こんにちは、HR NOTE編集部の野上です。
新卒採用、中途採用ともに希少人材のニーズが高まる中、2018年3月に「旅人採用」という「旅人人材」に特化した就職支援サービスが開始しました。
同サービスは、日本中に旅をすることの楽しさを普及している株式会社TABIPPOと、人材紹介サービスを展開している株式会社アプリが連携して提供をしています。
今回は、その「旅人採用」が開催する、合同企業説明会の様子を取材させていただきました。
近年は、学生時代にバックパッカーとして休暇期間や、休学などを活用して世界中を飛び回る学生が増えてきており、「旅人」での経験を活かして就職活動に取り組んでいるケースが増えてきています。
そんな私も、学生時代に1年休学をして世界40カ国をまわり、インドでは1ヶ月間滞在しヨガに没頭。現地では、ヨガ教室を訪れる観光客向けにヨガのインストラクターをした、という経験があります。
旅人として世界を歩き回った人材が持つ強みのデータ紹介や、参加企業が「旅人人材」に求めるものなど、これまでになかった「旅人採用」という方法で企業にどのような期待ができるのかをご紹介いたします。
登壇者
清水 直哉 | 株式会社TABIPPO 代表取締役
東京学芸大学に在学中に世界一周のひとり旅へ。帰国後、旅で出会った同世代の仲間と一緒にTABIPPOを立ち上げる。卒業後は、株式会社オプトに入社して、ソーシャルメディア関連事業の立ち上げや、当時の最年少マネージャーを経験。2014年4月にTABIPPOを法人化して起業を果たす。TABIPPOでは「旅で世界を、もっと素敵に」を理念として、旅を広めるために多角的に事業を展開。また「旅するように働き、生きる」を指針として、新しい時代の働き方や組織作りにも挑戦中。
庄子 潔 | 株式会社アプリ 代表取締役社長 CEO
1979年、宮城県仙台市出身。高等学校卒業後、音楽好きが高じて2年間アメリカへ留学。帰国後、派遣スタッフとして工場内作業で勤務。2002年株式会社アプリの立ち上げに参画、観光地に特化した派遣会社を設立。2012年代表取締役に就任。「若者に価値あるCHALLENGEの場」を創出する企業として事業を展開。「2025年までに100万チャレンジ」の応援をミッションに事業を拡大している。
旅人採用が生まれた経緯やその魅力とは?
TABIPPOとは
清水さん:
TABIPPOは私が8年前に学生団体として立ち上げて、4年前に会社にしました。
もともとは僕が学生時代に世界一周の旅を経験して、「一生かけて若い人に、旅を広めていきたい」というふうに思ったことがきっかけでした。
大学卒業後から起業していたわけではなくサラリーマンとして3年間インターネットの広告代理店で働いた後に、26歳で起業しました。
今、13名の正社員がいまして、みんな若くて旅好きなメンバーで働いています。13人中11人が世界一周の旅を経験していて、一人あたりの平均訪問国数が37か国。中には、60か国を訪問しているメンバーがいたり、女性メンバーでも平気で世界中を旅していたりします。
TABIPPOでは日本中で旅を広めるために、とにかくいろんなことをやっていこうと思い、5つの事業をおこなっています。
- イベント事業
旅好きが集まり、旅を広めていけるようなイベントを年間で200回近く開催しています。その他にも1年に1回、旅祭りという旅好きが集まる野外フェスを開催し、最近では8,000人近くが参加するイベントになりました。 - プロダクト事業
本や雑貨を制作・販売しています。本は年間に約4冊つくっていて、書店などで購入していただくことができます。 - Webメディア事業
TABIPPO.netというメディアを運営しています。実際に旅をしている方に記事を書いていただいています。 - マーケティング事業
旅行代理店や航空会社などの企業とタイアップして旅行の企画などをしてTABIPPOを日本中に広めています。 - 旅人採用
旅好きのための就職、転職や、人生をサポートしようという事業です。
この5つの事業を通して、多くの人たちに旅に興味を持ってもらいたいなと思っています。
