自社の魅力を伝えるために「採用動画」を作成し、活用されている企業は多いかと思います。
しかし、コストや工数をかけて作成したものの、その効果がどのくらいあったのか、詳細な振り返りが難しいのではないでしょうか。
今回は、「採用×動画」をテーマに、MIL株式会社が仕掛ける“インタラクティブ動画”の特徴と、実際の活用事例やその効果をご紹介。
MILのインタラクティブ動画は、「ただ見て終わり」ではなく、動画再生中に画面をクリックしてさまざまなアクションをとることができるというもの。
それにより、視聴完了率、認知率、サイトへの誘導率など多くの面で効果があがり、また視聴者がアクションすることで、その詳細データも計測・分析ができ、他の施策にフィードバックすることもできます。
本記事では、インタラクティブ動画が採用にもたらすインパクトについて、同社CEOの光岡さんにお話を伺い、その内容をまとめました!
光岡 敦 |MIL株式会社 代表取締役CEO
目次
「スマホのスクロールすら面倒」動画コンテンツが主流になりつつある
-今回は「動画×採用」をテーマにお話を伺っていきたいのですが、まずは「動画コンテンツの重要性」について教えてください。
光岡さん:現在は、スマートフォンの普及などにより、多くの場面で簡単に動画コンテンツを目にするようになっています。
特に若者においては、動画コンテンツの視聴率は圧倒的に高く、中には「テキストで見るより、動画で見たい」という声もあります。もはやスマホのスクロールですらストレスに感じるらしいのです。
また、動画広告と静止画広告の比較において、以下のようなデータがあります。
動画のほうが・・・
- 記憶に残りやすさが1.65倍
- 内容を覚えているユーザーが1.2倍
- ブランドへの好感度が上がったユーザーが5倍
- 次のサイトへ訪問したユーザーが1.3倍
- 商品を購入したユーザーが2.3倍
引用元:動画広告のチカラ
-たしかに動画のほうが印象に残りそうですね。
光岡さん:また、Video Tech Onlineの記事を見ると、動画マーケティングの重要性に関して、以下のようなデータがまとまって記載されています。
毎日5億人以上がFacebookで動画を見ている
動画マーケティングのトレンドを提供している、海外の「TubularInsights」によると、毎日5億人がFacebookのニュースフィードで動画を見ている。
79%の消費者は、動画を見て商品を購入したいと思っている
インバウンドマーケティングなどで有名な「Hubspot」によると、消費者の79%は製品について知るために、Webページ上のテキストを読むよりも、動画を見たいと思っている。
2021年までにコンシューマーの全インターネット・トラフィックの80%以上が動画になる
アメリカのIT企業「cisco」の調査では、2016年の全世界の一般消費者のインターネット通信量に占める動画の割合は73%だったが、2021年までに82%になる見込み。
日本の動画広告市場の8割はスマートフォンで見られている
サイバーエージェントが実施した、2017年国内動画広告の市場調査では、スマートフォン動画広告の需要は前年度比190%の成長を遂げており、動画広告市場全体の約8割を占めると予測。
今後もスマートフォン動画広告が動画広告需要全体の成長を牽引し、2019年には2,322億円、2023年には3,485億円に達すると予想されている。
-動画のトレンドはどんどん勢いを増しているのですね。
光岡さん:そうですね。上記のことからも、動画は人々にとって、特に若者にとって欠かせないものになってくると思います。
就活においても同様に、動画を効果的に活用することで若者の興味を促進でき、より良い採用活動につながると考えています。
MILが仕掛けるインタラクティブ動画とは?
