エイチーム人事が語る「地方企業の新卒採用事情」自社の強みを徹底分析して見えた採用戦略とは? |HR NOTE

エイチーム人事が語る「地方企業の新卒採用事情」自社の強みを徹底分析して見えた採用戦略とは? |HR NOTE

エイチーム人事が語る「地方企業の新卒採用事情」自社の強みを徹底分析して見えた採用戦略とは?

  • 採用
  • 採用戦略・要員計画

※本記事は、インタビューを実施したうえで記事化しております。

スマホ向けゲームや、引越し比較・予約サイト「引越し侍」などのWebサービスを運営する、総合ITベンチャー企業エイチーム

事業の成長に伴い、新卒・中途採用を積極的に実施。採用人数を大幅に拡大しています。2019年新卒採用では、80~100名程度の採用を目指し、全国で採用活動をおこなっています。

しかし、名古屋という「地方企業ならではの苦労している点」も多いとのこと。

新卒採用市場では、学生が首都圏エリアに集中しているため、地方企業の多くは優秀な学生に出会うことが難しく、採用に苦戦している人事担当者も多いのではないでしょうか。

今回は新卒採用担当の田中翔也さんに、地方企業であるエイチームの自社の強みを活かした採用戦略や具体的な施策についてお話を伺いました。

【人物紹介】田中 翔也 |株式会社エイチーム 社長室 人材開発グループ

2014年、株式会社エイチームに新卒で入社。結婚式場情報サイト『ハナユメ』を運営するエイチームブライズ(グループ会社)に配属となり、企画営業を担当。2015年より社長室人材開発グループへ異動し、新卒採用担当に。Webプログラミング/Webデザインを学べるプログラミングスクールを1ヶ月間無料で学生に提供し、成績優秀者を採用する『エイチーム×WebCampコラボキャンプ』などを生み出し、新聞等各種メディアに取り上げられる。また、インターンシップ経由の採用を抜本的に見直し、前年比3倍の採用数と内定承諾率は20%UPを達成。『A-LIVE!ぜんぶエイチームの合同企業説明祭!』の仕掛け人。

エイチームが仕掛ける採用戦略は、「チーム力」を活かした「みんなで採用」の文化の浸透と、地場の知名度を活かした採用ブランディングをおこなうことで採用効率を高め、自社にマッチした学生と出会うというもの。

地方採用に関するノウハウが満載です!是非、ご覧いただければ幸いです。

【地方企業の悩み】地場以外の採用ブランディングが課題


-エイチームが現在感じている採用の課題はありますか?


田中氏
:エイチームの本社は名古屋にあるのですが、「首都圏の企業様と比較して学生との出会いが限られる」という点があげられます。

エイチームのスマホ向けゲーム・ツールは世界155ヵ国に配信されていますし、日常生活に密着したWebサービスは多くのユーザーにご利用いただいています。新規事業として立ち上げた自転車専門通販サイトも売上を伸ばし、会社として順調に成長しています。

さらに、2012年に東証一部に上場を果たし、東海エリアでは「エイチーム」の認知が徐々に高まってきている状態ではあります。そのため、東海エリアの採用活動においては、集客の部分では有利に働くことも多いと思っています。

ただ一方で、全国での採用活動をおこなう場合、「名古屋勤務」という物理的な条件が応募ハードルを引き上げ、優秀な学生との出会いの機会を逃しています。


-勤務地の問題は大きいですよね。
全国での採用にこだわる理由は何でしょうか?


