こんにちは。HR NOTE編集部の藤本です。
学生優位の売り手市場を背景に、年を追うごとに新卒採用の難易度は上昇しています。特に東京を中心とした関東圏、そして各主要都市は激戦区ともいえるでしょう。
その中で、株式会社 USEN-NEXT HOLDINGSは2017年にグループを統合し、2019年度からはグループ全体で一緒に新卒採用に臨んでいます。
そして、グループ全体として新卒採用第一期生を募集するために仕掛けたのが「超!全力採用」です。
全国各地の多様な人材との接点をつくるために選考システムを大幅に見直し、また、候補者目線の採用形態に一新しています。
今回は、新しい切り口で新卒採用を実施し、施策による効果も大きかったUSEN-NEXT GROUPの新卒採用についてお話をうかがいました。
住谷 猛 | 執行役員 コーポレート統括部長 兼 広報部長
1987年早稲田大学法学部卒業。新卒で入社した証券会社で、 1年目から人事部に配属されたことをきっかけに、人事部門でキャリアを築く。1999年、人事部長として大阪有線放送社(現:USEN-NEXT HOLDINGS)に入社。人事・総務部門担当役員、法人営業部門担当役員等を経て、2017年12月、USEN-NEXT HOLDINGS発足時より現職。人事、広報、 総務など間接部門を管掌。働き方改革の一環として新人事プロジェクト『Work Style Innovation(WSI)』を始動し、 既成概念にとらわれず、社員が生き生きと働ける施策を展開する。また、USEN-NEXT GROUP1期生の新卒採用においては、「超・全力採用!」を掲げ、 従来の新卒採用のあたりまえにとらわれない革新的な採用活動を実 施している。
西村 壽哉 | コーポレート統括部 人事部 シニアマネージャー HRリクルーティング課長
2004年 早稲田大学政治経済学部卒業後、新卒で有線ブロードネットワークス(現:USEN-NEXT HOLDINGS) に入社。人事部として採用業務に携わった後、給与計算・育成・ 制度企画等、人事業務全般に従事。近年は働き方改革を推進したきた中で、 女性営業職の活躍を推進する営業組織のマネジメントも担当。2018年3月にUSEN-NEXT HOLDINGSの採用責任者として人事部に戻り、 採用活動全般を統括している。
■株式会社 USEN-NEXT HOLDINGS
(https://usen-next.co.jp)
2017年12月にU-NEXT、USENが経営統合し、株式会社 USEN-NEXT HOLDINGSに商号変更。U-NEXTおよびUSENそれぞれが持つ強み(映像コンテンツ、音楽コンテンツ、サービス創出力、成長性、ネットワークインフラ、利益創出力、安定した顧客基盤)を統合することにより、創出されるシナジーを活用したグループ経営戦略から社会から期待され続ける企業グループとして企業価値向上に努める。
【豪華ゲスト多数登壇!】変化に負けない「強い組織」を育むためにHRが果たすべき役割を考える大型カンファレンス『HR NOTE CONFERENCE 2024』
「人的資本経営」「ウェルビーイング」「DEI」といったトレンドワードが、HR領域だけでなく社会全体に拡がり始めた昨今。自社組織に漠然と"停滞感"を感じ、「うちは取り残されていないだろうか?」「何かやらないといけないのでは・・・」といった不安や悩みを抱える人事・経営者の皆様も多いのではないでしょうか。
本カンファレンスでは、HR領域の有識者の皆様に、様々な組織課題を解決するためのアプローチ方法について解説いただきます。強い組織を育む企業が実践している事例には、組織強化に必要な考え方や人事が果たすべき役割について学べるポイントが多くあります。ぜひ有識者の皆様と一緒に、組織を強化する「共通原理」について考えてみていただければと思います。
「超!全力採用」は、学生がありのままに挑戦できる選考スキームだった
ーーさっそくですが、「超!全力採用」とはどんな選考スキームなのですか?