-MILさんが仕掛けている「インタラクティブ動画」についても簡単にお聞かせください。
光岡さん:MILは「再生されるだけの動画から、アクションを促す動画へ」をコンセプトに、インタラクティブ動画編集プラットフォームを提供している会社です。
インタラクティブ動画とは、今まで一方向的だったところから双方向性を持つことができ、受動的な人間が能動的になれるような動画です。
たとえば、動画内にある「タグ」をタッチすることによって、その商品の情報がポップアップで出てきて、さらにタッチすれば、商品サイトに誘導することができます。
■インタラクティブ動画事例その1|三愛水着楽園
光岡さん:こちらは、「2017 Ai Swimwear Collection」という、三愛水着楽園様のイベントで撮影された動画をインタラクティブ化したものです。
約3分40秒の動画内に様々な水着モデルが登場しますが、多くの水着モデルに動的の「♡型のタグ」を付与しており、気になった水着があれば、クリックして詳細を知ることができます。
また「目次機能」を使うことで、動画内の気になる商品にすぐ飛んで視聴することができます。
■インタラクティブ動画事例その2|三井住友カード
光岡さん:動画中に選択肢が出てきて、それをタッチすることでどんどん動画のストーリーが分岐していく機能もあります。
三井住友カード様の動画の事例になるのですが、「スパイ仕立ての動画」を企画させていただきました。20代のVISAカードの入会・カード利用促進、30代以降の方へのゴールドカード入会を目的としています。
この動画自体は、新米諜報員がどんどんミッションをクリアしていくというストーリーになっていますが、途中で選択肢が出てきます。それによってステージが進めるかどうかが決まります。
ただし、不正解の選択肢であったとしても、リトライボタンを押すと動画が巻き戻る演出になり、もう一度選択肢まで戻る仕様になっています。
■インタラクティブ動画の活用で、外部サイトへの誘導率が39%という事例も
光岡さん:またそれ以外にも、動画中にタッチして電話をすぐに掛けるといった仕組みもできますし、動画内にクーポンタグを設置することで、視聴者に「動画クーポン」を提供することもできます。
MILのインタラクティブ動画を活用していただいた実績値の平均を見ると以下のようになります。
- 動画内のタグをタップした率:60%
- 外部サイトへの平均誘導率:17%
- 平均タップ回数:1.8回
なかには、動画から外部サイトへの誘導率が39%という事例もあり、これは通常の動画コンテンツよりも非常に高い数値になっていると思います。
- 動画にタッチすることで商品のポップアップがでる
- 動画の途中で選択画面が出て、タッチしたほうの内容で動画のストーリーが分岐されていく
- 動画中にタッチをして電話を掛けることができる
- 動画中にクーポンを出すことができる
-動画でこんなことができるなんて・・・。面白い仕組みですね!
光岡さん:Googleが提唱している、「マイクロモーメント」という概念があるんです。
マイクロモーメントとは、「何かをしたい」という意図が生じたときに、すぐに目の前にあるデバイスを使って調べる、買うといった行動を起こす瞬間を意味します。
その中でも、知りたい、行きたい、したい、買いたいという「4つのto-do」があります。
- Want-to-know moments(知りたい)
- Want-to-go moments(行きたい)
- Want-to-do moments(したい)
- Want-to-buy moments(買いたい)
要は、動画を見たときに「あの芸能人が着ている服ってなんだろう?」「あの曲ってなんだろう?」「あの場所ってどこなんだろう」と感じても、なんて検索したら良いかわからないじゃないですか。
そこをインタラクティブ動画によって、すぐにその場で簡単に調べられるようにしたいんです。動画におけるマイクロモーメントの問題を全部解決していきたいと思っています。
それを僕らは「視聴体験の最大化」と言っており、視聴体験の最大化を実現するインタラクティブ動画プラットフォーム=MILというイメージを定着させていきたいですね。
-インタラクティブ動画は、クリック数など効果も計測できるのですか?
