「戦略人事チームの作り方」DeNA流HRBPスクラムとは【HRBP CRUNCH #03】 | 人事部から企業成長を応援するメディアHR NOTE

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「戦略人事チームの作り方」DeNA流HRBPスクラムとは【HRBP CRUNCH #03】

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※本記事は、主催企業や登壇者/登壇企業に内容を確認のうえ、掲載しております。

「人事から事業を強くする」を目指す株式会社ディー・エヌ・エー(以下DeNA)によるイベント『HRBP CRUNCH』の第三弾が開催。

今回は、『戦略人事チームの作り方』をテーマに、HRBP CRUNCHチームを立ち上げ、現在もHRBPとして活躍されている方々からお話いただいた内容の一部をイベントレポートとしてご紹介します。

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1. DeNAにおけるHRBPの定義とは

坪井さん:本日はお忙しいところ、お集まりいただきありがとうございます。

坪井 一樹氏 | 株式会社ディー・エヌ・エー ゲーム・エンターテインメント事業本部 組織開発部HRBP

組織人事コンサルティングファームやIT系ベンチャー企業での勤務を経て、前職ではHRBP機能の立ち上げを経験し、社員数と売上が3倍に成長する過程の組織開発に従事。2018年にDeNAへ入社後はHRBPを担当しながらHRBPの社外発信もフルスイング中。

坪井さん:DeNAは2019年に創立20周年を迎え、事業のポートフォリオは、ゲーム・エンターテインメント・スポーツ・オートモーティブ・ヘルスケア・Eコマースなどと多岐に渡っています。

そういった事業が多角化している背景を受け、DeNAでは2014年からHRBPと呼ばれる、各事業に資する人事の役割を担う人材を増やしています。

HRBPをどのように定義しているかは、各社によって異なると思いますが、DeNAでは『戦略人事を実践するHRのゼネラリスト』としています。

私たちDeNAのHRBPは、DeNAという事業を強くすることがメインミッションです。そして『HRBP CRUNCH』を通して皆さんと一緒に考えたいことは、『人事から世の中の事業を強くする』ということです。

お越しいただいた皆さんも戦略人事やHRBPといったテーマで興味関心を持たれている方が多いと思います。

イベントでは、そういった参加者同士がそれぞれの事業を強くできるように学び合い、切磋琢磨しながらより多くの気づき、そして行動につながるような場にしていければと考えています。

それでは、本日のHRBP CRUNCHを楽しんでいただければと思います。よろしくお願いいたします。

2. 「グループ」と「チーム」の違い

菅原さん:本日はお越しいただきましてありがとうございます。菅原と申します。

菅原 啓太氏 | 株式会社ディー・エヌ・エー ゲーム・エンターテインメント事業本部 組織開発部部長

IT系ベンチャー企業での勤務を経て、2009年にエンジニアとしてDeNAに入社。Mobageの事業責任者や新規事業の立ち上げを経験した後、2015年からHR本部へ。現在は組織開発部の部長としてゲーム・エンターテインメント事業本部のHRBPに従事。経営と人事をつなぎ、事業に資する人事として戦略人事を実践中。

2-1. 「HRBPグループ」から「戦略人事チーム」へ

菅原さん:本日は私の方から『戦略人事チームの作り方』ということで、DeNAの中核事業であるゲーム・エンターテインメント事業本部の戦略人事を担うHRBPグループチームについてお話いたします。

この組織はもともと「HRBPグループ」として発足しました。しかし、当時は組織として脆弱で、なかなか結果が出ないという時期が続いていました。そこからどのように「戦略人事チーム」へと進化していったのかというところをまずお話できればと思います。

ここのポイントは、「グループ」から「チーム」へ変わったというところになるのですが、みなさんは『グループとチームの違い』は何だと思われますか?

