はじめまして。今回よりHR NOTEに連載を持たせていただきます、PR Tableの後藤と申します。
普段はPRコンサルタントとして、企業のコーポレート・ブランディング課題の改善から採用広報まで、あらゆるお手伝いをしています。
なぜ、「PRコンサルタントが人事向けメディアに?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実はPR(パブリック・リレーションズ)の中には、IR(インベスター・リレーションズ)やCR(カスタマーリレーションズ)と同様に、ER(エンプロイー・リレーションズ)も含まれているのです。
また、私が前職時代に500社以上の採用に携わったこと、そしてPR Tableでも採用広報に課題を抱える企業様の支援をしていることもあり、今回、「採用広報」を軸に色々とお話しさせていく予定です。
第一回はさくらインターネットの人事部のリーダーである矢部真理子さんに、お話を伺っています。
矢部 真理子| さくらインターネット 人事
▼社員を通した広報活動「PR Table」
https://www.pr-table.com/sakura-ad
▼成長戦略としての働き方改革「さぶりこ」
https://www.sakura.ad.jp/corporate/corp/sabulico/
※本トークセッションは、4月末日に大阪billageで開催された両名の対談を元に構成させています。
採用広報に役立つ、
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目次
2014年。社内広報から始まった、さくらの採用広報
後藤:さくらさんの場合、採用広報といいますか、いつも楽しそうなニュースが知らぬ間に耳に入っている印象です、「広報がいいなぁ」と。ちなみに、採用広報に限ると、いつからスタートした施策なのでしょうか?
矢部:2014年ですね。今ではちょっと考えられないのですが、当時、社長が人事部長を兼任してたんです。その時、「100人採用」という指令が社長からおりてきまして。200名くらいの会社に、新たに100人を採用すると。
ありとあらゆる手段をつかって応募数と面接数は増やすことができても、そんなに上手くいくものではない。採用部門もだんだん疲弊していくという中で、あるデータを見つけたんです。
それは、社員紹介。いわゆる、リファラルからの応募者の合格率が100%だったということ。「これはすごい!」と思い、社員紹介を増やした方が効率いいし、みんな幸せなんじゃないかなって思ったんですね。
社員紹介ってどうやったら増やせるんだろうと考え行き着いたのが、「社内広報からの採用広報」でした。社員の方たちにいい人を連れて来てもらうような、社内向けの広報が出来たらいいのかなと思ったのがはじまりです。
後藤:2014年当時って、採用広報という言葉はそこまで浸透されていなかったと思うのですが、何も情報が転がっていない中、どのように進めたのですか?
矢部:私は人事畑で広報の知識や経験がまったくなかったので、社内の広報チームに相談し連携することからはじめました。
後藤:広報の方に採用の部分をちょっとお願いするっていったら変ですけど、「採用の情報を発信してくれ」っていう部分が採用広報の始まりだったって感じですか?
矢部:そう、後付けで採用広報って言っちゃってるっていう感じです(笑)。で、さくらインターネット20周年という節目の2016年からPR Tableの運用を開始し、社長のビジョンや活躍している社員のこと、あとは新しい働き方の制度である「さぶりこ」についての発信しはじめました。
働き方改革の流れで、働きやすさに関する施策はどこの会社さんもやられてると思うんですけど、パッケージ化して、キャッチーなネーミングにするってことが広報的には大事でして。ここでも広報チームと連携しながらネーミングを社内公募したんです。色々出ましたよー、「社畜禁止条例」とかもありました。
後藤:(笑)
矢部:30エントリーくらいあったんですね。その中で、“Sakura Business and Life Co-Creation”の略称である「さぶりこ」に決まりましたね。
人事だけで決めるのではなく社員を巻き込んで一緒に考えるって大事ですし、社内広報の第一歩なのかもしれません。
採用広報をはじめると、まず企業広報に生きる。採用に効くのはまだ先
【卓球の世界王者のファンになったら、パラレルキャリアへの道が開いた?/PR Table】
後藤:僕たちPR Tableが少し絡んでいることもあり、正直、聞くことには勇気がいる質問ではあるのですが。採用広報に注力して、何か変わった事があるかなと。
矢部:ありましたね。でも、即時性がないけど、長期的にやって効いてくるのが採用広報なので時系列でお話ししますね。
