GMOペパボが実践するオンボーディング|3つの組織課題とその解決策を聞いてみた | 人事部から企業成長を応援するメディアHR NOTE

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GMOペパボが実践するオンボーディング|3つの組織課題とその解決策を聞いてみた

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  • 人材育成・研修

※本記事は、インタビューを実施したうえで記事化しております。

新たに組織に加わった社員の定着率向上と活性化のための取り組みとして注目されているオンボーディング

今回はGMOペパボが実施する、エンジニア向けオンボーディングプログラム「ペパボカクテル」について、その取り組み内容をお伺いしました。

「ペパボカクテル」は、エンジニアの成長を支援する目的のもと約1年半前の2018年4月に立案。

GMOペパボが1年半前に「ペパボカクテル」を始めた背景や、1年半取り組んで変化した組織の姿をご紹介します。

これからオンボーディングプログラムの導入を考えている企業の人事担当者の方の参考になれば幸いです。

【人物紹介】柴田 博志 | 執行役員VPoE兼技術部長

システムインテグレーターを経て、永和システムマネジメントへ入社。Rubyやアジャイル開発に触れ、「楽しい」ということ自体に価値があるということを知る。2012年にGMOペパボに入社、2018年3月より執行役員。2019年3月よりVP of Engineering、技術部 部長を兼任。仕事を「もっとおもしろくできる」を実現すべく、GMO ペパボの情報システムや商材のプラットフォームの構築、エンジニア組織のマネジメントを担当。

ペパボカクテルのはじまりは、中途パートナーの「成長支援」が目的

-はじめに、GMOペパボのエンジニア組織について教えてください。

 

柴田さん:GMOペパボのエンジニア組織は、全社の従業員約350人の1/3弱を占める約100人で構成されています。そのうち70人は、5つの事業部に10~20人くらいずつ振り分けられて、仕事をしています。

残りの約20人は、エンジニアだけで構成される技術部に所属しています。技術部とは、会社全体の開発基盤を整備する部隊です。

 

-柴田さんはエンジニア組織全体をマネジメントされているのですか?

 

柴田さん:そうですね。もともとは取締役CTO(Chief Technology Officer)の栗林が全体を見ていたのですが、去年からエンジニア組織のマネジメントは私が担うことになりました。

そして2018年の4月、技術部長に就任したタイミングで、オンボーディングプログラムを始めることになりました。

 

-オンボーディングプログラムをやることになったきっかけは何だったのでしょうか?

 

柴田さん:社長の佐藤のほうから、「中途で入社した人の成長につながる取り組みをしよう」という話があったことがきっかけです。

たしかに私も、中途入社して「よし、やるぞ!」とやる気に満ちているパートナーに対して、成長を促す取り組みを実施できていないと感じていたんです。
※GMOペパボでは社員のことをパートナーと呼びます。

その一言があってから、「中途パートナーが成長する機会を逃してしまっているのではないか」とあらためて課題感を持ち、注視するようになりました。

 

-中途パートナーの成長支援に関して課題があったのですね。

 

柴田さん:それも事業部によってバラつきがあったのです。

事業部は扱っている商材もそれぞれ異なるため、成長支援のやり方も異なります。やり方が異なる中でも成長につながる取り組みについては一定のレベルを設けようと思いました。

また、メンターが事業部内の人を誘って、その人と中途パートナーでランチに行ってもらう活動をする事業部もあれば、特に何もしていない事業部もありました。

事業部ごとに特徴があるのは良いことだと思うのですが、中途パートナーの成長支援に対する熱意に差があるのは良くないことです。

多くのパートナーとコミュニケーションを取ることで中途パートナーへの刺激にもなりますし、自分の悩みや疑問をぶつける機会にもなるので、メンター制度は積極的に実施してほしいという思いがありました。

 

-事業部によるバラつき以外に課題はありましたか?

 

柴田さん:個人の目標管理の方法に課題がありました。

GMOペパボでは、パートナーに対する評価を半年ごとにおこなっていて、目標をパートナーが設定して半年後に振り返りをしています。この振り返りの結果は給与にも関わるため重要です。

しかし、中途入社して始めの3ヶ月間は試用期間であるため、目標設定はおこなわないことになっています。

そのため、中途パートナーは試用期間が終わったらすぐに、半年後の目標を立てなければならず、目標設計に悩む中途パートナーが多くいました。

目標設計がうまくいかないと、半年後の成果にむすびつかない可能性があります。ですので、入社後からすぐに目標設計の練習をする必要があると感じていました。

 

-メンター制度や目標設計といった組織全体の課題のほかに、柴田さんが感じていた課題はありますか?