田中氏
:エイチームの事業領域は多岐にわたり、ビジネスプロフェッショナル・エンジニア・デザイナー・ゲームプランナー・ゲームプログラマー・グラフィックデザイナーの6職種を募集しています。

専門性の異なるさまざまな職種があるため、地域を限定せず、全国での採用を積極的におこなっています。

ところが、「地方企業である」という理由で、学生からの就職先企業の選択肢から外されてしまうこともあります。勤務地は働く上で非常に重要な要素だと思います。

私たちは名古屋という地方に本社がありますが、それでも「エイチーム=名古屋」ではなく、「ビジョンや価値観、事業領域を限定しない、幅広い分野に戦略的に挑戦する企業」であることを学生に伝えていきたいと考えています。

そのためにまずは、オンライン上の情報で企業理解を深めてもらい、人事や現場社員とのコミュニケーションを通じてエイチームの社風や文化に触れ、その上で選考を受けるかどうかを判断してもらいと思っています。

実際に全国各地で採用した内定者からは、「最初は軽い気持ちでインターンに参加したのに、まさか入社するなんて…!」と言われることもあります。

選考を通じて、しっかりとエイチームの魅力を伝えることができているんだと思います。

聞き飽きたこの言葉「エイチームが東京にあれば入社を決めていた…」


-特にどのエリアの学生の獲得に苦戦していますか?


田中氏
:やはり、首都圏エリアの学生の獲得に苦戦しています。

中途採用の場合は、名古屋・東京・大阪・福岡、各勤務地での採用をおこなっていますが、新卒採用においては、最初の配属は主に名古屋のため、「勤務地」がどうしても課題となります。

全国の中でも最も学生数が多い首都圏エリアのキャンパスに通う学生は、同地域に就職する割合が86.8%と他地域に比べ著しく高い傾向が見られます。

※2017年卒 大学生の地域間移動に関するレポート 2017

 

このハンディキャップがない首都圏エリアにある企業は正直うらやましいですね。

また過去にも、「エイチームが東京にあれば入社を決めていた…」と言われ、内定辞退となることは何度も経験しています。地方に本社を置く難しさを実感しています。


-地方採用ならではの難しさなどありますでしょうか?


田中氏
:地方企業ならではの制約は多いと思います。特に物理的な制約は大きいですね。

例えば、現在おこなっている「短期~中期のインターンシップ」以外にも、社内リソースを使った「有給インターンシップ」や「数ヶ月にわたる現場受け入れ型の長期インターンシップ」、また気軽に対面での面談の実施や食事に出かけたりなど積極的におこなっていきたいのですが、どうしても勤務地の関係で実施エリアが限定されてしまうことがあります。

こういった場面において、採用の柔軟性が失われていると感じています。

「みんなで採用」文化の浸透と、現場社員が学生にビジョンを伝える

田中氏:地方企業の採用の難しさについてはお話してきましたが、次にエイチームが採用で意識していることをお伝えします。

まず、エイチームではとても大切にしている経営理念があります。
「みんなで幸せになれる会社にすること」
「今から100年続く会社にすること」

この経営理念を社員一人ひとりが理解し、学生とも真摯に向き合い伝えていきます。そして、その大切な役割を担うのは、人事ではなく入社後一緒に働く現場社員となります。「みんなで採用」の文化が深く浸透しています。

「お互いを認め合うこと」「明るく楽しく元気よく」「困難を前向きに乗り換える」「なぜできないかをうまく説明するのではなく、どうしたらできるのかを考える」これらはエイチームが大切にしているマインドです。

現場社員とのコミュニケーションの中を通して、さまざまな角度から学生に伝えることを徹底しています。


-「みんなで採用」という文化は、具体的にどのようなものですか?


田中氏
:人事主導ではなく、現場社員が中心となり採用活動を実施してもらっています。エイチームの採用は、人事の人数に対して採用予定数が非常に多いんです(笑)。

新卒採用チームは5名体制で、2019年にはエンジニアやデザイナーといった超激戦職種を含めた計6職種、80~100名程度の採用を目指しています。

現在の体制では、人事がプロジェクトマネジメントに徹し、採用戦略や全体のプロジェクト管理、採用チャネルのハンドリングや選考の設計をおこないます。

現場社員は採用活動そのものを牽引する役割を担っており、実際の面接やインターンシップの企画・運営・開催、学生との面談やフォローなどそのほとんどをおこないます。

また、外部の採用イベントなどには、人事ではなく「採用プロジェクト」という名で現場社員のみで参加します。

人事はほとんど表に出ず裏方に徹しながら、「エイチームの魅力を現場社員が学生に伝えていく仕組み」をつくっています。


-人事は黒子のような存在ですね。実際に、学生の反応はいかがですか?


