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多様性を生む「障害者雇用」|法制度やメリット、注意点を解説!

各企業において多様性のある人材の活用が求められる中、障害者雇用を実施する企業が年々増加しています。

本記事では、障害者雇用の基礎知識について解説しながら、そのメリットや注意点、雇用する際のポイントについてまとめたいと思います。

自社で障害者雇用を実施する際の参考にしていただければ幸いです。

1.障害者雇用とは

障害者雇用とは、その名のとおり、企業や自治体などが障害のある人を雇用することです。

障害者は、一般に公開された求人だけでは就労の機会を充分に得ることができません。また、就労時には職場環境におけるサポートが必ず必要になります。

そのため、障害者雇用を実施する場合は、障害者雇用特別の採用方法を考案したり、障害者それぞれの能力に合わせて働くことができる環境を整備したりする必要があります。

1-1.そもそも「障害者」とは

「障害者」についてあまり詳しくない人事担当者の方のために、その定義や種類について説明します。

障害者基本法によると、障害者は以下のように定義されています。

身体障害、知的障害又は精神障害(以下「障害」と総称する。)があるため、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者

(障害者基本法第2条より抜粋)

「障害」の種類

障害は大きく分けて「身体障害」「知的障害」「精神障害」の3つに大別することができます。

①身体障害

身体障害は、身体機能の一部に不自由があり、普段の生活に制約がある状態です。「視覚障害」「聴覚・言語障害」「肢体不自由」「内部障害」の4種類があり、障害の程度により1級~14級までの等級があります。

②知的障害

知的障害は、成長に応じた知的行動ができず、普段の生活に支障がある状態です。知的障害があるかどうかは、児童相談所や知的障害者構成相談所など、専門機関により判定されます。

③精神障害

精神障害は、脳や心の病などの精神疾患によって、普段の生活に制約がある状態です。精神障害の例として、「統合失調症」「気分障害(うつ病)」「てんかん」「発達障害(自閉症など)」などがあげられます。

上記の内、どれか1つ以上の障害を持つ人が「障害者」と定義されています。

障害者が持つ「障害者手帳」とは

障害者は、自身が障害者であることを証明することができるように、「障害者手帳」を取得することができます。

障害者雇用を実施する場合は、障害者が「障害者手帳」を持っているかどうかで障害者かどうか確認します。

障害者手帳には、「身体障害者手帳(身体障害者が所持)」「療育手帳(知的障害者が所持)」「精神障害者保健福祉手帳(精神障害者が所持)」の3つの種類があります。

1-2.障害者雇用の状況

「障害を持っていても働きたい」と考える障害者の人数は、年々増加しています。

平成29年6月1日時点における厚生労働省の調査によると、障害者の雇用数と実雇用率(障害者である常用労働者/常用労働者)の推移は次のようになっています。

(「障害者雇用のご案内(厚生労働省発行)」より抜粋)

企業に雇用されている障害者の数は49.6万人となり、過去最高の数字を記録しました。

また、実雇用率は1.97%、障害者雇用率達成企業割合は50%になり、障害者雇用が確実に進展していることがわかります。

障害者雇用が進展しているのは、障害者の働きたい理由が「収入を得るため」だけではないからです。

「自己実現のため」や「社会貢献のため」など、さまざまな想いから仕事をしたいと考えている障害者が多くいます。そのような障害者に対して、働くことのできる環境を整備することは非常に大事なことです。

障害者の就業意欲が高まりつつある中で、障害者を労働力としてどのように活用できるかを考えることは人材不足を解決する一つの手段であるかもしれません。障害者にしっかりとした配慮をすることで、業務の成果や安定的な就業、仕事上での活躍に繋がるでしょう。

2.障害者雇用に関わる法律や制度

障害者が自立した生活ができるように、政府は障害者雇用を促進しています。

障害の有無に関わらず、健常者と障害者がお互いを尊重し合いながら、「仕事を通じて社会に参加できる共生社会」を実現するためです。

この政府の方針により定められているさまざまな法律や制度について解説します。

2-1.障害者基本法

障害者基本法は、障害者に対する国の基本的な考えを定めたものです。

障害者の自立や社会参加の支援を実現するための施策に関して基本原則を定め、国や地方公共団体などの責務を明確化することで、施策を総合的に推進することを目的としています。