 

柴田さん:私個人が、組織が大きくなるにつれて従業員一人ひとりの顔と名前がわからなくなってしまったことを課題に感じていました。

2、3年前までは、エンジニア採用の選考過程の中で必ず私が面接をおこなっていました。直接お会いすることで、「この人は留学経験がある」「この人は独学で開発の勉強をした」といった、応募者の人となりがわかります。

しかし、採用フローが短縮されて私と応募者が面接をしなくなり、入社後に顔と名前が一致しないケースが増えてしまったんです。

私は「エンジニアの動きを活性化させる」「エンジニアが楽しく働けるようにする」といったミッションを持っているのに、自社のエンジニアのことを知らないという矛盾が生じてしまいました。

このように、組織全体と私個人の両方に課題があって、ペパボカクテルの取り組みの実施を決めました。

「ペパボカクテル」や「ペパボテックフライデー」「ランチワゴン」ユニークな名前の取り組み内容

-ここから、ペパボカクテルの内容について伺っていきたいのですが、中途入社された方はまず、何から始めるのでしょうか?

 

柴田さん:まずはチャットツールの社内チャンネル「カクテルチャンネル」に入ってもらっています。

GMOペパボは「新しく入社した人を歓迎する文化」があり、チャンネルに追加された人がいるとすぐにご飯に誘ったり、自己紹介にコメントしたりと、とにかく早く友達になりたがるパートナーが多くいますね(笑)

また、新しいメンバーには「カクテルチャンネルではどんなことでも聞いてください」と言っています。

たとえば、「セロハンテープが切れたらどこから補充すればいいか」「郵便を出したいがどうすればいいかわからない」といった些細な疑問は、新しい環境では聞きにくいものです。

こういった聞きにくさを解消するために、カクテルチャンネルで誰かが質問したら、すぐに誰かが返すようにしています。

画像:中途パートナーの質問に対して既存パートナーが回答している様子

-中途入社の方が「これ聞いていいのかな?」と不安を感じないように雰囲気づくりをしているのですね。

 

柴田さん:そうですね。そして、私やCTOの栗林と「1on1面談」をします。

メンターからチャットで「1on1面談をお願いします」というメッセージが送られてくるのですが、面談依頼が来ることで、新しくエンジニアが入社したことを知ることができます。

 

-「1on1面談」では、どういった質問をするのですか?

 

柴田さん:面接のように硬い雰囲気ではなく「なんでペパボに来たの?」「ペパボでやりたいことって何ですか?」といった質問をしています。

ペパボへの転職を決めた理由は人それぞれで、「この人がいたから」とか「鹿児島にオフィスがあるから」などの理由があります。

やりたいことも「流行るサービスを作りたい」「数年後も使われるサービスを作りたい」といった声があります。

こういった考えの背景を聞くことで、中途でペパボに入社した方の人となりを理解しようと努めています。

 

-事業部の垣根を超えて、エンジニア組織全体でやっていることはありますか?

 

柴田さん:エンジニア組織全体では「ペパボテックフライデー」という社内勉強会をおこなっています。

毎月第2金曜日に約2時間かけて、外部の勉強会で発表する内容や、社内で起こった事象をアウトプットしてもらっています。

その場でも、新しく入社したパートナーがいれば自己紹介をしてもらいます。

勉強会の内容は、福岡と鹿児島のオフィスにもリアルタイムで配信しているので、ペパボのエンジニアみんなに入社したことを伝えることができます。

 

-自己紹介する機会がしっかりと設けられているのですね。

 

柴田さん:そうですね。また「ランチワゴン」といって、新しく入社したエンジニアが既存のパートナーと気軽にランチに行ける仕組みがあります。

「ランチワゴン」は、毎週火曜日と木曜日に中途パートナーがさまざまな事業部のエンジニアとランチに行く制度です。

エンジニアの中からランダムに2人選ばれて、中途入社した方とランチに行ってもらっています。ご飯を食べながら悩みや相談ができる場になるので、中途の方には必ずやってもらっています。

ただ、強制はしていないですね。「今日は弁当だから」「雨が降っているから」といった理由があればスキップすることもできます。

目的は、新しく入った人と元からいた人がお互いにその人の「人となり」を知ることなので、あくまでもカジュアルな雰囲気でやってもらいたいです。

 

-場と機会の提供することで、パートナーからはどういった声がありましたか?

