こんにちは!HR NOTE編集部です。
突然ですが、皆さんは、会社の「ホットラインサービス」を利用したことはありますでしょうか?
ホットラインとは、企業内における相談窓口のことで、仕事に対する悩み・職場での人間関係だけでなく、パワーハラスメントやセクシャルハラスメント(以下パワハラ・セクハラ)など、従業員が職場でなにかしらの問題を抱えたときに、その悩みを相談することができる電話サービスです。
しかし、通常では、電話でホットラインにつないで、担当者が内容をヒアリングした上で対応するというのが一般的であり、その流れにはいくつかデメリットがあります。
そんな中、現在アメリカではホットラインの対応において、電話の代わりにアプリやWEBプラットフォームを使ったサービスが注目をあびています。
今回は、HumanResource Executiveにて公開された、「Apps Help Anonymously Report Sexual Harassment(=セクハラを匿名で報告できるアプリ)」の記事についてまとめてみました。ホットラインがより効果的に使えるデジタルサービスについてご紹介します。
原文:Apps Help Anonymously Report Sexual Harassment
テクノロジーでホットラインをハイテク化
セクハラ問題の多発が話題になり、「#MeToo運動」が起こったこともきっかけとしてあり、雇用主は従業員が職場での問題行為を気軽に報告できるように尽力してきました。
アメリカでは、企業は従業員に対してセクハラを受けた際に、匿名で報告することができるホットラインを提供しなければならないという法律があります。
現在では、そのホットラインがアプリやプラットフォームで対応できるようになったことで、従業員が匿名でセクハラ行為を告白したり、似たような問題を抱える従業員とつながることができたりなど、ハイテク化が進んできています。
セクハラなどの被害体験をInstagram・TwitterなどのSNSで、「私(me)も(too)」と告白や共有することで、ハラスメントに対し声を上げていこうとする活動のことです。
2017年10月に、アメリカのハリウッドの映画プロデューサーによるセクハラ疑惑が報じられたことがきっかけとなりました。この報道に対して、アメリカの女優が同じようなセクハラ被害を受けた女性たちに向けて、”me too”と声を上げるようTwitterで呼びかけ、世界的なセクハラ告発の活動として広がりを見せています。
その場で言いたい!テクノロジーで告発をリアルタイムに
最先端の報告・相談プラットフォームを運用するSTOPit Solutionsの最高財務責任者であるNeil Hooper氏によると、テクノロジーは人々の生活のあらゆるところに偏在してきています。それにより、職場であったハラスメントなどの問題を気軽に報告することができるようになっているようです。
また、従業員は、自分が経験したことや目撃したことを、数時間もしくは数日置いてからではなく、「その場で」報告したいと考える人が大半であるとも主張しています。
人々は時間が経つにつれて、その状況を誰かに話す勇気が出なくなってしまいます。家に帰ってからその状況を思い起こすと、自分が勘違いをしてしまっただけなのではないかと思い始めてしまう傾向にあります。
テクノロジーを使うことで、このような機会を逃すことなく、問題がおこったときに、迅速かつ適切な方法で報告することができるようになると Hooper氏は語っています。
ハイテクなホットラインサービスが続々登場
近年、多くのプロバイダーが職場のセクハラ被害を報告できるようにするため、新しいアプリやプラットフォームを発表しています。ここでは、そのいくつかをご紹介します。
STOPit
※ 画像はSTOPitジャパンのホームページです
先程のNeil Hooper氏が最高財務責任者を務めるSTOPit Solutionsで開発されたアプリです。
STOPitアプリでは双方向のコミュニケーションを可能にしています。従業員が匿名で被害を届けだすことができるだけでなく、STOPitの担当者は調査のために詳しい情報をヒアリングすることができます。
YourVoice
「YourVoice」とは、テルアビブを拠点とするHiBobが最近HRプラットフォームに追加したアプリです。
このアプリでも職場のセクハラを匿名で報告できる機能がそなわっています。
Callisto
「Callisto」は、もともと大学のキャンパスで使用するために開発されたシステムですが、まもなく法人化が可能になります。
システムによって、報告された性的暴行とハラスメントの内容は完全に暗号化されたうえで記録されているため、被害者のプライバシーを保護することができます。
それと同時に、同じ加害者に対しての被害届を受けた際には、民間の仲介センターが介入し、その被害者たちに注意を促します。
AllVoices
最近のハリウッドのセクハラスキャンダルの多発がきっかけとなって誕生したウェブプラットフォームが「AllVoices」です。創始者であるClaire Schmidt氏は、2017年11月まで20世紀フォックス社の技術開発部にて副部長として働いていました。
従業員はセクハラの被害を匿名で報告する権限が与えられ、みだらな要求、故意的迷惑、無謀発言、人身攻撃など各種嫌がらせの経験を共有することができます。
その結果はメールで直接、従業員の上司や責任者に送られます。その結果をもとに、彼らは必要な行動をとるようになるかもしれません。
Talk to Spot
著者のJulie氏が最も革新的なサービスの一つと言っているアプリです。
「Talk to Spot」は、従業員がSpotというAIチャットボットに匿名でハラスメントを報告することができる機能をそなえています。
Spotは友達とメッセージアプリを使っているような感覚で、オンラインのチャットを通して、従業員の書き込みにレスポンスした上でヒアリングし、やり取りの中での変化をアプリ裏で随時記録しています。
従業員はHRに送るレポートの作成や、共有されたくないコンテンツの削除をおこなうこともできます。また、レポートを匿名のまますることもできるし、あとから特定化させることもできます。
匿名がいいの?名前を公開したほうがいいの?