国連総会で採択された「障害者の権利に関する条約」に日本が署名したため、その条約の内容が加わる形で2011年に法改正がなされました。

後述する障害者に関する各法律の基礎となる法律です。

2-2.障害者雇用促進法

障害者雇用促進法は、障害者の雇用の安定化を図るための法律です。

障害者を雇用する義務に関して、および雇用促進のための諸制度や措置について定められています。

障害者雇用率制度

障害者雇用率制度とは、「全ての事業主は法定雇用率以上の障害者を雇用しなければならない(障害者雇用率が法定雇用率を超えなければならない)」とする制度です。

障害者雇用率は、次のように求めることができます。

障害者雇用率=障害者/労働者

※短時間労働者(週20時間~30時間勤務)は、0.5人でカウントする。

また、法定雇用率は、次のように定められています。

事業主区分 法定雇用率
民間企業 2.2%
国、地方公共団体など 2.5%
都道府県などの教育委員会 2.4%

つまり、社員数が1,000人の民間企業では、22人の障害者を雇用しなければならないということです。

障害者雇用納付金制度

障害者雇用納付金制度とは、上記の法定雇用率を超えていない事業主から「納付金」を徴収する一方で、障害者を多く雇用している事業主に「調整金」や「報奨金」を支給する制度です。

「納付金」は、次のように定められています。

201人以上 不足1人につき月額5万円の納付金を支払う
101人以上200人以下 不足1人につき月額4万円の納付金を支払う
100人以下 対象外

「調整金」「報奨金」は、次のように定められています。

101人以上 超過1人につき月額2万7千円の調整金が支給される
100人以下 超過1人につき月額2万1千円の報奨金が支給される

※「社員数の4%」または「障害者雇用人数6人」の多い方と比較した場合

その他

障害者雇用促進法では、上記2つの制度以外にも様々なルールが定められています。

  • 雇用の分野において障害者の差別を禁止し、「合理的な配慮」をしなければならない。
  • 障害者を5人以上雇用する場合、障害者職業生活相談員を選任し、障害者に対して職業生活に関する相談・指導を実施しなければならない。
  • 従業員が45.5人以上の事業主は、障害者の雇用状況をハローワークに報告しなければならない。
  • 障害者を解雇する場合、その旨をハローワークに届け出なければならない。

このように数多くのルールが設けられているため、障害者雇用を実施する上で、障害者雇用促進法で定められている内容はしっかりと把握しておきましょう。

2-3.障害者差別解消法

障害者差別解消法は、「正当な理由」ではなく「障害」を理由として差別することを禁止する法律です。

障害者に対する差別を禁止し、合理的な配慮をおこなう努力義務があることが定められています。

雇用の場面に関しては、上記の障害者雇用促進法の中で規定されています。

2-4.障害者総合支援法

障害者総合支援法とは、障害者の日常生活および社会生活を総合的に支援するための法律です。

障害者に対するサービスは、大きくわけて「自律支援給付」と「地域生活支援事業」の2種類があります。

①自律支援給付

障害者が福祉サービスを利用した際に、国がその費用の一部を負担するものです。

②地域生活支援事業

各都道府県や市区町村が地域の特性に合わせて独自に実施している福祉サービスです。

障害者の生活を支援することで、住み慣れた地域で暮らすことができるようにしています。

3.障害者雇用のメリット/デメリット

ここで、企業にとって障害者を雇用するメリットやデメリットについてまとめます。

メリット ワークシェアリングが進む

業務の一部を障害者に任せることで、長時間労働者の業務短縮が見込まれます。また、これにより社員が新たな価値ある仕事を創り出すことも可能になります。

人材の管理能力が高まる

障害者が活躍できる環境を整備することは、多様な人材を管理することにも繋がります。これにより、社員の長所を伸ばすような人材活用ができるようになります。

 コミュニケーションが豊かになる

社員同士で意思疎通を図る機会が増え、お互いの役割が明確になります。社員は、各自の仕事を集中してこなしながら、落ち着いて成長できます。

 新しい発想を取り入れることができる

障害者を雇用すれば、多様性のある人材が自社に在籍することになります。障害者だからこそ思い付くような独自の発想を、自社に取り入れることができるかもしれません。

デメリット 障害者の教育にお金や時間をかける必要がある

障害者は、健常者と比較すれば何かしらのハンデを持っています。働きやすい環境を整えるためには、設備にお金をかけたり、研修などにより時間をかける必要があったりするかもしれません。