田中氏
:内定者のほとんどが、現場社員とのコミュニケーションを通じて経営理念や社風、そして人に魅力を感じて、入社を決意しています。

「経営理念に共感した」「一緒に働く現場社員とたくさん話ができた」「入社前の不安が解消された」「面談をしてくれたあの人と一緒に働きたい」そんな声が内定者から多く寄せられます。

だからこそ、私たち人事は表に出るのではなく、現場社員と学生をマッチングさせる仕組みを考え実行することに徹することにしたのです。

そして、エイチーム社員がなぜ採用活動にこれほどまでに熱意を持って協力をするのか。それは、「みんなで経営について考える」という文化が生み出す、「みんなで採用」という考えが根付いているからだと思います。

エイチームの文化や価値観にあった採用手法が実現できているんだと思います。


-勤務地の課題を解消させる施策などはおこなっているのですか?


田中氏
:具体的な「施策」というものは実施していません。ただ、意識していることは、「学生にとって就職で最も重要視するポイントは何か」を一緒に悩みながら、面談や電話を通じて一緒に考えていきます。

インターンシップや選考中の学生には、メンター制度を導入し、悩み相談やディスカッションパートナーとして議論したり、時には食事に出かけたりして、一緒にその学生の将来について考えていきます。

また、前例は少ないですが、内定承諾前の内定者に1ヶ月間の有給インターンシップを実施することもあります。会社や社員を知り働くイメージをつけてもらい、入社後のミスマッチを防ぐために実施しています。

地場での知名度を活かした「ランチェスター戦略(局地戦)」勝てるエリアでは徹底的に勝つ


田中氏
:一方で、採用戦略として勝てるところでは徹底的に勝つ、その名も「ランチェスター戦略」を実施しています。社内ではそのように呼んでいます。


-「ランチェスター戦略」とは何ですか?


田中氏
:競争戦略の理論になるのですが、ランチェスター戦略の5大戦法の1つ「局地戦」が私たちの戦略です。

一般的には、ビジネス領域や地域を限定することで資源を分散させず戦い、勝てる市場を探すか、勝てる市場をつくり出す戦略です。

東海エリアでのエイチームの認知度は高いため、「名古屋のIT企業といえばエイチーム」というブランド力を活かし、勝てるエリア(市場)として確実に勝っていく戦略です。


-具体的にはどのようなことをやっているのですか?


田中氏
:具体的な工夫点は3つあります。

1つ目は、地場である東海エリアでエイチームにマッチする学生に漏れなくアプローチするため、コーポレートブランディングをおこなう広報と協力した広告・PRを実施しています。

コーポレートCM、テレビやラジオのスポンサー番組の放映や、大学前等で屋外広告を掲載し、企業認知度向上に力を入れています。

2つ目として、日本の真ん中という立地を利用します。名古屋は全国各地からアクセスがしやすく、交通手段はさまざまですが全国から片道2時間程度あればアクセスできる好立地をアピール。

また、エリアごとにチームをつくる「エリア対抗別インターン」を実施するなど、地域を活かしたコミュニケーションがとれ、盛り上がります。

最後に、全国の主要都市にオフィスがあるため、ライフステージの変化に合わせた働き方ができること。

名古屋に本社を置いていますが、東京(品川)、大阪(梅田)、福岡(博多)にオフィスを構えています。

新卒入社者は主に名古屋配属になりますが、将来、家庭の事情等で名古屋を離れなければならなくなった場合、転職をしなくても拠点を変えて働き続けることができます。

学生のニーズに合わせた4つの採用施策


-いままで実施してきた採用の施策をぜひ教えてください


田中氏
:エイチームでは数多くの採用施策を実施してきていますが、4つほどご紹介させていただきます。

17Pプロジェクト

17卒の内定者が自分たちで同期を採用するプロジェクト。ダイレクトリクルーティングツールを使いながら集客から面談を実施。実際に内定者たち主導で同期を採用することができました。