答えは一つではありませんが、私は一つの解釈として、まず、「グループ」とはある共通項をもとに集まった人たちで、シナジー効果が限定的であることに加えて、成果が1+1=2以下になる集団だと考えています。

それに対して、「チーム」は目的・目標を達成するために集まった人たちのことで、メンバーが協調することでシナジー効果が生まれて、1+1=2以上になる集団

これが「グループ」と「チーム」の違いだと考えています。

3. 「HRBPスクラム構想」のはじまり

菅原さん:ゲーム・エンターテインメント事業のHRBPグループが発足してからチーム化するまでに3年かかりました。HRBPグループが発足した当初は、組織の課題解決ではなく組織化することで精一杯でした。

私はエンジニアとしてのキャリアの方が長く、人事部一筋でやってきたわけではありません。そのため、人事の仕事に対して少し違和感がありましたが、この違和感をなくすことよりも、まずは組織の体制づくりのほうが優先的でした。

1年ほどしてようやく組織として形になり、プロセスも回り始めたころに、事業の管掌範囲が広がることになりました。それによって、HRBPグループも人員を拡大するというフェーズになりました。

このあたりから、今日のメインの話になる「HRBPスクラム」という構想が出てきました。どういうことかというと、当時、HRBPグループのメンバーは基本的に個人で活動していました。

それぞれが目標を持って、目標を達成するために全力コミットするという方法を取っていたのですが、結果として業務の属人化が問題になりました。

属人化によってお互いの業務内容を把握していなかったため、業務の連携をする際はコミュニケーションコストが増えることで、想定していたスピードで進捗しなかった。

そこで、属人化を解消し、新しく入るメンバーの育成を目的としてスクラム方式を導入する方針に転換をしました。

3-1. チーム化するために必要な3つのこと

菅原さん:先程、『グループとチームの違い』について皆さんに伺ったのですが、「チーム化するために必要なこと」は何だと思いますか?私はチーム化するために必要なことは3つあると考えています。

まず1つ目は、統一された方向性です。組織が何のためにどこへ向かっているのかということを共通認識として持つことができないと動けないですよね。

2つ目はプロセス化です。メンバーがそれぞれのやり方で業務に取り組んでいてもチームワークは生まれません。

そして3つ目が役割分担です。役割を分担するためには相互の理解がないとできません。

この3つがチーム化の肝だと思っています。そして、この3つすべてを実現するために重要になることが、コミュニケーションです。

スクラム開発のフレームワークがこの3つの要素を網羅するので、HRBPにも取り込んで「HRBPスクラム」がスタートしました。

実は、このスクラムのフレームワークは、私が新規事業開発を担当していた際にも同じことをチームに取り入れていて、実際に効果がありました。

3-2. DeNA流HRBPスクラムとは

菅原さん:スクラム開発は、開発手法の中の代表的なフレームワークです。開発手法の中でも『チームのコミュニケーションを重視した手法』であることが特徴的です。

ただ、元々ソフトウェア開発手法のため、そのままHRBPの業務に落とし込もうとするとフィットしません。

そのため、いくつかアレンジをしました。まず、業務のスプリント(※)は2週間に設定しました。

その期間、毎日実施する「デイリースクラム」というミーティングで、それぞれの進捗状況や、フリートークタイムを設けて言いたいこと、聞きたいことを話せる環境を整備しています。

スプリントとは?
※スプリントとは、元々は開発プロジェクトの管理用語で、定められた期間内に特定のタスクを完了させることをいいます。

菅原さん:また、ソフトウェア開発におけるスクラム開発は、そのスプリントでおこなう業務はプロジェクトの立ち上がり時に決定したら変更ができません。

一方で、人事業務は差し込みが多かったりするため、HRBPの業務によりフィットさせるために、目標を変えつつ、差し込みOKとしています。

また、ソフトウェア開発からHRBP業務への変更点として最後にもう一つ。プロジェクトオーナーを不在にしたことです。

「何をやるのか、何をやってほしいのか」ということを決める人を不在にしている代わりに、「チームが何に取り組むべきで、何をやるとバリューになるのか」ということを考える役割は、チーム全員でやることにしています。

