昨年、米Googleが2019年から日本においても求人関連事業「Google for Jobs」をリリースすることを発表。2019月1 月より、本格的に「Googleしごと検索」機能の提供が始まりました。
これからは、Googleの検索サイトで仕事や転職に関連したキーワードを入れると、広告と一般検索結果の間に求人情報が表示されるようになります。
本記事では「Googleしごと検索とはなにか」から「その掲載方法」「リリースによる採用領域への影響と対策」をご紹介します。
(2018/12/27日経新聞▶グーグル、求人事業に19年参入 検索結果で仕事を提案)
目次
1|Googleしごと検索(Google for Jobs)とは?
Google for Jobsは、2017年6月にアメリカで発表され、その後、世界中に広まっている求人情報の新しい探し方です。
求人情報を探しているユーザーに対してGoogleが適した情報を提供します。ここでは「Googleしごと検索(Google for Jobs)の概要」と「Googleしごと検索を活用するために、企業がすべき対応」をご紹介します。
―新しいGoogleの「しごと検索」機能
インターネットを使った求人情報探しは便利になってきました。しかし、数多くある求人情報が掲載されたメディアから自分の希望にあった情報を自分自身で探し出すのは大変です。
自身のニーズとマッチしている求人がたくさんあったとしても、検索する条件によって表示されず、見逃してしまうリスクがありました。
Google for Jobsの「しごと検索」機能では、ウェブ上の転職・求人情報サイトや企業の採用ページなどから求人情報を探して検索結果に解りやすく表示します。
また、求職者は[新宿 アルバイト][薬局 短期アルバイト]など使い慣れたGoogleの検索ボックスにキーワードを入力するだけで、ニーズにあった求人情報を得ることが可能になります。
ちなみに、以前もGoogleの検索ボックスでも、例えば[職業 地域]などを検索すると、それに該当する求人情報がでてきたはずです。それでも多くの方が求人サイトやIndeedを使って直接条件を絞り求人検索をおこなっていたのは、それだけGoogleで求人情報を検索した時に出る検索結果に余分なものが多かったからかと思います。
Googleしごと検索がリリースされることで、その点は大きく改善され、求職者にとっても使いやすいすくなるのではないでしょうか。
―採用に活用するには、対応が必要
Googleしごと検索を活用するためには、求人情報に構造化データをマークアップし、最適化する必要があります。構造化データは検索ロボットが内容を容易に理解できるようにするためのデータで、サイトコンテンツの説明を付与することができます。
これにより、検索エンジンはサイトがどういうものかの把握を容易におこなうことができるようになります。
マークアップとは、コンテンツ情報をコンピュータが理解できるように、タイトルや見出しなどの各構成要素にタグと呼ばれる識別用目印をつけることを意味します。
マークアップに必要な構造化データはGoogle公式サイトに記載されており、必須と書かれている内容はもちろん、推奨と書かれている内容も付与することで検索の絞り込みにも適切に対応することができます。
2|「Googleしごと検索」と「Indeed」の違い
今後、HR業界で大きな影響力を持っていくと考えられる「Googleしごと検索」と「Indeed」。これらには一体どのような違いがあるのでしょうか?