日本のパスポートの所持率って、約24%なんです。4人に1人ぐらい。これって世界的に見てもすごい低い数字で、TABIPPOの活動を通して、パスポート所持率がどんどんあがっていけばいいなと思っています。
アプリとは
庄子さん:
僕は旅という経験はあまりないんですが、20年ほど前に卒業した後すぐ、音楽好きが高じてアメリカへ2年間留学していました。ですが、ヒップホップの本場であるアメリカに魅了され音楽漬けの毎日を過ごしていて、しまいには持っていた車を事故で潰してしまい、学校に通えなくなり、二十歳の時に日本に戻ってきました。
じつは、アメリカから戻ってきたときは、自分ってめちゃくちゃイケてる人間だと勘違いしていて、「どこでも就職できる」って思っていたんです。
そんなことを思いながら、就職活動をしていたんですが「高校卒業」「職歴なし」「アメリカ短大中退」としか履歴書に書くことができなくて、そんな内容じゃ企業から採用してもらえるわけがないんですよね。そして、結局泣く泣くついた仕事が、派遣工場作業員。
そんなきっかけで、今度は派遣する側のお仕事もやってみたいと思って、アプリという人材派遣の会社を立ち上げました。
アプリで一番大きい事業が、リゾートバイトという、リゾート人材のサービスです。
北は北海道から、南は沖縄までにある、リゾートホテルや旅館、スキー場に人材を紹介しています。夏休みや、冬休みの期間などに働く大学生の方が多いと思われることがありますが、じつはフリーターの方々が多いんです。今では、年間約1万人に、アプリを通してリゾートバイトをしていただいています。
リゾートバイトは一般的なアルバイトと比べると、お金が溜まりやすく、貯めたお金で次に何をやろうかと悩んいる方も多くいます。
そんな方たちのために、リゾートバイトを終えたあと、海外でのチャレンジを応援する留学支援や、東京に上京したい人のために、お住まいとお仕事を同時提供する、という人材サービスをおこなっています。
そして今回、ご縁があって、旅人採用を、TABIPPOさんと一緒にやらせていただくことになりました。
旅人採用がスタートしたきっかけとは
清水さん:
2社でサービスを運営しているというのは、少し珍しいかなと思うのですが、そこにはストーリーがあるんですよね。
庄子さん:
そうなんです。アプリのサービスを活用してリゾートバイトでお金を貯めた若者に、東京での生活や、ワーキングホリデーの支援をしている中で、TABIPPOが観光庁に表彰されていることを知って、TABIPPOのホームぺージからお問合せをしたことがきっかけです。
清水さん:
TABIPPOとしては、10代から30代の若者が旅をする文化をつくっていきたいと思っていて、その若者たちに、世界中で旅することを応援できるようなサービスをつくっていきたいなと思っていたんです。そんな思いがアプリさんとお互いに共感できるよねって。
庄子さん:
この旅人採用の始まりは、お互いが共感をしながら話をしていく中で、「旅をしている若者がいざ就職をする時に、旅の中で培われた貴重な経験やチャレンジなどを履歴書では伝えきれない」という話になりました。
アプリのサービスを活用して、ワーキングホリデーや留学に行った方の話を聞いていると、行く前と比べてメンタル力を養っていたり、多様な価値観を身に付けていたりするんです。そんな若者の経験などを伝えようとしても、日本の就職においては履歴書をベースに人を見られることが多いので、なかなか伝えることができないんです。
清水さん:
そこで、履歴書に載らないようなところでチャレンジしている人に焦点を当てることが、結果的に日本社会を変えていくのかもしれないと思い、庄子さんとなにかサービスを立ち上げようと準備を進めてきたんです。
そして、お互いの強みを活かして完成したサービスが、若者の経験やチャレンジにフォーカスできて、そして純粋に旅を広めたいという思いが詰まった「旅人採用」というサービスです。
旅人採用とは
清水さん:
旅人採用には4つの特徴があります。
- 「海外にいたから一括採用に間に合わない」という、旅人ならではの悩みをざっくばらんにお話いただける場の提供をしていること。
- 旅人といった経験を積んでいる方たちに好感を持っている企業だけを紹介していること。