はじめは「会社やサービスのことだけ知ってもらえればいいかな」くらいにしか考えていなかったんです。これは継続してるんですけど、採用に結び付けるのであれば、「会社やサービスに加えて、人の魅力も伝えていくべきだ」となったんです。これが2015年くらいですかね。
その後は背景や文化、なぜやってるのかというところも言語化していくようになりました。
結果として、私が2012年に入社した当時は名刺交換しても、「さくら?銀行?」みたいに言われることが多かったんですが、最近は「働き方改革やってますよね」「IoTの事業面白いですね」との反響もあるようで、社員が喜んでました。
後藤:採用広報をスタートすると、まず企業広報で効果が出ると。
矢部:次に効果があったのが、社内への広報。500人規模になると、社員が社員のことを知らないんですね。
さくらインターネットで年に1回全社会議っていうのをやってて、全社員が大阪に集まるんですけど、その時に、「あ!●●さんですね」とコミュニケーションが生まれて、っていう社内の活性化にもつながってるなって感じました。
その後、その社員が「私にも採用、手伝わせてください」と前のめりに提案してきてくれたんです。いやぁ、びっくりしましたが、とても嬉しい反応でしたね。
採用広報をはじめて2年……リファラルからの入社比率が6%→44%に
後藤:この数字、何ですか?2015年から2017年ですごい勢いで上がってますが。
矢部:社内に仲間を増やせた結果なのですが、中途採用で入社した方のうち、社員紹介で入社した方の比率の推移です。私もびっくりしています。採用広報ってこういう風に効いてくるんだなぁと実感しています。
社員紹介の入社の比率はほぼ半分。嬉しいですね。
後藤:これはすごい、細く長くですが継続したことが価値ですね。
矢部:採用広報は、すぐに成果が出るわけじゃない。年間の採用計画もありますし、そっちのほうが優先度としては高い。目先のことに追われながらではありましたが、採用広報活動を継続してきたことで、今は採用がうまく回るようになったなと思っています。
後藤:目先の採用は人材紹介がはやいと思います。ただ、この7年間で紹介feeが10%も上がってるんですよね。そもそも年収という大きな金額に、これだけのパーセンテージがかかる。
2025年には日本国民の4/1が75歳以上になるという未来が待ってます。仮に今の景気を保っていると、紹介feeは年収の50%くらい行くんじゃないかと、個人的に思ってるんですよ。
やっぱり採用広報とか、ちゃんと発信し続けることによって資産、コンテンツを残していかないと、体力がある会社しか人を採れないんじゃないかと。日本の99.7%が中小企業、採用においてビハインドになる会社だらけになります。
矢部:そうですね。すでにITエンジニアの紹介フィーは40%超えてる人材紹介会社もありますよ。それでも取り合いで、採用がむずかしいんです。後藤さんがおっしゃる未来、リアルに想像できますね。一部の大企業しか、採用できない未来。
後藤:そう。だから採用広報って必須なのかなと。自社で働くことの魅力ないし、どういうビジョンを持って、ミッションを掲げ企業を運営しているかというコンテンツが1本あるだけでも、Web上に永続的に残る。数百というユーザーが毎月流入すると考えて、長期的な採用広報にはなりますよね。
つくりたいのは、全社員が採用担当の会社
矢部:私が目指す姿は、全社員が採用担当の会社。社員が一緒に働きたい友達を連れてきてくれる会社が、ハッピーかなって思うんですよね。
後藤:でも、インターナル、社員の満足度が低かったら、紹介できませんよね。矢部さん、自分の会社好きじゃなかったら、紹介できます?
矢部:すいません、できません(笑)。
後藤:(笑)。なので、やっぱりまずは社員を大切にしないといけないなって思っています。社員を大切にするとリファラルが発生するというのは、さくらさんのケースで実証済みですし。それに「類は友を呼ぶ」ってよく言いますけど、いい社員の友達はいい人材なんですよね、大体。
矢部:実際、ウチは2014年は合格率100%でしたし。
後藤:なので、リファラルが進むと、いい人材が揃ってくる。リファラルを生むにはどうしたらいいって時に、社員に会社を好きになってもらうこと、これ大事かなと。すごいきれいごとっぽいですけど、これしかないんですよね。
なので、結構地道にコツコツやることもそうですし、人事って、採用だけじゃなくて、社員を見つめることも人事だと思うので。
矢部:なるほど。つながりました。私の今までの活動が。
後藤:こんな風に、「あの会社、あいつの会社いい会社なんだ」って、すごく小さな波紋でも、いずれ社会に広まっていく。そうすると、会社のファンが増えると、採用広報も一気に加速するんですよ。