―Googleしごと検索は広告ではない
Indeedは求人情報サイトなので、結局は有料広告です。課金をすれば上位表示されるという仕組みになっています。
一方で、Googleしごと検索は広告ではありません。そのため、上位表示するために課金をするということは基本的にはできないといった特徴があります。
Indeedは一般検索(もしくはリスティング広告)での表示ですが、お金をかけなくても一般検索より比較的上位に表示されるのがGoogleしごと検索です。
―Indeedのように求人を直接投稿できない
Indeedには、求人募集ページがない企業向けに「直接投稿」という機能があります。
しかし、Googleしごと検索にはその機能がなく、自社サイトがクローリングされるように設定しなければ、求人情報が表示されないようになっています。
つまり、自社サイトをGoogleしごと検索で表示させるためには、設定が必須となります。
既にいろいろなサイトで設定の手順が展開されていますので、自社サイトをお持ちであれば、設定対応をおすすめいたします。
3|Googleしごと検索の特徴
「日常の趣味や志向にあった仕事探しがしやすくなる」というのが、求職者側にとっての最大のメリットだと思われます。そんなGoogleしごと検索には以下のような特徴があります。
―とにかく目立つ
かならず1ページ目に表示されるため、非常に目立ちます。また、求人に関連したキーワードを連想して表示されるので、常に仕事探しをお手軽にできるようになります。
※かならずリスティング広告の次にGoogleしごと検索が表示されるとは限りません。
―口コミ情報がある
求人情報と同時に、口コミ情報もまとめられるので、口コミ対策は必須です。
今までの求人サイトなどでは口コミ情報が連動していませんでしたが、求人情報と口コミ情報が一緒に見られるようになるので、口コミの重要性が高まります。
―自宅住所から勤務地が近い仕事を探しやすい
今まではアルバイトのお仕事探しでいえば、最寄駅検索が一般的でしたが、Googleしごと検索では、自分の居住地から2km圏内の仕事を探せるようになります。
また、自宅から勤務地までの地図が自動表示されるので、距離感も掴みやすくなり、応募もしやすくなります。
※市区町村単位、距離単位で仕事探しが可能
アメリカでIndeedが求人サイトであるMonstarのシェアを奪っていったように、Indeedやその他求人サイトにとっては、Googleしごと検索は脅威になる可能性があります。
今後は、AIやビッグデータを活用することにより、どれだけ質の高いマッチングを実現していくことができるかが鍵になるかもしれません。
4|Googleしごと検索が採用領域に与える影響と対策
採用活動では、正社員とアルバイト、さらには正社員の中でも新卒採用と中途採用でおこなう採用手法が異なります。
Googleしごと検索はそれぞれの採用活動にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
■中途採用
中途採用において重要となるのは、「いかに求職者の目にとまる求人かどうか」と、「求人内容とのマッチング率」です。
検索エンジンで最大手のGoogleが無料でサービス提供をおこなうとなると、使用する求職者が増えるのは間違いありません。
また、マークアップを適切にしておくと、求職者が検索するキーワードとの合致率が高い場合に検索結果として表示されやすくなるので、マッチング率の向上が期待できます。
さらに、中途採用において、地方では大手Web媒体を活用する企業が少ないといった特徴があります。その理由として、地方の求職者数がそもそも少ないため、広告掲載した際の費用対効果が低くなってしまうことがあげられます。
それにより、ネットで検索しても地方の企業の求人はなかなかヒットせず、多くの地方求職者がハローワークを利用する傾向がありました。
Googleしごと検索の場合、企業は費用対効果を気にする必要がなくなるので、今後、地方においてもネット上で求人募集をかける企業が増えていくと考えられます。
■アルバイト採用
アルバイトは正社員にくらべて人の出入りが激しいため、頻繁に募集をかける必要があります。
そのため、従来の募集方法としては、お金をはらって求人サイトにて急募の求人を掲載するというのが一般的できでした。
Googleしごと検索を使えば、無料で求人募集をおこなうことができるため、コスト面からして、通年での求人募集も可能になります。そのため、今後はGoogleを使った求人が増えると考えられるでしょう。
■新卒採用
新卒採用においては、学校とコネクションをもった広告代理店がまだまだ有利だと思われます。
しかし、無料であることと検索エンジン最大手でユーザー数が多いことを考えると、Googleしごと検索は広告代理店の脅威になっていくと予想されます。
まだ立ちあがったばかりなのでその影響はあまりでていませんが、これからは広告代理店からGoogleを活用した採用活動に移っていく可能性も視野に入れておく必要がありそうです。
ただ、あくまでもGoogleでの求人募集はコントロールが難しく、かつ求人同士の競争率が高くなるため、効果が保証されにくいというデメリットもあります。そのため、求人媒体への掲載は今までどおり続ける必要がある企業が大半だといえるでしょう。
5|Googleしごと検索を採用に活用するには?