- 旅人たちと話をしている中で、「この人ってこういう旅をしてきていて、こんな経験や、強みがあるんですよ」ということを、企業に対して二人三脚でアピールをしながら就職活動を支援できるということ。
- カウンセラーは全員旅人を経験しているので、旅人の就職について同じ目線で考えられること。
このように旅人の就職サポートをおこないながら、企業と旅人のマッチングをおこなっています。
次に紹介したいのが、「旅人の強み」です。私たちがアンケートを企業と旅人に取らせていただいて、旅人の強みを数値化してみました。まず見ていただきたいのが、「日本の人事部」のデータから見る、企業で活躍している人材の特徴です。
活躍している社員の約8割が「自分の強み・やるべきことを理解して行動している」ということで、コミュニケーション能力や巻き込む力など、いろいろと自分の事を理解できている人が活躍しているということです。
この活躍人材の特徴と、旅人の特徴って似ているところがあるんです。企業で働いている社員の中に、「旅人人材」が活躍しているのか、アンケート調査をおこないました。
結果からもわかるように、旅人は自身の強みを理解しているだけではなく、周りの影響力大きく巻き込むことができるんですよね。
企業で活躍している人材と比較をしてみると、旅人人材は企業で活躍する人材になり得るんです。
このような情報を見ると、多くの企業で活躍している人材の特徴と、旅人の強みや特徴には共通する部分が多いんです。
参加企業の声|「旅人人材」に期待することは?
ここでは、「旅人採用」に参加された企業の採用担当者が、今回の合同説明会に参加した理由や、「旅人人材」の採用に対してどのような期待を持っているのかをまとめてみました。
旅行サービスを運営しているから、旅行好きに集まってほしい
株式会社 trippiece代表の石田さんは、同社が扱うシェアトリップサービスtrippieceを例に、旅人人材の重要性についてお話をしていました。
石田氏:
trippieceというサービスは、ユーザーが旅行に行きたいところ、そこでしたいことを募集にかけ、同じ体験をしたいユーザーを集めて一緒に旅行にいくというシェアトリップサービスです。
旅人であれば理解していただけると思うんですが、日本にいるだけだと出会うはずのなかった人たちと旅行中に出会って、いろんな体験を共にする。で、日本に帰ってきてまた飲み会をする。こんな出会いが、旅行において非常に重要なファクターだと思っています。
そんな体験を伝えていくtrippieceでは、旅人としての経験や、旅行が好きな人たちと一緒に作り上げていきたいので、今回の「旅人採用」に参加させていただきました。
知的好奇心が旺盛な学生と出会いたい
株式会社シンクスマイルの野口さんは、「旅人採用」に参加した理由をこのように語りました。
野口氏:
今回、旅人採用に共感したところが、いろんなところに行ってみたいとか、そういう知的好奇心が旺盛なんじゃないかなっていうこと、あとは実際に休暇中や休学にしても、自分がしたいことのために行くか、行かないかの決断ができることが大きな違いだと考えています。その好奇心と行動力がある、素敵な学生がいっぱい集まっているということで「旅人採用」をやってみたいなと思いました。
好奇心が旺盛で、行動力に溢れている、そんな旅人のポテンシャルを仕事に活かせるような「旅人人材」に出会えることを期待しています。
自立した人材と新しい文化を作りたい
株式会社ITプロパートナーズの大久保さんは、旅人人材の特徴である「行動力・決断力」を自社のビジョンを体現できる人材だとおっしゃっていました。
大久保さん:
ITプロパートナーズは「自立した人材を増やし、新しい仕事文化をつくる」というビジョンをすごく大事にしている会社です。
旅人には、「これはやりたい」「これなら頑張れる」といった自分の気持ちを、決断して行動に移す力が備わっていると思います。そんな、自立できている「旅人人材」には、社会に出たときには自分のためだけじゃなく、社会のために決断をして行動できるのではないかと感じています。
旅人の経験が社会でどのように活きているのか?
