こんにちは、HR NOTE編集部の島田です。
就職活動もとうとう終盤に突入・・・リクナビでも毎月、就活生の内定率を更新していますが、2019年新卒の学生はどれくらいの人が就活を続けているのでしょうか。
また、2019年新卒の就活は一体どのような動きをしていたのでしょうか。
今回は、学生側の就活に精通している小谷さん監修のもと、「実際のところどうなの?」と関心を寄せる2019年新卒就活生の動向と、それを踏まえた上で、来期2020年新卒に向けて採用担当者がおさえるべきポイントを、ご紹介します。
小谷 学 | 株式会社ネオキャリア 就職エージェント
大学卒業後、1997年不動産管理会社に入社し、約8年間、上京進学する学生向け部屋探しのサポートをおこなう。
2004年12月 就職エージェント株式会社(のちに株式会社ネオキャリアに統合)に入社。
不動産事業の立ち上げ、教育業界向け人材派遣・紹介事業の営業兼アドバイザー、第二新卒紹介事業の営業兼アドバイザーを経験した後、2008年3月より新卒紹介事業部の就活アドバイザーとして、約6,000名の就職相談、2,000名以上の個別カウンセリングを実施、700名以上の学生の就職先を支援。
現在は、新人アドバイザーの育成、就活対策セミナーの講師をしながら、大学や短大、専門学校とのやりとりをするソリューションパートナーチームの責任者を務めている。
内定率88%って本当なの?~就活生の実態~
就職みらい研究所がおこなっている調査「【確報版】「2018年8月1日時点 内定状況」就職プロセス調査(2019年卒)」によると、2019年新卒の内定率は8月1日時点で88.0%という高い数値であることがわかります。
しかし、本当に全就活生の88%が内定を獲得しているのでしょうか。
実は、この88%は、就職みらい研究所のアンケートに協力した就活生に限定されており、全ての就活生が答えた調査の数値ではないのです。
それでは、実際はどれほどの就活生が内定をもらっているのでしょうか。大学や短大・専門学校とのつながりが強い小谷さんに最近の就活生の現状をお聞きしました。
内定率は50~60%
大学には、キャリアセンターが設置されており、学生の就活に対する相談などを受け付けています。
実際のところ、キャリアセンターに届いている内定率は50~60%にとどまるそうです。進路決定届を提出していない学生もいるそうなので、この数も正確ではありませんが、肌感でも、内定率80%を実感している文系のキャリアセンターはあまりないそうです。
電子・機械系になると理系人材の需要が高まっていることから内定率は80%を超えるそうですが、少なくとも3~4割の就活生はまだ就活を続けているというのが現実です。
就活生は4つのタイプに分けられる
一括りに就活生といっても、その実態はさまざまです。就活を積極的におこなう学生もいれば、なかなか動き出せない学生もいます。ここでは、そんな就活生を4つのタイプに分けてご紹介します。
アクティブ層
いわゆる、「就活ガチ勢」と言われる学生たちをいいます。3年生の夏にはインターンを経験し、早期から就活に向けた準備を進めています。
ナビ登録はもちろん、OB・OGのネットワークをフル活用したり、外部リソースで自分をアピールしたりするなど、積極的に就活をおこなっています。
部活や、アルバイトなども目的をもって取り組んでいるため、役職や責任を持つなど、経験値が豊富です。
彼らのほとんどが、経団連が面接解禁を指定している6月には既に何箇所か内定をもらっており、就活を終えています。
準アクティブ層
この層の学生もアクティブ層と同じく3年夏のインターンに参加したり、早期就活を始めていたりします。なので、ここに当てはまる学生もまた、6月時点では就活を終えている学生が多いです。
だた、アクティブ層に比べると、視野が狭かったり、自己認知力がやや弱かったりするところがあります。
そのため、せっかく良い経験をしているにもかかわらず、経験での気付きが浅かったり、途中でやめてしまったりするのが、少しもったいない点でもあります。
中間層
ここに当てはまる学生は、就活に対して真面目に取り組んでいる一方で「自分の適職は何なのだろう・・・」と難しく考えすぎてしまう傾向にあります。
正解が見つからないと動けない慎重派なので、説明会に行っても選考を受けないで帰ってしまう学生が多いです。
アルバイト経験や、ボランティア経験があるものの、やや弱く、自分に自信を持てないという消極的な部分もあります。
保守層
ここの層の学生は、就活を楽観視している傾向にあります。「売り手市場っていわれているからどこかしらには入社できるだろう」と安易に考えており、中には、まだ就活を初めていない学生もいます。
また、部活やアルバイト経験が少なく、全体的にコミュニケーションスキルが乏しいといった学生もここに含まれます。