超全力採用は「就職活動のあたりまえ」に捉われない採用スキームです。
多様な想いを持つ学生に対して、僕らもできる限り「全力」で、ひとりひとりの個性と向き合いたいと思っています。
その学生の人柄や「らしさ」、熱い想いに触れられるような仕組みとして導入しました。
「超!全力採用」で取り入れている応募・選考スキームは全部で6つあります。こちらにそって、ひとつずつご説明いたしますね。
〇 menu1|マルティプル・エントリー
このスキームができた背景には、経営統合したことで、グループ全体の職種・仕事内容が多角化・複雑化したことがあります。
「USEN-NEXT GROUPに入社」と言っても、結局どんな職種でどんな仕事に携わるのかがわかりにくくなります。
より鮮明な入社イメージを持ってもらって、配属不安を解消してもらうためにも、配属の可能性があるコースをすべて提示して選んでもらったほうがフェアだと思いました。
具体的には、職種は営業職・企画職・開発職(SE)・デザイナー職の4つがあり、各事業会社の組み合わせでコース数は全部で20個になります。
とはいえ、「決めきれない」「3コースで悩んでいる」「全部に興味がある」などの学生に関しては、全職種・全事業会社オープンのコースも設けて、どんな学生でも熱意さえあればすべて受け入れられるようにしています。
〇 menu2|SMART PR(動画投稿エントリー)
多忙な学生でも空いている時間を活用しPR動画を撮影し、投稿するだけで簡単に1次選考に参加することができます。
一方の当社側はエントリーシートだけを1次選考の判断材料とはせず、投稿された動画からも求める人材を見極めます。
投稿動画も選考に加えることで、書類だけではわからない学生の人柄、「らしさ」に触れることができます。合否の判断基準もより可視化され、面接官のスキルアップにもつながりました。
動画投稿のテーマは「あなたの全力を表現してください」というものです。
普段通りの自分を表現しやすいテーマだと思うのですが、滝に打たれたり、筋トレをしたりなど、おもしろい動画が投稿されてきます。
学生の人となりがすごくわかります。学生目線でもエントリーしやすいし、自分を表現しやすい点では効果があったのではないかと思います。
〇 menu3|LIVEビデオインタビュー
遠方に居住する学生、多忙で面接スケジュールを組みにくい学生であっても、場所を問わず面接を受けることができるようにしました。当社に一度も来社することなく、内定を得ることも可能なんですよ。
これまでは、面接も主要都市でしかおこなっておらず、遠方の学生はなかなか予定を合わせられない状況がありました。「面接を受けるつもりだったけれど、他の会社に決まったからもういいや」という学生も少なからずいて。
我々としてもこの状況は機会損失ですので、ライブチャット型の面接を導入することにしました。
ライブチャットであれば、あとから見直すこともできるため、面接官のトレーニングにも一役買っています。
面接官のスキルが上がることは、採用活動において承諾率や歩留まりの向上という点においても非常に重要なファクターですので、こうした採用側の副次的な効果もあります。
〇 menu4|トライアウトリベンジ
「面接で緊張して実力を発揮できなかった」「どうしても入社したい」という熱い想いを持った学生は、コースを変更して何度でも挑戦することができるんです。
「再チャレンジしてでも我々のグループにジョインしたい」という意欲は嬉しいですし、その想いを再度伝えてもらう機会をつくりたいという気持ちがあります。
この仕組みを利用してリベンジをする学生も増えてきています。
本当はどの選考フェーズであってもリベンジしたい学生には門戸を開きたかったのですが、「3次選考以降での不合格」と条件指定したのは、採用側と面接官を務める現場側のオペレーションの問題があったからです。
また学生から、「トライアウト・リベンジの仕組みがあるので、思い切ってこのコースを選びました!」という声もあって、全力でのチャレンジを促す効果はあったと思っています。
〇 menu5|“全力”スカウトキャラバン
これは、授業や研究などで忙しくて東京の企業に訪問する時間がない、費用負担が重く上京を躊躇している学生にも選考に参加してもらえるような仕組みです。