ここまで、ハラスメント被害に対しテクノロジーを使って告発・相談できるサービスを紹介してきました。
ところで、ハラスメントの問題を解決するには、被害者は匿名であることと、名前を公開すること、どちらのほうがより効果的であるのでしょうか。これについて、著名人の主張をもとに考えていきたいと思います。
匿名であることで気軽に報告することができる
高成長を遂げているHiBobの副社長であるSharon Argov氏は、「匿名性がそなわっていることで、従業員がセクハラの被害について気軽に報告することができるようになる」と語ります。
ほとんどの人々がセクハラ被害を報告していない理由としてあることが、上司や人事部、もしくは部署の責任者に話をすることが負担であると感じてしまうことにあります。
テクノロジーを使うことによって、内密かつ慎重に、そして匿名で会話をすることができます。これにより、上司に相談することが負担であるという障壁を取り払うことができます。
セクハラ問題を認知させるために名前公開するのは必須
一方、労働・雇用で経営陣を代表する米国最大の法律事務所であるFisher PhillipsのSheila Willis氏は「セクハラ問題を周りに認知させることはいいことである」と主張しています。
匿名のアプリやプラットフォームはデータ収集のツールに過ぎないものであり、たとえいくつかの匿名で送られた報告を集めたとしても、セクハラ被害についての調査報告を作るには不十分だそうです。
Willis氏は、匿名の報告では調査をするのに十分な情報を得ることができない可能性があり、それにより加害者は同じ過ちを犯し続ける可能性があると語っています。
匿名の報告では、セクハラ被害にあってる人々のモヤモヤをスッキリすることはできるかもしれませんが、雇用者は状況を改善しようと思っても、できることが限られてしまいます。
#MeToo運動の影響による変化
『2018年度倫理・法令遵守ホットラインとインシデント管理の評価報告書』(オレゴン州・ポートランド)によると、匿名による報告は減少してきているものの、依然としてこのケースは残っているとWillis氏は述べています。
ハラスメントに関する報告数はわずかに上昇したものの、匿名による報告は56%にとどまり、ピークだった2009年の65%を下回っているようです。
「#MeToo運動」の高まりと匿名報告の減少は直接的な相互関係があるかはわかりませんが、この運動がセクハラの被害者に前に進み出て、自身の経験を共有する勇気を与えたとWillis氏は主張しています。
「#MeToo運動」によって、被害を受けた人々も前に進み出るようになり、自分の名前がレポートに乗ることに対しても、さほど抵抗がなくなりました。
彼らは「自分は一人じゃない」と感じるようになり、「伝える」ことにおいて勇気を見いだすようになったのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
他の人に話すことができず、一人で抱え込んでしまいがちなセクハラやパワハラなどの問題ですが、「#MeToo運動」をきっかけにアプリやプラットフォームを活用することで、問題に対し、より迅速に対応することができるようになってきました。
また、経験を共有する場ができるようになったことで、今まで誰にも言えなかった想いを公にする勇気を持つことができるようになった、ということもテクノロジー導入によるポイントということができるのではないでしょうか。
ぜひ日本でも、いち早くテクノロジーによるホットラインを充実化させて、セクハラ・パワハラに対する改善をはかっていきたいものですね。