2015年10月30日に厚生労働省が公表した「2012年3月卒業者の新規学卒者の離職状況」の調査結果によると大卒の3年後離職率は32.3%と、3人に1人が3年以内に退職をしています。
終身雇用制度の崩壊という言葉も良く耳にし、1社に長く在籍することがスタンダードではなくなってきているように感じます。
しかし、企業側としては、コストをかけて採用し、手塩にかけた育てた人材を失いたくないことでしょう。
そこで今回は離職率が低下した企業の事例を紹介します。ご覧になっていただき、何かご参考としていただけると幸いです。
目次
1. なぜ離職率が高くなってしまうのか
離職率が高まりやすい職場にはいくつかの共通点があります。なかでも、労働環境が整えられておらず、従業員が不満を感じやすいケースには十分な注意が必要です。また、人材育成や教育、フォローが不十分であるために離職率が高まっている可能性も考えられます。
ここからは、離職率が高くなってしまう原因について詳しく考えていきます。
労働環境が整っていない
業務量が多すぎたり労働時間が長かったりと労働環境が整っていない職場では、離職率が高まりやすくなります。
近年では人手不足に悩まされる企業が増加していますが、従業員が過剰な量の業務をこなさなければならない状況に陥るのは避けたいものです。業務量増加や残業増加の状態が続くと、従業員は心身のストレスを抱えてしまいます。また、仕事のオンオフのバランスが取りにくくなることも従業員にとっては大きな負担となります。
キャリアアップが見込めない職場や適切な評価が行われないケースでも離職率は高まりやすくなります。こういった問題を抱えているときには、従業員が快適に働けるよう社内体制やルールを改善していきましょう。
教育やフォローが十分におこなわれていない
離職率を下げるためには、人材育成や教育、フォローに十分なリソースを割くことが肝心です。
かつては、先輩の仕事を見て自分で考えるという現場主義の職場も数多くありました。しかし、こういった指導方法では従業員のスキルや能力を十分に高めることができません。業務のことを誰に相談していいかわからないような雰囲気が蔓延している状態も問題です。
教育やフォローが十分でない職場で離職が起こりやすいのは、従業員が大きな不安を抱えやすいためです。
教育の手法が整っていない状態では、従業員は何を目指してどう働けばいいのかを見極められなくなってしまいます。すると、仕事に対するやりがいを感じられなくなったり、ストレスを抱えてしまったりといったトラブルが起こります。人材育成が不十分であるために従業員が本来持っている資質を発揮できず、自信をなくしてしまうケースもあります。
とくに、新入社員はフォロー体制に対する不安を抱えやすいものです。入社直後には手厚い教育やフォローを行うなど、従業員の不安を取り除く配慮が必要となります。
2. サイボウズ:離職率28%から4%へ激減させた秘密
人材の流動が激しいWEB・IT業界に身を置くサイボウズですが、離職率を大幅に減少させることに成功しました。
鍵は、人事制度を作る「過程」にありました。
人事制度設計を従業員がおこなう
サイボウズでは一時期、離職率が28%と高水準になり、人事制度を見直しました。
残った社員の夢をかなえられる会社にしようと方針を定め、「100人いれば、100通りの人事制度があってよい」という新たな人事制度の方針を打ち立てました。
それはトップダウンではなく、究極のボトムアップとも呼べる「人事制度を従業員が考え、構築する」ことができ、どうすればより良い環境でモチベーション高く働くことができるか、そのために「その従業員に合った人事制度を作りましょう」というものです。
従業員のワークスタイルを柔軟に
サイボウズが具体的に導入している施策は、『在宅勤務制度』や、時間や場所ではなく成果や生産性をより重視する『ウルトラワーク制度』などです。
大事なことは成功体験を積んで定着させること。
成功体験を積めば周囲やマネジメントをする上司も最適な仕事の進め方が分かり、良い制度が「継続」するようになります。
自分達で責任を持って作った人事制度であるということも後押ししており、この制度を活性化させようと従業員自らが主体的に取り組んでいます。
このように自分達で制度を作ることにより、自分たちのニーズに合った制度ができ、さらにそれを実行し成功体験を積み重ね続ける事で、その制度が継続します。
また、「副業の自由化」として、会社に断らずに副業を可能とするなど、従業員のワークスタイルを柔軟にすることで、従業員が意欲を持って働くことになり、良いスパイラル生まれ、離職率の激減につながりました。
URL:http://cybozu.co.jp/
3. 鳥貴族:業界の当たりまえを払拭。常に低い離職率を維持する取り組みとは?