障害について社員が理解するまでに時間がかかる

障害者を受け入れる際には、その準備として社員にも障害について理解してもらう必要があります。障害者と一緒に仕事をする際の注意事項などを説明する時間がかかることが予想されます。

障害者雇用には、以上のようなメリットやデメリットがあります。

これらを踏まえた上で、メリットを最大限生かせるような組織作りをすることが大切です。

障害者が能力を発揮し、生きがいを持って働けるような職場環境を作りましょう。

4.障害者を雇用する際のポイント

障害者雇用を始めて実施する人事担当者のために、障害者雇用をする上で注意したいポイントをまとめました。

4-1.障害者雇用の流れを確認する

まず、障害者雇用を実施するまでの流れを確認しましょう。

【障害者雇用】実施の流れ

  1. 障害者雇用の理解を深める
  2. 配置部署や従事する職務を選定する
  3. 受け入れ体制を整え、労働条件などを決める
  4. 採用活動をおこなう
  5. 職場に定着してもらう

障害者雇用を実施する際の大まかな流れは、上記のようになっています。

通常の採用の際にも社員を受け入れる準備は必要ですが、障害者を受け入れる準備はよりしっかりおこなわなければなりません。

障害者の採用から定着までの大きな流れを把握した上で、その状況に応じて適切な対応ができるようにしましょう。

4-2.障害者雇用に関する支援・サービスを活用する

障害者雇用を実施する事業主に対して、政府や地方自治体はさまざまな支援・サービスを実施しています。障害者雇用に関する支援・サービスを有効に活用することで、スムーズに障害者雇用を実施することができるでしょう。

障害者雇用に関する支援を実施している代表的な機関は、以下の3つです。

①ハローワーク

主に障害者への職業紹介や職業指導、求人開拓などをおこなっています。

障害者に対する配慮に関して助言をもらえたり、後述する地域障害者職業センターの紹介や各種助成金の案内・申請受付などを利用できたりします。

②地域障害者職業センター

障害者の雇用計画や職場配置など、障害者雇用が円滑に進むように事業主に対して専門的な支援をおこなっています。

また、障害者雇用に関する専門的な支援や、障害者の職場適応および定着を図ることを目的として、事業主に対してジョブコーチ(職場適応援助者)の派遣もおこなっています。

③障害者就業・生活センター

障害者の身近な地域において、就業面と生活面の一体的な相談・支援をおこないます。事業主からの相談を受け付けていたり、企業に訪問する形での支援を実施していたりします。

困ったことや不安なことがあれば、ぜひ相談してみてください。

4-3.助成金を利用する

障害者雇用を実施する際、政府から助成金を受給できる場合もあります。助成金を上手に活用することで、経済的負担を軽減することも可能です。

4-4.他企業の取り組み事例を参考にする

障害者雇用を実施している企業の事例も参考にしましょう。

障害者雇用を実施している企業
ANA、富士通、ソフトバンク、ソニー、サイボウズ、etc…
障害者は、障害者手帳を所持しています。しかし、障害者手帳の種類や障害名だけでは、その人がどのような障害を持っているのか正確に把握することはできません。障害者一人ひとりのスキルや能力を理解し、どのようなサポートが必要なのか考えることが重要です。

5.まとめ

障害者を雇用することは、法律や諸制度で定められています。

しかし、ルールをただ守るために障害者を雇用するだけでは、雇用する側にとっても、雇用される障害者にとっても良いことだとは言えません。

障害者を雇用することに対して受身にならずに、しっかりと意義を持って雇用しましょう。

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