この売り手市場で、どうやって学生にアトラクティブにとらえてもらえるかを考えていたのですが、やはり東京では採用競争率が激しいんですね。
一方、地方の大学にも優秀で輝く人材はたくさんいます。であれば「こちらから会いに行こう」と決めて、この“全力”スカウトキャラバンの仕組みが誕生しました。
学生にとっても、また地方の大学にとっても、きっと良いメリットになって、相乗効果を生み出せるのではないかと思っています。
〇 menu6|リファラル・スキップ
これが「リファラル・スキップ」です。気の合う友人と一緒に受けたい、入社したいという学生にはもってこいのスキームですよね。
これはちょっと自慢なんですが、僕が考えた内容なんです(笑)。この仕組みをつくった動機はものすごくシンプルで、「説明会動員が増えるから」です。
そしてこれは、実際に動員効果がでているんです。地方の説明会によっては、2~3割は増えますね。
50人の説明会を予定して、そのうちの2割、10人が2人ずつ連れてきてくれたら20人増えますよね。そうすると当日の参加人数は70人。つまり1.4倍になります。
就職活動の早期化・短期化による学生の行動量低下を考えれば、この効果はものすごく大きいと思っています。
ーー6つ全部、とてもオリジナリティ要素の多い選考スキームですね!ネーミングも覚えやすいですよね。
どの施策も、ネーミングにはものすごくこだわってます。
「超!全力採用」という採用スキームの名前もそうですね。
人事担当は5~6名なのですが、企画段階でネーミングを考えるときには「100本ノック」をするんですよ。全員でそれぞれのスキームに関して100案だしていくんです。採用チームとしてネーミングにも思いを乗せられるように、とことん考えて、出しつくして、決めます。
学生にも、選考が終わって内定を取った後にも、「マルティプル・エントリーがあって、納得度が高かった」や「トライアウト・リベンジで再チャレンジしてよかった」と言ってもらいたいので、キャッチーなネーミングにできるように意識しています。
あとは、「学生の間で話題になればいいな」と思っています。バズらせたい想いが強かったですね。
例えば「リファラル・スキップ」では、「明日説明会行くんだけど、一緒に行ってくれない?」「え、なんでなんで?」「一緒に行ったら3人とも通れるんだよ!」というような会話がたくさん生まれてくれればうれしいです。
それだけで、「USEN-NEXT GROUP」について知らなかった学生にも、当社の認知を広げることができます。
また、「類は友を呼ぶ」ではないですが、優秀な学生は優秀な学生を連れてきてくれると思います。
採用の「当たり前」に捉われない。その挑戦のねらいとは?
「超!全力採用」はこうして生まれた!
ーーグループとしての第1期生募集のタイミングで「超!全力採用」が生まれた背景が気になります!
まず当グループの想いとして強いのは、新卒で入ってくるメンバーたちが、会社の風土や文化などをつくる大切な存在であるということです。そのため、新卒採用は会社にとって非常に大事なフェーズです。
昨年末にUSEN-NEXT GROUPになり、正確には今年2018年4月入社の新卒入社メンバーが第1期生なのですが、彼らはグループ統合前の採用なので「0期生」として、今回この2019年度卒採用からをグループとしての採用募集1期生としました。
このグループ採用1期生募集を実施するにあたって、いったいどう取り組めば、「我々にとって大切な新卒採用である」と、学生に伝えられるかを考え出したのがはじまりですね。
行きついた考えは、「就職活動の当たり前には捉われないで、学生自身が魅力的かつ自分らしく表現できるような採用スキームにしよう」でした。
改めて考えると、これまでの一般的なやり方は企業本位で、学生がそれに合わせて受けに来るというような形だったと思います。
「もっとよりフラットな関係で、お互いの魅力を伝え合う場をつくりたい」と思い、採用スキームをイチから見直して生まれたのが、「超!全力採用」でした。
「僕らも全力で採用活動に臨むので、学生のみなさんもぜひ全力で自分らしさを表現してください」という想いを込めています。
ーーグループ統合による採用初年度の採用スキーム変更は、宇野社長からのミッションだったのですか?