光岡さん:はい、あらゆる観点から計測が可能です。
企業様ごとに管理画面があるのですが、視聴回数、視聴完了数、滞在時間、利用者環境(OS・デバイス・リファラー)の他に、以下のような数値も計測できます。
- 視聴数に対してどのタグが何回タッチされたのか
- どの商品が一番見られているのか
- どのくらいサイトに流入したのか
- どのくらいクーポンが保存されて使用されたのか
今までは動画でこのような計測データを提供するのが難しく、基本的に取れる数字は視聴回数や完了数だけでした。
そのため、視聴者が動画内のどこに興味を持ってくれたかがわからず、動画コンテンツの効果についてPDCAが回せてなかったんです。
それをインタラクティブ動画では、「どの場面が一番タッチされているか」「どのコンテンツが興味を持っているのか」といったことが管理画面で簡単にわかるので、「次はこの部分にフォーカスした動画をつくろう」「次はこのコンテンツを厚めにしてみよう」という話をすることができます。
新しい採用のカタチ!採用×インタラクティブ動画の活用事例
-それでは、今回の本題でもある「採用×インタラクティブ動画」の事例についてお願いします。
■社員インタビュー×インタラクティブ動画
光岡さん:まずは、株式会社NTSロジ様の事例をご紹介します。
オープニングの15秒間は物流エキスパートであるロジ様のイメージを伝えつつ、動画後半に登場するスタッフさんには「TAP」と書かれたタグがついており、そこをタッチすると社員の個別インタビューに画面が切り替わっていく仕組みになっています。
見たい方をタッチすればインタビュー動画がはじまり、視聴完了すると他のスタッフインタビューに遷移できるようになっています。また、求人案内をクリックすればリクルートサイトに遷移します。
ですので、ただ単にインタビューの中身を見てもらうだけでなくて、視聴によりモチベーションが昂った段階で、次のアクションを起こさせることが可能になります。
-誰がどのくらいクリックされたのか、どのくらいサイトに遷移したのかもわかるのですか?
光岡さん:はい、わかります。滞在時間もわかりますし、どのあたりで離脱されたのかもわかります。
動画内でたくさん見られている社員に説明会でも話してもらう、インタビューの内容を変えてみるなど、動画のデータからさまざまな施策を打つことができます。
※動画制作:株式会社フリーセル
■社員の1日のストーリー×インタラクティブ動画
光岡さん:社員の1日のストーリー動画の事例もご紹介します。こちらは、エムフロ様というIT企業の新卒採用動画になりまして、「新米エンジニアの1日」というテーマで動画を作成しています。
仕事をしていく中でトラブルが起きるのですが、そのときに「あなたならどれを選ぶ?」と、選択しながらストーリーが分岐していきます。
このように視聴体験をどんどんおこなってもらい、会社のことを理解していってもらいます。
また、冒頭に社長、副社長、先輩のインタビュー動画を見ることもできますし、普段の執務スペースで撮影しているので、働くイメージを就活生に与えることができるコンテンツになるのではないでしょうか。
※動画制作:株式会社アドスペック
■漫画×インタラクティブ動画
光岡さん:また、エムフロ様では動画の漫画コンテンツも作成させていただきました。
「なかなか自社のサービスを伝えきれない」といったケースで漫画にする、というやり方がよくあると思うのですが、エムフロ様では漫画を動画にし、さらにインタラクティブ化しています。
最初に「このマークが出てきたらタップしてみてください」と説明があり、漫画がはじまります。内容は、創業の経緯や事業内容、社風、社内制度、オフィス風景といったものになります。
これらのシーンでタグが出てくるので、それをタップすることで社長のインタビュー動画やサービスページの紹介、社員旅行の写真などをそのまま見ることができます。会社の文化や仕組みを包み隠さずに漫画で伝えられるのは面白いと思います。
電車の中など、本当にちょっとの間にスマホで見ていただけることを想定して縦動画でつくっています。
そして、動画の最後にエントリーフォームを出すといった感じでシームレスに誘導していくことができれば、就活生も気持ちが昂ぶっている状態でエントリーしてくれるのではないかと思っています。
■カルチャー浸透×インタラクティブ動画
光岡さん:こちらはMILの事例ではなく、海外で僕らと同じようなプラットフォームを持っている企業がデロイトと仕掛けた事例です。
企業のカルチャーを理解するために、このやり方は非常に面白いと思います。
