイド』を運営。趣味は釣りで『ORETSURI – 俺たちの釣り』編集長。得意技はどこでも野宿。
平田氏:まずエンジニア採用については、時代の潮流に敏感、かつ変化へ対応できる企業から先にダイレクト/リファラル・リクルーティングにシフトしています。背景にはコスト以外に2つの理由があります。
- エージェント側にとってもエンジニア獲得は困難であるため採用効果がでにくい
- エンジニア経験のないエージェントの場合、エンジニアのスキル・キャリアを的確に判別できていないことも多々あり、仲介によってミスマッチが生じることがある
またダイレクト/リファラル・リクルーティングという採用手法では、出会いの『リアルな場』がより重視されてきている傾向にあります。この『リアルな場』は、大きく2つあります。
- 勉強会系
プロダクトを支える最先端技術活用の失敗・苦労・改善について自社メンバーもしくは外部著名講師がプレゼンテーションを行い、イベント運営企業や登壇者の在籍企業に興味をもってもらう採用手法。外部講師を招くよりは、自社メンバーや同じような採用ニーズがある複数社共催による登壇が効果的。副次的な効果として、既存メンバーのモチベーションが向上し、アウトプットの成長やリテンションにも役立つ。
【参考例】第6回ペパボテックカンファレンスにイベント型採用広報の可能性を見た
- 社内イベント公開系
月次締め会・納会をピザパーティなどにアレンジし公開。既存メンバー周辺の人材をSNS経由で積極的に呼び込み、プロダクトのリリース状況・顧客の声・社内の決算状況などの自社情報を公開し興味をもってもらい、採用リードの獲得につなげる手法。
こうしたダイレクト/リファラル・リクルーティングという採用手段については、経営者や人事採用責任者に強い変革の意志がない限り成功しません。現状の採用体制に課題を感じている経営者は人事部門の再構築(人員リプレイスや採用と労務の2ライン化)を考えたほうがよいでしょう。また採用手段移行は急激にできることではありませんし、人材紹介会社経由だからこそ成功する採用も当然ありますので、人材紹介会社経由の採用をいきなりゼロにするということを早計に考えず、まず以下のことを工夫してみるとよいでしょう。
新規取引の場合
- 人材紹介会社の「エンジニア紹介に強い!」というPRについてはファクトを確認してから取引する
- 「エンジニア紹介に強い!」の「エンジニア」は、どの領域(SI企業?WEB系?CRM?アプリ?ゲーム?)を指すかを確認しておく
- 人材紹介会社の既存取引企業リストと直近1年間の実績をヒアリングする(直接競合もしくはベンチマーク企業の有無を確認)
- 営業担当にエンジニア経験がある方もしくは十二分にエンジニアスキルとキャリアを判別する力がある方についてもらう(場合によっては上職者や経営者に相談の上、担当を変更してもらう)
取引済み人材紹介会社の場合
- 人材紹介会社とのコミュニケーションの「スピードと量」を意識する。特にスピードはルール化して運用
- フィードバックはあいまいではなく正確にし、人材紹介会社が推薦精度を改善できるようにする
- 重要な人材紹介会社の場合、担当・チーム・部門の営業目標をヒアリングし、自社の採用目標に加えて同営業担当の達成や評価を考えて求人打診を考慮する
- ポジションのレイヤー/特性によって都度依頼するエージェント母集団を考慮し、優遇するエージェントとその他多数を明確に線引きする
- 採用支援に成果のあった人材紹介会社の営業担当を表彰する制度を設ける。会社だけでなく個人にもフォーカスすることで営業担当の支援を受けやすくなる
【平田氏の関連記事はこちら】
■「人材紹介会社から推薦が上がってこない」と人事が諦めたら、そこで試合終了
■人材紹介会社経由の採用決定率を上げるために、経営者と人事はどのように考え行動すべきか?
【イベント概要】
- 主催:株式会社div
- 日時:2016年9月17日(土)13:00~15:30
- 会場:TECH::CAMP(東京都渋谷区道玄坂2丁目10番12号 新大宗ビル3号館8F)
- テーマ:「採用ベストプラクティス~注目4社と考える、エンジニア採用を成功させるには~」
- 動員:人事限定100名