では、実際にGoogleしごと検索を採用に活用するためには何をしなければならないのでしょうか?ここでは、「Googleしごと検索を効率的、かつ効果的に活用する方法」をご紹介します。
―自社採用ページの準備が必要
Google for JobsはGoogle検索の一部なので、検索結果からリンクできる自社採用ページが必要になります。
自社採用ページの構造化データに検索エンジンが理解しやすいようにキーワードをマークアップすることで、Googleしごと検索での検索結果とのマッチングをおこなうことができるようになります。
―対応ATSを利用する手も
「自分でGoogleの検索結果に表示されやすい自社採用ページをつくるのは技術的に難しい」「随時更新しなければならないのも面倒だ」とお考えの人事担当者も多いのではないでしょうか。
検索エンジン大手であるGoogleが求人表示対応をおこなうことが、採用業界でかなりの注目を集めるとともに、すでに動き始めている採用活動支援会社が多くあり、その中に(※1)採用管理システム(ATS)を扱う会社があります。
Googleは、(※2)サードパーティの求人サイトを利用することで検索結果として表示することができるとしています。すでに、国内の求人サイトシステム会社であるリクオプやengageなどがGoogleしごと検索に対応していることを発表しており、これらのシステムを導入することでGoogleしごと検索を活用することができるようになります。
(※1)採用管理システム(ATS)
これまでエクセルなどで管理してきた応募から採用に至るまでのプロセスを、ひとつのシステム上で一元管理できるシステム
(※2)サードパーティ
IT業界でオリジナル製品を販売していない、互換性のあるソフトウェアなどを製造、販売しているメーカー(企業)
6|Googleしごと検索の掲載方法
それでは最後に、具体的な「Googleしごと検索の掲載方法」をご紹介します。
―採用管理システム(ATS)を利用する場合
対応ATSを利用する場合は、対応ATSサービスを提供している採用管理システムを導入することから始めましょう。
採用管理システムは月数万円の利用料で採用情報を一元管理したり、オンライン面接ツールをもっていたりなど、採用活動を効率化する様々な機能を兼ね備えていることが特徴です。
それらの機能とあわせてGoogleしごと検索も使えるようになれば、非常に手軽で簡単です。
―対応管理システム(ATS)を利用しない場合
構造化データをマークアップした自社採用ホームページの作成をおこないましょう。ここで注意しなければならないのは、Googleのガイドラインに準拠した構造化データを作成しなければならないという点です。
Google検索で表示されるようになるには、Googleが定めたガイドラインに従うことが必須です。また、自社採用ページの更新も必要になります。
新規で採用ページを作成した、更新した場合に、indexing APIを使って、作成したホームページのURLやコンテンツを更新したことをGoogleに通知する必要があります。
最初は少し手間がかかるかもしれませんが、慣れれば大した作業ではありませんので、各社での対応も十分可能です。
しかし、一度Googleに送れば終わりではなく、更新が必要であることから手間がかかってしまいます。その手間を省き、コア業務に注力するためには対応ATSの導入をおすすめします。
7|まとめ(←時間がない方はこちら)
いかがでしたでしょうか。昨年末、日本におけるGoogleの求人事業参入が発表され、HR業界内で大きな話題となりました。また、2019月1 月23日(水)より、本格的に「Googleしごと検索」機能の提供が始まります。
以前までのGoogleとの違い
以前も、Googleの検索窓で、例えば[職業 地域]などを検索すると、それに該当する求人情報がでてきたはずです。それでも多くの方が求人サイトやIndeedを使って直接条件を絞り求人検索をおこなっていたのは、それだけGoogleで求人情報を検索した時に出る検索結果に余分なものが多かったからかと思います。
Googleしごと検索がリリースされることで、その点は大きく改善され、求職者にとっても使いやすいすくなるのではないでしょうか。ちなみに、サイト管理者が構造化データを用意しなければ、自社の求人がGooogleしごと検索の検索結果に表示されるようにはならないので注意が必要です。
求人数はIndeedが圧倒!
ただ一方で、Indeedは直接のセールス部隊を持ち、独自に中小零細企業の求人情報もカバーしていますが、Googleはそうではありません。結局は高頻度での求人とのマッチングを体感することがない限り、求人がたくさんあるところに求職者(ユーザー)は流れる可能性も大いにあるため、求人業界の動向は今後も注目です。
Googleしごと検索の影響力
Indeedが「人材業界のGoogle」とも呼ばれ定着し始めているところではりますが、Googleしごと検索の影響力が増すことで、Indeedの効果的な運用もより繊細で、難しくなっていくと考えられます。
また、その他求人サイトの運用についてもIndeed同様に、Googleしごと検索のさまざまな影響が考えられます。
しかしながら、本記事でもご紹介したとおり、Googleしごと検索はお金をかければ掲載できるというものではないため、求人サイトへの掲載はこれまで通り続けられる企業がほとんどだと思われます。求人サイトへの掲載の効果を最大化するために、これまで以上に工夫する必要性がありそうです。