 

柴田さん:パートナーからは「助かっています」という声がありました。

中途で入社した後って、どうしても周りに声をかけづらいようなのですが、ランチワゴンを使えば気軽に他のパートナー社員とランチに行けるようです。


-チャット・社内イベントでの自己紹介や、ランチワゴンによって中途の方が社内の人とコミュニケーションを取っていくのですね。

 

柴田さん:そうですね。入社後のオペレーションが一通り落ち着いたら、課題のひとつでもあった「目標設計の練習」をおこないます。

GMOペパボでは、目標設計をするために「やっていきシート」というフォーマットを使っています。

画像:やっていきシートのフォーマット

「やっていきシート」に「ペパボでやっていきたいこと」を1ヶ月目・2ヶ月目・3ヶ月目のそれぞれのフェーズに分けて書いていきます。

その際はメンターと相談しながら、自分の意思や目標を自分自身で立ててもらうようにしています。

導入して1年半。組織に根付いた「教える・助ける」の文化

-ペパボカクテルのプログラムはどのように組み立てていったのでしょうか。

 

柴田さん:ペパボカクテルのプログラムは私が全て組み立てました。

エンジニアの成長支援を目的としているので、そこにつながるようなネットワークの輪を作っていこうとしたときに、「1on1面談」「チャット上での質問をしやすい環境づくり(カクテルチャンネル)」「目標設計の練習」「既存パートナーとのランチ」といったプログラムを実施しようと思いました。

その後さらに発展して、「社内勉強会での自己紹介」や、よりシステム的にランチのスケジュールが設定される「ランチワゴン」などの取り組みを行うようになりました。

ちなみに最初は新しく入社した方に「既存パートナーに声をかけてランチのスケジュールを調整してください」と言っていました。

でも、入社した方が既存パートナーに「ご飯食べに行きましょう」と声をかけるのはすごく大変だったみたいで、あまり浸透しなかったんです。

ランチの誘いを自動的に通知する仕組みができたことで、中途入社の方の負担はかなり減ったと思います。


-柴田さんは、ペパボカクテルを1年半続けて感じることはありますか?

 

柴田さん:ペパボカクテルを導入して1年が経って、中途で入社してメンターから教わっていた人が今、自分がメンターとして新しいメンバーにガイダンスしたり、目標設計を手伝ったりするようになりました。

また、ペパボカクテルは試用期間3ヶ月が経つと卒業とされており、カクテルチャンネルからも退出していいことになっていますが、3ヶ月が経ってもチャンネルに残るパートナーがいます。

教えてもらっていた側から、新しく入ってきた人に教える側へと変わることで、「教える・助ける」というサイクルが回り始めているなと感じます。

 

-「教える・助ける」文化が根付いたは良いですね。

 

柴田さん:はい。より一層、ペパボカクテルを好きになりましたね。このプログラムを実施して、私が個人的に感じていた「エンジニアが孤独を感じてしまう状況をなんとかしたい」という危機感を解消してくれました。

エンジニアのパフォーマンスが下がってしまう原因は、孤独だと思っています。

自分が開発しているプロダクトが周囲から興味を持たれなかったり、困ったときに相談できなかったり、わからないことを聞けなかったりと「チームの中で浮いてしまっているのではないか」と感じてしまう状況では、パフォーマンスは発揮されません。

ペパボカクテルでは、こういった「エンジニアの孤独さ」を解消するプログラムが組まれています。

中途パートナーと既存パートナーのコミュニケーションが増え、1on1面談で人となりを知り、メンターに相談できるようになったことで、結果的に中途パートナーのパフォーマンスが上がり、成長にもつながっているのではないでしょうか。

オンボーディングに必要なのは「声かけ」組織の一員だと思わせることが大事

-今後は、ペパボカクテルを実施していきながら、どういったことを実現していきたいですか?

 

柴田さん:入社してから、成果物をリリースするまでの期間を短くしたいと考えています。リリースするというのは、サービスのコードを更新して世の中にだすということです。

転職した初日ってすごくモチベーションが高い状態だと思うのですが、その状態でおこなうのはパソコンのセットアップや研修を受けるといった事務的な業務です。

しかし、せっかくパフォーマンスが高い状態なのであれば、事務作業の時間を短くして開発の業務に携わってほしいなと。

今はセットアップなどの準備に約3日間かかっているのですが、将来的には1日で終わらせて、実際のサービスを作ってもらいたいなと考えています。

とはいえ、入社後にやらなければならないことはたくさんあります。避難経路を確認しなければならなかったり、オフィスルールなどのガイダンスを受けなければならなかったり。

なので技術部で、入社後の事務作業を効率的に進めることができるシステムを作ったら良いのではないかなと思います。


-「これからオンボーディングプログラムを始めたい」といった企業が実践したほうが良いことはありますか?

 

柴田さん:定性的にはなりますが、オンボーディングプログラムを実施するうえで重要なことは「声かけ」だと思っています。

弊社CTOの栗林はよく、社内を歩いているときに積極的に周囲のパートナーに声をかけています。

中途入社したパートナーにも、「去年入社したときはこんなことやっていたけど、今は何やっているの?
」といった声かけをすることで、彼らが組織の一員であることを実感できるのではないでしょうか。

オンボーディングプログラムを卒業したあとも、中途の方に帰属意識を持ち続けてもらえるよう「会話」をし続けていくことが大事だと思います。

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