さらに、中には残単位が多く、十分に就活をおこなえていない学生もいます。就活に対しての危機感が薄いため、キャリアセンターの働きかけになかなか応じないケースもあるようです。
2-6-2の法則
ここまで、就活生を4つのタイプに分けてご紹介しましたが、これらは「20%-60%-20%」の割合で表すことができます。
この割合は大学によって変化する場合がありますが、実際には、準アクティブ層・中間層に当てはまる6割の学生の半分と保守層の学生がまだ就活を続けていて、少なくとも3~4割の学生がまだ就職先を決めていないということです。
2019年新卒の学生の動きを総括すると・・・
先ほど述べたように、2019年新卒採用はまだまだ終わっていません。
しかし、終盤を迎えるにあたり、2019年新卒の就活生がどんな動きで就活をおこなっていたのかを先ほどの指標ごとに振り返ってみます。
企業の動きと比較しながら2019年新卒の学生の動きを知ることで、2020年新卒の対策にもなるかもしれません。
企業の動き
企業は、経団連に加入しているか否かで、スケジュールが若干異なります。
経団連に非加入の企業がほとんどですが、多くの企業が3年生の夏からインターンシップの募集をかけ、3月前後から説明会をおこないます。
早いところだと、インターンシップに参加した学生などを対象に、3年生の冬から選考を開始し、3月が始まる前に内定をだす企業もあります。
学生の動き
アクティブ層の学生
アクティブ層の学生は、何をするにも動きが早いことが特徴です。
3年夏のインターンシップにも積極的に参加し、3月のエントリー開始以前からエントリーする企業を決め選考を受けるなど早期から就活に向けた準備を進めています。
就活の手法もナビサイトを活用するだけでなく、OB・OG訪問やスカウティングなどさまざまな手法を併用しながら就活を進めるため、6月前には就活を終えてしまう人も少なくありません。
準アクティブ層の学生
アクティブ層と同様に、早いうちから就活の情報をキャッチアップして、インターンシップにも参加する学生が多いです。しっかり自分の進路を検討し、4年夏くらいには内定先を決め、将来の働き方を決めます。
中間層の学生
就活について考えながらも、「自分にはどんな仕事があっているのだろうか・・・」と悩んでしまい、動き出せない人が多いです。
もちろん、インターンを経験している学生もいますが、3月のナビが一斉解禁するタイミングで動き出す学生も多く、説明会に行き始めるものの、選考を受けるまでには至らず、受けたとしてもなかなか選考を進めることができません。
保守層の学生
保守層の学生は人材不足であることを楽観的に捉え、どうにかなると考え就活を始める時期が極端に遅くなってしまうことがあります。ナビサイトもあまり使わず、口コミで選考を受けたりもします。
アクティブ層が就活を終えた後に、就活を始めるという保守層も少なくありません。この1年以上の時間差はとても大きいといえるでしょう。
3月解禁前後のタイミングで就活を始める学生もいますが、経験の乏しさから、選考も難航してしまい、夏をすぎてもなかなか内定をもらえない、という学生もいます。
今から動き始める学生も
また、この層には属しない就活生もいます。これらの就活生はさまざまな理由から就活開始の時期が遅くなりました。
しかし、素質としては十分なものを備えています。
留学帰り
海外の大学は、多くが7月卒業です。海外の留学に在籍している間は大学の授業が忙しい場合が多く、一定期間日本に帰ってきて就活をするということは非常に厳しいです。
そのため、ほとんどの学生は卒業して、日本に帰ってきてから就活を始めます。
海外の大学出身の学生は、言語面でのスキルはもちろん、行動量や経験値の面においても、圧倒的な強さを持っています。また、文化が違う留学生と比べ、日本での生活基盤があることにより、日本企業の文化にも柔軟に対応することができます。
進路変更の学生
この時期に多いのが、「公務員からの企業への就職希望」「大学院受験からの就職希望」といった学生です。
公務員試験や大学院受験を目指していたけれど、残念ながら不合格になってしまった学生や、急な進路変更をして、一般企業への就職を希望するようになった学生の多くがこの時期から就活を始めます。
元々は、公務員・大学院を目指していた学生なので、高いスキルを持っている可能性が考えられるでしょう。この時期はそのような優秀な学生を採用するにもってこいの時期といえるでしょう。
体育会所属で引退してから就職を始める
体育会に所属しスポーツ一筋で学生生活を送っていた学生は、それを武器に就活をすることができます。
しかし、忙しすぎる体育会の学生や本人の気持ちで体育会にのみ集中したいと思っていた学生などは、就活を始める時期が引退してからになってしまいます。
そのため、いい人材であっても、まだ内定をもらえていないという学生も少なくありません。
2020年新卒に向けて、採用担当者が注目すべきポイントは?