コラボキャンプ

エンジニアやデザイナーといった専門職種に限定した施策で、Webプログラミング/Webデザインを学べるプログラミングスクールを1ヶ月間無料で学生に提供。

成績優秀者には一部選考を免除する特典をつけた施策を実施しました。毎年継続的に採用できている取り組みです。

採用プロジェクト

人事は同席せず、現場社員が外部採用イベントに参加します。

リクルーター制度

学生に専任のメンター社員がつき、手厚いフォローを実施。電話やメール、面談や食事などのコミュニケーションの手法は完全に社員にゆだね、お互いが本音ベースで相談ができる機会を提供しています。

 

他にもここでは語りきれないほどの施策を実施していますが、これらの施策は人事ではなく、やはり現場社員がメインでおこなっています。

「チーム力」を活かした「みんなで採用」の文化があるからこそ、複数の施策を短期間でたくさん実施することができました。

新卒採用向け会社説明会を廃止し、オンラインでの採用活動を強化


田中氏
:2019年卒の採用活動においては、一般的な会社説明会を廃止し、オンラインでの採用活動を強化することに決めました。

これまで全国で会社説明会を実施してきましたが、地方や海外在住の学生への負担が大きく、また参加ができない場合は、情報格差が生まれてしまいます。

平等な情報提供をし、負担なく採用選考や会社理解を深めていただくために、事業概要や風土がわかる『企業紹介動画』と、各職種の業務内容や働き方がわかる『職種別動画』の2種類を作成しました。

これにより学生はオンライン上で企業理解を深め、また採用選考を受けることが可能になりました。

 

■企業紹介動画:株式会社エイチーム|【採用】企業紹介動画

 

■職種別動画:Youtubeチャンネル

 

もう一方で、地場採用の強みを最大限に活かすために、今回はさらなる施策として、エイチームだけの合同企業説明祭を名古屋本社にて実施します。

A-LIVE!~ぜんぶエイチームの合同企業説明祭!~


-オンラインとは別に、オフラインの施策を実施するのですね?
どのようなものですか?


田中氏
:このイベントは、「A-LIVE!」という名称で、合同企業説明会のようにエイチーム及びグループ会社の社員から、働き方や具体的な仕事内容等を聞くことのできるブースを職種や部署ごとで用意し、社員と学生が交流する機会を提供するというものです。

サービス認知度や収益向上の鍵を握るマーケターと交流できるブースや、たくさんのユーザーに支持されるコンテンツを創り出すゲームプランナーブース、デザインを手掛けるグラフィックデザイナーのポートフォリオフィードバックブースなど、さまざまなブースを用意する予定です。

他にも就職活動相談ブース、オフィスツアーや食事付き社員交流会などの各種コンテンツも用意しています。

学生が各々興味のあるブースを回り、現場社員と直接交流することができる、お祭りのような楽しいイベントを予定しています。

イベント詳細についてはこちら

  • 開催日時:2018年3月8日(木)~3月9日(金)
  • 会 場:エイチーム名古屋本社
  • 対 象:ビジネスプロフェッショナル職、クリエイター職
  • 詳 細:http://ateam-alive.goodfind.jp/

自社の強みをとことん分析!採用戦略は会社によって違う


-地方企業は、採用市場において不利な面が目立ちますが、自社の強みを活かした戦略が大切なのですね


田中氏
:エイチームは会社や事業の成長フェーズに合わせて採用戦略を変えてきました。

エイチームの人事として、日ごろから自社の強みを徹底的に分析して、競合との差別化ポイントを考え抜いて、どんな採用市場でも戦える採用戦略を立てることを意識しています。

地方企業でも、「その企業で働きたい!」という熱意ある学生には必ず出会えると思います。なんせ私自身が東京都内の大学に通い、エイチームの魅力に惹かれ、名古屋に就職したんですから。

そんな採用ブランディングに今後も力を入れていきたいと思います。

 

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