「Will You Fit Into Deloitte(あなたはデロイトにフィットしますか)」と記載されてあり、説明会や面談に行く前に、「デロイトのカルチャーに合っているかどうかを知るためにまずこの動画を見てほしい」といった感じの使い方をしています。
動画サイトのURL:http://www.raptmedia.com/customers/deloitte/
この動画は、「エレベーター内でコーヒーを他人のスーツにかけてしまったときに、あなただったらどういう態度を取りますか」といった選択肢が出てくる、ストーリー動画になっています。
たとえばそこで、「Keep quiet(黙ったままでいる)」という選択肢を選ぶと、結局見つかって怒られてしまいます。そして巻き戻しになり、選択肢の場面に戻ります。
「Tell him(彼に伝える)」という項目を選択すると、「正直に言ってくれてありがとう」と、次のストーリーに進むことができます。
これは、「デロイトで求めている一番重要な人は正直な人である」というカルチャーをここで伝えています。
さらに動画を進んでいくと他のカルチャーに関する内容の選択肢が出てくるのですが、分岐の内容もすごく面白いんです。成功失敗に関係なく“おもしろ要素”が入っています。
-こういった動画は就活生の間でも話題になりそうですね。
光岡さん:話題性は抜群だと思います。就活生のなかでこういった動画が拡散されることで、今まで出会えなかった層の学生にも出会えるかもしれません。
そういった意味では、非常に良いPR効果にもつながりますよね。
動画内のどこに興味を持ってくれたのか、統計的に分析できるのが良い
-実際にインタラクティブ動画を採用に活用された企業からはどのような声があるのでしょうか?
光岡さん:先程の「社員の一日」と「漫画」の動画を活用していただいている、エムフロ様からは以下のような声を頂いています。
【エムフロ社 取締役副社長山田様の声】
Q1:漫画の動画を見た方の反応は?
A:「漫画なので判りやすい、コンパクトに経営ストーリーを知れて良かった」という声をたくさんもらっています。
Q2:どういったシーン(タグ)がよくクリックされていますか?
A:社長プロフィール、社内制度紹介(ひらめきプロジェクト)あたりがよくクリックされています。また、社長インタビューもよくクリックされていますね。
Q3:インタラクティブ動画のメリットはなんですか?
A:求職者個人が興味を持ったポイントに対して直接訴求できる点、滞在時間が長くなるため、弊社に対しての興味をさらに持ってもらえる機会が増えました。また、興味を持たれるポイントを統計的に分析できるので、説明会などで訴求ポイントの改善に役立ちます。
Q4:採用動画の効果を教えてください。
A:他社との違いをよりアピールできるようになったと思います。漫画コンテンツは冊子に再利用させていただいており、説明会後に振返ってもらうことができています。映像で訴求することで求職者も弊社のカルチャーをより理解してもらえたと感じています。
Q5:今後もインタラクティブ動画を活用していきたいと思いますか?
A:活用していきたいですね。今後は実話(失敗談、成功例、過去のエピソードなど)をもとにした動画もつくりたいと考えています。
エムフロ様もおっしゃっていますが、就活生が興味をもったポイントを分析できるので、その結果を説明会や面接に反映することができます。
また、今お話した以外に「採用×インタラクティブ動画」の活用だと、会社説明会動画、社員・質問が選択できるバーチャルインタビュー、先程のデロイトのような企業カルチャーの促進など、幅広く活用することができます。
視聴体験の最大化とデータの活用をしていきたい
-最後にインタラクティブ動画を通して実現したい世界観などを聞かせください。
光岡さん:MILは「視聴体験の最大化」をサービスの思想として考えています。
視聴体験の最大化とは、視聴者が動画を通して最適なネクストアクションの選定ができ、その結果、広告主様への間接的・直接的な売上貢献につながる、視聴者・広告主様双方の期待効果をしっかりと実現することです。
そのようなことを突き詰めてMILを科学していくことが大事なことだと思います。
-採用領域において、今後仕掛けていきたいことはございますか?
光岡さん:採用領域で言うと、インタラクティブ動画を通して、就活生のデータが必然的に蓄積されてくると思うので、就活生の行動を科学してみたいと思っています。
動画上で「タッチするデータ」を蓄積できるサービスはまだありません。就活生が興味を持つポイントを統計的に分析し、説明会でも「そこをプッシュすれば刺さる」といった活用ができると良いですね。
データを活用してさまざまなことにチャレンジしていきたいと思います。