「全力で採用に向き合う」ということは、「このタイミングで」ということではなく、ずっと前から弊社の合言葉としてありました。
ちょっと話が遡るのですが、宇野が社長になった当時から、「新卒採用は全力でやろう」という共通の思いがあったんですね。
「なぜ新卒採用をするのか?」と問われれば、私たちは「会社のカルチャーを育むため」と応えます。
会社にとって大切なカルチャーや社風、ムードみたいなものは、年輪のように何世代も折り重なっていくことで生まれると思うんです。
実際に新卒採用を通して我々のポリシー、人材に対する考え方を理解して入社してくれる方は会社のコア人材になってくれるんですよ。
新卒入社でグループ会社の社長になったメンバーも多くいて、現在このグループの成長をけん引してくれています。
その事実を見ても、新卒採用は会社を劇的に変えていく力を持っていると思います。なので、かれこれ20年前から、我々は「全力採用」をやってるんですよね。
全力で学生に向き合うからこそ、変えたかった学生・企業間格差
ーー「超!全力採用」で取り組まれる採用スキームには、学生ファーストで考えられている内容が多いですよね。
そうですね、「超!全力採用」を考えるにあたって、一番意識していたことは「企業優位の就職活動から脱却して、学生にとってよりフェアに・スマート(便利)な採用活動にする」ということです。
これまでの日本の就職活動は、学生にとってアンフェアですし、不便な部分が多いと思うんです。
ときにはエントリーシートだけで落とされてしまったり、説明会だと思って参加したらグループワークで選考要素があったり、選考にある程度進むと圧迫面接されたり、考えてみると極めてアンフェアなんですよね。
そして不便なことも多いんです。たとえば、地方在住の学生であっても優秀な方はたくさんいます。
ですが、住まいが地方というだけで、ものすごいハンディキャップがあるんです。なぜなら多くの大手企業は、東京と大阪くらいでしか面接などの選考会を実施しません。
地方在住の学生は、東京に訪れ、ホテルに泊まりながら就職活動をするので交通費・宿泊費のような莫大な支出があります。不便ですよね。
企業側の採用活動であっても、本来は企業も学生もお互いに見極め、選ぶ場であるはずです。企業側だけが選ぶものではありません。企業も選ばれなければいけないんですよ。
このあるべき姿と現状の採用活動とのギャップを埋め、より多くの学生にUSEN-NEXT GROUPの選考に参加してもらいたいというのが、こうして学生ファーストでいくつもの施策を考えている理由ですね。
学生にとってのフェアとスマートにとことんこだわる。これからの採用戦略は?
ーー実際にさまざまなスキームを取り込まれた2019年度採用。「超!全力採用」はこれからどんな展開を検討されていますか?
今考えていることとしては、「超!全力採用」というテーマに関しては、これまでもこれからも変わらないと思うんです。
お話したとおり、新卒採用を始めたタイミングから、ずっとこのスタンスは変わっていません。
ですので、来期以降もこの「全力で採用をする」というスタンスは継続しながら、新しいことはどんどん取り入れて、僕らもチャレンジはしていきたいと思ってます。
会社の気質自体も、どんどんチャレンジして、新しいものを創り出す風土があるので、採用チームとしても、常に新しいもの、学生にとって良いものを求めてチャレンジし続けたいです。
具体的に何をやるかというのは、これからなのですが、インターンシップに関しても注力していきます。
インターンシップ企画も、まだまだ面白くできますし、チャレンジする余地が大きいと思っています。
ユニークで面白い仕掛けを生み出したいですね!
より多くの学生の方々に「USEN-NEXT GROUPって、なにか面白いことやってる!」と思われる採用を提案していきたいですし、学生にとってフェアでスマートな採用活動チームでありたいと思っています。
【豪華ゲスト多数登壇!】変化に負けない「強い組織」を育むためにHRが果たすべき役割を考える大型カンファレンス『HR NOTE CONFERENCE 2024』
「人的資本経営」「ウェルビーイング」「DEI」といったトレンドワードが、HR領域だけでなく社会全体に拡がり始めた昨今。自社組織に漠然と"停滞感"を感じ、「うちは取り残されていないだろうか?」「何かやらないといけないのでは・・・」といった不安や悩みを抱える人事・経営者の皆様も多いのではないでしょうか。
本カンファレンスでは、HR領域の有識者の皆様に、様々な組織課題を解決するためのアプローチ方法について解説いただきます。強い組織を育む企業が実践している事例には、組織強化に必要な考え方や人事が果たすべき役割について学べるポイントが多くあります。ぜひ有識者の皆様と一緒に、組織を強化する「共通原理」について考えてみていただければと思います。