鳥貴族は、マイナスの意味での「当たりまえ」をなくしたいという想いがあります。
その仕組みを作り、継続することで離職率を低い水準で維持しています。
部門が連携して取り組む
今までは、入社後の社員は各店舗に任せきりな部分があったのですが、そこに人財部もフォローに関わるようにしました。
入社してから1カ月前後に、面接官が店舗に訪問し入社した社員をチェックするという取り組みを実施しています。
当然、店長は信頼していますが、もしかしたら現場では言えない声があった際に、それを吸い上げるのが目的です。
このような部門間を超えた連携は離職率低下に大きな影響を与えています。
もし、離職者が出ても離職理由を深くヒアリング出来るので、その後につながりやすくなります。
組織の壁をなくす
鳥貴族には社長室も役員室もありません。
本社にいる社員は全員が一つの大部屋で仕事をするというスタイルです。
そうすることにより、若手社員も役員がどんな仕事をしているのかが分かりますし、フランクな関係を作り易いのです。
また、『トリキウェイ』という「正しい人間」「利他の精神」「プラス発想」「自己責任」の4つからなる、社員が共有すべき価値観が明確化して存在していますが、トップダウンで押し付けることはせず、「方向を示しながらみんなで目指そう」という鳥貴族独自のリーダーシップも、そのようなフラットな社風からきています。
無断残業はNG
残業が多いイメージの飲食産業ですが、鳥貴族では無断残業、休日出勤は禁止です。
どうしてもしなければならない際は、上長への申告が必要になってきます。
残業する理由、しないようにするための対策なども上長と話し合うので自然と労働時間も短縮されます。
このように、外食産業の当たりまえを細かいルールや制度により見直すことによって、業界ではトップクラスの離職率の低さを誇っています。
URL:http://www.torikizoku.co.jp/company/
4. カネテツデリカフーズ:入社3年以内の離職率は50%。危機的状況から劇的に改善
カネテツデリカフーズは、新人の離職率が50%を超えていたのを、わずか数%に低下させました。
秘密は「制度を変え、風土を変えた」ことです。
「何が悪いか?」を見直す
そもそも離職率の高い原因は何か?それは「仕事は見て覚えろ」という風土にありました。
この風土により、現場での新人へのスキルやノウハウの共有不足やコミュニケーション不足が発生したのです。
経営合理化が進み現場の人員は少ない中で、新人の気質は時代によって変わります。まずはこの風土を根本から変えました。
マンツーマン制度
これは、現場の先輩が新人をマンツーマンで見る制度です。徹底的に新人へ教育するという風土に変えました。
一か月の目標を先輩と一緒に立て、それをしっかりと振り返る。その目標設定や振り返る時間もキチンと作ることで、制度の浸透を徹底しました。
「時間を掛けてじっくり話が出来るので記憶に残る」
「年齢が近い先輩なので、今の段階で学ぶべき事を教えてもらえる」
このような現場の声もあがっており、良い効果を発揮しました。
また、「中間管理職の育成研修にもなっている」と新人・若手先輩社員両方の育成効果が見られました。
さらに、「個々人の知識が足りずに十分に教えられないところは、自然と周りの従業員が補ってくれた」と、組織全体のコミュニケーションが活発化してきたとのことです。
会社に根付いた風土を変えることは非常に大変ですが、カネテツデリカフーズは仕組みを変える事で風土を変え、劇的な離職率低下を実現しました。
URL:http://www.kanetetsu.com/
5. レオパレス21:マネージャーの意識を見直す。有休取得率が倍増した鍵とは?
離職率の高い不動産業界に身を置くレオパレス21。
わずか3年で離職率を業界水準以下に改善し、有休取得率が倍増しました。
それは「支店長クラスの意識改革」がポイントでした。
研修制度を導入
レオパレス21では今まで研修にあまり経費を割かず、教育は基本的に現場任せでしたが、社員アンケートを取ると教育に対する欲求が非常に高いということがわかりました。
そこで、管理職研修、営業力強化研修、組織マネジメントなど、部門や立場によってさまざまな研修を用意しました。
最初は抵抗があった研修ですが、成果を出す社員がでることで、支店長や社員の本気度が変わりました。
それにより、各現場でのマネジメント能力が向上し、「俺の背中を見て育て」というやり方ではなく、現場を「マネジメント」するという共通認識を生み出す事に成功しました。
評価制度を見直す
不動産業界の定説である「歩合は高いがハード」というイメージをなくすことを目標に、評価軸の見直しをおこないました。
「労働時間=評価ではない」ということを繰り返し言い続け、「限られた時間で成果を出す人間」を評価するという制度の浸透を、徹底的に行いました。
それにより、業績を維持したまま、一人当たり月6時間の時間短縮、有休取得率も34%から70%へと劇的に改善しました。
URL:http://www.leopalace21.co.jp/
6. ビースタイル:コミュニケーション方法を見直し離職率を20%から8%へ
人材サービス業のビースタイルがなぜ20%あった離職率を8%にできたのか。
その鍵は「コミュニケーション」にありました。
360度コミュニケーション
ビースタイルでは、離職が高い時に最も欠けていた従業員間のコミュニケーションの改善を図りました。
- 感謝の気持ちを表す「バリューズアワード」
- 幹部に意見を伝える「全社日報」
- マネージャーと1対1の面談「1ON1」
上も下もなく、全方位のコミュケーションを円滑にするために作った取り組みです。
形骸化した制度が生まれ変わる
このようにコミュニケーションが良くなれば今まで名ばかりであった制度も息を吹き返します。
- 選択式時短勤務制度
- 午前・午後6時-9時には家に居ようという「69ファミリーシフト」
- 「新規事業プランコンテスト」
これらは昔からあった制度ですが、まさに絵に描いた餅状態で形骸化されていました。
社員のコミュニケーションを円滑にすることによって、社員のやる気やワークライフバランスに関する施策が積極的に活用され、さらに活性化につながるという好循環が生まれました。
このような相乗効果があり、ビースタイルは離職率を低下することができました。
URL:http://www.bstylegroup.co.jp/
最後に
いかがでしたでしょうか。
従業員間でのコミュニケーションを密にとり、従業員の声に耳を傾け続けることが、離職率が改善につながります。
コミュニケーションを活発にするためには、さまざまな施策を要する場合もありますが、ちょっとした飲み会などのイベントを開いたり、誕生日の人がいたら社内でケーキを用意して祝ったりと、まずはできることからコツコツと積み重ねていくことが重要でしょう。
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