産業医の選任にあたりどういったことを基準に産業医を探せば、自分の会社にあった産業医を探すことができるのか。
本記事では、産業医の専任で見ておくべきポイントをいくつかの基準に沿ってご紹介していきます。
目次
なぜ産業医が必要なのかを考えたうえで産業医を探すことが大切
まず、なぜ産業医の選任が必要になったのか、産業医にどういった業務スキルを求めるのかを考えましょう。
例えば、産業医が必要な状況として、社員数が50名を超え、制度上産業医を置く必要があるためとか、業務上有害な作業が多く労災リスクを減らしたいため、休職者が多いためメンタルケアが必要なためなど、企業によって産業医の選任理由は異なります。
目的を明確にすることで、ある程度幅が狭まり、具体的に理想の産業医像が見えてきます。
条件面だけの選定はミスマッチが起こる原因に
産業医を選定する際の選択肢の一つとして、業者からの紹介や、医師会への直接の連絡などがあると思います。その時に気を付けなければならないことについて明記します。
1.条件面の折り合いだけでの選任
産業医の紹介を依頼する場合は、まず様々な条件を提示すると思います。例えば、勤務時間、金額、性別、年齢などです。
ここで一部の業者の中では条件をシステム的にマッチングし、依頼元に紹介するというケースがあり、紹介した産業医が会社の本質的なものに沿った産業医であるかという部分に関しては関与しないということがあります。
例えば、初めて産業医を選任する企業で衛生委員会の立ち上げに産業医に関わってほしいが、紹介された産業医に知識がない、休職者が復職するに際してその復職プログラムの制定をおこなってほしいができないなど。
時間をかけて、企業の本質的な課題をヒヤリングし、マッチングをおこなう業者がいる一方で、産業医の臨床時の専門スキルと費用などだけでマッチングし面接をおこなう業者もあり、業者選びも産業医探しをする上で非常に重要なファクターとなっています。
産業医選びの中で一番大切なことは履歴書や紙面的なスキルではなく面接と言われています。一般的に紹介業者を通しての産業医と企業との面接は、紹介業者の営業マンも同席し、三者で面接をするケースが多くなっています。
この三者での面接の際によく陥るケースが産業医本人よりも営業マンとの話のほうが長くなってしまい、産業医とほとんど話すことができず終わってしまうという面接です。
産業医として必要なスキルは、コミュニケーション力と要対応者への提案力、そしてその会社の業務への理解が必要です。
そのためにも、時間をかけて産業医と面接をして、こちらを理解してもらうことが大切です。お互いに理解しあった上で、実際にお任せするようにしましょう。
面接のときに産業医に質問ができず(何を質問したらいいかわからないケースも含め)、産業医雇用のミスマッチが起こるケースも多々あります。そうならない為にも条件面だけの折り合いではなく、産業医との面接で質問したいことを事前にまとめ、面接を有意義なものにしていく必要あります。
2.産業医の専門を指定する
非常に多いのが、メンタルヘルス対策のために精神科医にお願いしたい、というような専門医の指定です。「精神科医」という枠の中での産業医探しになるので非常にハードルが高くなります。
メンタル=精神科と一般的に思われがちですが、実際メンタル対応できる産業医=精神科医というわけではありません。産業医としてのメンタルケアスキルと臨床医(精神科医)としてのメンタルケアスキルは全く異なるものです。
内科医であっても皮膚科や耳鼻科医であってもメンタルケアできる産業医は多数います。また、精神科医であっても産業医としてのメンタルケアが苦手な方もいます。
産業医としての専門性と臨床医としての専門性は別のものになります。産業医の選任ミスマッチを防ぐためにもぜひ参考にしてみてください。
労働衛生コンサルタント(国家資格)所有も産業医の選定指標になる
労働衛生コンサルタントという国家資格をご存知でしょうか。
労働衛生コンサルタント、労働安全コンサルタントは、厚労省大臣の指定の登録機関で登録を受けた専門家となる存在です。その事業所での労働安全や衛生の水準を上げるべく、依頼によって診断や指導をするという役割があります。
労働衛生コンサルタントの資格を有する産業医は企業に対しての提案力も高いと評価されており、近年需要が伸びています。
企業の職場環境の改善に力をいれて取り組みたいとお考えの方は労働衛生コンサルタントの資格もひとつの判断基準にするとよいかもしれません。
良い産業医を探す為に必要なこと
産業医を探す上で一番重要なことは企業と二人三脚でよいよい組織づくりをおこなっていく意思を持っているかどうかということになります。
決められた法定業務だけではなく産業医として企業の課題に取り組み提言する姿勢があるかを見極めるためにも企業側も産業医の職務内容や役割について把握し、産業医選任時のミスマッチを防ぐようにしましょう。
監修:Avenir産業医