2020年新卒の動きは2019年新卒採用のスケジュールとほとんど変わらないようです。売り手市場が続くため、企業理解が十分でないまま内定承諾をしてしまったり、早期離職してしまったりという人が増加し続けています。
そこで、2020年新卒採用を成功させるために、採用担当者に知っておいてほしいポイントをご紹介します。
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文系学生でもエンジニアになれる
よく、電子・機械やエンジニア系の職種で「理系学生を採用したい」という採用担当者の声を聞きます。たしかに、理系学生は専門的知識を大学で学んでおり、教養が豊富にあるといえます。
しかし、だからといって、文系学生にはまったく素質がないということではありません。文系学生の中にも論理的思考を身につけている学生は多くいます。
なかなか採用できない理系学生に執着して採用を続けるよりも、素質がある文系学生を採用し、自社で育て上げるほうがいいのかもしれません。
学歴にとらわれない
就活生を選定する際に、どうしても指標となってしまうのが、「学歴」です。これは昔の日本社会の影響が強いといえます。このなごりを受け、未だに、一次選考の選考基準を特定の大学群だけで選んでしまう企業も少なくないようです。
学歴を選考基準にしたときに、「国公立難関・私立有名以外の四年制大学」「専門学校」や「短期大学」出身の学生の中には、対象外となってしまう学生がいたり、専門学校や短大の多くが2年制であるため、四年制大学の学生に比べ、「幼い」と思われてしまう傾向にあります。
しかし、四年制大学の学生に比べ、「早くからより専門的な知識を得てきたこと」「夢・目標を叶えるために努力してきたこと」「若くして社会に出ようとすること」はむしろプラスになる部分です。
業種・職種が、必ずしもその学生の専門分野でなかったとしても、そこに向き合ううちに自然と身についてきた姿勢が評価されることもあります。
何も考えずに、「国公立難関・私立有名以外の四年制の大学生、短大や専門生は対象外」とするのではなく、学生の特性を見極めることが大切です。
学生の本質をみること!
必ずしも、面接で自己主張をしっかりできる学生だけが良い学生というわけではありません。少し、自己主張は苦手だけれど、とても良い素質を持っている学生も多くいます。
前に述べた「真面目で良い子だけど、難しく考えすぎてしまう」というような学生がその例です。良いものを持っているのに、うまく表現することができず、なかなか内定が出ないという学生もいます。
もしかしたら、こうした学生を選考中に切り捨ててしまっている可能性もあるかもしれません。
その学生の本質(何に価値をおき、何を、どう取り組んできたか)を見ないで、合否を判断してしまっている可能性があります。
この売り手市場において、そのような学生を切り捨ててしまうのは非常にもったいないことではないでしょうか。
表面だけを見るのではなく、学生の本質をしっかりみて、ときには育成しながら、採用をおこなうことをおすすめします。
採用担当者の人間力が問われる
先ほどにもありましたが、今の就活生は決して皆が自己主張・自己表現が得意というわけではありません。
もちろん、自己分析ができている就活生はプラス要素になるといえますが、自己分析が必ずしも正しいかどうかも分かりません。
ここで大切なことが、採用担当者の「人間力」といえます。いかに就活生の本質を見抜き、良さを引き出してあげられるかが採用担当者には求められています。
もし、採用担当者が就活生の良さを引き出すことができ、企業での発展性を説くことができれば、就活生も企業における将来像を描くことができ、「こんな人と一緒に仕事をしたい」とも思うようになるのではないでしょうか。
今は仕事において「人との関係性」を重視する就活生も非常に多いため、採用担当者に惹かれて内定を決めたという就活生も実際のところ多くいます。
今後採用担当者には、学生の魅力を引き出すスキルも求められてくるでしょう。
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さいごに
現在は、売り手市場といわれており、企業に比べ、就活生は順調に内定先が決まると思われがちです。
しかし、実際のところその理由はさまざまですが、8月の初旬でも少なくとも3~4割の学生が就活をおこなっているようです。
採用担当者は、学歴や表面上のものにとらわれすぎることなく、就活生の本質を見定め採用をおこなうことで、企業にとっても就活生にとっても満足のいく採用ができ、入社後の早期離職防止にもつながるのではないでしょうか。
ぜひ、貴社の採用活動の参考になれば幸いです。
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- 採用担当者のヒューマンスキルが求められる