最後に、TABIPPO代表の清水さんと、学生時代に旅人として日本や世界各地を歩き回り、今では社会人として活躍されている2名のトークセッションがありました。
その中で、旅人としての経験がどのように仕事に活かすことができているのかについて話が進み、これから就職をする学生や、採用担当者に向けておこなった話の一部をご紹介します。
「旅と仕事は、ほぼ一緒」疑惑
松谷さん:
最近仕事をしていて思うことなんですが、「旅と仕事」は、ほぼ一緒じゃないのかなって。
どういうことかというと、旅も仕事も結局、いやならやめていいことを、それでも続けていくみたいなところがあると思っています。旅って楽しいことがたくさんあると思っている人もいるかと思いますが、嫌なこととかもいっぱいあるんですよね。
空港でロストバゲージにあったり、ひどい場合は強盗にあって全部荷物とられたり。そんなトラブルがある中で、「帰ってしまったら楽なのはわかってるけど、続けたいな」と思ってしまうんですよね。
そこにはちゃんと理由があって、新しい世界を見たい、新しい人に会いたい、そんな思いみたいな部分があるから、少々苦労があっても、それを乗り越えていきたいと思うんです。
これは仕事もかなり似ていて、日々大変なことや、うまくいかないことってたくさんあります。それでもやっぱり仕事を続ける理由には、その先に自分が見たい世界があって、そこに向かっていくためにチャレンジしているみたいなところがあるんですよね。なので、最近は仕事をしながら、旅を思い出して、あー、あの時もそうだったなと思うときがあります。
どんな環境でも順応ができる
文山さん:
旅っていろいろな国に行って、その国の価値観を見て学ぶことで、自分の価値観とその国の価値観をすり合わせて、現地の人とコミュニケーションをとったり、生活をしたりするんです。
まだ僕も入社をして間もない状態ですが、仕事にもこのような順応性が必要になってくると思っています。たとえば、最初の部署配属のときなんて、全くイメージがつかない状態になりますが、部署の雰囲気や職務内容などの理解が周りより早く、自分の価値観ともすり合わせることができるので、知らないことでも楽しみを感じながら仕事をすることができるんです。
旅人は人より順応が早いというデータもありますし、自分の価値観もしっかりと持ち合わせている。だから、順応するためにわからないことや疑問があればすぐに質問をするなどして、認識にずれがないかをすり合わせることができるんですよね。こういうスキルって環境への順応ができて、仕事にも活きてくるんじゃないのかなって。
会社の先輩方にもこういうスタンスのおかげで「君、気持ちいいね」と、言っていただけることがあります。
さいごに
いかがでしたでしょうか?
日本において、働き方の多様化や副業など、さまざまなキャリアへの考え方が増えてきているように、学生の就職や仕事に対する価値観も多様化してきています。
今回の「旅人人材」は、日本で受ける教育だけでは身につけることができない価値観を旅の中で身に付けながら、それぞれが独自のスキルを身につけています。
たとえば、言語が伝わらない国に足を運び、知らない町で宿をみつけ、現地でコミュニティーを形成するには、コミュニケーション能力、順応力、ポジティブ思考、チャレンジ精神などのスキルが必要不可欠です。
このような「旅人人材」がもつスキルは文中のデータにもあったように、企業が求める人物像の要件に当てはまることが多く、将来活躍する人材として重要になってくるのではないでしょうか?