HRBPスクラム開発の効果期待
1. タスクをおこなう目的の明確化
2. タスクをおこなう方法の明確化
3. 自律的なチーム作り
4. 属人性の排除
5. 全体タスクの把握

4. HRBPスクラムを実行する上で重要なこと

菅原さん:HRBPスクラムを実行していく上で、メンバー間のコミュニケーションが重要になると冒頭にお話させていただきました。

実際に、「デイリースクラム」というミーティングを毎日30分、隔週実施の振り返りやプランニングミーティングを3時間。これを足すと、2週間で8時間ミーティングをする必要があります。

この取り組みを導入した当初は、メンバー全員が多くの業務を抱えてパツパツな状態であったため、メンバーの立場からしてみたら『8時間あったら別の業務に費やせる』という話になりました。

しかし、チーム化にはコミュニケーションが重要ということで「ここはやるんだ!」と貫きました。

結果的に、情報共有の場として今ではチームメンバーから満足してもらえているので、当時の決断は間違っていなかったのだなと再認識しています。

4-1. 人事の仕事のアウトプット

菅原さん:人事の仕事も実はアウトプットはあります。先程お話した「デイリースクラム」や「セレモニー」など発言の場をこちらが提供することで、メンバーはそれに向けてアウトプットを言語化します。

そうすることで、個人の仕事が見える化されるので、良い傾向でした。

実際に、「人事の仕事のアウトプットって何ですか?」というところですが、たとえば人事戦略と連動した施策、組織編成への提案、あとはサーベイ系の分析結果を踏まえた組織開発など、多岐に渡りますね。

こういうこともスプリントレビューの対象になると考えています。

5. メンバー同士のコミュニケーションによるチーム成果の最大化

菅原さん:チームで戦略人事を担うメリットとして、仕事の見える化による属人化の解消が最初に挙げられます。

次にメリットとして挙げられることはフィードバックによる人材育成です。人が育つ上では仕事の機会とフィードバック、これが重要だと思うのですが、コミュニケーションの機会が多くあれば、フィードバックもその分おこなうことができます。

それから、人事は答えがない業務が多い中で、さまざまな観点、角度、考え方、価値観、そういうものの掛け算によって成果が最大化する部分はあると思っています。

そのため、チームで動くことで複眼の効果が得られることはメリットだと感じています。

あともう一点。コミュニケーションが多くなるので、「トランザクティブメモリー」の向上もメリットです。つまり、誰が何について詳しいのかすぐにわかることで、「この件どうしようかな」というときに、スムーズに相談できる。

こういうところもチームで戦略人事を担うメリットだと思います。

現在私がHRBPとして見ているゲーム・エンターテインメント事業本部は、全体では1,400人くらいの規模感の部署です。

一人でやれることには限界があるので、そこに対してチームで取り組むことで、シナジーを醸成しながらより大きな成果を出していけると思っています。

トランザクティブメモリーとは
アメリカの社会心理学者、ダニエル・ウェグナ―が唱えた組織学習に関する概念で、日本語では「交換記憶」あるいは「対人交流的記憶」「越境する記憶」などと訳されます。組織が持つ情報において重要なのは、組織全体で同じ情報を持つことではなく、「組織内で誰が何を知っているのか」ということとされています。

6. おわりに

今年6月に初回イベントが開催された「HRBP CRUNCH」の第3回目でしたが、今回は戦略人事を実践する上で欠かせない「HRBPスクラム」についてのご紹介でした。

エンジニアの「スクラム開発」をもとにした、普段聞き慣れないテーマでしたが、イベント参加者からは多くの質疑応答が飛び交い、非常に学びの多いイベントでした。

【本記事のイベント概要はこちら!】
・イベント名:HRBP CRUNCH #03 戦略人事チームの作り方
・開催日:2019年11月27日(水)19:30-21:30
・場所:渋谷ヒカリエ サクラカフェ@DeNAオフィス24階
・URL:https://hrbpcrunch.connpass.com/event/150436/
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